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第6章 ― 旅立ちの空
リリアーヌが王都を離れてから、数日が経った。
彼女が身分を捨て、旅に出ることを知ったとき、王宮中の貴族たちは驚いた。
公爵家の令嬢が、自ら貴族を捨てるなど前代未聞だったからだ。
「なぜそんなことを?」
「きっと何か事情があるのでしょう……」
だが、それ以上深く詮索する者はいなかった。
ただ、一人。アレクセイを除いては――。
⸻
「リリアーヌが旅に出た?」
彼女がいなくなったことを知った瞬間、アレクセイは居ても立ってもいられなかった。
彼は何度も公爵邸を訪れたが、彼女の家族ですら行き先を知らなかった。
「なぜ、俺に何も言わずに……」
あの日の彼女の笑顔を思い出す。
泣いているはずなのに、笑っていた彼女。
自分には未練もないと、そう思わせるような微笑み。
「……本当に、お前は俺のことを好きじゃなかったのか?」
いや、違う。
――今ならわかる。
彼女は、ずっと俺を想っていた。
そして、俺はそれに気づかなかった。
「なんで……どうしてもっと早く……!」
アレクセイは拳を握り締めた。
喉の奥に詰まるものを、どうすることもできなかった。
⸻
第7章 ― 旅の始まり
一方、リリアーヌは一人、遠い村へと向かっていた。
これまで生きてきた貴族の世界から離れ、自分が何者なのかを知るために。
「これから……どうしようかしら」
目の前には広がる大地。
吹き抜ける風は自由だった。
でも――
胸の奥には、まだ彼の姿が残っていた。
(……もう、振り返らない)
そう決意し、リリアーヌは歩き出した。
新しい人生を求めて。
リリアーヌが王都を離れてから、数日が経った。
彼女が身分を捨て、旅に出ることを知ったとき、王宮中の貴族たちは驚いた。
公爵家の令嬢が、自ら貴族を捨てるなど前代未聞だったからだ。
「なぜそんなことを?」
「きっと何か事情があるのでしょう……」
だが、それ以上深く詮索する者はいなかった。
ただ、一人。アレクセイを除いては――。
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「リリアーヌが旅に出た?」
彼女がいなくなったことを知った瞬間、アレクセイは居ても立ってもいられなかった。
彼は何度も公爵邸を訪れたが、彼女の家族ですら行き先を知らなかった。
「なぜ、俺に何も言わずに……」
あの日の彼女の笑顔を思い出す。
泣いているはずなのに、笑っていた彼女。
自分には未練もないと、そう思わせるような微笑み。
「……本当に、お前は俺のことを好きじゃなかったのか?」
いや、違う。
――今ならわかる。
彼女は、ずっと俺を想っていた。
そして、俺はそれに気づかなかった。
「なんで……どうしてもっと早く……!」
アレクセイは拳を握り締めた。
喉の奥に詰まるものを、どうすることもできなかった。
⸻
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一方、リリアーヌは一人、遠い村へと向かっていた。
これまで生きてきた貴族の世界から離れ、自分が何者なのかを知るために。
「これから……どうしようかしら」
目の前には広がる大地。
吹き抜ける風は自由だった。
でも――
胸の奥には、まだ彼の姿が残っていた。
(……もう、振り返らない)
そう決意し、リリアーヌは歩き出した。
新しい人生を求めて。
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