妹と歩く、異世界探訪記

東郷 珠

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メイザー卿の受難

14 ペスカと兵士とモンスター探索

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「はーい! こちらペスカでーす。今日は城塞都市リュートに来ていまーす。ここでは、な・ん・と、 モンスターの討伐隊が編成されてまーす。今日はその兵士達の密着取材をお届けしまーす。あっ、そこの格好いいお兄さん、ちょっとお話し良いですか? うぎゃ」

 粛々と出発準備を整える領軍を尻目に、ペスカはウキウキ顔で跳ね回る。そんなペスカの頭に、冬也の鉄拳が降り注いだ。

「バカな事やってんな、ペスカ。手伝わないなら、帰って寝てろ」
「お兄ちゃん、冷たくない? 倦怠期?」

 シリウスの依頼を快諾した翌日の事である。早朝からペスカは、冬也を連れて人混み溢れる街へと繰り出した。自分や冬也の防具をシリウスのつけで買い漁り、ペスカはさっさと宿へ戻ろうとした。

「打ち合わしなくて良いのかよ! それに今日出発なら、兵舍に居た方が良いだろ」

 冬也に叱られ渋々兵舍へ行くと、シリウスとロイドで大方の打ち合わせは済んでおり、後は武器や防具、兵站等の準備だけであった。

「ほら~やっぱり~。帰ろうよ~」

 ペスカは駄々を捏ねて、宿へ戻ろうと催促をする。しかし冬也は、何もしないのは気が引け、準備を手伝っていた。
 
「義兄殿は、良く働きますな」
「お人好しなんだよ、まったく! これから戦闘なんだから、ちゃんと休まなきゃいけないんだよ! 妹の心兄知らずだよ!」
「申し訳ありません。姉上」
「巻き込んだかって? 気にしないの、元は私の役目なんだし。それで作戦は?」

 シリウスは、少し咳払いをしてから、説明を始めた。

「現在、斥候部隊が出ております。帰還次第すぐに、三方に向け出発致します。姉上には、山脈部周辺の探索をお任せ致します。それ以外は、ロイドの部隊と私の部隊が探索に当たります。姉上は私の部下を数人お連れください。私はこの兵舍で待機し、指揮に当たります。何かあればご連絡を」

 ペスカは、軽く頷いてシリウスに答える。

「わかったよシリウス。今回は連れて行ってあげよう」
「精鋭故、足手まといにはならないかと。せめて道中くらいはお休み下さい」

 やがて準備が終わる頃、斥候部隊が戻り出発となった。二人は軍用馬車に揺られ、目的地の山脈部に向かう。途中現れるモンスターは、兵士達にまかせ冬也は暫しの休息を取る。ペスカの膝に頭を預け、冬也は寝息を立てる。ペスカは嬉しそうに、冬也の頭を撫でていた。

 数時間程進むと、冬也は兵士に起こされる。既に馬車は山脈地帯に近づいており、眼前には鬱蒼とした森が広がっていた。森の中を、慎重に馬車が進んでいく。やがて馬車の中から、周囲の様子を観察していたペスカが、ポツリと呟いた。

「う~ん。これは、ビンゴかな!」
「ペスカ。何かわかるのか?」
「モンスター化はマナの変異だからね。発生するマナも異質なんだよ。ここは、かなり濃い感じがするね」

 ペスカの予測通り、直ぐにモンスターの出現数は急増した。ペスカと冬也は、兵士達に協力しながらモンスターを倒し、馬車を走らせていった。奥に進むほど大型になっていくモンスターを、兵達と協力して片付ける。ようやく山脈沿いに近づくと、現れたのは大きな洞窟だった。
 だがそこには、思いもよらぬ光景が待っていた。 

 洞窟の入り口には、死体が張り付けになっている。まだ死んで間もないのだろう、死体には幾つもの深い傷があり、そこから血が滴り落ちていた。
 その光景に、ペスカと冬也のみならず、全員が息を飲む。嫌な予感がしたペスカは、恐る恐る兵の一人に質問を投げる。

「あ、あれは、行方不明となっていた人かな?」
「お、仰る通りでございます」

 しかし、何故こんな場所に死体を張り付けたのだろう。違和感を感じた冬也は、ペスカに声をかける。

「ペスカ。あれ、何かおかしくねぇか?」
「お兄ちゃん。あれは間違いなく、私達を誘ってるね」

 わざわざ、失踪した側近達を張りつけにした理由。それはおびき寄せて、領軍を一網打尽にしようとでも、考えているのだろうか。
 兵士達が言うには、以前はこの辺りに洞窟らしき物は無かった。この洞窟は急造された物ではないかとの事だった。
 見る限り、洞窟は綺麗にくり貫かれている。確かに自然物より、人工的の方が的確な表現であろう。

 モンスター発生の中心元に、不自然な洞窟の存在。それは、ロメリア教残党の拠点で間違いはないだろう。そして入り口の死体から察するに、洞窟内は罠が張り巡らされている可能性も高い。
 それでもペスカは、対策を立て直す為に時間を費やすより、強引にでも状況を打開しようと考えた。

「皆、行くよ。何が有っても、蹴散らすよ」

 ペスカは、シリウスに念話で連絡を入れる。ペスカの言葉で、冬也は気を引き締め直す。そして、軍用馬車の警備兵だけ残し、一向は洞窟内に侵入した。
 そして罠と言わんばかりに、洞窟内はモンスターの大群で溢れていた。獣型、虫型様々なモンスターが通路、壁面、所構わずびっしりと貼り付く様に溢れている。それは鳥肌が立つ光景だった。

 気持ち悪がったペスカが、大魔法でモンスターを一斉に吹き飛ばす。しかし、モンスターはどんどんと溢れてくる。再び溢れたモンスターを、ペスカが吹き飛ばす。
 その繰り返しとなっていた。

「うぁ~キモ! SAN値がガリガリ削られて行くよ~」
「なぁペスカ。さっきから魔法使い過ぎじゃねぇか? 余り無理すんなよ」
「ありがと、お兄ちゃん。さっきお兄ちゃん成分充電したから大丈夫!」
「どんな成分だよ!」

 兵士達も優秀だった。シリウスが精鋭と呼ぶだけあって、ペスカや冬也をフォローしつつ、自らもモンスターを軽々と蹴散らしていく。
 おかげで、ペスカも冬也も少し余裕を持って、モンスターに対応する事が出来た。死骸の山を積み上げながら進んでいくと、やがて大きなホールの様な空洞が見えてきた。

「あそこがゴールかな? あの辺り全部、水で溢れさせてやろっか!」
「やめろペスカ! 俺達も溺れちまうだろ!」
「冗談だよ、やだな~。いや、土で埋めるか」
「だから、止めろよペスカ。気を付けて進むぞ!」

 結界なのか、広い空間への入り口には、透明のスクリーンの様な物が張られている。既に、淘汰し尽くしたのか、モンスターが新たに出現する様子は感じない。
 そしてペスカがスクリーンを魔法で破壊して、空洞への侵入を果たす。空洞の内部は、まるで研究所の様に、機械めいたものが置かれている。そして、真っ黒なローブを頭から被り、顔を隠している男達がそれを操作していた。

「あっちゃ~。嫌な予感当たったか!」
「ペスカ、あれ何だ?」
「ロメリア教徒だよ」

 男達は侵入者を殺そうと、一斉に武器を手に襲いかかって来る。

「なるべく殺さず、捕らえてね。色々吐かせるから」

 ペスカの言葉に兵士達が、瞬時に動いた。しかし、俊敏な動きで男達を無効化した瞬間だった。捕らえようとした男達の体内から、大量のマナが溢れて爆発した。
 すんでの所で難を逃れた兵士も居たが、爆発の影響で多くの兵士が激しい怪我を負う。

「捕らえられず申し訳有りません」
「謝る必要はないよ。早く手当するから、重傷者から連れてきて」

 謝る兵士達を宥め、ペスカは癒しの魔法をかけて治療を行った。

「しかし、自爆とはね。ロメリア教徒らしいね」

 兵士達が動けるまで回復すると、ホールを隈無く調べる。大量の薬瓶、檻に入れられた動物の数々、謎めいた機械。物的証拠は、充分であろう。

「間違いなくマナ増加剤だね。ここで、薬を作ってたんだろうね。持ち帰って調べないとだね」
「こんな量を、どうやって持ってくんだ?」

 冬也の言葉に、一人の兵士が答える。

「軍用馬車を持ってくるように、連絡したします。お二人は暫しお待ち下さい」

 兵士達は、軍用馬車を迎えるついでに、洞窟内のモンスターを掃討すると言いホールを出ていく。ペスカと冬也は、ホールで暫く休憩する事にした。

「応援を寄越すように、シリウスに連絡したから、その内合流出来ると思うよ」
「なぁペスカ。薬はあの変な機械で作ったのか?」
「多分ね、ドルクの実験機に似てるし。それに実験用の動物もいたしね」
「そうすると、他の場所も同じ感じか? それにしても、モンスターの発生源にいて、奴らはよく無事だったな」
「入り口に結界が張ってあったし、何らかのモンスター避けみたいな技術を持ってるんじゃないのかな?」
「それにしても、何が目的だったんだ? こんな所に閉じこもって、モンスターを増やすなんてよ。仮に妙な技術があったって、自分達の命だって危ういだろうに」
「目的はともかくとして、モンスターを作り出すのは簡単だよ。草木が有る所に薬をばら撒けば、小動物や昆虫がそれを食べて、モンスター化する。その小動物を、大きな動物が食べてモンスター化する。後は、ネズミ算式に数が増えていくよ」
「そうすると、昨日の豚モドキも、同じ方法か?」
「この辺りは、養豚が盛んだからね。飼料に薬を混ぜれば、一発だろうし」

 軍用馬車に大量の薬瓶を積み込む頃、援軍が到着した。洞窟を出る頃にはすっかり日が落ちていた。
 日が落ちての行軍となったが、行きにかなりの数のモンスターを、討伐していた為、帰りの道中はモンスターの遭遇数が比較的少なかった。

 ペスカ達が城塞都市に帰還した時には、シリウスの部隊とロイドの部隊も帰還を果たしていた。しかし兵士達は皆、疲れ切った表情をしている。怪我をした兵士には、簡易的な治療しか施しておらず、早く本格的な治療を行った方が良い。
 詳細な打ち合わせは明日となり、ペスカと冬也は宿へと戻った。勿論、シリウスに猛抗議し、ペスカが取り直した二人部屋に。 
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