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白の章
白十八話
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「今日は書庫でスターチス王の戴冠の新聞を読みましたよ」
エーデルは王の部屋の窓辺の椅子に座り、お茶を飲みながらにこやかに話した。城の書庫では、王家に関わる新聞の記事が保存してあった。
「六年前の話ですね」
スターチス王もお茶を飲みながら話に乗った。
「十五才で今よりもっと若かったので、翌日の新聞が好意的に書かれていてほっとした覚えがあります」
「王の厳かな衣装がお似合いでしたよ」
「そうですか。その時の話をエーデルにもしましょうか?」
「ぜひお聴きしたいです」
エーデルはわくわくしながらスターチス王の昔話に耳を傾けた。
祝祭の日の空は晴れていた。シエララントには西大陸中からスターチス王家に縁のある王や貴族などの客人達が大勢集まった。
これからスターチス王家を継ぐ十五才の王子は厳かな衣装で正装していた。その重たい衣装はまるで慣れた格好のように王子はにこやかにしていた。
「今日はおめでとう、アーサ王子。緊張はしていないようだね」
ブラッカリヒトが王子のそばについて世話をしていた。兄のブリックリヒトは父王の方へ行っていた。
「ありがとうございます、戴冠はもう決まっていたことですから」
「それでこそ守りがいがあるよ。スターチス王家の王は代々落ち着いた性格で国を治めているからね」
ブラッカリヒトは戴冠の儀式を通して何度も新王を戴いていた。
「それでは行きますか」
王子は儀式を執り行う礼拝所へゆっくりと向かった。
聖壇には儀式を取り持つ大僧正と六十才を過ぎた老王がいた。老王は黒い引き締まった服だった。若い僧侶がその横で王冠を捧げ持って待っていた。
大僧正が始まりの言葉を告げた。
「古の主の御前でスターチス王家の戴冠の儀を行う。王よ、新王に王冠を授けよ」
老王は僧侶から王冠を受け取ると、王子に問うた。
「アーサ・クエスト・スターチスよ、汝は民と心を共にし、均衡をよく保ちながら穏やかに他国と付き合うことをここで誓うか?」
「はい。スターチス王家に代々伝えられてきたやり方を私も守り、国を治めましょう」
「騎士や僧侶や王城守護魔術師達の言葉によく耳を傾けることを誓うか?」
「はい。城の者達と分け隔てなく接しましょう」
「では、王位を譲ろう」
老王は頷くと王冠を手にし、新たな王の頭へそっと王冠を載せた。
大僧正は高らかに宣言した。
「ここに新たなスターチス王を命じる」
「謹んで拝領致します」
東西の礼拝所の鐘が鳴った。客人に混じって訪問していた新聞記者がペンを動かし、その様子を絵で描き留めていた。
「新王万歳!」
「新王万歳!」
どこからともなく万歳が斉唱され、祝福の声は海となって城に満ちた。年若いスターチス王は微笑みながらその祝福を受け止めた。
エーデルは王の部屋の窓辺の椅子に座り、お茶を飲みながらにこやかに話した。城の書庫では、王家に関わる新聞の記事が保存してあった。
「六年前の話ですね」
スターチス王もお茶を飲みながら話に乗った。
「十五才で今よりもっと若かったので、翌日の新聞が好意的に書かれていてほっとした覚えがあります」
「王の厳かな衣装がお似合いでしたよ」
「そうですか。その時の話をエーデルにもしましょうか?」
「ぜひお聴きしたいです」
エーデルはわくわくしながらスターチス王の昔話に耳を傾けた。
祝祭の日の空は晴れていた。シエララントには西大陸中からスターチス王家に縁のある王や貴族などの客人達が大勢集まった。
これからスターチス王家を継ぐ十五才の王子は厳かな衣装で正装していた。その重たい衣装はまるで慣れた格好のように王子はにこやかにしていた。
「今日はおめでとう、アーサ王子。緊張はしていないようだね」
ブラッカリヒトが王子のそばについて世話をしていた。兄のブリックリヒトは父王の方へ行っていた。
「ありがとうございます、戴冠はもう決まっていたことですから」
「それでこそ守りがいがあるよ。スターチス王家の王は代々落ち着いた性格で国を治めているからね」
ブラッカリヒトは戴冠の儀式を通して何度も新王を戴いていた。
「それでは行きますか」
王子は儀式を執り行う礼拝所へゆっくりと向かった。
聖壇には儀式を取り持つ大僧正と六十才を過ぎた老王がいた。老王は黒い引き締まった服だった。若い僧侶がその横で王冠を捧げ持って待っていた。
大僧正が始まりの言葉を告げた。
「古の主の御前でスターチス王家の戴冠の儀を行う。王よ、新王に王冠を授けよ」
老王は僧侶から王冠を受け取ると、王子に問うた。
「アーサ・クエスト・スターチスよ、汝は民と心を共にし、均衡をよく保ちながら穏やかに他国と付き合うことをここで誓うか?」
「はい。スターチス王家に代々伝えられてきたやり方を私も守り、国を治めましょう」
「騎士や僧侶や王城守護魔術師達の言葉によく耳を傾けることを誓うか?」
「はい。城の者達と分け隔てなく接しましょう」
「では、王位を譲ろう」
老王は頷くと王冠を手にし、新たな王の頭へそっと王冠を載せた。
大僧正は高らかに宣言した。
「ここに新たなスターチス王を命じる」
「謹んで拝領致します」
東西の礼拝所の鐘が鳴った。客人に混じって訪問していた新聞記者がペンを動かし、その様子を絵で描き留めていた。
「新王万歳!」
「新王万歳!」
どこからともなく万歳が斉唱され、祝福の声は海となって城に満ちた。年若いスターチス王は微笑みながらその祝福を受け止めた。
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