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白の章
白二十話
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「祭りの日に王の前で結婚の誓いをする風習は西大陸ではよくあることのようです」
夏至祭の夜、エーデルはスターチス王の部屋で話を聞いた。
「西大陸の中央には百合王の国があるのですが、歴代の王は女性で配偶者も女性であることが多い王家です。魔女婚と同じです。魔法に長けていて、女性同士から子を授かる魔法を使って世継ぎを得ているそうです。ちょっと話が逸れましたが、女性同士で婚姻を結ぶ人たちの間では、百合王とその女王から祝福を受けたいと思う人が多いそうです。百合王の国ではそういうカップルを受け入れて縁を結ぶ手伝いをするのが産業の一つになっています。
また、恋愛の自由が大きいバラ族には男性の王が男性を結婚相手として選ぶことも多くて、そちらでも祝福を受けたい男性カップルがバラ王の国へ赴くことが多いそうです。またバラ族の国では祭りの時に三人以上の繋がりを持つ人たちの結婚式を行うこともあるそうです。そういう間柄は時々見かけるものなので、西大陸では暗黙の了解で認めていることが多いです。
同性婚は珍しくないので、もしかしたら私たちも同性カップルを祝福する年があるかも知れませんね」
「西大陸には色々な国があるのですね。今日の町の人達の踊りでも、女性同士や男性同士で踊っていた方たちもいましたね」
「そうですね。識れば色んな恋愛があるものですね」
スターチス王はにこりと笑った。
「今日は夜の短い日ですが、一緒に夜明かししませんか?」
エーデルは答えた。
「そうしましょうか。私も思っていました。今夜は一緒に過ごしたいと」
スターチス王はエーデルの隣に座った。そしてエーデルの銀の髪に顔を当てた。
「陽の匂いがしますね、エーデル」
エーデルはそっとスターチス王の胸に体を預けた。
「スターチス王もですよ。今日は久しぶりに一日陽に当たりましたからね」
「一緒ですね」
しばらく二人は体を寄せ合い、高揚を分かち合った。スターチス王はささやいた。
「一年ですね。お疲れ様でした」
エーデルが応えた。
「こちらこそ。少しはあなたに近付けたでしょうか」
「まだ私のことを遠く感じていますか?」
「どうでしょう。私は少しづつあなたのことを知っていくのが楽しいので、遠くには感じませんが、私の楽しみはずっと続くのだと思いますよ」
「ずっと、ですね」
「ええ、ずっとです」
それはどんな誓いの言葉よりも二人の心を結んだ。スターチス王はエーデルにキスをした。繋ぎ止められた心を固く結ぶように。エーデルは誓いの心に応え、ゆっくりキスを楽しんだ。
「私はあなたがいつも床でのことをお任せしていますが、退屈していませんか?」
エーデルは隣で眠るスターチス王に小声で尋ねた。甘えるような、自信なさげな声だった。
「そう見えますか?」
「私は受け入れることばかりなので、少し心配になります」
弱々しいエーデルの気持ちをスターチス王は愛でた。
「いつもきれいだと思っていますよ」
エーデルは頬を染めた。エーデルは何度床を共にしても、奥手は変わらなかった。こんな時、エーデルはネコの血が流れていることを自覚する。エーデルワイス王家では、昔から床ではネコになる血筋だと伝えられていた。恥ずかしがると、猫耳がぴょこと出てきそうな感じがした。それを最初にスターチス王に話した時、ふふと笑いながら「可愛いですね」と告げられたものだった。
「あなたは優しくしてくれます。私はお礼ができなくて……」
スターチス王は再び「可愛いですね」と言った。
「私はそんなことは気にしませんし、ゆっくりなペースに付き合ってくれるエーデルがとても相性がいいのだと思ってますよ」
「そうですか……」
スターチス王はエーデルを胸に抱き寄せた。そして銀の髪を優しく撫でた。エーデルは力が抜け、スターチス王に心を捧げた。
「エーデルの気持ちは私の心を温めます。それ以上は私には必要ありません」
エーデルは安心し、幸福に包まれた。
「明日は少し遅く起きましょうか」
スターチス王の言葉は子守唄のようにエーデルの耳に響いた。
夏至祭の夜、エーデルはスターチス王の部屋で話を聞いた。
「西大陸の中央には百合王の国があるのですが、歴代の王は女性で配偶者も女性であることが多い王家です。魔女婚と同じです。魔法に長けていて、女性同士から子を授かる魔法を使って世継ぎを得ているそうです。ちょっと話が逸れましたが、女性同士で婚姻を結ぶ人たちの間では、百合王とその女王から祝福を受けたいと思う人が多いそうです。百合王の国ではそういうカップルを受け入れて縁を結ぶ手伝いをするのが産業の一つになっています。
また、恋愛の自由が大きいバラ族には男性の王が男性を結婚相手として選ぶことも多くて、そちらでも祝福を受けたい男性カップルがバラ王の国へ赴くことが多いそうです。またバラ族の国では祭りの時に三人以上の繋がりを持つ人たちの結婚式を行うこともあるそうです。そういう間柄は時々見かけるものなので、西大陸では暗黙の了解で認めていることが多いです。
同性婚は珍しくないので、もしかしたら私たちも同性カップルを祝福する年があるかも知れませんね」
「西大陸には色々な国があるのですね。今日の町の人達の踊りでも、女性同士や男性同士で踊っていた方たちもいましたね」
「そうですね。識れば色んな恋愛があるものですね」
スターチス王はにこりと笑った。
「今日は夜の短い日ですが、一緒に夜明かししませんか?」
エーデルは答えた。
「そうしましょうか。私も思っていました。今夜は一緒に過ごしたいと」
スターチス王はエーデルの隣に座った。そしてエーデルの銀の髪に顔を当てた。
「陽の匂いがしますね、エーデル」
エーデルはそっとスターチス王の胸に体を預けた。
「スターチス王もですよ。今日は久しぶりに一日陽に当たりましたからね」
「一緒ですね」
しばらく二人は体を寄せ合い、高揚を分かち合った。スターチス王はささやいた。
「一年ですね。お疲れ様でした」
エーデルが応えた。
「こちらこそ。少しはあなたに近付けたでしょうか」
「まだ私のことを遠く感じていますか?」
「どうでしょう。私は少しづつあなたのことを知っていくのが楽しいので、遠くには感じませんが、私の楽しみはずっと続くのだと思いますよ」
「ずっと、ですね」
「ええ、ずっとです」
それはどんな誓いの言葉よりも二人の心を結んだ。スターチス王はエーデルにキスをした。繋ぎ止められた心を固く結ぶように。エーデルは誓いの心に応え、ゆっくりキスを楽しんだ。
「私はあなたがいつも床でのことをお任せしていますが、退屈していませんか?」
エーデルは隣で眠るスターチス王に小声で尋ねた。甘えるような、自信なさげな声だった。
「そう見えますか?」
「私は受け入れることばかりなので、少し心配になります」
弱々しいエーデルの気持ちをスターチス王は愛でた。
「いつもきれいだと思っていますよ」
エーデルは頬を染めた。エーデルは何度床を共にしても、奥手は変わらなかった。こんな時、エーデルはネコの血が流れていることを自覚する。エーデルワイス王家では、昔から床ではネコになる血筋だと伝えられていた。恥ずかしがると、猫耳がぴょこと出てきそうな感じがした。それを最初にスターチス王に話した時、ふふと笑いながら「可愛いですね」と告げられたものだった。
「あなたは優しくしてくれます。私はお礼ができなくて……」
スターチス王は再び「可愛いですね」と言った。
「私はそんなことは気にしませんし、ゆっくりなペースに付き合ってくれるエーデルがとても相性がいいのだと思ってますよ」
「そうですか……」
スターチス王はエーデルを胸に抱き寄せた。そして銀の髪を優しく撫でた。エーデルは力が抜け、スターチス王に心を捧げた。
「エーデルの気持ちは私の心を温めます。それ以上は私には必要ありません」
エーデルは安心し、幸福に包まれた。
「明日は少し遅く起きましょうか」
スターチス王の言葉は子守唄のようにエーデルの耳に響いた。
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