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9.胸騒ぎ

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 僕達のパーティは教室へ予定通り帰還した。
 小西達もすでに帰還しており、僕達を待っていたみたいだ。

 毎回の恒例のように……
 稼いだドロップやお金をテーブルに置き鍛冶屋に渡した。
 
 僕達は自室に戻ろうとした所で、小西達に呼び止められた。

「待て!!
 佐々木、人吉」と、小西が僕達に静止をかけた。

「ん?  何?」と、素っ気なく僕は返した。

「どうしたの? 
 小西君、今日は君達の要望通りに三日間で切り上げてきたけど?
 それでも何か不満があるのかい?」と、佐々木が言った。

「いや不満は無い。
 三日間であれだけの稼ぎを出すなんて、君達は何階まで攻略が進んでいるのか教えてくれないか?」

 と、小西が珍しく低姿勢で質問してきた。

「んー?  今日は11階から始めて、15階迄到達した所かな……
 明らかにボス戦が始まりそうな大きな扉があったけど、僕の懐中時計が時間示したんで泣く泣く帰ってきたよ」

「えっ!?  15階!?」と、小西が驚きの声を上げていた。

 その流れを聞いていた、名取と巻島が僕達の会話に文句をつけてきた。

「お前ら嘘ついてんじゃねーぞ!!」「そうだ!! そうだ!!」

 と、取り巻ABが僕らに対して何かわめいていた。

「っていうか、嘘じゃ無いし……。
 そういう小西君達は、どこまで探索進んでるんだよ?」と、僕は聞き返した。

「僕達も15階迄到達した所さ……
 しかし、君達のように稼げていない。
 君達は何かコツみたいなものを掴んでいるのか?」

 小西に質問された事で、僕と佐々木は何となく小西達の現状が理解できた。

「なぁ、【勇者】さんよー。 
 戦闘方法を楽だからって、簡単な方選んで無いよな?
 収入に三倍の差があったら、偉い差が出るぜ?
 それに君らは四人パーティだし、そこで手を抜いてちゃ。
 二人パーティのゲーマー組みの僕達に置いていかれるよ」と、僕は小西に皮肉と助言をしてやった。

「そこの差か……。
 御影が楽で良いじゃんって言い始めて、5階位からゲーム形式の戦闘方法に切り替えてな」

「5階からって、10階分もサボりゃ僕らと差が出るって……
 それに戦闘方法を戻すとなると、危険になると思うから5階からやり直した方がよくない?」

「そ、そうか……
 何とかなると思うんだが?」と、小西がズレた事を言い始めた。

「いや、ゲームとは言え死ぬ可能性あるんだろ?
 何で安全策取れないの? バカなの死ぬ気なの?」と、小西達に呆れて僕は皮肉を言った。

「人吉、テメェ、、探索がうまくいったからって市民班に金ばらまいて調子に乗ってんじゃねーぞ!!」
 と、毎度の事ながら取り巻き連中がうるさい。

「ふーん……
 たとえそうだとしても。
 調子に乗るだけ乗って、市民班に大した資金提供しないよりは良いんじゃないのかな?」と、佐々木が小西達に釘を刺しにいった。

「ぐぬぬぬ」と言って、ぐうの音も出ない小西は言い返してこなかった。

「さっき拓郎が言った通り、戦闘方法を変えるなら5階からやり直しなよ。
 トラブル起きてからじゃ遅いよ?」と、佐々木が言い残して個室へ戻っていった。

「僕もそう思うよー!!
 【勇者】なんだから楽なんかしちゃダメだよ。
 【市民】役職の二人が頑張ってるんだからね。
 役職にゲーマーってあったら、僕はそこにカミングアウトしてるけどね。
 あはは」と、小西達にがっつり皮肉を言っておいた。

「じゃあ、みんなバイバイ!!
 明日のお昼に会いましょう」と言って、僕は教室にいたクラスメイトと小西達に挨拶して自室へと戻った。

 その後、風呂に入り僕はいつも通り昼の会議まで睡眠についた。

 ……
 …………

 目が覚めた……
 なんだろう嫌な胸騒ぎがする。

 部屋を出ると、なんだか妙にざわついている。
 自分の胸元にある懐中時計を見ても、昼の会議が始まるにはまだ早い。
 実際は昼の会議の前に色々な会議が行われているが、探索班は昼からの会議に参加することになっている。

 それで、なんで?  こんなざわついてるんだ?
 僕は教室へと向かい席に着いた直後に……。

 【占い師】の野瀬さんが、「私は先日占った結果、【人狼】を見つけました」

 僕は、嘘だろオイと内心思っていた。

「人狼は、市民班の彩子さんです!!」と、野瀬は指をさして彩子が人狼であると宣言した。

 そこかよー!! 
 人狼の中で一番打たれ弱い人じゃないか、久々に彼女の笑顔が見れたっていうのに。

 さぁ、どうする?  助け舟を出すか?
 人狼だろうと、クラスメイトで人間だ!!
 処刑する発想はないだろう僕達はある意味被害者なんだし。

 そんなことが頭によぎっていた時、小西が提案をしてきた。
「僕達も人狼のみんなも同じクラスのクラスメイトだから。
 処刑なんて絶対しないから……
 彩子さん君の仲間の人狼を教えてくれないか?」

 うっそだろオイ!!
 超メタ行為じゃねーか!!

 明らかに動揺していた彩子さんだったが、首を横に振ってその提案を断った。
 おいおい、吊るなよ?  綺麗事を並べても単なる人殺しになるぞ。

 僕は色んな事を考えている時に、佐々木が立ち上がって皆に話しかけた。

「みんな、ちょっと落ち着こう!!
 謎の声が言ってたけど、僕達の勝利条件は目的の階層に行く事だよ。
 彩子さんは人狼の役職を与えられただけのおとなしい女性だよ!!
 現に人狼の被害未だに出てないだろう!!  処刑しちゃダメだ!!
 ただの人殺しになるよ!!」

 やべえ、表情には出てないけど心臓がバクバクいってるわ。
 佐々木は僕が人狼に向いてるっていってたが、こんな状況で反論とかできないわ。

 野瀬が作った不穏な空気を佐々木がなんとか、打ち消してくれたみたいだ……
 なんとか、彩子さんを吊る空気は無くなって、占いの件はひと段落ついた。

 次に探索班の報告だ。
 一通り報告を終えて、装備の件を鍛冶屋に伝えて、最後に一言だけ僕は占い師の二人に言った。

「申し訳ないが……野瀬さんと山下さんに言わせてもらうよ。
 【占い師】の二名は【人狼】というを殺したいのか!!
 なんで、僕が参加する昼の会議の前から会議がざわついてるんだ!!
 昼の会議まで、君たちの情報は確実に伏せるよう心がけてください」と、僕は占い師の二人に注意した。

「へぇ……
 やるじゃん」と、佐々木が僕を褒めてきた。

 野瀬さんと山下さんは失敗したと、理解して小さくなっていた。
 ここで小西が余計なフォローを入れてきた。

「人吉君。
 女性に対して、そんな厳しい言葉を吐くのは良くないと思うよ」

「はぁ?  僕達の判断のミスで大変なことになったら、遅いんだよ……
 それにな、 勇者様よ!!  、カッコつけする前に気合い入れて探索班として成果を見せろよ」
 と、僕は小西に対して悪態をついた。

「フン……」と言って、小西は僕の方を見ないようにしていた。

 このような状況になり僕も小西も会議を仕切る気がないので、仕方なしに佐々木が結果をまとめることになった。

「最初に言っておきます、絶対に挙手しないでください!!
 一人でも挙手すると手遅れになります」

 と言って、佐々木はしばらく間をおいた。

 ……
 …………

「昼の会議で占い結果で、彩子さんに【黒】が出ました。
 彩子さんの処刑に賛成の人は挙手お願いします」

 僕は周りを見回したが、誰も手を挙げなかった。

「無投票ということで、今日の処刑は無しになりました」と、佐々木が昼の会議を締めくくった。

 そして、僕達は人狼会議のある夜の時間まで自室で時間を潰すことになるのだが、想定外の人が僕の部屋に来客としてきたのだった。
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