逃がしてください!王子様!

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2)領地のみんなの為に

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ウチの領地は元はここまで貧乏では無かった。それなりに周りの貴族と同じような生活はできていたし、使用人だって雇っていたくらいだ。

そんな僕たちがこんな苦しい生活を送っているのは、両親のお人好しのせいであると言える。困っている人がいれば手を伸ばさずにはいられない。勿論それがいい方向に向く時もあるが、それがいいカモになる場合もある。

ある日、貧乏な貴族に手を貸した挙句裏切られた。裏切られただけで済めば良かったのだが、その貴族はオリビアお母様に恋心を抱いておりそのまま手篭めにしようとしたのだ。それがナーヴィアお母様の逆鱗に触れ、ナーヴィアお母様はその貴族を殴り飛ばしてしまった。それが仇となり、沢山の賠償金を払わなければいけなくなったのだ。裁判官に真実を話すも聞く耳を持たれなかった。きっと、その時にはすでに買収されていたのだろう。

で、金が地の底につきそれに加え多額の賠償金も払わなくてはいけなくなってしまった僕たちに手を貸してくれたのは領地の人たちだった。普段から領地にために働いているお母様たちのことを知っている領民たちは僕たちに賠償金を払うためのお金をかき集めてくれたのだ。

『こんな、頂けませんわ。皆様も早く領地を離れてもっと豊かな場所に…』

『私たちは領主様に今まで沢山救っていただきました。今度は俺たちが領主様を救う番でございましょう』

『それに、領主様が悪いことをしたと思っている奴はこの領地にはいませんよ』

『困ったときはお互い様です。また1から頑張っていけばいいんですから』

『ありがとう…本当に…』

彼らのおかげで僕たちは今も貴族として生きていけている。貴族の娘であるお母様たちは今まで農業など一度もした事が無かったが領民たちに1から教えてもらい、まず食料の確保をする事ができた。貴族は平民に比べ魔力を多く保有している場合が多い。やはりお母様たちも一緒で領民よりも多くの魔力を持っており、それなりに大きな畑を作る事ができた。ナーヴィアお母様が土属性でオリビアお母様が水属性であったことは不幸中の幸いであると言えるだろう。

ただ、食料ができただけで領地が裕福になるわけではない。食料といっても自分達や領民たちが食べる分だけでいっぱいいっぱいだ。

こんな経験をしたのはまだ僕が7歳の時だった。それから8年経った今でも領民たちとの関係は良好である。8年経っても貧乏であることには変わりないのだが。

ただでさえカツカツであるにも関わらず、家族や領民たちは僕を快く学園に送り出してくれた。本当であれば猫の手も借りたいくらい人手は足りていないはずなのにだ。

『何子供が俺たちに気を遣ってるんですか。行ってきてくださいよ』

『…でも領地が』

『最近では農産物の生産量も増えてきていますし、少量ですが利益も出てきたんです。気にしないでください』

『フィオーレ様がいない間に裕福になってるかも知れないですよ』

今の僕は温かい人たちの支えがあってある。僕が学園に行く理由は一つだけだった。ウチの領地を豊かにしてその日暮らしなんてならないようにする。そのために僕は学園を利用する。

中等部では基礎の魔法や剣術を学ぶことができた。僕にとっては魔法学は領地の特産物やマジックアイテムを作るための知識を得るための授業であり、剣術はどんな畑仕事にも耐えうる身体を作るための授業である。

その中でも魔法学は『基礎魔法』の応用なども授業でするためマジックアイテムの作成に役にたつ。例えば『透明魔法』を用いて周りからの認識阻害を付与した『魔法ローブ』が例の内の一つだ。他にも同じ魔法をしようした『魔法メガネ』も学園では役に立っている。このメガネをかけて人前に立っても相手は顔を覚える事ができない代物だ。僕はこれを将来金のある商人や貴族に売りつけ領地の利益にしようと考えている。

それと併用で進めていたのは領地の特産物作りだ。少し前にも話したが僕は学園の庭園の一部を使わせてもらっている。庭園と言われるくらいなので花とかを育てていると思われがちだがそうではない。庭園を畑に変え農作物の研究に使っていた。学園の端にあり、誰も来ないため好きに使わせてもらっている。定期的に領地に帰っては僕の開発した植物を実際に育ててもらい、意見を貰うようにしている。

「フィオーレ様の開発したこの芋一つの苗だけで20も採れるなんて…しばらく食料には困らなくなりそうです」

「ただ普通の芋ってだけでは高値で売るのは難しいですねえ」

今回は前回の帰省の際に育成を頼んだ「一つの苗で沢山実のなる芋」を開発したのでそのフィードバックを受けている。なんで子爵家に平民である彼らがいるのかって?今日の僕の誕生日を祝いに来てくれたからだ。そのついでの報告会というわけだ。

「とてもいい事だけど誕生日の日くらい領地のことばかり考えなくてもいいのよ?」

「そうだぞ。私たちも最近は経営を学んでいるからな。そんなに背負わなくても大丈夫だぞ」

「いえ…」

確かにお金のことばかりで遊んだりすることはほとんどない。昔はもっと外に出たり、好きなものを沢山買ったりしてみたいと思ったこともあったが、僕は勉強の才能があったみたいで今は楽しんで魔法の勉強をしている。それが領地を豊かにすることにつながるのであれば一石二鳥ではないかと思う。

「僕は特産品やマジックアイテムを作ることを楽しんでいるのです。それは学園に快く送ってくださったお母様や領民の皆さんのおかげです。本当に感謝しています」

僕はの為であればいくらでも頑張れる。家族とは領民たちも含めた家族だ。ここまで育ててくれた彼らのためにも僕は将来絶対にこの領地を豊かにしてみせる。だから僕は学園に行って学ぶ義務があるんだ。
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