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3)いざ、高等部へ
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誕生日も終わって春になった。この国リュミエール王国には春夏秋冬4つの四季があり、学園の前期は春と夏。間に夏の長期休暇が挟まり、秋と冬の後期につながる。後期が終わった後も春になるまでの間長期の休みが設けられているのだ。
中等部の3年間使い潰した木の靴と学生鞄を持って玄関に向かう。
「ちょっと待ちなさい。フィオーレ」
オリビアお母様に呼び止められ振り向く。僕の家は馬車などないからいつも徒歩で学園に向かっている。そろそろ出ないと遅刻してしまうため急ぎたいのだが…
「これを持っていきな。新しい学生鞄だよ」
「え、こんないいものをいったいどこで…」
手渡された鞄は革製のしっかりしたものに見える。受けっとてみると中身は案外軽く、最近領地に植えている軽い木材に似ている。多分僕が周りの貴族たちに馬鹿にされないように加工してくれたのだろう。
「これはフィオーレが考えた軽くて丈夫な木で作ったものだ。本物の革は用意してやれなかったけど、なかなかうまくできていないか?」
「でも、あの木の成長速度的に採れるのはまだまだ先だったはずですが」
「ああ、それはな」
「私とオリビアが工夫して成長を早くしたのよ~」
ナーヴィアお母様が眠たそうに送り出しに来てくれた。いつもであればまだ眠っていてオリビアお母様に怒られているところだというのに。というか木の成長を早くした?そんなことできるのか。
「私は木が育ちやすいように土の品種を木に合うようにしたわ」
「私は私の生み出す水に成長効果のある基礎魔法を組み合わせて水やりをしたんだ。フィオーレが学園で頑張っている間、私たちがサボるわけにはいかないしな」
「す、すごいです。今度やり方を教えてください。そしてこの鞄とても嬉しいです。ありがとうございます」
僕はギュッとお母様たちが作ってくれた鞄を抱きしめる。こんなに心のこもったプレゼントを貰えるなんて僕は幸せ者だ。
「誕生日プレゼントを渡せなかったからな。そんな高価な物じゃないが使ってくれると嬉しいよ」
「高等部への進学もおめでとう。あと3年間頑張るのよ」
「はい!金を持て余す貴族という貴族に僕の発明した商品を高値で売り、沢山の人脈と財産を持って帰ってくることを誓います!!」
「「そこまでしなくていい」のよ」
歩いて登校している貴族がいると思われないために認識阻害用のローブとメガネをかける。身体強化用の靴を履いたら準備万端だ。
名残惜しいが、本当に学園の登校時間に間に合わなくなってしまうため泣く泣く家を後にする。これからの学園生活が楽しみな反面、みんなのためにできることを増やしていこうと誓うのだった。
ーーー
家を出たは良いものの、本当に遅刻ギリギリである。遅刻をしたら10,000文字の反省文を書かなくてはいけなくなる。そのくらい書いても良いだろうと思うかもしれないが、時間を一秒でも無駄にできない僕には大きな打撃になってしまう。
「しょうがないな、これは奥の手だけど」
僕は自分自身に身体強化魔法を使い、風魔法を込めた靴に設置してあるボタンを押す。次の瞬間僕の足はそこら辺の馬車よりも速くなっていた。これはいざという時に開発していたのだ。
何故お金のない僕がこんなにも色々なものを開発できているのかというと。確実に学園の恩恵である。学園では自己研鑽という名目で色々な魔道具を貸し出していたり、たまには自由に持って行ってもいいと言われるものが備品質にあったりする。僕はそれを最大限有効活用しているだけだ。他の貴族達は他人が一度でも使ったものに興味なんて示さない。つまり、学園の魔道具はほとんど使い放題というわけだ。これだけでも学園に入学した価値があるというものだろう。
後はいつもの路地裏を抜ければ学園が見えてくる。路地裏なんて貴族が通るような場所ではないと思うかもしれないが、僕は貴族もどきなので気にしない。
人通りの無い路地裏をスピードを出して走り切る。すると、靴についている安全装置が作動し、急に足の動きが止まる。
(なんだ?誤作動か?)
靴から目を逸らし前を見てみると一つの人影が現れる。なんだ人がいたのか。
目の前の人はそこそこ背が高く、スラッとした金髪の男だ。路地裏に似合わないような人がなんでこんなところに?と首を傾げる。するとその男はこっちの存在に気づいたようで少し驚いたような動きをした後、隠すように片目を隠した。こんなに暗がりであれば顔なんてほとんど見えないのだが…それにしても気になることがある。
(認識阻害用のローブとメガネをつけているのに気づかれた?)
少し、その男が怖くなる。しかし、片目を隠しているということは僕に見られたく無いということだろうか。もしかしたら、酷い傷があって醜いから見られたく無いのかもしれない。もしそうだとして困っているのであれば助けてあげたい。ウチの家系は困っている人がいると見捨てられないんだ。
(大丈夫、ローブもあるし僕が誰かなんて特定できないはず)
「あの…」
「…」
男は警戒しているのか返事はない。構わずに続ける。
「もし、顔を見られるのが嫌なのであればこのメガネをかけて見てください。まだ開発段階なんですが、顔を隠すにはちょうど良いんです。お節介かもしれませんが受け取ってください」
時間もなかったため少し強引にメガネを手渡す。
「じゃあ、僕が言うのも何ですが、ここら辺人通りが少ないので気を付けてくださいね」
彼に背をむけてまた学園に向かって走り出す。今でも最速で飛ばせばまだ間に合う。登校時間に間に合うことしか頭になかった僕は、彼がボソッと言った言葉を聞き逃していた。
「何でウチの学園の生徒がこんなところに…」
中等部の3年間使い潰した木の靴と学生鞄を持って玄関に向かう。
「ちょっと待ちなさい。フィオーレ」
オリビアお母様に呼び止められ振り向く。僕の家は馬車などないからいつも徒歩で学園に向かっている。そろそろ出ないと遅刻してしまうため急ぎたいのだが…
「これを持っていきな。新しい学生鞄だよ」
「え、こんないいものをいったいどこで…」
手渡された鞄は革製のしっかりしたものに見える。受けっとてみると中身は案外軽く、最近領地に植えている軽い木材に似ている。多分僕が周りの貴族たちに馬鹿にされないように加工してくれたのだろう。
「これはフィオーレが考えた軽くて丈夫な木で作ったものだ。本物の革は用意してやれなかったけど、なかなかうまくできていないか?」
「でも、あの木の成長速度的に採れるのはまだまだ先だったはずですが」
「ああ、それはな」
「私とオリビアが工夫して成長を早くしたのよ~」
ナーヴィアお母様が眠たそうに送り出しに来てくれた。いつもであればまだ眠っていてオリビアお母様に怒られているところだというのに。というか木の成長を早くした?そんなことできるのか。
「私は木が育ちやすいように土の品種を木に合うようにしたわ」
「私は私の生み出す水に成長効果のある基礎魔法を組み合わせて水やりをしたんだ。フィオーレが学園で頑張っている間、私たちがサボるわけにはいかないしな」
「す、すごいです。今度やり方を教えてください。そしてこの鞄とても嬉しいです。ありがとうございます」
僕はギュッとお母様たちが作ってくれた鞄を抱きしめる。こんなに心のこもったプレゼントを貰えるなんて僕は幸せ者だ。
「誕生日プレゼントを渡せなかったからな。そんな高価な物じゃないが使ってくれると嬉しいよ」
「高等部への進学もおめでとう。あと3年間頑張るのよ」
「はい!金を持て余す貴族という貴族に僕の発明した商品を高値で売り、沢山の人脈と財産を持って帰ってくることを誓います!!」
「「そこまでしなくていい」のよ」
歩いて登校している貴族がいると思われないために認識阻害用のローブとメガネをかける。身体強化用の靴を履いたら準備万端だ。
名残惜しいが、本当に学園の登校時間に間に合わなくなってしまうため泣く泣く家を後にする。これからの学園生活が楽しみな反面、みんなのためにできることを増やしていこうと誓うのだった。
ーーー
家を出たは良いものの、本当に遅刻ギリギリである。遅刻をしたら10,000文字の反省文を書かなくてはいけなくなる。そのくらい書いても良いだろうと思うかもしれないが、時間を一秒でも無駄にできない僕には大きな打撃になってしまう。
「しょうがないな、これは奥の手だけど」
僕は自分自身に身体強化魔法を使い、風魔法を込めた靴に設置してあるボタンを押す。次の瞬間僕の足はそこら辺の馬車よりも速くなっていた。これはいざという時に開発していたのだ。
何故お金のない僕がこんなにも色々なものを開発できているのかというと。確実に学園の恩恵である。学園では自己研鑽という名目で色々な魔道具を貸し出していたり、たまには自由に持って行ってもいいと言われるものが備品質にあったりする。僕はそれを最大限有効活用しているだけだ。他の貴族達は他人が一度でも使ったものに興味なんて示さない。つまり、学園の魔道具はほとんど使い放題というわけだ。これだけでも学園に入学した価値があるというものだろう。
後はいつもの路地裏を抜ければ学園が見えてくる。路地裏なんて貴族が通るような場所ではないと思うかもしれないが、僕は貴族もどきなので気にしない。
人通りの無い路地裏をスピードを出して走り切る。すると、靴についている安全装置が作動し、急に足の動きが止まる。
(なんだ?誤作動か?)
靴から目を逸らし前を見てみると一つの人影が現れる。なんだ人がいたのか。
目の前の人はそこそこ背が高く、スラッとした金髪の男だ。路地裏に似合わないような人がなんでこんなところに?と首を傾げる。するとその男はこっちの存在に気づいたようで少し驚いたような動きをした後、隠すように片目を隠した。こんなに暗がりであれば顔なんてほとんど見えないのだが…それにしても気になることがある。
(認識阻害用のローブとメガネをつけているのに気づかれた?)
少し、その男が怖くなる。しかし、片目を隠しているということは僕に見られたく無いということだろうか。もしかしたら、酷い傷があって醜いから見られたく無いのかもしれない。もしそうだとして困っているのであれば助けてあげたい。ウチの家系は困っている人がいると見捨てられないんだ。
(大丈夫、ローブもあるし僕が誰かなんて特定できないはず)
「あの…」
「…」
男は警戒しているのか返事はない。構わずに続ける。
「もし、顔を見られるのが嫌なのであればこのメガネをかけて見てください。まだ開発段階なんですが、顔を隠すにはちょうど良いんです。お節介かもしれませんが受け取ってください」
時間もなかったため少し強引にメガネを手渡す。
「じゃあ、僕が言うのも何ですが、ここら辺人通りが少ないので気を付けてくださいね」
彼に背をむけてまた学園に向かって走り出す。今でも最速で飛ばせばまだ間に合う。登校時間に間に合うことしか頭になかった僕は、彼がボソッと言った言葉を聞き逃していた。
「何でウチの学園の生徒がこんなところに…」
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