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17)様子のおかしい王子様
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「…では、お言葉に甘えさせていただきます」
仕方なく折れた。ただでさえ貧乏性の僕はせっかく用意してもらった料理を粗末にできないのだ。しかもこんなに高そうな料理は僕のいつも食べていた料理のきっと一月分以上あるだろう。そんなものを捨てさせてしまったらきっとバチが当たる。
「一緒に食べられて嬉しいよ」
「…はは」
「さあ、席について食べよう。今日は疲れただろう?」
疲れていないといえば嘘になる。今日は本当にいろんなことがあったからな。めちゃくちゃな講義にクラスの書記になったこと。これからのことについて考えることが多すぎる。僕は諦めて豪華な料理が並んでいる食卓に着くことにした。
「今日はさすがの私も疲れたよ。…食べないのかい?」
「クラウン様でしたらもう知っていると思いますが、こんな豪華な料理を出されたらそう簡単に食べられないですよ」
「…うん。もちろん君の出自は知っているよ。もちろんクラスメイト全員の出自を把握しているから安心してほしい」
何が「安心してほしい」なんだろうか。まだクラスができて一日だぞ。クラスメイトの情報把握が早すぎないか?この人絶対クラスができる前からメンバーを知っていただろう。
目の前のクリーム色のスープをスプーンで掬い上げる。なぜこれを一番最初に手をつけたかって?実家で食べていたイモのスープに似ていたからだよ。
「わっ、おいしい」
「よかった。うちのシェフも喜ぶと思うよ」
本当に美味しくて飲みやすかった。僕はそんなにいろんなものを食べたことがないから「美味しい」以外の言葉がわからない。比べる対象がなさすぎるのだ。
って普通に食事をしている場合じゃない。この状況を少しでも変えなければいけない。
「クラウン様」
「ん?どうしたんだい?」
殿下が美しい顔をあげ、二色の瞳でこちらをじっと見つめる。ゴクンと唾を飲み込む。自分から言い出そうとしたのに息が詰まりそうになる。王族というものは目を合わせるだけでも威厳があるものなんだろうか。そんな方がなんで僕と同室になったのだろうか。
「今回は用意していただいたので一緒に食事を摂らせていただきましたが、次からは僕は食堂にいって食事を取ろうと思っています」
「なんで?」
「っと…僕とクラウン様では身分が違いすぎます。もし周りにこのことがバレてしまったらどう思われるか…」
「……」
沈黙が辛い。どんな目で見られているかわからず、視線を下にそらす。
(こ、これが無言の圧か!?でも僕は言いたいことは折ったぞ)
「ふーん」
「クラウン様…?」
「フィオーレは私と一緒にご飯を食べるのが嫌なんだ」
「そ、そういうわけではありません!僕の家の事情はクラウン様も知っているはずです。決してクラウン様と食事をするのが嫌なわけでは…」
「君の家が今にも潰れそうな貧乏子爵家ということは理解しているよ。でも私は君と仲良くしたいんだ。こんな理由じゃだめかな?」
何を言っても完璧な回答で返される。どうしたらこの王子様を言葉で負かすことができるんだろうか。よく考えると殿下に気を使う以外では美味しい料理も食べられて僕にとってはいい話なんじゃないかとさえも思えてきた。これも殿下の罠か?
「僕が本当にクラウン様と一緒に食事をしてもいいのでしょうか」
「私がいいと言っているんだ。誰にも文句は言わせないよ」
「なぜクラウン様はここまで僕によくしてくれるんでしょう」
いつの間にか口から今の言葉が出てしまっていた。ただ単に気になるのだ。一国の王子様がなんでわざわざ崖っぷちの子爵家の長男にここまで入れ込むのか謎で仕方がない。だって僕は物心つく頃には貧乏になっていたため、貴族のパーティーには参加したことがないのだ。そのため、当たり前だが殿下とも面識はない。
「君はさっきから表情をコロコロと変えて面白いね」
「えっ!? 僕がですか?」
「うん。フィオーレの考えていることが手に取るようにわかるよ」
こ、怖い。もしかしてこの王子様はただ単に僕という遊べるおもちゃが欲しかっただけなのではないか?
「なんで私がフィオーレを同室に選んだのかそんなに知りたいのかい?」
「ええ!? なんでそのことを!?」
「だって顔がそう言ってるんだもん」
くすくすと殿下が肩を揺らして笑う。そんなにわかりやすかったのだろうか。自分の顔をペタペタと触りながら確認する。もしかして殿下は人の心を読める魔法でも使っているのではないかと疑ってしまうくらいだ。疑いの目で殿下を見ていると「そんな目で見られたのは初めてだよ」と言ってまた噴き出してしまった。そんなに面白かっただろうか。王族のツボというものはわからない。
「私はフィオーレと仲良くしたいから特別に理由を教えてあげよう」
「へ?」
「お互い風呂に入ってゆっくりしてから私の部屋においで。私が君に興味を持つ理由を教えてあげよう。そんなに身構えなくても大丈夫。ただ普通に話をするだけさ」
意味深な言葉を残して殿下は自室に帰っていった。風呂に入るためだろう。リビングに残された僕はただそこに佇んでいた。
「……これ、辞退できませんかね」
そう思ったが、逆らうことなどできないと悟った僕は殿下と同じように自室に戻り、風呂に入る準備をした。
仕方なく折れた。ただでさえ貧乏性の僕はせっかく用意してもらった料理を粗末にできないのだ。しかもこんなに高そうな料理は僕のいつも食べていた料理のきっと一月分以上あるだろう。そんなものを捨てさせてしまったらきっとバチが当たる。
「一緒に食べられて嬉しいよ」
「…はは」
「さあ、席について食べよう。今日は疲れただろう?」
疲れていないといえば嘘になる。今日は本当にいろんなことがあったからな。めちゃくちゃな講義にクラスの書記になったこと。これからのことについて考えることが多すぎる。僕は諦めて豪華な料理が並んでいる食卓に着くことにした。
「今日はさすがの私も疲れたよ。…食べないのかい?」
「クラウン様でしたらもう知っていると思いますが、こんな豪華な料理を出されたらそう簡単に食べられないですよ」
「…うん。もちろん君の出自は知っているよ。もちろんクラスメイト全員の出自を把握しているから安心してほしい」
何が「安心してほしい」なんだろうか。まだクラスができて一日だぞ。クラスメイトの情報把握が早すぎないか?この人絶対クラスができる前からメンバーを知っていただろう。
目の前のクリーム色のスープをスプーンで掬い上げる。なぜこれを一番最初に手をつけたかって?実家で食べていたイモのスープに似ていたからだよ。
「わっ、おいしい」
「よかった。うちのシェフも喜ぶと思うよ」
本当に美味しくて飲みやすかった。僕はそんなにいろんなものを食べたことがないから「美味しい」以外の言葉がわからない。比べる対象がなさすぎるのだ。
って普通に食事をしている場合じゃない。この状況を少しでも変えなければいけない。
「クラウン様」
「ん?どうしたんだい?」
殿下が美しい顔をあげ、二色の瞳でこちらをじっと見つめる。ゴクンと唾を飲み込む。自分から言い出そうとしたのに息が詰まりそうになる。王族というものは目を合わせるだけでも威厳があるものなんだろうか。そんな方がなんで僕と同室になったのだろうか。
「今回は用意していただいたので一緒に食事を摂らせていただきましたが、次からは僕は食堂にいって食事を取ろうと思っています」
「なんで?」
「っと…僕とクラウン様では身分が違いすぎます。もし周りにこのことがバレてしまったらどう思われるか…」
「……」
沈黙が辛い。どんな目で見られているかわからず、視線を下にそらす。
(こ、これが無言の圧か!?でも僕は言いたいことは折ったぞ)
「ふーん」
「クラウン様…?」
「フィオーレは私と一緒にご飯を食べるのが嫌なんだ」
「そ、そういうわけではありません!僕の家の事情はクラウン様も知っているはずです。決してクラウン様と食事をするのが嫌なわけでは…」
「君の家が今にも潰れそうな貧乏子爵家ということは理解しているよ。でも私は君と仲良くしたいんだ。こんな理由じゃだめかな?」
何を言っても完璧な回答で返される。どうしたらこの王子様を言葉で負かすことができるんだろうか。よく考えると殿下に気を使う以外では美味しい料理も食べられて僕にとってはいい話なんじゃないかとさえも思えてきた。これも殿下の罠か?
「僕が本当にクラウン様と一緒に食事をしてもいいのでしょうか」
「私がいいと言っているんだ。誰にも文句は言わせないよ」
「なぜクラウン様はここまで僕によくしてくれるんでしょう」
いつの間にか口から今の言葉が出てしまっていた。ただ単に気になるのだ。一国の王子様がなんでわざわざ崖っぷちの子爵家の長男にここまで入れ込むのか謎で仕方がない。だって僕は物心つく頃には貧乏になっていたため、貴族のパーティーには参加したことがないのだ。そのため、当たり前だが殿下とも面識はない。
「君はさっきから表情をコロコロと変えて面白いね」
「えっ!? 僕がですか?」
「うん。フィオーレの考えていることが手に取るようにわかるよ」
こ、怖い。もしかしてこの王子様はただ単に僕という遊べるおもちゃが欲しかっただけなのではないか?
「なんで私がフィオーレを同室に選んだのかそんなに知りたいのかい?」
「ええ!? なんでそのことを!?」
「だって顔がそう言ってるんだもん」
くすくすと殿下が肩を揺らして笑う。そんなにわかりやすかったのだろうか。自分の顔をペタペタと触りながら確認する。もしかして殿下は人の心を読める魔法でも使っているのではないかと疑ってしまうくらいだ。疑いの目で殿下を見ていると「そんな目で見られたのは初めてだよ」と言ってまた噴き出してしまった。そんなに面白かっただろうか。王族のツボというものはわからない。
「私はフィオーレと仲良くしたいから特別に理由を教えてあげよう」
「へ?」
「お互い風呂に入ってゆっくりしてから私の部屋においで。私が君に興味を持つ理由を教えてあげよう。そんなに身構えなくても大丈夫。ただ普通に話をするだけさ」
意味深な言葉を残して殿下は自室に帰っていった。風呂に入るためだろう。リビングに残された僕はただそこに佇んでいた。
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