逃がしてください!王子様!

発光食品

文字の大きさ
21 / 34

19)提案

しおりを挟む
「あの時のって?」

本当に殿下がいつのことを言っているのかわからないのだ。殿下と僕があったのは高等部になってからが初めてのはずだ。中等部ではクラスが遠すぎて会うことなど一度もなかった。殿下はいつの話をしているのだろう。

「本当に覚えていないの?」

「いや、このメガネには身に覚えしかないんですけど…殿下に会ったのは高等部が初めてですよね」

「うーん、嘘はついてないみたいだね。あっけなかったんだった☆」

「なっ!!?」

(ば、バカにしてるのか~!?まあ確かに何の疑いもなくお茶を飲んだ僕も悪いんだけど!!)

はははっと声をあげて殿下は笑っている。僕はそれどころではないんだが殿下がそんな感じだとこっちも気が抜けてしまう。でも殿下は何か確信を持って僕に質問しているような気がする。なんだ?何があるんだ?

「このメガネを渡した相手のことは覚えているかい?」

「渡した相手?」

僕はメガネを渡したあの朝の記憶を必死に思い出す。あの時見た人は男性で、紅色の瞳を持った男性だった。背も殿下くらい高くて…金髪…

(えっ…まさか…いや、でも片方の瞳は見ていないしまだそうとは限らない)

「何か分かったかい?」

「ハッ」

息をのむ、ど、どどどうしたらいいんだ。ここで選択肢を間違えたら僕の学生生活終わるか!?

「何をそんなに焦っているんだい?君は何となく知っていることを教えてくれたらいいんだよ」

「僕の家がお金がないことは知っていますよね?」

「うん。何となくだけど知っているよ」

「入学式の時、僕は馬車を持っていないから走って登校していたんです。その時に殿下と同じくらいの身長で金髪の男性に会ってそのメガネを渡しました」

ここまできたら正直に答えよう。きっと殿下には全て見透かされているんだから。僕はやや諦めていた。殿下はゆっくりと微笑んで僕の目をじっと見つめる。改めて綺麗な顔である。僕はもうほとんどの思考を停止させたため、殿下が美しいということしか考えられない。このまま一緒の部屋で生活を共にしていたら他の人であれば殿下に惚れていただろう。

「あの時の人は私だよ」

「へぁ?」

「ずっと君にもらったメガネを返したいと思っていたんだ。あの時はありがとう」

「あ、はい…」

何となく分かっていたがあの時あった少年がまさかの第二王子殿下だなんて思わないものだ。あの時話しかけたのが不敬だったか!?それとも貴族でありながら走りながら登校していたのが貴族の品を損なうと怒られてしまうのだろうか。それとも、それともといろいろな最悪なことが頭から離れない。というか…

「でも、あの時なぜ殿下はあんなところに…」

ぽろっと口から言葉があふれてしまう。今は何でも口から思ったことが出てしまうんだ。もっと注意しなければいけない。

「君って本当に面白いね。私の作った自白剤のせいでもあるんだけど、表情だけでも言いたいことがわかるからとても楽しいよ。あの時は確か極秘任務を陛下に任されていてね、しまったこれは秘密だったんだった」

「そんな簡単に王宮の秘密を僕に言わないでください~」

「フィオーレならきっと誰にも言わないって信じてるよ」

出会って二日目の僕をそう簡単に「信じる」など言わないでほしい。凡人の僕にはその言葉が何よりプレッシャーになることをこの王子様は分かっていなさ過ぎる。メガネを返してくれるだけであればよかったのになんで余計なことも僕に吹き込もうとするんだ。

「それにしてもこのメガネすごいんだね。君が作ったの?」

「はい。領地を復興させるための商品として開発したものです。実際に僕も使っていたので品質に問題はないと思うのですが」

「ということは中等部の頃にはもう開発をしていたということかな。商品としてこれはもう発売しているの?」

「それが、これを発売しようと思ったんですが…」

「ですが?」

まずい、これ以上このメガネやローブの話はしてはいけない。とりあえず言えないのだ。

「急に話が止まったけどどうしたんだい?」

「いやあ、あはは」

今の殿下には嘘をつけない。どうやってこの場を切り抜ければいいんだ。きっと僕の目はすごく泳いでいると思う。手も足も震えてしまっていて感覚があまりない。

「大丈夫。君も私の秘密を知ったんだ。これでお互いに秘密が一つずつある。いいことじゃないか」

殿下の甘い言葉にうなずきそうになってしまう。もうこれ言ってしまってもいいんじゃないか?という気持ちになるのだ。殿下はきっと尋問とか向いているだろう。いや、尋問だけじゃない。殿下はきっとどんなことでもこの崩れない笑顔でサラッと出来てしまうタイプなんだろう。こういうのを何というんだったっけな。

この学園に来てから殿下に振り回され続けている。僕の学園生活はSクラスに入ってからというもの思い描いていた学園生活とはほど遠いものだった。まだ二日目でここまで躓いてしまってはどうなってしまうのだろうか。

「ねえ。私にも君の隠していることを教えてほしいな」





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 ★1000 Thank_You!!

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

処理中です...