逃がしてください!王子様!

発光食品

文字の大きさ
28 / 34

26)拠点作りチーム

しおりを挟む
少しナタリー先生が言いよどむ。なぜだろうか、嫌な予感がする。

「実は今年から少し仕様が変わるみたいなんだ。前までは拠点の位置は大体クラスで決まっていたんだけど、今回は完全フリー。言いたいことがわかるかな?」

(なんだって!?)

今まで聞いた話だと、”屋外キャンプ”の目的はあくまで新しいクラスメイトとの親睦を深めるための行事である。そのため、拠点は元々ここらへんと決められていたのだ。”決められた場所”に自分たちの拠点を作れないのは正直言って面倒臭い。

「いや~なんか、先生たち気合い入りすぎてて…まるで僕たちを目の敵にするかのように難易度を上げてきたんだよねえ」

「もしかして先生、他のクラスの先生たちを煽ってきたんじゃないですよね?」

「うっ、そ、そんなことないヨ!!」

「本当のことを言ってくださいまし」

「ちょ、ちょ~っと君たちのことを他のクラスの先生たちに自慢しただけなんだ…まさか、こんな手を打ってくるなんて…。僕もできるだけ早く情報を君たちに伝えられるようにするけど、どんな小細工をしてくるかわからないから注意してほしい」

なるほど。なんとなく、なぜこんなことになったのか分かった気がする。きっと今は生徒同士で話し合う時間なのだろう。その間、教師は職員室で僕たちの会話で盛り上がる。そこでナタリー先生はSクラスの子たちの自慢を”少し”ではなく”過剰”にしてしまったのではないだろうか。それか、ナタリー先生が教師の間でかなり嫌われているかだろう。

「ごめん。今回の”屋外キャンプ”…君たちにとっては楽しょ…難易度の低いものだったはずなんだけど、もしかしたらそう簡単にはいかないかもしれない。僕はそこまで発言することができないから、このことは頭の片隅にでも置いておいてほしい」

そう言ってナタリー先生はポンッと音を立てて消えてしまった。職員室に帰ったのだろう。今の行動で怒られていないといいが…

「ははっ、だって。私たちも頑張らないといけないね」

「そうだな。そうと決まれば早めに対策を練るしかない」

殿下が珍しく歯を見せて笑っている。この状況を心から楽しんでいるような表情である。僕たちはこの学園の生徒たちから目の敵にされているというのに笑っていられる殿下を見ると、「もしかしたら大丈夫かも」という謎の安心感が湧いてくる。

「じゃあ、ここからは各チームに分かれて軽く当日の作戦を決めようか。あとでまた作戦のすり合わせをしよう」

「はーい」

(え!!このまま皆で決めるんじゃないの!?僕、一人で仕切るなんて無理だよ!?)

そんな僕の心の声の叫びは誰にも届くことなく、皆速やかに自分の席から各チームの元へ離れていった。

ーーー

「えーっと、「拠点作りチーム」のリーダーになりました。フィオーレ・アルノートです。君たちのことを知るためにも一度自己紹介をしてもいいかな?」

僕が司会をしているなんてただただ違和感だ。殿下はこの何倍もの人の前で堂々と話をしていると考えると「さすが」としか言いようがない。僕はもうすでにどうしたらいいか困っている。

「じゃあ、自分から」

先に声を挙げてくれたのはネイロ君だ。入学式に僕に話しかけてくれた若草色の髪色と瞳の男の子である。僕が困っていることに気づいたんだろう。同じチームになれて本当に良かった。僕の救世主である。

「名前はネイロ・ジャバス。属性は草属性やで~。軽く草木を操るくらいはできるから拠点作りや、良い場所を選ぶのに役に立つと思うからよろしゅう~」

ゆるい自己紹介で周りの緊張を解いていく。これが商人のコミュニケーション能力なのだろうか。僕も将来は領地の特産品を作って商売に活かしたいと思っているから、ネイロ君の会話術はぜひ教えていただきたい。

「じゃあ次俺だな!俺の名前はアイル!土属性だ。騎士団で体も鍛えているから、拠点の土台作りや力仕事は任せてくれよな!」

茶髪に頬のそばかすが印象的な少年だ。体つきは周りよりもがっしりしていて頼りになりそうだ。しかし、騎士団なのであればてっきり「食料調達チーム」に行くものだと思うのだが。気になってしまい、思わず聞いてみる。

「なんでこのチームに?「食料調達チーム」の方が君は動きやすいんじゃないか?」

「うーん、このチームを見た時に力仕事ができそうにないと思ってな。向こうはレナート様を含めてかなりのやり手が揃っているからな。俺一人がこっちにきたところで大丈夫だろう」

(た、頼もしい!!)

確かにこのチームは拠点を作るにしてはパワーが足りなそうだ。その点も含めてアイルさん?がうちのチームに来てくれて助かった。性格も明るくて優しそうだ。

あと3人、の自己紹介が残っているのだが、その中には今朝知り合った人もいる。今にも気絶しそうなくらい緊張しているのが伝わってくる。

(だ、大丈夫だろうか)

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 ★1000 Thank_You!!

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

処理中です...