主人公の義弟兼当て馬の俺は原作に巻き込まれないためにも旅にでたい

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光の国に転生した闇属性の俺!?

93)義兄の過去

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「そ、れはお兄様が離したくなった時に聞くと約束したので…」

「今であれば僕の過去をナハトには知ってもらいたいと思っているよ。よければ聞いてくれるかい?」

急展開である。前にも義兄は「夜が怖いと言っていた」その理由については俺の方から「話したくなってからでいい」と言って終わったのだ。なぜ同じような話題をもう一度出したのだろうか。義兄の瞳からは覚悟と「逃がさない」とでも言うような執着が垣間見える。

(本当に俺はこの話を聞いてもいいのだろうか)

もし聞いてしまったら何か越えてはいけない一線を越えてしまうのではないかと思ってしまう。でも、逃げるというのは違うような気もする。俺の中で聞きたいという気持ちと聞きたくないという気持ちが半分半分で交差していく。

「ナハト?ボーッとしてどうしたんだい」

「いや、なんで急に僕に出会う前の話をしてくれる気になったのかなーって思いまして」

「急ではないよ。少し前からナハトになら話してもいいかなって思っていたんだ」

「お父様やお母様は知っているのですか?」

「僕から直接話したことはないけどきっと僕を引き取る際に知っているはずだ」

「なるほど…」

つまり義兄の「秘密」というものを直接彼の口から聞くのは俺が初めてというわけだ。正直…

(重い!!重すぎる!!)

俺は人の不幸話とか聞くのがなんというか…苦手なのだ。聞いたところでその人の傷を癒やせるほどの言葉をかけてあげられるほど頭がよろしくない。

「ナハトは何も言わなくてもいいよ。聞いてくれるだけでいいんだ」

何か悩んでいる、ということが義兄にはお見通しらしい。そこまで言うのであれば俺も腹を括るしかないだろう。

「僕も前からお兄様の昔のお話を聞いてみたいと思っていました。お兄様さえよければ聞かせてください」

「嬉しいよ。ナハトはいつも僕の欲しい答えをくれるね」

そう言って金色の瞳を揺らした義兄は俺の頬に手を添えてぷにぷにしてくる。それが心地よいのかは知らないが止めることはできなかった。だってこんなに幸せそうな顔をした彼は、今までにみたことがないほど美しかったから。

目の前の綺麗な男がゆっくりと口を開く。俺はこの美しい生き物に釘付けになってしまった。

「僕はね、公爵様…お父様に拾われる前は平民で孤児院にいたんだ」

そう言って笑顔で話し始めた内容は俺の想像を絶するほど残酷な内容だった。義兄の話はこの家庭に生まれて幸せに育った俺にはどれも信じがたい話ばかりだった。そして改めてこの世界がファンタジーの世界ではなく現実であることを叩きつけられた。
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