幻灯夜話・幻想奇譚

伽音蓮子

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第十二章

十字架と少女

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あるところに、一人の少女がいました。おおきなお屋敷の下働きです。毎日つらい仕打ちを受けながら、働いていました。
ある日のこと。
お屋敷にものごいがやってきました。屋敷の主人はものごいを追い出しました。かわいそうに思った少女は自分の食事の固いパンをさしだしました。しかし…彼女もお腹が空いています。だから、半分だけ。分けてあげました。
ものごいはそれを受け取ると、自分の服の胸元から銀のロザリオをとりだしました。
そして、それを少女にみせました。
「人はだれもが十字架を背負っています。それはとても重いもの…でも、投げ出すことは出来ないのです」「あなたは、神を信じている方ですか?」
少女はたずねます。
ものごいはくびをふりました。
「ちがいます。」
「ならば、それを売れば、いくらかのお金になるでしょうに…。」
言ってから、少女ははっとして、口をつぐみました。ものごいは哀しげに笑います。
「これは、かつて私が愛した人の形見、だから。」
少女は泣きました。自分の軽はずみなことばを後悔して…。
「あなたに、大事なものはありますか?」
ものごいのことばに、少女はくびをふりました。
「ならば、これから、みつかるでしょうね。ただ…覚悟をすることです。」
それは、とても重いもの、だから。
でも、彼の後ろ姿を見送りながら、少女は自分も半分だけ、大事なものを分けてもらえた気がしていました

第十二話・十字架と少女・了
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