気付くのはいつも遅すぎて

横田碧翔

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 「真美~!部活終わったよ~!」
部室を出るとすぐに彼女にLINEを送る。これを送る前に、同じ部活の誰かがインスタでストーリーなんてあげた日には手がつけられないことになるだろう。裕也がそんなことを考えているうちに既読がついて
「お疲れ様❤︎寂しかったよ。」
と返信が返ってくる。
「寂しい思いさせてごめんね。いつも待っていてくれてありがとうね!」
思ってもないことを事務作業のように打ち込んでいく。裕也は1ヶ月前の自分をぶん殴ってやりたい気分だった。美紀と別れ、真美と付き合うことを選んだ自分を。
 真美と別れたのはほんの些細な喧嘩だった。高校に入ってからなかなか会えていなかったから、裕也の部活が休みである、次の日曜日に久しぶりにデーに行く約束をしていた。だが、裕也は前日の練習後に、明日の2年生の試合にこいと監督に言われた。上の学年の試合に出られることは嬉しかった。練習が終わると直ぐに美紀にLINEした。
「明日の2年生の試合によばれた!」
デートはあるが、これを聞けば美紀だって一緒に喜んでくれるだろう。完全に舞い上がっていた僕は美紀の気持ちを都合の良いように決めつけていた。
「明日のデートはどうするの?」
「また今度にしよ!ごめんね!」
「楽しみにしてたのに。」
「しょうがないじゃん。俺だって楽しみにはしてたよ。でも試合があるから!」
「それはわかってるけどさ、、」
「上の学年の試合に出られるんだよ?すごくない?」
「すごいよ。すごいとは思うけどさ。そうじゃなくてさ、」
「なんだよ。おめでとうくらい言ってくれてもいいじゃん。」
「おめでとう」
「いや、いいわそんなん。とにかく、明日は行けないから。また予定立てよ。」
「もういいよ。もう無理だよ。」
「なにが?」
「高校に入ってから全然会えないし、LINEだって全然してない。忙しいのは分かるけどさ、私のことももう少し考えてよ」
「いや、忙しいなりに連絡もしてるし会おうともしてるじゃん」
「裕也、変わっちゃったね。私もう無理。ごめんなさい。別れてください。」
突然別れを告げられて裕也は驚く。だが、せっかくの気分を台無したされたこともあり、イライラしていた。
「わかった。美紀がそうしたいならそうしよう。さよなら。」
そう言ってスマホをポケットにしまう。
「今までありがとう」
美紀から返信が来るがもう見ない。見たくもなかった。
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