気付くのはいつも遅すぎて

横田碧翔

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 あまりに唐突で、別れたことの実感が湧かなかった裕也だが、美紀と別れたことを実感したのは次の日の朝だった。
 アラームが鳴ると、手探りでスマホを探す。寝ぼけながらもアラームを止めると、そのままLINEを確認する。いつも早起きの美紀は、必ず「おはよ~!」とLINEをくれていた。それに返信をしてから、支度を始めるのが裕也の日課だった。だが、その日は当然ながらLINEはきていない。なんだか、それがとてつもなく寂しかった。起きて支度をする気になれなかった。何気ない朝のあいさつが、こんなに大きなものになっていたことに気付く。まぁ昨日の今日だしな、そのうち慣れるだろう。そう思って、なんとか起き上がって支度を始める。今ごろ美紀は何をしているだろうか。何を考えているだろうか。その日は、1日中、美紀のことが頭から離れなかった。
 次の日、朝はまた昨日のような寂寥感に苛まれた。こっちから、おはようとLINEをしようかとも思ったが、どうにもバツが悪くてそれはできなかった。朝から最悪の気分のまま、電車に揺られて学校に行く。教室に入ると、仲の良い男子たちが駆け寄ってくる。
「お前別れたの?」
「そうだよ」
「やっぱ!やば!ウケるw」
ペア画像だったLINEのホーム画面が変わったことにこいつらは気づいたのだろう。分かってて聞いてくるからタチが悪い。しかも励ますどころかバカにしてくる。まぁそれでこそこいつらなんだが。
「ねぇなんでなんで!なんで別れたの!」
「なんでもいいだろ」
「いや気になるじゃん!どっちから?振った?振られた?w」
「振られた…」
「そっか、まぁうまくいってなかったしな。いい人見つかるって!」
まぁ態度はムカつくが言ってることも一理あった。実際、最近はうまくいってなかったのだし、振られても仕方がないと言えばそうかもしれない。それに高校生活だって、まだ始まって3ヶ月。いい出会いだってきっとあるだろう。そう思うとほんの少しだけ気持ちが楽になった。
 「そういえば、今日席替えじゃね?これはあるね出会いw」
「さすがにねーよ」
「いやーあるある。あんま話したことないけど、近くになったから話してみたら惚れちゃうパターン」
「少女マンガか」
そんなやり取りをしてる間にチャイムが鳴り、先生が入ってくる。
「朝の会やるぞー座れー。席替えもあるんだからチャチャっと済ますぞー。」
そんなすぐに良い出会いあるわけないと思うが、ほんの少し、ちょっとだけ、かなり期待している自分がいた。

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