きっと、叶うから

横田碧翔

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高学年編

区大会

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 四月の終わり、区大会を目前にした僕らに、監督から重大発表があった。
「来週から区大会が始まる。四年生の区大会はただの大会じゃない。試験だ。各チームの監督が、他のチームの選手を採点する。それをもとに区の選抜選手を決める。だから、チームとして勝つだけじゃなくて、個人としても活躍することを忘れずに戦わなくちゃいけない。でも、これは個人プレーをしろということではない。チームが勝ち進めばたくさんの試合を観てもらえる。だから、チームを勝たせる活躍を期待してる」
 試験と言われ、僕はビクッと肩を上げて反応してしまう。学校だと試験に良い思い出はないのだ。毎度毎度、やってしまったと落ち込むことが多い。隣を見ると、勇武も同じような反応をしていて、なんだか安心した。
 それにしても、「選抜」か。響きはかっこいいし選ばれてみたい。でも、いったいどういうものなのか、イメージがつかめない。他のみんなも同じようで、全員が不思議そうな顔をしていると、それを感じた監督が言った。
「選抜は特別なことだよ。プロサッカー選手への近道なのは間違いない」
プロという言葉が出た途端、場の空気が引き締まる。僕は、さっきとは違う意味で肩をビクッとさせる。
「まずは区からスタートだけど、そこからさらに選ばれると、市、県、関東、そして世代別の日本代表だ。つまり、日本代表への最初の一歩が区の選抜なんだ」
日本代表か。今回の大会には、僕の夢への第一歩がかかっている。選抜に選ばれ、ブルーのユニフォームに袖を通す自分を想像し、胸が熱くなる。だが、それと同時に恐怖も感じた。もし、選ばれなかったらどうなるのか。「サッカー選手」という夢が終わってしまうのだろうか。終わりにならなくても、すごく遠のいてしまうような気がした。それが届かないところに行ってしまわないように、見失わないように、走り続けるしかないのだ。
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