2 / 5
1話
しおりを挟む
「ミリア……! 無事だったのか?」
遠くから、聞きなれた声がする。
なんだか頭がとてもぼんやりしている。
そして、頬が痛い。
不思議に思いながら目を開けると、凄く近くに金色の髪をした、整った顔があった。
私はどうやら彼に抱きかかえられているようだった。
「ストレイン……?」
すぐに状況を飲み込めなくて、私は目を瞬いた。
ストレインはシリウスの護衛騎士で、私の幼なじみでもある。
今日もシリウスの護衛として、パーティーに参加していた。
私に心配そうな顔を向けるストレインの目は潤み、綺麗な金髪は濡れぽたぽたと水滴が落ちている。
あまりにも近いストレインの顔に、私は慌てて彼から離れようと体を起こす。
「ぐっ……ごほっ」
慌てたためか、そのまま私は咳き込んでしまった。ストレインが気遣わしげに背中をさすってくれる。
そこで私は、やっと先ほどまでのやり取りを思い出した。
痛む頬は、ストレインが目覚めない私の頬を叩いたのだろう。
私は殺されかけたのだ。
「急に動くな。ミリアがそんな追い詰められていたとは気が付かなかった……すまない。助かってよかった。本当に」
「え? 何を言っているの?」
「シリウス様から君の姿が見えないと聞いて、探しに来たんだよ」
慌てて周りを見ると人だかりになっていた。
当たり前かもしれない。
この国の王太子であるシリウスの婚約披露パーティーの途中だったのだから。
発表はパーティーの中頃で行われる予定だったので、シリウスに外で風に当たろうと誘われた時はなんの疑問も持たなかった。
シリウスでも緊張するのだなと思っただけだった。
そのシリウスは今、人混みの端に忌々しそうな顔をして立っていた。
そんな顔をしたら、ばればれですよ。
死にかけている婚約者を見る目ではない。
私はため息をついて、ゆっくりと起き上がる。
「ありがとう、ストレイン……」
「君が無事なら、全てがなんてことないよ」
お礼を言うと、ストレインはさっと手を取って支えてくれた。
いつでも優しいこの幼なじみは、本当に心配してくれていたみたいだ。
「無理をするなと言っただろう。本当に、何故こんな事を」
「わからない。……ストレインが助けてくれたの?」
私は首を振って、理由は答えなかった。
先程は気が付かなかったが、ストレインが濡れていたのは髪の毛だけではなかった。
その均整の取れた身体にとても似合っていた燕尾服もびしょびしょだ。
彼が飛び込んでくれたのだろう。
そっとシリウスの様子を伺うと、私の言葉にほっとしたようだった。
当然のように濡れたりなどはしていない。
ばーか。
私は心の中で毒づいた。
遠くから、聞きなれた声がする。
なんだか頭がとてもぼんやりしている。
そして、頬が痛い。
不思議に思いながら目を開けると、凄く近くに金色の髪をした、整った顔があった。
私はどうやら彼に抱きかかえられているようだった。
「ストレイン……?」
すぐに状況を飲み込めなくて、私は目を瞬いた。
ストレインはシリウスの護衛騎士で、私の幼なじみでもある。
今日もシリウスの護衛として、パーティーに参加していた。
私に心配そうな顔を向けるストレインの目は潤み、綺麗な金髪は濡れぽたぽたと水滴が落ちている。
あまりにも近いストレインの顔に、私は慌てて彼から離れようと体を起こす。
「ぐっ……ごほっ」
慌てたためか、そのまま私は咳き込んでしまった。ストレインが気遣わしげに背中をさすってくれる。
そこで私は、やっと先ほどまでのやり取りを思い出した。
痛む頬は、ストレインが目覚めない私の頬を叩いたのだろう。
私は殺されかけたのだ。
「急に動くな。ミリアがそんな追い詰められていたとは気が付かなかった……すまない。助かってよかった。本当に」
「え? 何を言っているの?」
「シリウス様から君の姿が見えないと聞いて、探しに来たんだよ」
慌てて周りを見ると人だかりになっていた。
当たり前かもしれない。
この国の王太子であるシリウスの婚約披露パーティーの途中だったのだから。
発表はパーティーの中頃で行われる予定だったので、シリウスに外で風に当たろうと誘われた時はなんの疑問も持たなかった。
シリウスでも緊張するのだなと思っただけだった。
そのシリウスは今、人混みの端に忌々しそうな顔をして立っていた。
そんな顔をしたら、ばればれですよ。
死にかけている婚約者を見る目ではない。
私はため息をついて、ゆっくりと起き上がる。
「ありがとう、ストレイン……」
「君が無事なら、全てがなんてことないよ」
お礼を言うと、ストレインはさっと手を取って支えてくれた。
いつでも優しいこの幼なじみは、本当に心配してくれていたみたいだ。
「無理をするなと言っただろう。本当に、何故こんな事を」
「わからない。……ストレインが助けてくれたの?」
私は首を振って、理由は答えなかった。
先程は気が付かなかったが、ストレインが濡れていたのは髪の毛だけではなかった。
その均整の取れた身体にとても似合っていた燕尾服もびしょびしょだ。
彼が飛び込んでくれたのだろう。
そっとシリウスの様子を伺うと、私の言葉にほっとしたようだった。
当然のように濡れたりなどはしていない。
ばーか。
私は心の中で毒づいた。
29
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
芋くさ聖女は捨てられた先で冷徹公爵に拾われました ~後になって私の力に気付いたってもう遅い! 私は新しい居場所を見つけました~
日之影ソラ
ファンタジー
アルカンティア王国の聖女として務めを果たしてたヘスティアは、突然国王から追放勧告を受けてしまう。ヘスティアの言葉は国王には届かず、王女が新しい聖女となってしまったことで用済みとされてしまった。
田舎生まれで地位や権力に関わらず平等に力を振るう彼女を快く思っておらず、民衆からの支持がこれ以上増える前に追い出してしまいたかったようだ。
成すすべなく追い出されることになったヘスティアは、荷物をまとめて大聖堂を出ようとする。そこへ現れたのは、冷徹で有名な公爵様だった。
「行くところがないならうちにこないか? 君の力が必要なんだ」
彼の一声に頷き、冷徹公爵の領地へ赴くことに。どんなことをされるのかと内心緊張していたが、実際に話してみると優しい人で……
一方王都では、真の聖女であるヘスティアがいなくなったことで、少しずつ歯車がズレ始めていた。
国王や王女は気づいていない。
自分たちが失った者の大きさと、手に入れてしまった力の正体に。
小説家になろうでも短編として投稿してます。
リストラされた聖女 ~婚約破棄されたので結界維持を解除します
青の雀
恋愛
キャロラインは、王宮でのパーティで婚約者のジークフリク王太子殿下から婚約破棄されてしまい、王宮から追放されてしまう。
キャロラインは、国境を1歩でも出れば、自身が張っていた結界が消えてしまうのだ。
結界が消えた王国はいかに?
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
婚約破棄して泥を投げつけた元婚約者が「無能」と笑う中、光り輝く幼なじみの王子に掠め取られました。
ムラサメ
恋愛
「お前のような無能、我が家には不要だ。今すぐ消えろ!」
婚約者・エドワードのために身を粉にして尽くしてきたフィオナは、卒業パーティーの夜、雨の中に放り出される。
泥にまみれ、絶望に沈む彼女の前に現れたのは、かつての幼なじみであり、今や国中から愛される「黄金の王子」シリルだった。
「やっと見つけた。……ねえ、フィオナ。あんなゴミに君を傷つけさせるなんて、僕の落ち度だね」
汚れを厭わずフィオナを抱き上げたシリルは、彼女を自分の屋敷へと連れ帰る。
「自分には価値がない」と思い込むフィオナを、シリルは異常なまでの執着と甘い言葉で、とろけるように溺愛し始めて――。
一方で、フィオナを捨てたエドワードは気づいていなかった。
自分の手柄だと思っていた仕事も、領地の繁栄も、すべてはフィオナの才能によるものだったということに。
ボロボロになっていく元婚約者。美しく着飾られ、シリルの腕の中で幸せに微笑むフィオナ。
「僕の星を捨てた報い、たっぷりと受けてもらうよ?」
圧倒的な光を放つ幼なじみによる、最高に華やかな逆転劇がいま始まる!
聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。
「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」
と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる