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神様からの贈り物
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レイナルドから聞いた話はこうだった。
リカランドは王家に代々伝わる魔法陣の中に突然現れたらしい。
なので、レイナルドとリカランドは血のつながりがないどころかリカランドは精霊の類ではないかということだった。
「魔法陣から現れるのは神様からの贈り物という伝説だけれど、本当に見るとは思わなかったな。おとぎ話のように聞かされていた話が、現実だったとは」
ため息をついて、レイナルドはお茶を飲んだ。
ふるまってくれた食事はとても豪華で美味しくて彼らの歓迎の気持ちを感じた。レイナルドは話し上手で、食事はとても楽しく終わった。
リカランドが野菜を嫌がっていたぐらいで。
そうして、食後のお茶と焼き菓子を並んでソファで頂きながら先程の話の続きをしてくれた。
隣の距離は近くて、どきどきするのに安心する不思議な感覚だ。
「……それはなんというか、素晴らしいですね?」
膝の上でごろごろと転がっているリカランドは、見た目動物っぽいものの普通の子供と変わらなく思える。ふわふわの髪の毛に、ぷくぷくほっぺ。触ると吸い込まれそうに気持ちいい。
撫でると嬉しそうにくすくすと笑うのが可愛すぎる。
贈り物は天使だったのかな?
「書物によると王家の子供として育てなければいけないということだから、私の息子になったのだが……」
「みんなきらーい」
「この国にはリカランドが気に入る令嬢が居なかったのだ。何回もパーティーを開き、色々なご令嬢と会ったが、全て駄目だった。……それで、ええと、タイミングが良かったから、藁にも縋る気持ちで」
最後は少し申し訳なさそうにしていたが、戦争の賠償をタイミングが良かっただなんてうちの国は本当に相手になってなかったんだなと思った。
しかし、私にとっては幸運だったともいえる。
「でも、なんだか嘘みたいな話ですね。伝説の神様の贈り物がここにいてこんなに可愛いだなんて」
「ふふ、本当に……。もう結婚は無理かと諦めかかっていた」
「リカランドが気に入らないと結婚できない仕組みだったんですね」
だから皆もほっとした雰囲気だったんだ。
「そうなんだ。だから、フィリーナが来てくれて本当に良かった。正直リカランドが大丈夫なら誰でもいいと思っていたのに、こんな可愛くて面白い子が来てくれるとは思わなかった。私も嬉しいんだ」
「私に面白要素ありました? ……ああもう、戦争の賠償に嫁が欲しいなんてどんな裏があるのかとすっごく悩みました」
「それは申し訳なかった。でも、リカランドの事は言うわけにはいかないんだよ。フィリーナの事は当然大事にするつもりだ。 ……リカランドが気に入らなかった場合は、自国にちゃんと帰れるようにするつもりだったし。もう返さないけれど」
「ふふ。それなら良かったです。……今帰ってもきっと大変になってしまうところだったので、リカランドに気に入ってもらってよかったかもしれないわ」
婚約破棄が二回は大変な事だ。
父はああ言ってくれたものの、問題を起こした私は良くて一生家に居ることになるだろう。
……それに、今頃あの二人が正式な婚約者になっているはずだ。それを自分の目で見なくてはいけないのは、きっとつらかったから。
私がほっとして呟くと、レイナルドはぐっと私に近付いた。
「……それはどういう事?」
「え?」
「フィリーナが大変ってどういう事なの。ちゃんと教えて」
謎の圧に押されながら、私は今までの事をレイナルドに話した。私の話を聞きながら、レイナルドの綺麗な顔はどんどんと険しくなっていった。
私が助けを求めるようにリカランドを見ると、彼はにっこりと笑った。
「ねえねえ、フィリーナの国、ほろぼす? こわい目にあったんでしょ?」
「わわわ、滅ぼすだなんていわないで。私の大事な国で家族もいるのよ。……そうだ、お父様にも、大丈夫だったって伝えなくっちゃ」
「そうだ、リカランド。そんな風にしなくても、あの国はうちの従属国なんだ。長い間苦しめる方法なんていくらでもある。まずは王族への財政を絞っていこう」
「えっ。過激派」
私が謎の行動力に引いていると、キラキラとした目でリカランドがレイナルドを見ている。
「そうなの? じゃあそうしよー」
「ああ、それにフィリーナを私の妻として連れて行けば、フィリーナを蔑ろにした奴らは皆フィリーナに頭を下げるしかない。そういう方がきっとああいう奴らには痛いはずだ。私達の権力を見せつけよう」
「そうなんだ! じゃあそれもそうしようよ! いつ行こうか。ねえねえフィリーナ。旅行だね旅行だね、面白いところはある?」
二人が盛り上がってどんどん話しているが、結局は新婚旅行の話に落ち着いたようだ。
会ったばかりの私の婚約破棄のことをこんな風に怒ってくれて、心が温かくなる。
一緒に旅行、行きたいなと素直に思えた。
「ふふふ。色々あるわ。ここの国がいい所なのは間違いないけれど、私の育った国にもいい所はあるのよ」
「わーたのしみー。フィリーナ、案内してくれる?」
「ええ、もちろんよ。家族旅行は初めてね」
「かぞくりょこう」
「ええ、リカランドとレイナルドと私と、家族三人で」
「……フィリーナだいすき」
「ええ、会ったばかりなのに不思議ね。私もあなたが大好きよ」
リカランドは真っ赤になった後に、私に抱き着いた。ふわっとした毛の感触が嬉しくて私も抱きしめ返す。
「私もだ」
何故か拗ねたようにレイナルドも呟いて、さらに大きな身体に私は包まれた。
三人でいる体温は暖かく、悪役令嬢にもしあわせがあるんだなと嬉しくなった。
「ああそうだ、フィリーナ。リカランドは本当に国を滅ぼせるから、迂闊な事は言わないように。フィリーナが望むならいつでも滅ぼしていいけれど」
「えっ」
「いいんだよー」
にこにこと笑うもふもふ天使は、可愛いだけじゃないみたいだった。
でも、その優しさと可愛らしさに、私はもう一度彼を抱きしめた。
リカランドは王家に代々伝わる魔法陣の中に突然現れたらしい。
なので、レイナルドとリカランドは血のつながりがないどころかリカランドは精霊の類ではないかということだった。
「魔法陣から現れるのは神様からの贈り物という伝説だけれど、本当に見るとは思わなかったな。おとぎ話のように聞かされていた話が、現実だったとは」
ため息をついて、レイナルドはお茶を飲んだ。
ふるまってくれた食事はとても豪華で美味しくて彼らの歓迎の気持ちを感じた。レイナルドは話し上手で、食事はとても楽しく終わった。
リカランドが野菜を嫌がっていたぐらいで。
そうして、食後のお茶と焼き菓子を並んでソファで頂きながら先程の話の続きをしてくれた。
隣の距離は近くて、どきどきするのに安心する不思議な感覚だ。
「……それはなんというか、素晴らしいですね?」
膝の上でごろごろと転がっているリカランドは、見た目動物っぽいものの普通の子供と変わらなく思える。ふわふわの髪の毛に、ぷくぷくほっぺ。触ると吸い込まれそうに気持ちいい。
撫でると嬉しそうにくすくすと笑うのが可愛すぎる。
贈り物は天使だったのかな?
「書物によると王家の子供として育てなければいけないということだから、私の息子になったのだが……」
「みんなきらーい」
「この国にはリカランドが気に入る令嬢が居なかったのだ。何回もパーティーを開き、色々なご令嬢と会ったが、全て駄目だった。……それで、ええと、タイミングが良かったから、藁にも縋る気持ちで」
最後は少し申し訳なさそうにしていたが、戦争の賠償をタイミングが良かっただなんてうちの国は本当に相手になってなかったんだなと思った。
しかし、私にとっては幸運だったともいえる。
「でも、なんだか嘘みたいな話ですね。伝説の神様の贈り物がここにいてこんなに可愛いだなんて」
「ふふ、本当に……。もう結婚は無理かと諦めかかっていた」
「リカランドが気に入らないと結婚できない仕組みだったんですね」
だから皆もほっとした雰囲気だったんだ。
「そうなんだ。だから、フィリーナが来てくれて本当に良かった。正直リカランドが大丈夫なら誰でもいいと思っていたのに、こんな可愛くて面白い子が来てくれるとは思わなかった。私も嬉しいんだ」
「私に面白要素ありました? ……ああもう、戦争の賠償に嫁が欲しいなんてどんな裏があるのかとすっごく悩みました」
「それは申し訳なかった。でも、リカランドの事は言うわけにはいかないんだよ。フィリーナの事は当然大事にするつもりだ。 ……リカランドが気に入らなかった場合は、自国にちゃんと帰れるようにするつもりだったし。もう返さないけれど」
「ふふ。それなら良かったです。……今帰ってもきっと大変になってしまうところだったので、リカランドに気に入ってもらってよかったかもしれないわ」
婚約破棄が二回は大変な事だ。
父はああ言ってくれたものの、問題を起こした私は良くて一生家に居ることになるだろう。
……それに、今頃あの二人が正式な婚約者になっているはずだ。それを自分の目で見なくてはいけないのは、きっとつらかったから。
私がほっとして呟くと、レイナルドはぐっと私に近付いた。
「……それはどういう事?」
「え?」
「フィリーナが大変ってどういう事なの。ちゃんと教えて」
謎の圧に押されながら、私は今までの事をレイナルドに話した。私の話を聞きながら、レイナルドの綺麗な顔はどんどんと険しくなっていった。
私が助けを求めるようにリカランドを見ると、彼はにっこりと笑った。
「ねえねえ、フィリーナの国、ほろぼす? こわい目にあったんでしょ?」
「わわわ、滅ぼすだなんていわないで。私の大事な国で家族もいるのよ。……そうだ、お父様にも、大丈夫だったって伝えなくっちゃ」
「そうだ、リカランド。そんな風にしなくても、あの国はうちの従属国なんだ。長い間苦しめる方法なんていくらでもある。まずは王族への財政を絞っていこう」
「えっ。過激派」
私が謎の行動力に引いていると、キラキラとした目でリカランドがレイナルドを見ている。
「そうなの? じゃあそうしよー」
「ああ、それにフィリーナを私の妻として連れて行けば、フィリーナを蔑ろにした奴らは皆フィリーナに頭を下げるしかない。そういう方がきっとああいう奴らには痛いはずだ。私達の権力を見せつけよう」
「そうなんだ! じゃあそれもそうしようよ! いつ行こうか。ねえねえフィリーナ。旅行だね旅行だね、面白いところはある?」
二人が盛り上がってどんどん話しているが、結局は新婚旅行の話に落ち着いたようだ。
会ったばかりの私の婚約破棄のことをこんな風に怒ってくれて、心が温かくなる。
一緒に旅行、行きたいなと素直に思えた。
「ふふふ。色々あるわ。ここの国がいい所なのは間違いないけれど、私の育った国にもいい所はあるのよ」
「わーたのしみー。フィリーナ、案内してくれる?」
「ええ、もちろんよ。家族旅行は初めてね」
「かぞくりょこう」
「ええ、リカランドとレイナルドと私と、家族三人で」
「……フィリーナだいすき」
「ええ、会ったばかりなのに不思議ね。私もあなたが大好きよ」
リカランドは真っ赤になった後に、私に抱き着いた。ふわっとした毛の感触が嬉しくて私も抱きしめ返す。
「私もだ」
何故か拗ねたようにレイナルドも呟いて、さらに大きな身体に私は包まれた。
三人でいる体温は暖かく、悪役令嬢にもしあわせがあるんだなと嬉しくなった。
「ああそうだ、フィリーナ。リカランドは本当に国を滅ぼせるから、迂闊な事は言わないように。フィリーナが望むならいつでも滅ぼしていいけれど」
「えっ」
「いいんだよー」
にこにこと笑うもふもふ天使は、可愛いだけじゃないみたいだった。
でも、その優しさと可愛らしさに、私はもう一度彼を抱きしめた。
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