異世界転移したよ!

八田若忠

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web連載

怒髪天を衝く

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「おんしはもう少し危機感と言うものをだな……その為に三姉妹のお目付け役か……」

 ササクさんは頭を抱える。

「ブラックライセンスを持つ者は、皆同郷の者らしいが、必ずしも友好的と言う訳では無いんじゃぞ?」

 リンダがずずいと前に出て、ササクさんの顔を覗き込む。

「帝国のブラックライセンス持ちってぇ、私は面識があるのよ~、な・の・で、ついてきちゃいましたぁ~」

 リンダはどこから出したのか、羽根で設えた様な扇子を開き、ヒラヒラと振り出す。

「流石リンダ様です」

 リンダお付のメイドが板に付いて来たマリアが横でおだてる。

「リンダ嬢が面識がある事は既に知っておる……だからイント一人で来て欲しいと言ったのだが」

 リンダはパタンとジュリアナ扇子を閉じて、口元を隠しながら小声でササクに話しかける。

「ええ? まだあのウラナリヒョウタンは私に固執してるのお?」

 ササクさんは脂汗を流しながら、言い難そうに視線を逸らす。

「なんすか? ウラナリヒョウタンって? それより帝国に知り合いがいたのか?」

「帝国のブラックライセンスって多分あいつだと思うんだけどぉ、ひょろひょろのガリガリで、年中顔色が青白くてぇ、太陽が大嫌いなおうちの中に常にいるタイプのぉ、ちょっとアレなタイプなのよ」

 リンダが露骨に嫌そうな顔をして、人物像を語り始める。

「なんて言うかね、ほら雑誌の裏にブルワーカーの漫画で出てくる、貧弱な坊やと言われ続けた人ってイメージ」

「日ペンの美子ちゃんしか知りません」

「矢吹れい子さんの?」

「梅村ひろみさんです」

「誰よそれ?」

 彼女との間には越えられない大きな壁があるらしい。

「まあ、とにかく私の好みじゃないのよね」

「なんでリンダの好みが関係して来るんだ?」

 リンダはこちらを見てニヤリと笑い、思わせぶりにクネクネと身を捩りながら、顔を赤らめながら呟いた。

「彼ねぇ、私の事が大好きなんだって……リンダ困っちゃう」

「嫁に行ったほうがいいっすよ」

 じろりとこちらを睨みつけるリンダ。

「つまんない男ねえ」

「リリリ、リンダ様は私が生涯お守りしますので、余計な事は吹き込まないで下さい!」

 マリアが慌ててリンダの前に出て、俺からガードしようとする。

「いやいや、俺そんなマニアックな趣味は無いから、俺は警戒しなくてもいいっすよ?」

 マリアの誤解を解こうとすると、リンダが意趣返しのつもりか、いらん事を言い出した。

「そおおよねえ? イント君はドワーフが大好きですもんねえ? マリアもあまり前に出るとペロペロされるわよ?」

「ひっ!」

 マリアが飛び退く。

「いやいや、しないっすよ、それにドワーフ大好きってなんすか?」

 背後から殺気が押し寄せる。

「しゅ、種族なんか関係なく、人間性って物を大事にする事がじゅうようだと思うんですよ……、だからその、ドワーフがどうこうではなくですね、ドワーフ……だいすきですです、はい」

 殺気が収まる。

「あらぁ羨ましいわねえ、既婚者は、ヒヒヒヒヒ。
 マリアも後でいっぱいニャンニャンしてあげるわねえ~」

「もう……リンダ様ったら……」

 マリアがリンダの腕にしがみつき、満更でもない笑顔でリンダといちゃつき出す。

「ドワーフ大好きなんだって? ダンナ? 言ったよな?」

 エステアがズボンを引っ張る。

「確かに聞いたわね、ドワーフ大好きって」

 デックスが野うさぎを仕留める時の目付きで俺の横に付く。

「ダーリンてば大胆発言しちゃうんだから~、こんなに大勢の前でノロケられたら~責任とってねえ~」

 ヴィータが背後霊の様に背中によじ登る。

「はっはっは……当たり前じゃないっすか、僕達わ夫婦デスヨ?」

 それまで黙っていたギルド長のササクさんが、突然重厚な作りのデスクを殴りつけて、怒鳴った。

「いい加減にせんかああああ! 貴様ら! ここを何処だと思っておるんじゃああ!」

 只者では無いと常々思っていたが、かなり立派なデスクの天板が粉々に吹き飛び、肩から盛り上がった筋肉のそれは、どう見ても老人のそれでは無かった。

「話を真面目に聞く気が無いのなら、すぐにここから出て行けええええ!」

 俺達は水を打ったように静まり返り、全員がギルド長執務室から出て行こうとした。

「あ、待つんじゃ、すまんかった、どうも最近年でな堪え性がなくなって大声が出ちゃうんじゃ、あと大声は老化防止にも良いと言われたしな、だからな、もうちょっと居ておくれな? ナナ君ほらお菓子があったじゃろ? あれをお出しして、まあ座って座って」

 ササクさんが凄い勢いで手の平を返す。

「まあ、お菓子食ってから帰るか」

 エステアのすっかり何をしに来たのか忘れているセリフに、ギルド長のこめかみの血管がプクリと反応した。
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