異世界転移したよ!

八田若忠

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web連載

誤解

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「大体だな! うどんを出前によこせってのが気に食わねぇ! うどんのコシってのはよ、命なんだよ、解るか? 死にかけの自分の子供を他人に披露する気持ちが、ああん?」

 かれこれ数十分は続いているうどん論を聞きながら、うどんを啜る面々。

 全員が食べ終わりうどんの出汁まで啜り切ったのを確認して、食器を綺麗にまとめた後にうどん屋のマスターは部屋を出て行く。

「おう! 邪魔だ! どけ!」

「あ、はい……」

 変態筋肉は入り口の側で、俺達が食べ終わるのをじっと待っていたらしい。

 うどん屋のマスターの若干荒い足音が聞こえなくなった頃に、変態筋肉は扉を少しだけ開けて様子を窺い、誰も居なくなったのを確認した後に、確認を再度取る。

「あ、えと、もういいです?」

 俺は彼が気の毒に思えて来て、つい気を使ってしまう。

「お待たせして、すいません。どうぞ」

「じゃ、失礼して……。

 うはははは! 我こそは帝国にてその名を知られたドラキュラ伯爵である! 頭が高い! 控えおろう!」

「ドラキュラなんですか? 水戸光圀なんですか? どっちなんですか?」

 ドラキュラさんは恐らく今まで元ネタを知らない人ばかり相手にしていたのであろう、軽く台詞をパクっていた事を同郷の俺に指摘されて顔を赤らめる。

「東野英治郎さんはもっと顔色が悪かったわよ? 何その褐色の肌と筋肉」

 リンダがすかさず突っ込みを入れるがサッパリわからない。

「東野英治郎さんって誰です? まあそれは兎も角、ドラキュラってもっとこう薄ら暗くて、陰気で、青白くて、スマートなイメージなんですが」

 俺も負けじと突っ込みを入れる。

「いや、でも……」

「デモもテロも無いわよ! やり直し!」

 リンダがテーブルをパンパン叩きながらダメ出しをする。

「んだども、リンダしゃんがヒョロヒョロはやんだぁって言うぺし、頑張って鍛えたんだぁ、なしてじょっぱったごとさ言うぺした?」

 どこかの方言が出て来たが聞いた事あるぞこれ。

「エルフ弁?」

 ドラキュラ伯爵が慌てて口を押さえる。

「ぬはははは! その手には乗らんぞ! このドラキュラひゃくしゃくがエルフごときの……」

 噛んだ。

「落ち着いて、もう一回」

 エステアからも励ましの声援が飛ぶ。

「もう、やんだあ、おらていごくさ帰るぅ」

 あ……泣いちゃった。

「リンダはこのひゃくしゃくと知り合いなんだろ? なんとかしろよ」

「好みじゃないんだから、しょうがないじゃない」

 身も蓋も無いが、このひゃくしゃくもメンタルが弱すぎる。

「泣くなよひゃくしゃく……」

 めそめそ泣いているひゃくしゃくに声をかける。

「ばがにすっでね! おらひゃくしゃくでね! 伯爵だあ、ドラキュラ伯爵だぁ」

 ドラキュラって吸血鬼なんだろうが……やっぱり中二系のあれな人なのか?

「あー……ドラキュラくんだったかな? ここはほらリンダと仲良く旧交を温めてな、上手く行ったらこう、なんだ、リンダをささっと連れて帰ってもらってだな、そらなんだ、厄介事を上手く片付けて欲しいかな? とか思ってるんだが、どうだ?」

 肩に手を乗せて言い聞かせる様になだめてみる。

「ダーリン厄介事とか言ってる~」

 ヴィータがいらん事に気付いた。

「俺は変態相談所じゃないぞ?」

「それはこっちのセリフよ……」

 ナナさんがげんなりとしている。

「それで伯爵さんはここまで何しに来たんだ?」

 ドラキュラ伯爵が顔を上げて、こちらを睨む。

「リンダちゃんが悪い奴に騙されてるって聞いてやって来ただ」

 悪い奴に騙される? 教会の事か?

「あー、それならもう問題解決したぞ? 騙されていたが誤解は解けた」

「誤解だっただか?」

「ああ、誤解だ。だからこそリンダはここにいるじゃないか、一時はどうなるかと思ったが、今はこんな所で呑気にうどんを食ってるじゃないか、誤解が解けた証拠だ」

「こんな所……」

 ギルド長が頭を抱え込んだまま呟いた。

「そうだか? ならリンダちゃんを賭けて、おらと勝負してけれエンガルの魔王」

「何故そうなる?」
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