シャ・ベ クル

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人間ドール開放編

第十三話 二人は不仲?そんなエロ展開、有り得ない!

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 ニコライとロディオンは台所で一緒にパイを作っている様だ。
ヴァルヴァラもサポートに徹し、瑠璃はその様子を観察し、善光はそんな瑠璃を観察しながら化学式をメモ帳に書き込んでいた。
ロディオンは粉だらけになったニコライを見て笑ってしまう。

「”ちょ!ニコライったら粉だらけ!” 可愛いな~!」

ロディオンは布で顔を拭ってあげ、ニコライは

「”ありがと。”」

と言って作るのに夢中。
ロディオンはそんなニコライを見ながら胸に手を当てていた。そして善光に語りだす。

「この夢中になったニコライの姿見て…!!これかなり胸熱い!俺もうこれで何度かキュンして昇天してんだよ…!」

善光は無表情のまま

「は?お前男に胸熱くなるとか本当に大丈夫か?この国では同性愛はよろしくないんだろ。」

と聞くと、ロディオンは

「俺はそういうの気にしないタチだから…!」

と胸の熱さを抑えて言った。
善光は手遅れな人を見る目でロディオンを見ていると、ロディオンは続けた。

「ニコライは俺の天使だ…!しっかりものだけど天然でー、純粋だけど我が強くてー、女子力高いけど男らしいしー、何考えてるかわかんない!かなり萌えるだろ!」

ロディオンが熱く語ると、善光はロディオンから目を逸らす。

(コイツ…やっぱりブラコンか…)

「ニコライは人に興味がないし女経験無いはずなんだ。俺が初めてを奪う予定なんだ。エヘヘ…」

ロディオンが照れた様子で言うと、善光は呆れて

(やっぱそうなるのかよ…。兄貴災難だな。)

と思っていた。

「まだできんのか!」

瑠璃はニコライに文句を言うと、ニコライは無視。

「こやつ無視しおったぞ!」

瑠璃がロディオンに文句を言うと、ロディオンは

「だってニコライはヴァルヴァラと違って流暢な日本語わかんないしぃ。簡単にして伝えないと通用しないよ~」

と言った。
瑠璃はムスっとするとニコライに通じるよう簡単に言う。

「遅い!」

ニコライは瑠璃を見ると言った。

「”冷蔵庫のパイでも食べて待っとけ。” 白菜。」

「白菜!?」

瑠璃は怒った顔をニコライに剥き出しにするが、ロディオンは

「パイ!?ウラー!俺も食べるぅ~!」

と話を逸らすように冷蔵庫を開けた。
瑠璃も駆けつけると、そこにはレモンパイが。

「レモンばっかだなこの冷蔵庫。」

善光が言うと、ヴァルヴァラは照れる。

「神様はレモンが大好物なんです。ヴァルヴァラお手製のパイ、どうぞ。」

すると、ロディオンは顔を真っ青にする。

「開けるんじゃなかった…」

相手に聞こえない声で呟き、パイを手に取った。
瑠璃はウキウキでそのパイを一口食べると、すぐに吐き出してしまう。

「な!なんだこの見た目だけの下手くそなパイは!毒でも入っているんじゃないのか!」

ロディオンは冷や汗を浮かべ、ヴァルヴァラは

「セオーネから習った健康パイです。薬草をたっぷり入れましたのよ。」

と笑顔。
善光はパイを食べると顔を引き攣る。

「薬草且つ毒草を入れてそうな不味さだな。お前の妹は料理に非常識なんだな、ていうかセオーネもなのか。」

ロディオンは真っ青になりながらニコライの傍まで歩いた。

「”なんでヴァルヴァラのパイを俺達に勧めたんだ…。俺をまた失神させたいのかニコライ…”」

どうやらロディオンはヴァルヴァラのパイを食べて、過去に失神した事がある様だ。
ニコライはロディオンの言う事はスルーで、瑠璃の様子を見て軽く叱った。

「”吐き出すな汚い。静かにできないなら部屋で騒いでろ。”」



 一同はそれに従う事にし、料理ができるまでヴァルヴァラの部屋でお喋りをしていた。

「あのパイは二度と食べたくない。」

瑠璃が言うと、善光はヴァルヴァラに言った。

「今度はちゃんとした作り方を学ぶんだぞ。」

「私だって普通のパイ作れます。」

それからヴァルヴァラはロディオンに擦り寄り頬を赤くして言った。

「神様、それより日本はどうですか?ヴァルヴァラ、神様と同じ学校に行って神様のサポートをしたいです…!」

「こんな腹黒女を傍に置いたらラディオンが可哀想だ。」

と瑠璃はキッパリ。
ヴァルヴァラは笑顔を絶やさず

「初対面なのに腹黒と言われてしまうのは…少し残念です。」

と困った顔をしてロディオンを見つめる。
ロディオンは笑顔を見せて言った。

「まあ見方それぞれさ。少しずつ仲良くしていけばいいさ。」

瑠璃はヴァルヴァラの様子や行動が気に入らないのか、部屋にいる時は始終ムスっとしていた。



 そしてレモンパイが出来上がり、瑠璃達はおやつを頂くことに。
見た目は普通のレモンパイで、パイの上には皮が綺麗に剥かれたレモンが乗っていた。
瑠璃は最初はパイに警戒をしていたが、周囲が普通に食べているのを見て一口食べる。

「ん!!美味しいぞこれ!」

瑠璃が目を輝かせて絶賛すると、ニコライは微笑んで不器用な日本語を交えて言った。

「”わかるか、ロディオンの好きな味。ロディオンの友達が理解して、” …んー…嬉しい?」

ロディオンも幸せそうな顔をして、手に持ったフォークを咥えたまま

「ありがとニコライ~。これで俺一発抜ける。」

と発言をする。
善光は

「おい、下ネタやめろ。」

とロディオンに言うと、ロディオンは笑いながらニコライを見る。

「ニコライじゃ下ネタわかんないしぃ~」

当のニコライはロディオンの発言には首を傾げるだけで、意味を理解した様子はなかった。
そこでヴァルヴァラは

「あ!そう言えば神様にプレゼントがありますの!今持ってきますね!」

と一度部屋に戻っていく。
するとニコライも

「”仕事早く上がらせてもらったんだった。大事な資料まとめないと。”」

と部屋に戻ろうとした。
ロディオンは聞く。

「”ニコライ早退したの?”」

「”ああ。ロディオンが帰ってくるって聞いたから早めに上がらせてもらったんだ。”」

「”嬉しい。”」

素直にロディオンは喜ぶと、ニコライは笑って

「”弟が久々に帰ってくるんだ。早く帰るのは当たり前。”」

と言って部屋に戻っていくのだった。
ロディオンはその言葉を聞いて幸せそうにパイを食べていると、善光は密かに思った。

(実は兄弟みんなブラコンか?最早ファミコンか。)

「おかわり欲し~い!」

ロディオンはそう言って冷蔵庫に向かい、パイを更にひと切れ貰う。
瑠璃も一緒になって集ると、瑠璃は気づいた。

「ん?さっきの不味いパイが消えたな。」

「ニコライが食べちゃったんじゃないかな。ニコライは不味いの平気だからさ。」

「味覚障害なのではないのか…」

瑠璃はあの料理を食べられるのは流石に異常だと引いていた。



 ニコライは部屋に戻ろうとすると、そこで妹のヴァルヴァラとバッタリ会う。
するとヴァルヴァラは急に冷たくなって

「”邪魔よこのはぐれ者!”」

とニコライに言った。
ニコライも表情を変えてヴァルヴァラを睨みつけ声色を暗くすると言う。

「”あん?通れんだろ。甘いモノ食って太ったか?”」

するとヴァルヴァラは口角を上げたが、その顔には怒りが浮かんでいる。

「”テメェは大食いだろデブ!肥満になって死んでしまえ!”」

ヴァルヴァラが言うと、ニコライは

「”あー、お前の不味いパイ食ったし寿命縮んだかもな。”」

と無表情で煽る。
ヴァルヴァラは怒って

「”最低!シスターであるセオーネから教えてもらったパイよ!”」

と言うと、ニコライはヴァルヴァラを睨んで言った。

「”二人とも料理が下手クソなんだよ。”」

そう、ニコライとヴァルヴァラは仲が悪いのだ。
二人ともロディオンが好きなのはいいのだが、この二人だけは仲良くできないという。
ロディオンも二人の不仲は薄々認知していて、仲良くして欲しいと思っているようだ。

「”黙れ!負け組が!私は神様と一緒に日本へ行って!神様とセオーネと一緒に頑張っていくの。
お前みたいな非行男はこの田舎で一生社畜やってろ!”」

ヴァルヴァラはニコライに暴言を吐く。
ニコライはヴァルヴァラを睨んだまま

「”お前が留学できんのも俺のお陰だろ。恩知らずなのはクズ親そっくりだな。”」

とこちらも悪い口が絶えない様子。

「”フン!一緒にすんな!お前は死ぬまで親のお守りしてろ!”」

ヴァルヴァラはそう言い放つとニコライの体を押す。
しかしニコライほどの背の高い男性を女性が押せるわけもない。
ニコライは舌打ち。

「”気安く触んじゃねえよ。カチンと来たぜ…?”」

すると、ヴァルヴァラの髪を乱暴に引っ張り上げる。

「”痛い!”」

ヴァルヴァラが涙目になって悲鳴を上げると、台所から

「ヴァルヴァラの声!?」

とロディオンの声が聞こえ、

「なんかあったのか?」

と善光の声も聞こえた。
ニコライは再び舌打ちをすると、ヴァルヴァラを壁に押し飛ばして自室へ入っていった。
ヴァルヴァラは片腕を壁にぶつけ、痛みに耐える。
そこにロディオン達が駆けつけてきて、ロディオンはヴァルヴァラの体を支えた。

「大丈夫かヴァルヴァラ!?何があった!」

ロディオンがヴァルヴァラを心配すると、ヴァルヴァラはニコライの部屋を見つめた。
ロディオンは顔を引き攣って

「まさかニコライが…!?」

と呟くと、ヴァルヴァラは泣き出してしまう。

そこに、玄関からロディオン達の両親らしき人が入ってきた。
母親はヴァルヴァラと同じ金髪、父親はロディオンと同じ黒髪。
二人はヴァルヴァラが泣いているのを見て驚いた。

『”ヴァルヴァラ!”』

二人はヴァルヴァラに駆け寄ると、ロディオンは二人に気づく。

「”父さんに母さん!”」

父親は真摯な表情でロディオンに聞いた。

「”ロディオン、何があったんだ?”」

すると、ヴァルヴァラは言う。

「”ニコライが…私が憎いのか乱暴を…!”」

それを聞いた父親は顔を歪める。

「”アイツまたヴァルヴァラを!”」

ロディオンは気の毒そうな顔をしてしまうと、善光は言った。

「暴力兄貴かよ。」

瑠璃も頷く。

「奴はそういう男なのだ。顔に躊躇いが一切ない、いつか人殺しでもするんじゃないか。」

しかしロディオンは信じられないような顔をして

「ニコライは乱暴するような兄ちゃんじゃない…!」

と精一杯抵抗。
善光は冷静な表情を保ったまま聞く。

「じゃあお前の妹に誰が乱暴したんだよ。」

ロディオンは黙り込んでしまう。
するとロディオンは、滲み出る涙を堪えて言った。

「純粋無垢のニコライが!女に…しかも妹に乱暴できるわけないだろ!
 そんなエロ展開! 有り得ない!」

と言うと、ヴァルヴァラは意味が理解できず首を傾げ、善光は無表情になって

「そういう意味の乱暴じゃねぇよ。」

と冷静にツッコミを入れるのだった。
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