シャ・ベ クル

うてな

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人間ドール開放編

第三十四話 作戦会議とお説教。

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 ロディオン達は善光宅に行くと、話し合いを始める。
ロディオンと善光は椅子に座り、セオーネと瑠璃は立ちながら話を聞いていた。

「俺達の目的はズバリ!世界を平和にすること!だけどその為には殺し屋と人形売買業者が邪魔である、ではどうするか。」

「目標デカ過ぎ。」

善光は即答すると、ロディオンは首を傾げる。
善光は続けて言った。

「あのな、俺達みたいな凡人が業界をどうにかするとか本当にできると思ってんのか?お前の兄貴を引きずり出すだけでいいじゃねぇか。」

するとセオーネは机を叩くと

「ですが!それでは世界を平和と愛で満たす事はできません!」

と言うが、善光は顔を引き攣って頭を抱えると言う。

「そもそも『世界を』って発言がおかしいんだよ!そんなモン俺達に出来るなら、先人がいるだろ。
お前らみたいな考えしてるヤツがまだこの世に沢山いる事は認める、でもそれを叶えたヤツは誰一人いない!俺は言い切れるな!」

ロディオンはその言葉に弱るが、セオーネは諦めていない様子。

「私達ならば絶対にできます!そうでしょうロディオン!」

ロディオンは考え込むと、次に言った。

「いや、確かに善光の言う通り、今の俺達には大きすぎる夢だ。小さな目標からどんどん立てていこう、そうすれば確実に『世界をより良く』できる。」

善光はそれを聞くといつもの表情に戻る。

「おう、それでいいんだ。あくまで『周囲をより良くする』を目的にすれば、無駄に大きな仕事も背負わなくてもいい。
今やってるシャ・ベ クルの活動の様な、平和な感じが一番なんだ。」

セオーネは困った顔を見せると、ロディオンは「いや、」と善光の言葉を止めた。
善光は再び眉を潜めると、ロディオンは言う。

「最終目的は勿論、『人々を幸福にする事』だ。その為には悪い奴等をどうにかしなきゃならない。でも今の俺達では無力に等しい。
だからこそ、力をつけていく為に小さな事から始めるんだ。」

それを聞いてセオーネは笑顔になると、善光は何かが引っかかったのか言った。

「でも待て、業界をどうにかするとして、そいつ等の仕事を潰したらそいつ等が不幸にならね?」

「仕事がなくなるのは当然の報いなんじゃないのか?」

ロディオンは即答するので、善光は顔を引き攣る。

「お前、たまに怖い事言うよな。仕事奪われるって、生活を奪われる事と同じなのに…。」

ロディオンは続けた。

「ニコライを引っ張るにはー、まずはどう探りを入れよっかな?」

「殺し屋の拠点を見つけるのが優先でしょうか。」

セオーネがそう聞くと、善光は呆れてしまう。

「こんな広い日本からどうやって拠点を暴き出すんだ?」

しかしロディオンは閃いた。

「いやでもさ、ニコライに初めて会った時は商店街の路地裏にいたじゃん。ニコライ、世話になったやつがいるって言ってたけど殺し屋の連中だろう。つまり商店街かその周辺にあるんじゃないかって思うんだ。人間の足だし、そんな遠い場所でもない気がする。」

それでも善光は難しい顔をするので、ロディオンは席を立って善光の後ろに回り込む。
善光はロディオンに振り向くと、ロディオンは善光の背中を叩いた。

「ほら!探さないより探した方がいいさ!明日早速行くぞ!」

「はいはい。」

善光はそう言うと、セオーネはガッツポーズ。
そこでインターホンが鳴るので、ロディオンは急いで玄関へ。
するとロディオンの声が善光の元まで聞こえてきた。

「オイ!?正実がぶっ倒れた!?」

「はぁ!?」

と席を立って真っ先に反応したのは善光。
ロディオンは善光達の元に向かうと苦笑した。

「ああ、ヴァルヴァラが作ったパイ食べて失神しちゃったらしいよ…」

それを聞いた善光はゆっくり椅子に腰を掛ける。

「なんだ…不味い料理のせいかよ…。」

「ちょ、俺看病してくるわ。今日はこれで解散ね!」

とロディオンは家を出る準備をしながら言うのであった。



 スナックにて、ラズベリーはニコライとロッキーに説教をしていた。

「例え弟でも正体がバレたのよ!?ここで監禁するか暗殺のどっちかにしなさい!」

「でもなぁ、うちの大事な友達やし、ニコライの弟と言ったら何もできんやろ。
ほら、ロディオンは優しいヤツやで?別に言いふらしたりせんて。」

ロッキーはそう言うと、ラズベリーは頭を抱える。
次にニコライは言った。

「確かに野放しは良くなかった。さらうべきだった。」

「ニコライならやってくれると思ったんだけど、あなたも甘いみたいね。」

ラズベリーは煽るようにニコライに言うと、ニコライは鼻で笑う。

「失態はお互い様の癖に説教するな。」

「なんですって!?あなたは身内にバラしたのよ!?なのにのこのこと帰ってきたんでしょ!」

とラズベリーはニコライの胸ぐらを掴んだ。

「あ?正直な話をしただけ、やんのかお前?」

ニコライはラズベリーを睨みながら腕を掴むので、二人は睨み合いを始めてしまう。
ロッキーは傍で銃を磨き始めると言った。

「アンタ等すぐ頭に血が上るのどうにかせいや。」

「あ?」とニコライは敵意をロッキーにも向けるが、ラズベリーが先に落ち着いて手を離す。

「ほら、ニコライも離せ。」

ロッキーが言うと、ニコライは腕を握ると歯を食いしばりそのまま手放した。
ラズベリーは自分の真っ赤になった腕を見ると、腕を摩る。

「最低男!女の腕にこんな痕つけるだなんて!」

「人形の価値も無い人間が傷ついても、何の損もない。」

ニコライはそう言うので、ラズベリーは

「なんですって…!?」

とまた怒りをあらわにする。
それを見るとロッキーはニコライの腕を掴んで、その場から離れようとした。

「おい!何するんだ!」

ニコライが聞くと、ロッキーは言う。

「お互いイライラするだけやろ、離れるだけや。」

それを聞いたニコライは暫く黙りながらロッキーに引っ張られていると言った。

「お前、意外と落ち着いてるんだな。」

ロッキーはそれに対して少し怒った様子を見せると言う。

「なんやその言い草!うちがまるでいつもは落ち着いてないみたいな!
てかアンタも落ち着いてるようで落ち着いてないから、こっちはハラハラするわ!」

「ふーん。」とニコライが普通に流すと、ロッキーは黙ってしまった。
それからスナックのカウンターに行くと、酒を頼む。
「おい」とニコライが言うので、ロッキーはニコライを見た。
するとニコライは言う。

「今から出かけるぞ。」

「はぁ!?どこへ行く気や!」

ロッキーはそう言うと、ニコライは微笑んだ。

「人形売買関係の仕事。それを殺さずに送ってやるんだ。いいだろ?来いよロッキー。」

ロッキーはムスっとした顔を見せると、席を立って言った。

「生け捕りって…まあいいで。うちもあんま気が晴れんのや、気晴らしに行くわ。」

「そう来ないとなあ!」

ニコライはそう言って笑うと、ポケットから車のキーを出して地下へ向かう。
ロッキーも共に追いかけると、スナックに居た仲間が言った。

「こんな真夜中にお出かけか?今日は大忙しだなお前ら!」

スナックにいる者達が大笑いすると、

「動いてる方が性にあってるんだ。」

とニコライは言って地下にある駐車場へ向かう。
駐車場には幾つか車があり、その半分以上が自由に使える車だ。勿論用途は仕事のみだが。

ニコライは車のエンジンをかけると、ロッキーが乗り込むのを待つ。
ロッキーは車に乗ると

「どこ行くんや?て言うか作戦立てたんか?」

と聞くので、ニコライは言った。

「前もって仲良くなった。今夜会う予定、山の星を見る約束。」

それを聞いてロッキーは顔を眉を潜める。

「一人でようやるな。そんなすぐに打ち解けたんか?」

「ああ、周りの連中と関わってたら。」

ロッキーはニコライの圧倒的なコミュニケーション能力を察すると顔を引き攣った。

(ロディオンの兄貴であるニコライも、人と関わる事に関しては強いんやな…。)
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