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第2章 正体―アイデンティティ―
024 クロマが二人!?砂漠の国の王、サウザ! 前半
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数日後。
第二故郷病院五階会議室、久坂と数男は砂漠の一国に行くための準備中。
シュンはぐったりしながら言う。
「俺も行きたかった~!」
「砂漠にガキを連れていけるか、来たいならそのガキを守に食わせとけ。話はそれから。」
シュンは赤子を見つめて、少し迷うと赤子を抱きしめた。
「やっぱ行かない」
「はいはい!私も行きたい行きたい!」
と砂田が荷物を持ってやってくる。
みんなはその大荷物を見て言った。
「なんだ引越しか?」
久坂の言葉に数男は首を傾げた。
「何泊する気だ。」
「なーんでついてくんだよ。」
久坂が言うと、砂田は顔を引き攣った。
「なんでって?私だって砂漠の中のオアシス以上の国見てみたいもん!料金は自分で払うから!」
久坂は無表情のまま鼻で笑う。
「いいよ。花は特別な。」
それを聞いて、砂田は飛んで喜ぶ。
数男は正直嫌なのか溜息をつき、サチの方に来ると言った。
「お前はボーイフレンドの見舞いで行けないか。」
サチは微妙な反応をしながらも言う。
「九重先輩の妹さんのです。」
数男は目を逸らすと文句を漏らした。
「護衛が仕事のくせに。」
サチはギクッとした。
(飛行機に搭乗する料金がかかるから無理に決まってます…!)
そう言い訳を考えるのであった。
陽の下院では、ハジメと秋菜も準備中。
「ハジメ、日焼け止めは持った?」
「え…わかったよ…秋菜の貸して。」
ハジメが恐縮すると、秋菜は呆れる。
「こういうのは自分に合ったものがいいのに…いいわ、今日買いに行きましょう。」
「え…」
ハジメはいつも以上に凝っている秋菜に恐れを感じていた。
ミィシェルは適当に服を詰める。
「オニューの服!ミンス選ンだ、服!全部入れるです!」
ミンスは微笑みながら言った。
「すぐに戻ってくるのですよ?」
しかし、ミィシェルは全て持って行きたそうな顔をしていた。
逆にクロマは何も用意していない。
「クロマ…数日そのままで過ごすおつもりですか。」
ミンスが聞くと、クロマは少し考える。
「閉鎖的な国なのだろう?国に立ち入れるかさえわからない。荷物がない方が、逃げる時も楽だ。」
するとミンスは「ふふっ」と笑い、クロマのタンスを開けて自分の荷物にクロマの服を入れる。
「ではわたくしが持って行きましょう。どうせ現地ではわたくしが荷物となるのですから、変わらないでしょう。」
クロマはその様子を見て、ムスっとするとミンスから顔を背けるのであった。
遂にその日がやってきて、ハジメ達一行は砂漠の中を歩いていた。
久坂達とは別行動らしく、現地で会う約束をしている。
ただ広すぎるだけの砂漠、方位磁針をひたすら信じて歩いていた。
ハジメは汗をタオルで拭うと言う。
「まさかロシアにこんな砂漠があると思わなかった。え?ロシアは寒帯だろう?」
ハジメが秋菜に聞くと、秋菜は言う。
「そうですわね…しかしここは南部、ギリギリ砂漠が広がっている様ですわ。」
ハジメは空の太陽を見つめると言った。
「日焼け止め塗ってて良かった。ミンスもミィシェルも塗ってないのか?せっかく白いのに黒くなったら勿体無いぞ。」
「そうよ。…ミンス?大丈夫?ちょっとクロマ、様子見てあげて。」
と秋菜。
ミンスは前屈みになりながらトボトボ歩き、クロマとミィシェルは一度足を止めてミンスの方に向かった。
ちなみに、結局ミンスやミィシェルの荷物はクロマが運んでいる。
「ミンスどうした。」
「元気ないです。」
ミンスは顔を上げてフラつく。
「喉が…渇きました。」
掠れた声を出すミンス。
クロマは眉を潜めて、ミンスが持っていた水筒を振った。
「まだ入っているではないか。なぜ飲まない。」
「水が…なくなるから…もし…このまま砂漠ばかりを歩くとしたら…足りません…。」
ミンスはクロマに倒れ込んでしまう。
クロマは呆れて、自分の水筒を出してミンスに渡した。
「そんな事を考え出したら永遠に飲めんだろう。ほら、私の水筒だ。気にせず飲め。」
しかしミンスは口を固く閉じて首を横に振る。
「貴様は子供か。」
クロマは無理矢理飲まそうとする。
すると、ミンスは本当は飲みたかったのかゆっくり口を開けて水筒を飲んだ。
水を飲むとミンスは「はあ。」と水筒から口を離して調子を取り戻す。
クロマはミンスに自分の水筒を押し付け、ミンスはクロマの顔を見た。
「持っておけ。貴様はすぐに喉が渇いただの肘を擦りむいただの言うだろうからな。
…ほら、ついでに背負ってやるからこのリュックを持て。」
そう言ってクロマはミンスにリュックを背負わせる。
ミンスは驚いて何がなんだかわからないでいると、そのままクロマにおんぶされてクロマは歩き出す。
「ズルいです、Michelモ …今度してもらうです!」
ミィシェルはちょっと控えて言い、ハジメは微笑む。
「良かったな。」
ミンスは落ち込んだようにクロマの肩に顎を乗せると、クロマに話しかける。
「クロマ、水筒…飲まないと死んでしまいますよ…?」
「私が死ぬ前に貴様が死ぬだろう。」
するとミンスは目に涙を溜め、暗い顔を保ちながらも俯く。
「クロマは…どんどん逞しく成長します。わたくしはなぜ成長できないのですか?」
ミンスの問いに、クロマは反射的に「当たり前だ。」と言ってしまう。
「なぜ?」
ミンスは聞いた。
クロマは空を見上げると言った。
「…確かに不思議だな。」
ハジメはクロマの一言に目を丸くした。
「クロマがそういう事に疑問を持つなんて珍しいじゃないか。」
「努力が足りん、と言いたいところですが、私も大してしていない気がしまして。」
「才能ですよ。」
ミンスはクロマに微笑んで言った。
しかしクロマはそうとは思わず、ただ不思議に思うだけであった。
国の入口に着いた久坂一行。
入口らしき場所からは透明の膜のようなバリアが張られ、水面のように震えたり砂漠を映し出して砂漠の中に隠れてしまう。
そのバリアから中は植物も水も豊富で、オアシス以上の豊かな自然のある国だった。
白いコンクリートの道が清潔さと自然を更に映えさせ、全体的に白い建物が多い。
中では普通の人間が平穏に暮らしていて、植物人間がいる様子はなかった。
久坂達は国の前まで来ると感嘆の声。
数男は言う。
「植物人間の楽園じゃないんだな。」
「ああ。この国に住む者は王族以外は全員人間らしいな。」
すると砂田は、入口前で人を見つけて喜んで走っていった。
「サウザ~っ!」
砂田は緑色の頭をした男性に飛びつく、男性は砂田を見ると笑顔を見せた。
「うわ久しぶり『ネオ』!その服装お医者さん?カワイイね!」
「そうよ!いや~変わらないわね~」
二人の会話に久坂と数男は黙り込む。
数男は男性の方を見ると驚く。
「秀也!コイツ、マリモみたいな顔をしてる!」
そう、その男性はクロマにそっくりなのだ。
久坂が男性を見ると、目をかっぴらいた。
「ああッ!コイツ種を盗んだ奴じゃね!」
秀也が目をつけたのは逆に服装で、その日の犯人と服装が似ているのだ。
二人は男性に凄い剣幕で近づくので、それに気づいた男性は驚く。
砂田は彼を久坂達の方に連れて行くと言った。
「紹介するわね。この人上司の久坂さん、この人は五島さん。」
数男は恐ろしい形相で彼を睨みつけ、久坂は無表情であっても威圧のある顔で見つめる。
男性は二人から恐ろしいものを感じながらも、笑顔で言った。
「初めまして!名前は『サウザ』!この国の王をしております、以後お見知りおきを。」
礼儀正しく頭を下げる。
数男はクロマと重なりすぎて、イラついたのか髪を掴む。
「いたぁっ」
サウザが言うので、数男は驚いて反射的に手を離す。
「何すんの!」
砂田は怒るが、サウザは笑顔で鎮めた。
「平気だよ。」
数男はサウザを見て睨みつける。
(やっぱりマリモじゃない…)
久坂は言った。
「あー砂田てめぇここの出身かよ。まあいいけど、コイツマリモの親族?石の巫女のガキか?」
相変わらず久坂はサバサバしていて、この状況をまるで気にしていなかった。
砂田は笑顔で頷く。
「ええ、クロマとミンスのお兄様!そして私のカ・レ・シ!いやぁ今まで隠しててごめんね~!」
数男は鳥肌が立ったのか顔を険しくした。
久坂は無表情。
するとサウザは首を傾げた。
「スナダ?ネオのニホンでのお名前かな?彼女は『ネオ』って名前だよ、本名。」
「あっそう。」
と久坂はどうでもよさそうに言う。
「いくつ」
久坂が聞くと、サウザは素直に答える。
「二十二です。弟のクロマとは五つも違う。」
「若いのに王とは大変そうだな。」
するとサウザは照れた顔を見せながらも言った。
「いやぁ、かれこれ十一年経ちますからだいぶ慣れました。」
数男は驚く。
「十一歳から王をやっているのか?」
「はい。母上も父上も亡くなってしまったので、俺がやるしかなかったんです。初めは大変でしたよ~」
「父親も死んだの?」
と久坂が言うとサウザは少し焦る。
「えっとどこから言えばいいかな…。俺が十代の内に父上も母上も亡くなって…弟達は国から追放されちゃって…。」
それに対し、砂田は補足。
「実は…両親を殺した罪で、クロマとミンスは追放を食らったの。」
「両親殺したァ?アイツらサイコパスぅ?」
久坂が聞くと、サウザは苦笑。
「違うよ。クロマが母上を手にかけたのは運が悪かっただけで、えっと…父上の方は…」
サウザは微妙な反応をするので、久坂は言った。
「悪意あって殺されちまったんだな。」
サウザは黙ってしまうと、数男は鼻で笑った。
続いて久坂も鼻で笑って言う。
「じゃあさ、クロマとミンスをここに連れてきていいの?」
「いいじゃん、追放喰らうだけでしょ。」
砂田が言ったが、サウザは慌てた。
「クロマとミンスが来るの!?駄目だ!今度こそ殺されちゃう!」
「殺される?だってあの時はクロマだって幼かったし、国民もわかってくれるでしょ?」
するとサウザは一旦落ち着こうとする。
しかし落ち着けずについ喋りだす。
「誰も悪くないよ…でもみんなだってこれ以上犠牲を増やしたくないし、俺だってそう。
わかってネオ、二人は悪くないんだよ…!」
しかし砂田は首を傾げたまま。
「何の話だっけ。」
するとサウザは軽くずっこける。
「ネオしっかりしてくれ~!」
「てかさ、オレの種盗んだのお前だろ」
久坂がサウザに言うと、サウザはギクッとして頭を下げる。
「ごめん!でもこれは仕方のない事なんだ…!」
するとそこに丁度、ハジメ達が国に着いたのでハジメ達はサウザを見て驚いた。
「クロマ!」
「あらクロマ。」
ハジメと秋菜が言うと、本物のクロマは「はい」と返事をするがスルーされる。
そしてサウザは、クロマとミンスに気づくと目を見開いた。
クロマはサウザに気づき、顔を引き攣った。
「誰かに似ているな。」
自分に似ている事をわかっていない様子。
思わず数男は言った。
「お前だ馬鹿。」
第二故郷病院五階会議室、久坂と数男は砂漠の一国に行くための準備中。
シュンはぐったりしながら言う。
「俺も行きたかった~!」
「砂漠にガキを連れていけるか、来たいならそのガキを守に食わせとけ。話はそれから。」
シュンは赤子を見つめて、少し迷うと赤子を抱きしめた。
「やっぱ行かない」
「はいはい!私も行きたい行きたい!」
と砂田が荷物を持ってやってくる。
みんなはその大荷物を見て言った。
「なんだ引越しか?」
久坂の言葉に数男は首を傾げた。
「何泊する気だ。」
「なーんでついてくんだよ。」
久坂が言うと、砂田は顔を引き攣った。
「なんでって?私だって砂漠の中のオアシス以上の国見てみたいもん!料金は自分で払うから!」
久坂は無表情のまま鼻で笑う。
「いいよ。花は特別な。」
それを聞いて、砂田は飛んで喜ぶ。
数男は正直嫌なのか溜息をつき、サチの方に来ると言った。
「お前はボーイフレンドの見舞いで行けないか。」
サチは微妙な反応をしながらも言う。
「九重先輩の妹さんのです。」
数男は目を逸らすと文句を漏らした。
「護衛が仕事のくせに。」
サチはギクッとした。
(飛行機に搭乗する料金がかかるから無理に決まってます…!)
そう言い訳を考えるのであった。
陽の下院では、ハジメと秋菜も準備中。
「ハジメ、日焼け止めは持った?」
「え…わかったよ…秋菜の貸して。」
ハジメが恐縮すると、秋菜は呆れる。
「こういうのは自分に合ったものがいいのに…いいわ、今日買いに行きましょう。」
「え…」
ハジメはいつも以上に凝っている秋菜に恐れを感じていた。
ミィシェルは適当に服を詰める。
「オニューの服!ミンス選ンだ、服!全部入れるです!」
ミンスは微笑みながら言った。
「すぐに戻ってくるのですよ?」
しかし、ミィシェルは全て持って行きたそうな顔をしていた。
逆にクロマは何も用意していない。
「クロマ…数日そのままで過ごすおつもりですか。」
ミンスが聞くと、クロマは少し考える。
「閉鎖的な国なのだろう?国に立ち入れるかさえわからない。荷物がない方が、逃げる時も楽だ。」
するとミンスは「ふふっ」と笑い、クロマのタンスを開けて自分の荷物にクロマの服を入れる。
「ではわたくしが持って行きましょう。どうせ現地ではわたくしが荷物となるのですから、変わらないでしょう。」
クロマはその様子を見て、ムスっとするとミンスから顔を背けるのであった。
遂にその日がやってきて、ハジメ達一行は砂漠の中を歩いていた。
久坂達とは別行動らしく、現地で会う約束をしている。
ただ広すぎるだけの砂漠、方位磁針をひたすら信じて歩いていた。
ハジメは汗をタオルで拭うと言う。
「まさかロシアにこんな砂漠があると思わなかった。え?ロシアは寒帯だろう?」
ハジメが秋菜に聞くと、秋菜は言う。
「そうですわね…しかしここは南部、ギリギリ砂漠が広がっている様ですわ。」
ハジメは空の太陽を見つめると言った。
「日焼け止め塗ってて良かった。ミンスもミィシェルも塗ってないのか?せっかく白いのに黒くなったら勿体無いぞ。」
「そうよ。…ミンス?大丈夫?ちょっとクロマ、様子見てあげて。」
と秋菜。
ミンスは前屈みになりながらトボトボ歩き、クロマとミィシェルは一度足を止めてミンスの方に向かった。
ちなみに、結局ミンスやミィシェルの荷物はクロマが運んでいる。
「ミンスどうした。」
「元気ないです。」
ミンスは顔を上げてフラつく。
「喉が…渇きました。」
掠れた声を出すミンス。
クロマは眉を潜めて、ミンスが持っていた水筒を振った。
「まだ入っているではないか。なぜ飲まない。」
「水が…なくなるから…もし…このまま砂漠ばかりを歩くとしたら…足りません…。」
ミンスはクロマに倒れ込んでしまう。
クロマは呆れて、自分の水筒を出してミンスに渡した。
「そんな事を考え出したら永遠に飲めんだろう。ほら、私の水筒だ。気にせず飲め。」
しかしミンスは口を固く閉じて首を横に振る。
「貴様は子供か。」
クロマは無理矢理飲まそうとする。
すると、ミンスは本当は飲みたかったのかゆっくり口を開けて水筒を飲んだ。
水を飲むとミンスは「はあ。」と水筒から口を離して調子を取り戻す。
クロマはミンスに自分の水筒を押し付け、ミンスはクロマの顔を見た。
「持っておけ。貴様はすぐに喉が渇いただの肘を擦りむいただの言うだろうからな。
…ほら、ついでに背負ってやるからこのリュックを持て。」
そう言ってクロマはミンスにリュックを背負わせる。
ミンスは驚いて何がなんだかわからないでいると、そのままクロマにおんぶされてクロマは歩き出す。
「ズルいです、Michelモ …今度してもらうです!」
ミィシェルはちょっと控えて言い、ハジメは微笑む。
「良かったな。」
ミンスは落ち込んだようにクロマの肩に顎を乗せると、クロマに話しかける。
「クロマ、水筒…飲まないと死んでしまいますよ…?」
「私が死ぬ前に貴様が死ぬだろう。」
するとミンスは目に涙を溜め、暗い顔を保ちながらも俯く。
「クロマは…どんどん逞しく成長します。わたくしはなぜ成長できないのですか?」
ミンスの問いに、クロマは反射的に「当たり前だ。」と言ってしまう。
「なぜ?」
ミンスは聞いた。
クロマは空を見上げると言った。
「…確かに不思議だな。」
ハジメはクロマの一言に目を丸くした。
「クロマがそういう事に疑問を持つなんて珍しいじゃないか。」
「努力が足りん、と言いたいところですが、私も大してしていない気がしまして。」
「才能ですよ。」
ミンスはクロマに微笑んで言った。
しかしクロマはそうとは思わず、ただ不思議に思うだけであった。
国の入口に着いた久坂一行。
入口らしき場所からは透明の膜のようなバリアが張られ、水面のように震えたり砂漠を映し出して砂漠の中に隠れてしまう。
そのバリアから中は植物も水も豊富で、オアシス以上の豊かな自然のある国だった。
白いコンクリートの道が清潔さと自然を更に映えさせ、全体的に白い建物が多い。
中では普通の人間が平穏に暮らしていて、植物人間がいる様子はなかった。
久坂達は国の前まで来ると感嘆の声。
数男は言う。
「植物人間の楽園じゃないんだな。」
「ああ。この国に住む者は王族以外は全員人間らしいな。」
すると砂田は、入口前で人を見つけて喜んで走っていった。
「サウザ~っ!」
砂田は緑色の頭をした男性に飛びつく、男性は砂田を見ると笑顔を見せた。
「うわ久しぶり『ネオ』!その服装お医者さん?カワイイね!」
「そうよ!いや~変わらないわね~」
二人の会話に久坂と数男は黙り込む。
数男は男性の方を見ると驚く。
「秀也!コイツ、マリモみたいな顔をしてる!」
そう、その男性はクロマにそっくりなのだ。
久坂が男性を見ると、目をかっぴらいた。
「ああッ!コイツ種を盗んだ奴じゃね!」
秀也が目をつけたのは逆に服装で、その日の犯人と服装が似ているのだ。
二人は男性に凄い剣幕で近づくので、それに気づいた男性は驚く。
砂田は彼を久坂達の方に連れて行くと言った。
「紹介するわね。この人上司の久坂さん、この人は五島さん。」
数男は恐ろしい形相で彼を睨みつけ、久坂は無表情であっても威圧のある顔で見つめる。
男性は二人から恐ろしいものを感じながらも、笑顔で言った。
「初めまして!名前は『サウザ』!この国の王をしております、以後お見知りおきを。」
礼儀正しく頭を下げる。
数男はクロマと重なりすぎて、イラついたのか髪を掴む。
「いたぁっ」
サウザが言うので、数男は驚いて反射的に手を離す。
「何すんの!」
砂田は怒るが、サウザは笑顔で鎮めた。
「平気だよ。」
数男はサウザを見て睨みつける。
(やっぱりマリモじゃない…)
久坂は言った。
「あー砂田てめぇここの出身かよ。まあいいけど、コイツマリモの親族?石の巫女のガキか?」
相変わらず久坂はサバサバしていて、この状況をまるで気にしていなかった。
砂田は笑顔で頷く。
「ええ、クロマとミンスのお兄様!そして私のカ・レ・シ!いやぁ今まで隠しててごめんね~!」
数男は鳥肌が立ったのか顔を険しくした。
久坂は無表情。
するとサウザは首を傾げた。
「スナダ?ネオのニホンでのお名前かな?彼女は『ネオ』って名前だよ、本名。」
「あっそう。」
と久坂はどうでもよさそうに言う。
「いくつ」
久坂が聞くと、サウザは素直に答える。
「二十二です。弟のクロマとは五つも違う。」
「若いのに王とは大変そうだな。」
するとサウザは照れた顔を見せながらも言った。
「いやぁ、かれこれ十一年経ちますからだいぶ慣れました。」
数男は驚く。
「十一歳から王をやっているのか?」
「はい。母上も父上も亡くなってしまったので、俺がやるしかなかったんです。初めは大変でしたよ~」
「父親も死んだの?」
と久坂が言うとサウザは少し焦る。
「えっとどこから言えばいいかな…。俺が十代の内に父上も母上も亡くなって…弟達は国から追放されちゃって…。」
それに対し、砂田は補足。
「実は…両親を殺した罪で、クロマとミンスは追放を食らったの。」
「両親殺したァ?アイツらサイコパスぅ?」
久坂が聞くと、サウザは苦笑。
「違うよ。クロマが母上を手にかけたのは運が悪かっただけで、えっと…父上の方は…」
サウザは微妙な反応をするので、久坂は言った。
「悪意あって殺されちまったんだな。」
サウザは黙ってしまうと、数男は鼻で笑った。
続いて久坂も鼻で笑って言う。
「じゃあさ、クロマとミンスをここに連れてきていいの?」
「いいじゃん、追放喰らうだけでしょ。」
砂田が言ったが、サウザは慌てた。
「クロマとミンスが来るの!?駄目だ!今度こそ殺されちゃう!」
「殺される?だってあの時はクロマだって幼かったし、国民もわかってくれるでしょ?」
するとサウザは一旦落ち着こうとする。
しかし落ち着けずについ喋りだす。
「誰も悪くないよ…でもみんなだってこれ以上犠牲を増やしたくないし、俺だってそう。
わかってネオ、二人は悪くないんだよ…!」
しかし砂田は首を傾げたまま。
「何の話だっけ。」
するとサウザは軽くずっこける。
「ネオしっかりしてくれ~!」
「てかさ、オレの種盗んだのお前だろ」
久坂がサウザに言うと、サウザはギクッとして頭を下げる。
「ごめん!でもこれは仕方のない事なんだ…!」
するとそこに丁度、ハジメ達が国に着いたのでハジメ達はサウザを見て驚いた。
「クロマ!」
「あらクロマ。」
ハジメと秋菜が言うと、本物のクロマは「はい」と返事をするがスルーされる。
そしてサウザは、クロマとミンスに気づくと目を見開いた。
クロマはサウザに気づき、顔を引き攣った。
「誰かに似ているな。」
自分に似ている事をわかっていない様子。
思わず数男は言った。
「お前だ馬鹿。」
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