植物人間の子

うてな

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第4章 侵食―エローション―

040 疾風迅雷コンビは似ているのか? 後半

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テオドールは余裕な笑みを見せて二人を見た。

「覚悟してね?」

すると三笠は刀を構える。

「いや、君がだよ。」

それを聞いてテオドールがつい笑ってしまうと、釣られて三笠も笑ってしまう。
そして暫く二人で声を上げて笑い合うので、クロマと秋菜は怒る。

「貴様等遊んでいるなッ!」

「緊張感が皆無ですわ!」

すると二人は笑うのをやめた。
テオドールは言う。

「彼は…なかなか筋があるね。」

三笠も帝鳩羽の背を指でなぞると言った。

「あのパパ、気が合いそうだ。」

「敵なのだからもう少しは敵対心を持つべきですわ!」

秋菜は帝汰に言うが、帝汰は首を横に振る。

「敵だから目の敵にするのは良くないな。」

クロマは恐ろしい程の殺気を漂わせ、テオドールを睨みつけていた。

テオドールはそれをも気にせずに三笠に向かうと、三笠は帝鳩羽でテオドールを切り裂こうとした。
しかしテオドールは軽々と身をかわし、両腕を三笠に向かって振りながら宙返りをする。
すると空気の刃が現れ、三笠に猛スピードで飛んできた。
三笠は帝鳩羽を素早く身構えて一つ受け、また身構えてもう一つを受けた。

「いやー速いね。」

三笠はニヤけると、テオドールもニヤける。

「伊達に風を操る能力持ってないぜ?」

「でもクロマの雷の方が速そう。」

三笠は笑顔を見せると、テオドールも笑顔で言った。

「雷は風より速いぞ~」

クロマは二人を見て舌打ちをすると、すぐに秋菜の方を見て襲いかかってきた。
秋菜はクロマの拳を薙刀の柄で受け止める。

「挨拶も無しかしら?随分無礼な態度を取るようになりましたのねクロマ。」

「今になっては関係のない事。」

クロマはそう言って、もう片方の拳を振りかぶってきた。
秋菜は受け止めている拳を思い切り押し、勢いをつけてクロマから離れた。
空かさずクロマが電光を飛ばすと、秋菜は高くジャンプをした。

「少しはお話できません事?」

秋菜はクロマの真下に落ちる。
クロマはプラズマを溜めて秋菜に向けるが、秋菜が薙刀を下に構えたので当たらないように避ける。
地面に直立する薙刀の先に、腕の力だけで体を支える秋菜。

「これじゃ腕を伸ばしても届きませんわね、クロマは身長が低いですもの。
クロマ、本気を出さなければつまらないですわ。」

秋菜は煽っているのか笑った。
クロマは秋菜を睨みつけながらも鼻で笑い、拳にプラズマを纏う。

「貴様に本気を出す?馬鹿な事を言うな、私は弱い者に本気は出さん。」

秋菜はちょっと腹が立ったのか、眉をピクっと動かした。

「あら、そう?」

秋菜は意地悪そうな笑みを浮かべると、長いスカートをめくって太ももを見せて誘惑する。
ポールダンスの様に体をくねらせ、更に胸の谷間を見せてから秋菜は言った。

「貴方が勝ったら、この体を自由にしてもよろしいですわよ?」

するとクロマは急に顔色を変えて秋菜の胸を見始めた。

「ほらぁ~」

秋菜は柄でもない甘えた声を出してクロマを誘惑していくが、内心恥ずかしい。

(怒りに任せてやらなければよかったですわ…。)

遠くで三笠とテオドールは休戦して観察中。

「あれ餌に群がる動物園の動物みたいだよね。」

三笠はクロマを見て言うと、テオドールは笑った。
クロマは純粋に夢中になっていた。

「私が勝てば、何をしても文句を言わんのだな?」

秋菜はあまりにも熱い視線に呆れながらも言う。

「そ、そうですわ。」

するとクロマはやっと口元を笑わせる。

「その条件…よくわかっているではないか!ならば見せよう、我が力を!」

クロマは体中にプラズマを帯び、周囲に目を痛めるほどの閃光をチラつかせる。
急に力が大きくなったため、秋菜は驚いた。

「いや…!まさか本当に本気になっていますの…!?」

クロマは空に腕を伸ばし声を上げた。

「喰らえッ!裁きのフスプィールーチ!」

その瞬間、秋菜は殺気を感じて咄嗟に薙刀から飛び降りた。
空から稲妻の様で稲妻でない光線が、目に残像を残し一瞬にして落ちる。
すると大地にプラズマを走らせ、衝撃波を生み出す。
秋菜は衝撃波に足を取られ尻餅をついてしまうと、目の前の光景に唖然とした。

光が消えてやっと見えた先は、半径数メートルばかり円形に溶かされ熱を放つ地面だった。
溶かされた地面は赤く燃え、微かに炎も立っていた。
その上秋菜が使っていた薙刀も見当たらない。

「な…なんて強力…」

秋菜は腰を抜かしてしまう。
三笠も目を見開いて言う。

「ただの雷ではないね。」

「地面が脆いだけ。クロマのプラズマの前ではな。」

「こ!殺す気ですの!私を燃やしたら勝ったも何も貴方が望んでいる事もできませんのよ!」

秋菜がクロマへ苦情を言うと、クロマは真顔になって力を落ち着かせる。
力が落ち着いたのを感じると、秋菜は安心の溜息をついた。
クロマは愚痴をこぼすように言った。

「全く、人間の体は脆すぎる。これでは望む戦いが一向にできん。」

「貴方が化け物なだけですわ…!」

するとクロマは秋菜へ足を向かわせる。

「しかし、これで私の勝ちだな。貴様、動けないだろう?」

クロマが言うので、秋菜はギクッとなる。
クロマは口角を上げる。

「約束の時間だ。」

「こ!この場でですの!?もっと場所を選んで…!」

秋菜は最後の抵抗に出るが、クロマはそんな事は気にしない。
三笠とテオドールは目を丸くした。

「あらら。」

「まあ約束だから仕方ない。」

「そっちも薄情ですわねッ!」

クロマは秋菜に手を伸ばすと、急にクロマの体に何かが巻きつく。
クロマは視線を体にやると、それは植物。
三笠は笑顔を見せると言った。

「この植物は…五島先生!」

公園の入口には、数男とサチがいる。

「なぜこんな女を助けなきゃならん」

「文句言わずに!」

クロマは数男を見ると言った。

「貴様、私の邪魔をする気か。」

「うるさい、この性犯罪者。」

クロマは眉を潜める。

「性犯罪者?これは了承と申し合わせもしている潔白の行為だ。」

「傍から見たらただのド変態にしか見えないんだよ性欲マリモ。せめて室内でやる事だなド変態マリモ。」

数男は二度に分けて暴言を吐いた。
クロマは顔を険しくする。

「言わせておけば無い事を有る事の様に言いおって…!八つ裂きにされたいか…!」

「こっちのセリフだ。」

数男はそう言って、クロマを睨みつけた。

「お前はまた病院の連中を殺そうと企んでいる。『悪は消す』どっちが悪だよ。
そのクズめいたクソ理屈をいい加減改めないとこっちがお前を八つ裂きにする…!」

「何を馬鹿な事を。それは貴様等人間どもの感覚からなるもの、私達にとっては貴様等が悪だ。」

クロマはそう言って、高熱のプラズマで数男の植物を燃やしてしまった。
数男は植物をクロマから離すと言い放つ。

「黙れ異物がッ!地球に土足で上がり込んできて、堂々侵略とはいい度胸だ!」

クロマは口元を笑わせる。

「貴様等の様な腑抜けた人間が発展したのも、全てミンスのお陰であるぞ?」

そう言い、数男にプラズマを飛ばす。
数男は咄嗟に植物で守るが、植物が燃えてしまう。

「次は貫いてやろう。」

クロマはもう一発放った。
それを黙ってサチが見ている訳もなく、サチはプラズマで相殺した。
それを見たクロマは、笑みを浮かべて言った。

「予定変更だな、貴様から殺す。」

クロマは容赦なくサチに襲いかかる。
特に何もせずにただ距離を詰めてきたクロマ。
サチは気を抜いていると、すぐ目の前で閃光がピカッと光った。
するとサチは遠くに飛ばされ、頬や体に火傷を負ってしまった。

「くっ…!油断したわ…!」

「サチ!無理はするなよ!」

数男の言葉に頷いたサチは、杖の先から光線を出しクロマに攻撃する。
クロマはそれを自分の力で受け止め、相殺していく。

「貴様の力はその程度であったか?」

「君が強くなっただけよ…っ!」

クロマは高く飛ぶと、周囲に雷を球体に収めたような電気の弾が現れる。
サチは危険を察知し、すぐさまプラズマでその弾を打ち消す。
クロマの緑のプラズマと、サチの黄色いプラズマが交戦を続ける。
クロマは笑う。

「少しは応用や力の使い方が上手くなったようだな。」

「君はどうかしら」

サチが言っていると、真下からガラスの触手が伸びてきてクロマを狙った。
クロマは避けると、みんなは驚く。

「このガラスは…!守君!?」

サチが探すと、「ここだ!」と数男が言ったので木の方を見た。
すると木の陰から守が顔を出した。

「誠治さんの大事な公園を荒らしちゃって、公園の掃除に付き合ってもらうからねんねんころり。」

「勝負の水差しとはいい度胸だな貴様。」

クロマが守に言うと、守はアッカンベーしてクロマを罵る。

「変態!ドスケベ!脳筋!えっちすけべわんたっちはいたっちわんわんぼーい!!」

「意味のわからん弁を並べるな。」

クロマが冷静に言い返すと、更に別の人の声が聞こえてくる。

「出て行ってくれませんか?」

数男は背後を確認すると、そこには誠治がいた。
誠治は黒い植物を生やし、クロマを睨む。
クロマは眉を潜めた。

「やはりここにいると貴様が現れるか。」

誠治はクロマを見ると、恨みのこもった表情で言い放つ。

「出て行け…!」

サチは誠治の見た事のない殺気に驚いていると、テオドールは冷や汗。

「クロマ、行こう?この子がいるんじゃ勝てないって。」

それに対し、クロマは了承し頷いた。
テオドールの風とともに、二人の姿は消える。
誠治はすぐにサチに駆け寄った。

「大丈夫ですか…!?すぐ手当をしないと、魔法少女さ…
いや、真渕さん…」

サチは火傷の痕を見る。

「確かに酷い傷ですね。」

「お前がサチを心配するな。私がするんだ。」

数男は誠治を退かしてサチの体を心配すると、誠治は苦笑。

「にしてもグッドタイミングですわね。」

秋菜が誠治に近づくと、誠治は木の陰にいる守を見る。

「彼が教えてくれました。」

「じゃあ始終そこでずっと見てたのかな守君」

三笠が微笑むと、守は答えた。

「そうだよコンコンチキーン」

すると秋菜は思わず無表情に。

「全員薄情ですわね…」
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