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第5章 大絶滅―グレートダイイング―
052 サウザ、クロマと分かち合え 前半
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ミィシェルはミンスの部屋のベッドにて、寝そべりながらアルバムを眺めていた。
ミンスは化粧台の前に座り、クロマが後ろでミンスの髪にくしを入れている。
「髪が短いと寝癖がとっても気になってしまいます。」
「そうか。」
クロマが言うと、ミンスはクスッと笑った。
「クロマは寝癖があっても髪が膨れ上がっても気にしませんものね。」
「気にしてどうする。」
クロマは言い、ミンスの頭に装飾品を付ける。
青い宝石が下がっている装飾品で、宝石が丁度額のあたりに来る。
「やはりこれがないとしっくり来ません。」
ミンスは微笑み、クロマは言った。
「母上の飾り。なんだか、私のイヤリングに少し似ている気もする。」
「あら、そうですよ。わたくしが似たものをクロマにあげたのですから。」
ミンスは両手で丁寧にクロマのイヤーカフを取ると、クロマのイヤリングと自分についている装飾品の宝石を並べた。
「ほら、そっくり。」
ミンスが言うと、クロマはその二つを見比べていた。
「しかしサイズと、形が少し違うな。」
ミンスはクスクスと笑うと言った。
「ただ同じだとつまらないでしょう?結婚指輪の代わりに、身につけておきましょう。」
ミンスは微笑むので、クロマはそっぽ向いた。
「意味がわからん。」
そう言ってイヤーカフを身につけるのである。
するとふとミィシェルが言った。
「ミンス達の 兄はここまで来るノでは!」
「そうですね、確かに彼はワープが使えるはずです。」
「やはり先に片付けておくべきだったか。」
クロマは指を鳴らして言うと、ミンスは微笑んで言う。
「あら、わたくしに考えがあります。協力してくれますよね、クロマ、ミィシェル。」
二人が頷くと、ミンスは言った。
「ついでに彼が持っているはずの、盗まれた植物人間の石を取り戻してきていただきたいのです。」
「まだ力が足りないです?」
ミィシェルが聞くと、ミンスは頷く。
するとミィシェルは真面目な顔をした。
「わかったです!石を取り返すです!」
「ありがとうございます。」
三笠は実家に到着。
和風の家だが大きすぎる事もなく、実に質素な一軒家である。
ちなみに結局守は、シュンと一緒にお留守番のアンジェルの悪戯で行けないとの事。
「ただいま~」
三笠が言うと、母親らしき女性が出てきた。
「帝汰~!いや~避難所行かずに待ってて良かった!」
そう言ってから三笠の体の様子を見ていた。
「怪我はしていないわね。肌は…真っ白だわ!具合が悪いの!?」
女性は三笠の心配をしだす。
すると三笠は微笑んだ。
「そんな事ないさ、あまり外に出ないからかもね。」
「あらそう?
パパもママも心配していたのよ?ずぅ~っと帰ってこないんだもん。」
女性は奥へ案内しながら言った。
「自分でママって言わないでよ恥ずかしい。」
「そうだ。すぐに避難しましょ?」
しかし三笠は言う。
「用事があるから無理かな。」
そう言ってとある部屋に向かった。
「あら、パパの部屋に何か用があるのかしら。」
すると三笠は言った。
「二人は早く支度して、避難所へ行ってきて。
僕は後で向かうよ、秋菜も連れてこないといけないから。」
「え、ええ。」
女性はそう言うと、部屋を出て行った。
三笠は父の部屋に入る。
すると父の部屋に飾ってある、一本の立派な刀の前に正座した。
「ずっと忘れていたよ。君の出番、随分遅れちゃったね。」
刀に言った。
それから手元に帝鳩羽を出現させ、刀に見せる。
「テイハ、これから仲間になる『巴笠(トモエガサ)』だよ。
彼は僕が小さい頃に父が買ってくれた極上の日本刀、将来使う事を誓っていたが随分遅くなってしまった。」
三笠はそう言い、刀を手に取る。
「ごめんねトモエ、テイハの事で頭がいっぱいになりすぎていた。でも今から君も一緒だ、共に戦ってはくれないかい?」
そう言って三笠は目を閉じ、帝鳩羽を腰にかけると巴笠を手に取った。
「大丈夫。緊張しなくてもいい、外は素敵なところさ。憧れの空なんだろう?
一緒に飛ぼう、トモエ。」
三笠は刀に微笑む。
すると三笠は、過去を思い出す。
――「トモエも空を飛びたがっている…!
…だから、その日が来たら三人で飛び立とう!秋菜。」――
三笠は過去に自分が言った言葉を思い出し、驚いた表情で黙り込む。
そして頭を抱えた。
「駄目だ。この神聖な誓いの前に顔を落とす者がいる。」
三笠は刀を見つめ、それから天井を見上げる。
「下を向いては空など夢のまた夢。空を目指す鳥は下など見ない。」
そうは言ったが、三笠の脳裏には秋菜ばかりが出てくる。
秋菜が自分を叱る姿、心配する姿、…全てだ。
しかし同時に、秋菜が悲しい顔ばかりをしている事も思い出す。
三笠はそれを思い出すと、呟いた。
「君はもっと、空を見る人だった。決して俯く事のない、真っ直ぐで強く誠実な女性だった。
誰に対しても厳しく、親よりも叱ってくれた君が僕は好きだった…」
三笠は目を閉じる。
「君は植物人間の力を受けてから、その心が揺れてしまった。変わってしまった。
…そんな君の気持ちを知りたくて、僕も五島先生に頼み込んで仲間にしてもらった。」
そう言うと、三笠は目を開いて微笑む。
「…結局、本当に大切な事を忘れてしまったよ。」
三笠はふと、携帯のメールを見た。
秋菜から送られた『一度でもいいから帝汰さんに逢いたいです。』という文を見る三笠。
あれ以来、メールは来ていない。
「今行っても、また君を悲しませるだけ。
…全てが終わったら、その時はありのままの僕を…受け止めて欲しいよ。」
数男とサチは墓場に来ていた。
数男は一つの墓に線香を立て、手を合わせて黙祷を捧げる。
立派な墓で、十数人ほど名前が書かれている。
それを確認した後にサチも一緒になってやるが、先に数男が黙祷を終えてサチに振り返った。
「お前がやってどうする。」
「でも、礼儀として。」
「いいんだよ。お前は関係ないんだから。」
「誰のお墓ですか?」
すると数男は少し虚しい顔を見せて言った。
「今までマリモに殺されてきた私の力を受けた奴等の墓だ。
どいつも精神病質や社会病質で、居場所がない悲しいヤツ等なんだけど本人はまるで気にしてなかったな。
…最後まで突っ走って、マリモに殺されて。…もうすぐで決着がつくとだけ伝えに来た。」
「そうなんですか…。名前、沢山ありますね。」
サチが言うと、数男は恨みの表情をあらわにして言った。
「当たり前だ…!あのマリモはそれだけ人間を殺してきた…!
アイツを殺さないと、私の気も、ヤツ等の無念も晴れない…!」
そしてすぐに落ち着いた顔を見せた。
「とは言っても、ヤツ等に無念があるかは知らんがな。」
「数男さん、沢山悲しい思いをしてきたんですね。」
サチが言うと、数男は眉を潜める。
「言うな。本当に、それを言われるとまた苦しくなる。」
「すいません…」
サチが謝ると、数男は急にクスクスと笑った。
「何が可笑しいんですか?」
「サチといると機嫌が良くなるだけだ。」
そう言って数男がサチに寄り添うと、サチは迷惑そうな顔を浮かべる。
「またセクハラですか?」
すると数男は次に無表情。
「セクハラセクハラうるさいな。」
「本当の事ですから。」
すると数男は、何が面白いのか吹いた。
サチは数男の方を見ると、数男は高笑いを始めてしまう。
サチは流石に動揺。
「ちょ、やめてください。こんなところで大声で笑うだなんて…!」
「サチはいつも不愉快そうな顔をしてるからな、面白い。」
数男はそう言って笑いを止めない。
「本当に人が嫌がる姿が好きなんですね…。
あなたはいつも大変愉快そうで羨ましいです。」
サチはそう言って溜息を吐いた。
ミンスは化粧台の前に座り、クロマが後ろでミンスの髪にくしを入れている。
「髪が短いと寝癖がとっても気になってしまいます。」
「そうか。」
クロマが言うと、ミンスはクスッと笑った。
「クロマは寝癖があっても髪が膨れ上がっても気にしませんものね。」
「気にしてどうする。」
クロマは言い、ミンスの頭に装飾品を付ける。
青い宝石が下がっている装飾品で、宝石が丁度額のあたりに来る。
「やはりこれがないとしっくり来ません。」
ミンスは微笑み、クロマは言った。
「母上の飾り。なんだか、私のイヤリングに少し似ている気もする。」
「あら、そうですよ。わたくしが似たものをクロマにあげたのですから。」
ミンスは両手で丁寧にクロマのイヤーカフを取ると、クロマのイヤリングと自分についている装飾品の宝石を並べた。
「ほら、そっくり。」
ミンスが言うと、クロマはその二つを見比べていた。
「しかしサイズと、形が少し違うな。」
ミンスはクスクスと笑うと言った。
「ただ同じだとつまらないでしょう?結婚指輪の代わりに、身につけておきましょう。」
ミンスは微笑むので、クロマはそっぽ向いた。
「意味がわからん。」
そう言ってイヤーカフを身につけるのである。
するとふとミィシェルが言った。
「ミンス達の 兄はここまで来るノでは!」
「そうですね、確かに彼はワープが使えるはずです。」
「やはり先に片付けておくべきだったか。」
クロマは指を鳴らして言うと、ミンスは微笑んで言う。
「あら、わたくしに考えがあります。協力してくれますよね、クロマ、ミィシェル。」
二人が頷くと、ミンスは言った。
「ついでに彼が持っているはずの、盗まれた植物人間の石を取り戻してきていただきたいのです。」
「まだ力が足りないです?」
ミィシェルが聞くと、ミンスは頷く。
するとミィシェルは真面目な顔をした。
「わかったです!石を取り返すです!」
「ありがとうございます。」
三笠は実家に到着。
和風の家だが大きすぎる事もなく、実に質素な一軒家である。
ちなみに結局守は、シュンと一緒にお留守番のアンジェルの悪戯で行けないとの事。
「ただいま~」
三笠が言うと、母親らしき女性が出てきた。
「帝汰~!いや~避難所行かずに待ってて良かった!」
そう言ってから三笠の体の様子を見ていた。
「怪我はしていないわね。肌は…真っ白だわ!具合が悪いの!?」
女性は三笠の心配をしだす。
すると三笠は微笑んだ。
「そんな事ないさ、あまり外に出ないからかもね。」
「あらそう?
パパもママも心配していたのよ?ずぅ~っと帰ってこないんだもん。」
女性は奥へ案内しながら言った。
「自分でママって言わないでよ恥ずかしい。」
「そうだ。すぐに避難しましょ?」
しかし三笠は言う。
「用事があるから無理かな。」
そう言ってとある部屋に向かった。
「あら、パパの部屋に何か用があるのかしら。」
すると三笠は言った。
「二人は早く支度して、避難所へ行ってきて。
僕は後で向かうよ、秋菜も連れてこないといけないから。」
「え、ええ。」
女性はそう言うと、部屋を出て行った。
三笠は父の部屋に入る。
すると父の部屋に飾ってある、一本の立派な刀の前に正座した。
「ずっと忘れていたよ。君の出番、随分遅れちゃったね。」
刀に言った。
それから手元に帝鳩羽を出現させ、刀に見せる。
「テイハ、これから仲間になる『巴笠(トモエガサ)』だよ。
彼は僕が小さい頃に父が買ってくれた極上の日本刀、将来使う事を誓っていたが随分遅くなってしまった。」
三笠はそう言い、刀を手に取る。
「ごめんねトモエ、テイハの事で頭がいっぱいになりすぎていた。でも今から君も一緒だ、共に戦ってはくれないかい?」
そう言って三笠は目を閉じ、帝鳩羽を腰にかけると巴笠を手に取った。
「大丈夫。緊張しなくてもいい、外は素敵なところさ。憧れの空なんだろう?
一緒に飛ぼう、トモエ。」
三笠は刀に微笑む。
すると三笠は、過去を思い出す。
――「トモエも空を飛びたがっている…!
…だから、その日が来たら三人で飛び立とう!秋菜。」――
三笠は過去に自分が言った言葉を思い出し、驚いた表情で黙り込む。
そして頭を抱えた。
「駄目だ。この神聖な誓いの前に顔を落とす者がいる。」
三笠は刀を見つめ、それから天井を見上げる。
「下を向いては空など夢のまた夢。空を目指す鳥は下など見ない。」
そうは言ったが、三笠の脳裏には秋菜ばかりが出てくる。
秋菜が自分を叱る姿、心配する姿、…全てだ。
しかし同時に、秋菜が悲しい顔ばかりをしている事も思い出す。
三笠はそれを思い出すと、呟いた。
「君はもっと、空を見る人だった。決して俯く事のない、真っ直ぐで強く誠実な女性だった。
誰に対しても厳しく、親よりも叱ってくれた君が僕は好きだった…」
三笠は目を閉じる。
「君は植物人間の力を受けてから、その心が揺れてしまった。変わってしまった。
…そんな君の気持ちを知りたくて、僕も五島先生に頼み込んで仲間にしてもらった。」
そう言うと、三笠は目を開いて微笑む。
「…結局、本当に大切な事を忘れてしまったよ。」
三笠はふと、携帯のメールを見た。
秋菜から送られた『一度でもいいから帝汰さんに逢いたいです。』という文を見る三笠。
あれ以来、メールは来ていない。
「今行っても、また君を悲しませるだけ。
…全てが終わったら、その時はありのままの僕を…受け止めて欲しいよ。」
数男とサチは墓場に来ていた。
数男は一つの墓に線香を立て、手を合わせて黙祷を捧げる。
立派な墓で、十数人ほど名前が書かれている。
それを確認した後にサチも一緒になってやるが、先に数男が黙祷を終えてサチに振り返った。
「お前がやってどうする。」
「でも、礼儀として。」
「いいんだよ。お前は関係ないんだから。」
「誰のお墓ですか?」
すると数男は少し虚しい顔を見せて言った。
「今までマリモに殺されてきた私の力を受けた奴等の墓だ。
どいつも精神病質や社会病質で、居場所がない悲しいヤツ等なんだけど本人はまるで気にしてなかったな。
…最後まで突っ走って、マリモに殺されて。…もうすぐで決着がつくとだけ伝えに来た。」
「そうなんですか…。名前、沢山ありますね。」
サチが言うと、数男は恨みの表情をあらわにして言った。
「当たり前だ…!あのマリモはそれだけ人間を殺してきた…!
アイツを殺さないと、私の気も、ヤツ等の無念も晴れない…!」
そしてすぐに落ち着いた顔を見せた。
「とは言っても、ヤツ等に無念があるかは知らんがな。」
「数男さん、沢山悲しい思いをしてきたんですね。」
サチが言うと、数男は眉を潜める。
「言うな。本当に、それを言われるとまた苦しくなる。」
「すいません…」
サチが謝ると、数男は急にクスクスと笑った。
「何が可笑しいんですか?」
「サチといると機嫌が良くなるだけだ。」
そう言って数男がサチに寄り添うと、サチは迷惑そうな顔を浮かべる。
「またセクハラですか?」
すると数男は次に無表情。
「セクハラセクハラうるさいな。」
「本当の事ですから。」
すると数男は、何が面白いのか吹いた。
サチは数男の方を見ると、数男は高笑いを始めてしまう。
サチは流石に動揺。
「ちょ、やめてください。こんなところで大声で笑うだなんて…!」
「サチはいつも不愉快そうな顔をしてるからな、面白い。」
数男はそう言って笑いを止めない。
「本当に人が嫌がる姿が好きなんですね…。
あなたはいつも大変愉快そうで羨ましいです。」
サチはそう言って溜息を吐いた。
応援ありがとうございます!
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