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ハアト編
103 静けさを取り戻した海
黄泉が凍り付き、さざ波の音だけの静かな海を取り戻した。韻が神使の力を得た事に驚いている一同の所へ、海美がやって来る。海美は札を持ってきていたのか、札を片手にやってきて呆然。
「あれ?全部終わった…?」
「遅かったな海美。」
星夜がそう言うと、海美は悔しそうな顔を見せた。続いて星夜はハアトの首と身体を拾うと、翔太郎に言う。
「こやつは屍人だろう。ポチの力で再生させたら生き返るのではないか?」
「やってみる価値はありそう…。」
翔太郎がそう答えると、韻はそんな翔太郎に鳥肌を覚えた。
「何?首チョンパされた人間を平気な顔して見れるって、兄貴って本当はサイコパス?」
「違うけど…。韻は弱すぎるよね、そういうのに。僕は耐性がついてしまって平気になってしまったよ。」
流石は身体を押しつぶされた過去のある屍人だ。すると星夜はハアトの首を韻に見せると、韻はその場で吐いてしまう。翔太郎はそれに苦笑。
その時だ。
氷漬けにされた黄泉の周りに、四つの札が貼られる。一同はそれに気づくと、黄泉の身体が氷ごと消えてしまう。
「黄泉が消えた!?」
要が言うと、海美は言った。
「札使いって事は、ユリアか!」
四枚の札は引き寄せられるように、ユリアの手元へ向かった。札を取ったユリアは、既に道路に駐車してあった車に乗っている。ユリアは車が運転できるのか、そのまま走り去ってしまった。
「おい逃げた!」
韻は追いかけようとしたが、翔太郎がそれを腕をつかんで止める。その為、韻は言った。
「追いかけねぇと!」
「無駄だよ。それに、今は韻の方が大事だ。」
「なんで俺!?」
「神使の力を体内へ取り込んでしまったろう!?何か悪影響が起きたらどうするんだ!まずは様子を見ないと!」
「俺は平気だから!」
「韻っ!」
翔太郎はそう言い放つと、ハアトの生首を韻に見せた。韻は間近で見せられたショックか、気を失って倒れてしまう。それを見ていたポチは無表情で呟いた。
「韻、弱すぎ…。」
翔太郎はそんな韻を担ぐと、そこへケンがやって来る。
「部長、近くに別荘があるんでそこで今日はみんなで休みましょう。」
ケンの言葉に、思わず翔太郎は戸惑ってしまう。
「え?別荘なんてあるの?」
「はい。父上から貰ったものですがね。」
別荘の存在に驚いていた翔太郎だったが、ケンの父親の話を聞いて首を横に振る。
「じゃあ駄目だ。君のお父さんは黄泉なんだろう?黄泉の管理下にある別荘に泊まるわけには…。」
翔太郎が警戒した様子でそう言うと、ケンは俯いた。しかしそこへ、人の姿に戻った要の兄がやって来る。
「あれは別人かもな。」
「え?」
翔太郎が振り返ると、ケンも言った。
「雰囲気が父上とは全く違いました。俺が見てきた父上とは全く似てもつかない…。」
しかし要は首を傾げる。
「えー。一人称とか二人称とか変わんないじゃん。」
それに対し、要の兄は冷静にツッコミを入れる。
「要は人を観察しないからな。きっと違いにも気付かないはずだ。」
「ちなみに、どんな違和感なんですか?」
そう言われると、要の兄は青ざめた。ケンも照れた様子を見せるので、翔太郎は首を傾げた。すると要の兄は必死な表情で言う。
「アイツは私の顔を見るなりベタベタくっついて『お父さんって呼んでよ~』と言う気持ちの悪い父親だぞ!?それなのに今回会っても、何一つ反応を見せない。異常だ…!」
「俺も数日ぶりに会ったりすると、必ず抱きついてきます。…凄く親バカな感じなんです。」
二人の証言に、翔太郎は想像もつかず呆然。星夜も翔太郎に言う。
「今考えれば、不審な点は多い。翔太郎は知らないだろうが、奴は本来穏和な性格だ。人の首をはねたり、人を殺める手段を選ぶ様な性格ではない。むしろそういう事に抵抗を覚えるタイプの人間だ。」
「じゃあ、一体黄泉は何者?」
翔太郎の質問に、星夜は難しい表情を浮かべる。
「それはわからん。」
「とにかくだ。別人が別荘を隅々まで把握している訳が無い。以前襲撃された家に戻るより危険度は低いはずだ。という事で行くぞ。」
と要の兄が半強制的に決め、別荘へと向かう事となった。
一方、黄泉の方では。
黄泉は車に乗せられ、ユリアが車を走らせている状態だった。黄泉は溜息をつく。
「やっと氷溶けた。あーあ、あの妖は無理にでも封じとくんだったな。」
ユリアはそれらに返答する事なく、ただ静かに車を走らせた。しかし、ユリアは思っている。
(神木間韻…彼さえ始末すれば、神使は現世にいなくなる。だけど、例え死んでもやがて来世へと向かう。やはり、屍人の力を全て集めて『願い』で神使の魂を消滅させるしか…!)
どうやらそれが、ユリアの本当の願いのようだった。以前翔太郎に話した「生き返る為」と言うのはハッタリだったのだろう。
一方黄泉は、外の景色を眺めながらも思った。
(神使の力を得た韻くん。…彼の身体と今の身体、どっちがいいだろう。)
と、黄泉は怪しい事を考えていた。
「あれ?全部終わった…?」
「遅かったな海美。」
星夜がそう言うと、海美は悔しそうな顔を見せた。続いて星夜はハアトの首と身体を拾うと、翔太郎に言う。
「こやつは屍人だろう。ポチの力で再生させたら生き返るのではないか?」
「やってみる価値はありそう…。」
翔太郎がそう答えると、韻はそんな翔太郎に鳥肌を覚えた。
「何?首チョンパされた人間を平気な顔して見れるって、兄貴って本当はサイコパス?」
「違うけど…。韻は弱すぎるよね、そういうのに。僕は耐性がついてしまって平気になってしまったよ。」
流石は身体を押しつぶされた過去のある屍人だ。すると星夜はハアトの首を韻に見せると、韻はその場で吐いてしまう。翔太郎はそれに苦笑。
その時だ。
氷漬けにされた黄泉の周りに、四つの札が貼られる。一同はそれに気づくと、黄泉の身体が氷ごと消えてしまう。
「黄泉が消えた!?」
要が言うと、海美は言った。
「札使いって事は、ユリアか!」
四枚の札は引き寄せられるように、ユリアの手元へ向かった。札を取ったユリアは、既に道路に駐車してあった車に乗っている。ユリアは車が運転できるのか、そのまま走り去ってしまった。
「おい逃げた!」
韻は追いかけようとしたが、翔太郎がそれを腕をつかんで止める。その為、韻は言った。
「追いかけねぇと!」
「無駄だよ。それに、今は韻の方が大事だ。」
「なんで俺!?」
「神使の力を体内へ取り込んでしまったろう!?何か悪影響が起きたらどうするんだ!まずは様子を見ないと!」
「俺は平気だから!」
「韻っ!」
翔太郎はそう言い放つと、ハアトの生首を韻に見せた。韻は間近で見せられたショックか、気を失って倒れてしまう。それを見ていたポチは無表情で呟いた。
「韻、弱すぎ…。」
翔太郎はそんな韻を担ぐと、そこへケンがやって来る。
「部長、近くに別荘があるんでそこで今日はみんなで休みましょう。」
ケンの言葉に、思わず翔太郎は戸惑ってしまう。
「え?別荘なんてあるの?」
「はい。父上から貰ったものですがね。」
別荘の存在に驚いていた翔太郎だったが、ケンの父親の話を聞いて首を横に振る。
「じゃあ駄目だ。君のお父さんは黄泉なんだろう?黄泉の管理下にある別荘に泊まるわけには…。」
翔太郎が警戒した様子でそう言うと、ケンは俯いた。しかしそこへ、人の姿に戻った要の兄がやって来る。
「あれは別人かもな。」
「え?」
翔太郎が振り返ると、ケンも言った。
「雰囲気が父上とは全く違いました。俺が見てきた父上とは全く似てもつかない…。」
しかし要は首を傾げる。
「えー。一人称とか二人称とか変わんないじゃん。」
それに対し、要の兄は冷静にツッコミを入れる。
「要は人を観察しないからな。きっと違いにも気付かないはずだ。」
「ちなみに、どんな違和感なんですか?」
そう言われると、要の兄は青ざめた。ケンも照れた様子を見せるので、翔太郎は首を傾げた。すると要の兄は必死な表情で言う。
「アイツは私の顔を見るなりベタベタくっついて『お父さんって呼んでよ~』と言う気持ちの悪い父親だぞ!?それなのに今回会っても、何一つ反応を見せない。異常だ…!」
「俺も数日ぶりに会ったりすると、必ず抱きついてきます。…凄く親バカな感じなんです。」
二人の証言に、翔太郎は想像もつかず呆然。星夜も翔太郎に言う。
「今考えれば、不審な点は多い。翔太郎は知らないだろうが、奴は本来穏和な性格だ。人の首をはねたり、人を殺める手段を選ぶ様な性格ではない。むしろそういう事に抵抗を覚えるタイプの人間だ。」
「じゃあ、一体黄泉は何者?」
翔太郎の質問に、星夜は難しい表情を浮かべる。
「それはわからん。」
「とにかくだ。別人が別荘を隅々まで把握している訳が無い。以前襲撃された家に戻るより危険度は低いはずだ。という事で行くぞ。」
と要の兄が半強制的に決め、別荘へと向かう事となった。
一方、黄泉の方では。
黄泉は車に乗せられ、ユリアが車を走らせている状態だった。黄泉は溜息をつく。
「やっと氷溶けた。あーあ、あの妖は無理にでも封じとくんだったな。」
ユリアはそれらに返答する事なく、ただ静かに車を走らせた。しかし、ユリアは思っている。
(神木間韻…彼さえ始末すれば、神使は現世にいなくなる。だけど、例え死んでもやがて来世へと向かう。やはり、屍人の力を全て集めて『願い』で神使の魂を消滅させるしか…!)
どうやらそれが、ユリアの本当の願いのようだった。以前翔太郎に話した「生き返る為」と言うのはハッタリだったのだろう。
一方黄泉は、外の景色を眺めながらも思った。
(神使の力を得た韻くん。…彼の身体と今の身体、どっちがいいだろう。)
と、黄泉は怪しい事を考えていた。
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