植物人間の子

うてな

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第1章 精神病質―サイコパシー―

017 刀とトゲがお好き?並ならぬ教師、三笠帝汰

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一方、サチの方では。
呆気なく公園に着いてしまうサチら三人。
すると噴水の傍のベンチには三笠と、陽の下院の管理者である秋菜が一緒に座っていた。

「女性の方?」

サチが隠れて見ていると、他の二人も隠れて見る。

「あれはマリモと痩男たちの宗教組織のナンバーツーだ。三笠とは恋人関係だった。」

と数男。

「だった?」

サチは言い方に違和感を感じているところだが、二人の会話を聞いた。
秋菜は切ない表情を見せて三笠に言う。

「帝汰さん、やはり時々ここに来てくださるのね。」

対し三笠は淡々としており、まるで他人を相手にしているかのような反応だった。
その上視線は彼女の方ではなく、公園に群がる鳩を捉えている。

「まあね、この鳩たちはなんだか見捨てられないよ。君は随分変わったけど、鳩は変わらないからかもね。」

そう三笠は言い、地味な光景だが鳩に餌を与える。
秋菜は悲しそうな表情になった。

「そう。私の事は…なんとも思わないのね…。」

「うん。それよりも僕は、五島先生のトゲに気づいてしまった…。彼に一生ついていかねば。」

三笠は笑顔を浮かべ、意味不明な事を言う。
茂みに隠れて見ているサチは三笠に引いた様子で言った。

「なぜ三笠さんを好きになったんですかねあの人。」

すると数男はチラッとサチを見てから言う。

「植物人間になる前は、彼女を大事にする男だった。」

その言葉の意味を感じ取ったのか、それでも信じられない様子でサチは呟く。

「え…」

「言っただろ、力を受ければ思いが欠けると。三笠もそうだ、大切な彼女を思う心を失った。」

それを聞いたサチは頭が空っぽになる。
いざ目の前にそういう人がいると、自分もああなるのかと不安になるのだ。

「お前もきっとそうだ、大事な人間を大事と思えなくなる。」

サチはショックを隠しきれず、少しムスっとする。

「なんで…こんな副作用なんだろ…。もっと別のでいいのに…。」

そのサチの呟きを聞いて、数男はサチから目を逸らして三笠の方を再び見た。
秋菜は耐えられないのか、遂にはベンチから立ち上がった。

「今日は失礼しますわ。」

「さようなら。」

三笠は微笑んでいた。
その言葉が秋菜に突き刺さるようで、彼女は涙をこらえて立ち去っていった。
三笠はまだ近くに秋菜がいるのにも関わらず声を出す。

「シュン、そこにいるんだろ?他の人も来てるのかな?」

シュンは照れながら姿を現す。

「バレてたかー!」

「図体が大きいシュンが見えないとでも?」

「それもそう。」

シュンはあれを見ても何も感じないのか、いつも通りの笑顔だった。
同情すらしないシュンを見ると、流石のサチも彼がサイコパスである事実に納得できそうな気がしてくる。
サチは渋々顔を出し、数男もサッと姿を現した。

「五島先生~」

と三笠は嬉しそう。

「彼女に随分冷たいこと言うんですね。」

サチがそう言うと、三笠は言う。

「興味がなくなったからね。不思議だ、本当に大事な人の思いが消えるだなんて。でも案外苦しいものでもないよ、自然とこうなってるさ。」

サチはその様子に狂気さえ感じる。
数男は溜息をついて三笠を見た。

「お前は平気でも、忘れられた本人が苦しんでるだろ。って言っても、今のお前にはわからないだろうな。」

数男はそう言うとツルで遮られた空を見上げる。
三笠も釣られて上を見上げるが、すぐに顔をみんなの方に向ける。

「何言ってるのさ。五島先生が元に戻れば僕達も元に戻る、その時にまたやり直すつもりさ。」

「都合のいい男だ。」

数男の言葉に、三笠は微笑む。

「中身の無い愛を向けるほど、失礼なものはない気がするなあ。」

その言葉は明らかに、数男に向けて放っていた。
どうやら嫌味らしく、言われた数男は急に不機嫌な様子になって舌打ちをし、みんなから顔を逸らす。
サチは何のことだかさっぱりな顔をしている。
すると三笠が言った。

「歳を重ねるほど人は苦労をするものなんだよ。」

「は…はあ。」

サチは微妙な反応をした。
そこに、ゴミ拾いボランティアをしている誠治が通りかかる。

「あ、真渕さん!」

サチは誠治に気づき赤面。

「九重先輩…!」

誠治は喜んでサチの元へ駆け寄ってくれる。

(今日はもう先輩は退勤後だろうからゆっくり話せそう…!)

サチが期待を抱えたその時。
上空から丸く大きな影がみんなに被る。
サチはデジャヴを感じ、嫌な予感がして顔を引きつった。
空からどんなものが落ちてくるのかとサチが空を見上げると、なんと大きな鉄球のような物が落ちてきていた。

それを遠巻きから眺める綺瑠は呟いた。

「遺伝子操作した植物人間、ナンバー91。第五研究グループ三班の新作植物人間くん、自慢は優れた耐久力。どんな感じかな?」

落ちてきた鉄球に、サチが行動を起こそうとする。
しかしその瞬間、一筋の一閃が見えて鉄球は見事に砕けた、でなく切れた。

ドスンドスンと二手に分かれて落っこちる鉄球。
サチ達は植物人間の仕業なのではと勘付いていたが、誠治については呆然と冷や汗をかいていた。

そこでサチは、三笠の手に日本刀があるのに気づく。
日本刀は若干色が緑掛かっており、まるで植物を鋭い刀へと変化させたような見た目だった。
その上、三笠自身にも植物が生えている。
これは三笠が植物人間になった姿だった。



「三笠さんそれ…!」

サチが聞くと、三笠は日本刀をサチに見せた。

「これかい?これは僕の愛刀『帝鳩羽(ていはとう)』、テイハって呼んであげて。」

(いやそうではなくて、というか刀に名前しかもDQN…)

サチはどう反応していいかわからなかったが、三笠が自分たちを救ってくれたのだと察した。
三笠が刀を構える姿はまるで、侍でも見ているかのようだった。
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