植物人間の子

うてな

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第1章 精神病質―サイコパシー―

027 奴等のトップ!上郷ハジメ!

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皆様はもうお忘れだろうか。
もみじ公園で、クロマと数男達が戦っていた事を。
これは、その続きである。

ミンスを人質に、クロマの動きを封じた数男。
数男は勝利を確信し、笑みを浮かべた。
三笠やシュンも勝気でいたが、サチは間違っている気がした。
数男はミンスの首を緩め、もう片方の腕からも植物を伸ばす。
その植物でクロマを捕まえると、今度はクロマの首を絞めた。
しかしクロマは一切抵抗しようとせず、ただ黙って首を絞められた。
それに対しミンスは言う。

「うぐっ…!く…クロマ!抵抗しなさい!死んでしまいます!」

ミンスは出るに出そうにない声を振り絞って、クロマに言った。
そんなミンスの言葉が聞こえないのか、死んだようにクロマは動かなかった。

「クロマ…!お願いします、クロマを離して…!」

ミンスは数男に許しを乞うが、数男はクロマを見てばかりでミンスの言葉など聴きもしなかった。

「数男さん!流石に殺すのは…」

少し気の毒に思ったサチはそう言ったが…

「死んでしまえ。」

数男はサチの言葉も聞こえていなかった。
夢中になってクロマの首を絞める数男。
数男はそれほどまでにクロマを恨んでいると、サチは感じた。

「誰が死んでしまうんだ?」

突如聞き慣れない声が聞こえる。
数男は目でその正体を探る。

「ここだ。」

と聞こえた瞬間。
地面から黄金のツルのような植物が出てくると、三笠やシュンやサチに絡みついて身動きができなくなる。
そこでシュンは指輪を落としてしまい見失う。

「うわ!ヤベ!」

数男はサチ達を捕まえた犯人を探した。

「誰だッ!」

数男が言うと、公園の遊具広場の方向からハジメが歩いてくる。

「初めまして研究所の植物人間。僕はハジメ、彼等の保護者みたいな者だ。」

この植物はハジメが伸ばしたもので、ハジメ自身にも植物が生えていた。
黄金の植物と容姿のせいか、どこか神々しくも見えるハジメ。



「ハジメ…!」

三笠は驚いた様子を見せた。
ハジメは彼女の家族だからか、三笠はハジメを知っている様子。

「マリモ達のトップだっけ?」

とシュンは平気そう。
ハジメは呆れた様子で溜息をついた。

「穏やかではないな。貴様みたいな植物人間がいるから、僕達の平穏は脅かされ続ける。」

しかし、数男は鼻で笑った。

「猛犬を飼っている割にはよく言う。」

猛犬とは、クロマのことである。

「猛犬?僕は動物が苦手でね、犬を飼ったことがない。」

と比喩が通じないハジメ。
数男は無表情になるとハジメに言った。

「お前馬鹿か。ペットが馬鹿だったら飼い主も馬鹿なんだな。」

そう言われるとハジメはいい気がしないのか、数男を軽く睨む。

「失敬な。貴様が意味のわからない事を言うからだろ。」

二人が話している間に、クロマは野良に視線で合図を送る。
野良はクロマと目を合わせるとミンスの方に走っていった。

話が噛み合わないことを危惧した三笠は二人に言う。

「えーっと、多分通じないから話し合っても無駄だよ。」

「それもそう。」

ハジメが言うと、野良は元の姿に戻ってミンスに絡みついていた植物を噛みちぎった。
数男はそれに気づいた。

「この…!」

そしてクロマの首を思い切り縛ると、ハジメは言った。

「そんな事をするなら貴様の子もどうなるか。」

数男は三笠達の方を見る。
ハジメの伸ばした植物は三笠達の首元まで伸びていた。
数男は目を見開くと、躊躇わず即答。

「降参だ。」

息子の守にはあれほど乱暴を働いたのに、自分の従える植物人間に対しては大事に扱っているようだ。
数男はクロマを解放する。
それと同時にハジメも三笠達を解放した。
クロマはその場で酷く咳き込み、ミンスはすぐに駆け寄って彼の背中を摩ってあげる。

「クロマ…申し訳ありません…。」

ミンスはクロマを軽く抱きしめる。
クロマは目を閉じると言った。

「服に血がつくぞ。」

するとすぐにミンスはクロマから離れた。

「あら危ない。」

と、ミンスは余裕な笑みを浮かべるまで元気になった。
それを見ていたサチは目を丸くしている。

(五島さんってば意外。あたし達の事見捨てないんだ。)

数男の行動は明らかに、サチが今まで見てきていたものと矛盾していた。
何が数男の心を変えたのか、サチは疑問でいる。

「帰るぞお前等。」

数男は悔しい顔を見せながらもそう言うと、公園から立ち去ろうとする。
守はゆっくりと相手に背中を向けて数男を追いかけた。

「えいえいばいばーい」

「待て!」

とクロマは言うが、ハジメが軽くクロマの頭をチョップした。
クロマは真顔でチョップを受ける。

「僕達も帰るぞ、お遊びは終わり。」

しかしそれでも数男たちを倒そうと歩き出すクロマに、ミンスは足を引っ掛けてクロマを転ばせる。
クロマはお腹を強く打って腹を抱えてその場でうずくまる。

「ミンス貴様…!」

クロマは言うが、ミンスは気にせずハープを弾きだす。
そこでクロマはミンスが持っていた親の形見である指輪を発見、そして拾う。
野良はクロマの服を咥えてクロマを持ち運んだ。

「はいはい帰ろう!」

ちなみにそれを遠くで見ていた誠治はガクガク怯えていて、綺瑠は満面の笑みでその様子を見ていた。

「驚き過ぎだよ誠治。」

「だ…だってクロマに血…血が…」

綺瑠は笑うと誠治に言った。

「彼はそんなんじゃ死なないよ。」

「え?」

誠治は目を丸くした。

「奈江島さん、何か知っているの?」

誠治が聞いてみると、綺瑠は巨大植物を見て言った。

「あー。因縁だよ、僕達の。」

しかし誠治は意味が理解ができなかったので、とりあえずビッグバンを想像していた。
ビッグバンを想像した理由は定かではない。
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