植物人間の子

うてな

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第2章 正体―アイデンティティ―

046 魔法少女の本領

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透明ガラスの植物に捕まった子供達は、皆顔色を悪くしていた。
サチは驚く。

「これは…!」

それらを見た数男は体から植物を生やす。
数男はガラスの植物の様子を確認すると言った。

「人間の生命エネルギーを奪う植物みたいだな。」

「そんな…!シュン君!助けるの手伝って!」

「あいあい!」

そう言ってサチとシュンは子供を救う。
どの子供も顔が真っ青で、意識はすぐに戻りそうにない。
シュンは言った。

「うひゃー、こんな力の吸い方、ごっちゃんだってしねぇぞ。」

すると数男は不機嫌な顔。

「するか。どうせ守は根無し植物人間の仲間にでもなったのだろ。処分だ処分。」

「でも根無しの植物人間なら自我がないだろ。」

それに対して数男は黙り込んでしまうと、サチは子供を一通り助けて言う。

「なんて事を…!この子達、最近行方不明になってた子供達だわ。早く病院へ!」

すると、そこに守がやってくる。
守はサチ達を見ると驚いた。

「なぬ!?なんで先回りした僕より先に着いてんの!!」

それに対し、一同はポカンとする。
そしてシュンは言った。

「あ、ほら、守は牛並に足が遅いじゃん。そのせいだぜ!」

「くぅ~!!」

守は悔しがった。
サチは我に戻ると、守に言う。

「守君!この子供達はあなたがやったの!?」

「そうだよ。」

守はそう答えると急に無表情になって空を見上げた。
植物で塞がれた空を見ると、守は言う。

「僕は弱いでしょ…?
お姉ちゃんを数男から守れなくって…おまけに体も弱くって。」

そこまで言うと守は悔しい気持ちが滲んでくるのか、拳を握った。
そして守は強い意志を宿した目で、サチ達を見る。

「だから僕は強くなるんだよ…!!人間の生命を貰って…!」

すると数男は鼻で笑った。
守は数男の様子に眉を潜めた。
数男は言う。

「昔と違って最近は反抗的になったかと思えば…ガキの力を吸って強くなった気でいたからか。」

「悪ぃかよぉ」

「香奈子と仲良く出来てる理由がよくわかるな。」

数男は再び鼻で笑うと、守はぷいっと視線を逸らした。

「とりあえず、お前達だけは生きて帰さないから。」

するとガラスの植物がサチ達の周囲に生え、サチ達に襲いかかる。
ガラスの植物は棘を作り、シュンはそれを鋼鉄の拳で壊した。

「おお!なかなか叩き甲斐ある!」

サチもプラズマで攻撃を仕掛けるが、ガラスには貫通しない。
サチは驚いて呆然としてしまうと、数男は眉を潜めた。

「分が悪いな…」

そして数男はサチに言う。

「サチ、一旦ここを出るぞ。お前のプラズマの力で空に爆発か何かを起こせないか?」

「え?何をするんですか?」

「いいから早く。」

サチは植物の間を掻い潜って、数男と一緒に外に出てきた。
ちなみにシュンは子供達を引きずって外に出てきた。

「これどうする?」

「そんなものそこらに捨てておけ!」

「ラジャー!」

シュンはその場で捨てると、サチはその乱暴さに言う。

「ちょっと、乱暴はやめて!」

子供達の扱いは気になる所だが、幸い守のガラスは守同様動きが遅い。
サチはプラズマを杖に込めると、空に向かって放つ。
そしてそのプラズマは、空にて閃光の様な爆発を起こした。

「これで何が変わるんですか…?」

「マリモをここに誘き寄せる。」

「ハッ!?」

サチが驚くと、数男は言う。

「どうせ私達では適わん。あの殺戮マシーンに殺してもらう方が一番だろう。」

「息子の命ですよ!?」

サチはそう言うが、数男は冷酷にもサチを睨みつけた。

「息子だったらなんなんだ?私からしたら、好きでもない女との間にできたお荷物でしかない。」

サチは思わず数男を睨む。
そしてサチは再び守の方へ向かった。

「あたし一人でも、守君を止めてみせるわ。」

しかしそれをシュンが止めた。

「守を止めたいんだろサチ。だったら一度、第二故郷病院へ戻った方がいいぜ?」

「どうして?」

「第二故郷病院には植物人間に詳しい人が二人もいんじゃん!守の暴走を止める方法もわかるぜ!
ここは一度マリモに任せるのも手だ!
だってサチのプラズマも通さないガラスだからな、少しは持ってくれるぜ!」

シュンの説得を聞いたサチは納得しながらも、シュンが眩しく見える。

(シュン君が珍しくまともな事言ってる…!)

「だったら急いで戻らないと!」

「足で走ったら遅くなるよなぁ?」

シュンが言うと、数男は周囲を見渡す。

「車パクるか?」

「やめてください!」

サチは数男の反社ぶりに呆れつつも、ふと杖を見た。
サチは思いつく。

「植物人間って不思議な力を使えるんでしたよね?魔法みたいのも使えたりするんでしょうか?」

「さあな。」

「これが空飛ぶ箒になったら…なんて。」

サチがわざとらしく言うと、シュンは目を輝かせる。

「行けるぜサチ!やってみようぜ!」

「できるかしら。」

「やってみるしかない!ごっちゃん、サチに力を!」

それを聞くと数男は溜息。
すると数男は自分の折れた植物の枝で自分の腕を切りつけ、腕から血が滲んだ。

「飲め、お前は私の力を受けているのだから血を飲めば力が増幅するはずだ。」

数男の言葉に、サチは顔を引きつって躊躇う。
それを見た数男は眉を潜めた。

「なんだその顔、腕に直接口を付けるのは嫌か。なら血を垂らすからそれを飲め。」

数男は更に腕を切りつけようとするので、サチは慌てて言った。

「いえいえそのままで結構です!」

そう言って数男の腕にかぶりつく。

(本当は血を飲みたくないだけなんだけど…)

サチはそう思いながらも緊張する。
男性の腕に口をつけるなど未知過ぎて、今のサチには重いようだ。
自分の腕とは違い、がっしりして筋肉のついた数男の腕。
サチは恥ずかしさで鳴る自身の鼓動を聞いており、耳や頬を赤くするサチを数男は見下ろしている。
しかし血を飲むと、サチにどんどん力が湧いた。

(血で体力が戻るなんて嫌な気しかしない…)

「赤面症か?」

と、突如数男が怪しく微笑んできた。
サチは咄嗟に数男から離れる。

「そうです…!」

サチが口を服で拭いつつ言うと、数男は顔一つ変えないで言う。

「面白いな。」

それに嫌な予感がして、一瞬寒気を感じたサチ。
すると数男は笑いを含んだ表情で言った。

「試すのなら急いでくれ。」

サチは気づいた顔をして、杖に力を込めてみた。
すると杖は長くなり、箒の柄ほど長くなる。
それを見たシュンは感嘆。

「すげぇ!」

サチは箒に跨り、力を込めた。
すると浮遊する事に成功。

「おお、できるんだな。」

数男の言葉に、シュンはワクワク。

「早く行こうぜ!だったらさ!」

しかしサチは、そこらに転がされた子供達を見ると言う。

「子供達はどうしましょう?」

「捨てとけ。」

と言う数男。
思わずサチは怒る。

「五島さんッ!」

しかし、シュンは笑顔で言った。

「お!鉄人のシュン様にお任せあれじゃね!?」

シュンは体から植物を長く伸ばすと、網の様に編み込んで籠にした。
それを鋼鉄にし、強度を作る。

「これに子供を乗せて運ぶ!天才的だ!」

「シュン君が重くなっちゃうわよ…!シュン君についてる植物だもの…!」

サチが言うと、シュンは笑った。

「本当に重かったら一人ずつ落とすから平気だ!」

「良くない!!」

サチの言葉に、更にシュンは笑う。

「じょーだん!」

シュンはその籠に、子供達を乗せた。
サチは一気に二人の反社の相手をした為に疲れた様子を見せている。
そして杖に跨ると、数男もすぐ後ろで跨る。
シュンは更に後ろに乗った。
数男はサチのすぐ後ろまで顔を近づけ、囁いた。

「飛べ、サチ。」

急な名前呼びで囁かれた為、サチは驚いた様子で赤面症が発動。
それを見た数男に怪しく笑われ、サチは恥ずかしさを我慢しながら杖に力を込めて空を飛んだ。
空を飛べた感動からか、サチは一瞬にしていつもの調子を取り戻す。

「みんな乗ってても飛べた…!」

サチは珍しく目を輝かせると、数男も感心。

「おお、これは便利だな。」

「空で遊ぶなんて初めてだ!」

シュンも大喜びだった。
空を飛ぶと、植物の間を通って更に空へ。
植物のない開放的な大空を見上げると、一同は目を丸くする。

「こんな大空、久々に見たな。」

と数男。
サチも黙って頷いた。
ちなみにシュンは植物を見下しながらも言う。

「て言うか第二故郷病院どこだ?植物に隠れてて見えねぇな。」

「あ、大変。」

サチはそう言って、高度を下げるのであった。
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