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第2章 正体―アイデンティティ―
065 和室のお父さん
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ここはスペイン。
ロサンゼルスの街の少し外れにある、立派な塀に囲まれた大きな一軒家。
スペインなのにも関わらず、庭には盆栽や池がある。
そこに一人でやってきたのは秋田。
秋田は塀の前のインターホンを鳴らした。
スペイン語で人の声が聞こえてきたと知ると、秋田は即言った。
「総作だ。…父さんに会わせて…!」
秋田は思いつめた顔をし、今にも泣きそうな顔だった。
それを聞いたインターホンの主は日本語で言う。
『総作様…!今向かいます。』
中から日本人の若い女性が出てきて、そのまま秋田を家へ案内する。
「三森さんは?お一人で来られたのですか?」
「ああ。」
それを聞いたメイドは驚いた顔。
そして秋田の顔色を伺って言う。
「…『辰矢(たつや)』様に、何かご相談ですか?」
秋田はそれに頷いた。
メイドはそれに黙って会釈し、部屋に案内した。
暫く歩き、とある扉の前までやってきた。
扉は障子でできており、メイドは言った。
「辰矢様、総作様がお越しです。」
すると障子の向こうから、低い男性の声がする。
「通せ。」
メイドは障子を開こうとしたが、秋田が真っ先に開けてしまう。
「父さん!」
中にいたのは男の老人。
部屋の中は和室で、壁には掛け軸があり『百戦錬磨』とあった。
その老人は老いていながらも屈強な体を持ち、今も胡座をかいて一人精神統一をしていた。
秋田はそれでも老人に飛び込むと、老人は目をカッと開いてから秋田に拳を向けた。
しかしその屈強な拳を、なんと片手で受け止めてしまう総作。
それを廊下で見ていたメイドは唖然としていた。
すると老人、もとい総作の父である辰矢は鼻で笑う。
「総作、また一段と弱くなったな。鍛えていないな?」
それに対し、総作は動じずに言った。
「おじいちゃんの仕事を、全部私に押し付けた父さんが悪い。」
総作の反論に、辰矢は拳を下げた。
辰矢は溜息。
「総作は頭が良かったから…頭の悪い俺の代わりに…」
するとツッコミを入れるように総作は言った。
「だからって成人もしてない子供に事業を押し付けるのは酷すぎる!」
しかし辰矢は笑顔。
「面倒だったし。
いやでも、それでもよくやってくれてるじゃないか。いやぁ、総作は親父に似てくれて良かった。」
「くぅ…!極道よりタチの悪い…!
綺瑠が幼い時、子育てが大変な時期も事業一切手伝わなかったよね!酷いよ父さん!」
総作は悔しそうな顔をしていたが、辰矢は周囲をキョロキョロ。
「綺瑠は?会いたかったんだけどなぁ。」
「会わせませんッ!
かつて世界中の闇事業に喧嘩を吹っかけてきた危険な父親に息子は会わせられません!!」
しかし辰矢はニコニコ。
「いやでもそのお陰で、マフィアも極道も秋田財閥が口開けば融通が利くようになったわけで…」
「それでもダメぇっ!!平和におじいちゃんの事業を引き受けて欲しかったよ父さんには!」
すると辰矢は大笑いした。
「あの頃は事業を引き受けるのも勉強も面倒だったからなぁ!」
「今もでしょ!!」
「あの時は楽しかったな総作ぅ!また体を鍛え直せ!
ついでに綺瑠も誘おう!綺瑠も俺達の血を継いでいる!ならばできるはずだ!」
総作は鳥肌が立ったのか顔色が悪い。
それから頭を抱えて首を横に振る。
「ヤダヤダ綺瑠を危険な目に遭わせたくない!!
私が学生時代の時だって、父さんのせいでこっ酷くヤバイ奴等に追い掛け回されたんだからね!?」
「大丈夫、総作は生きてたんだから綺瑠も生きて帰れる。」
「生きて帰れる問題じゃなくて危険な目に遭わせたくないだけだからね!?」
そう言われると、辰矢は不貞腐れて頬を膨らませた。
それに対して総作は冷や汗。
「そんな顔しても綺瑠は連れてこないから!」
「ケチ。」
「子供かっ!」
ツッコミ疲れてしまう総作。
総作は思わず呟いた。
「と、歳だね…十数年ぶりに父親と話したら疲れた。」
「五十過ぎたんだもんな総作も。」
「そう言う父さんは七十過ぎてもまだこれか…」
総作は呆れた様子であった。
すると辰矢は満足したのか、落ち着いた様子になる。
「で、急にやってくるなんてどうした?まさか事業の相談事ではないだろうな?」
「あ!そうだった!」
総作はツッコミを入れるのに夢中になっていたせいか、すっかり本題が頭から抜けていたようだ。
ロサンゼルスの街の少し外れにある、立派な塀に囲まれた大きな一軒家。
スペインなのにも関わらず、庭には盆栽や池がある。
そこに一人でやってきたのは秋田。
秋田は塀の前のインターホンを鳴らした。
スペイン語で人の声が聞こえてきたと知ると、秋田は即言った。
「総作だ。…父さんに会わせて…!」
秋田は思いつめた顔をし、今にも泣きそうな顔だった。
それを聞いたインターホンの主は日本語で言う。
『総作様…!今向かいます。』
中から日本人の若い女性が出てきて、そのまま秋田を家へ案内する。
「三森さんは?お一人で来られたのですか?」
「ああ。」
それを聞いたメイドは驚いた顔。
そして秋田の顔色を伺って言う。
「…『辰矢(たつや)』様に、何かご相談ですか?」
秋田はそれに頷いた。
メイドはそれに黙って会釈し、部屋に案内した。
暫く歩き、とある扉の前までやってきた。
扉は障子でできており、メイドは言った。
「辰矢様、総作様がお越しです。」
すると障子の向こうから、低い男性の声がする。
「通せ。」
メイドは障子を開こうとしたが、秋田が真っ先に開けてしまう。
「父さん!」
中にいたのは男の老人。
部屋の中は和室で、壁には掛け軸があり『百戦錬磨』とあった。
その老人は老いていながらも屈強な体を持ち、今も胡座をかいて一人精神統一をしていた。
秋田はそれでも老人に飛び込むと、老人は目をカッと開いてから秋田に拳を向けた。
しかしその屈強な拳を、なんと片手で受け止めてしまう総作。
それを廊下で見ていたメイドは唖然としていた。
すると老人、もとい総作の父である辰矢は鼻で笑う。
「総作、また一段と弱くなったな。鍛えていないな?」
それに対し、総作は動じずに言った。
「おじいちゃんの仕事を、全部私に押し付けた父さんが悪い。」
総作の反論に、辰矢は拳を下げた。
辰矢は溜息。
「総作は頭が良かったから…頭の悪い俺の代わりに…」
するとツッコミを入れるように総作は言った。
「だからって成人もしてない子供に事業を押し付けるのは酷すぎる!」
しかし辰矢は笑顔。
「面倒だったし。
いやでも、それでもよくやってくれてるじゃないか。いやぁ、総作は親父に似てくれて良かった。」
「くぅ…!極道よりタチの悪い…!
綺瑠が幼い時、子育てが大変な時期も事業一切手伝わなかったよね!酷いよ父さん!」
総作は悔しそうな顔をしていたが、辰矢は周囲をキョロキョロ。
「綺瑠は?会いたかったんだけどなぁ。」
「会わせませんッ!
かつて世界中の闇事業に喧嘩を吹っかけてきた危険な父親に息子は会わせられません!!」
しかし辰矢はニコニコ。
「いやでもそのお陰で、マフィアも極道も秋田財閥が口開けば融通が利くようになったわけで…」
「それでもダメぇっ!!平和におじいちゃんの事業を引き受けて欲しかったよ父さんには!」
すると辰矢は大笑いした。
「あの頃は事業を引き受けるのも勉強も面倒だったからなぁ!」
「今もでしょ!!」
「あの時は楽しかったな総作ぅ!また体を鍛え直せ!
ついでに綺瑠も誘おう!綺瑠も俺達の血を継いでいる!ならばできるはずだ!」
総作は鳥肌が立ったのか顔色が悪い。
それから頭を抱えて首を横に振る。
「ヤダヤダ綺瑠を危険な目に遭わせたくない!!
私が学生時代の時だって、父さんのせいでこっ酷くヤバイ奴等に追い掛け回されたんだからね!?」
「大丈夫、総作は生きてたんだから綺瑠も生きて帰れる。」
「生きて帰れる問題じゃなくて危険な目に遭わせたくないだけだからね!?」
そう言われると、辰矢は不貞腐れて頬を膨らませた。
それに対して総作は冷や汗。
「そんな顔しても綺瑠は連れてこないから!」
「ケチ。」
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ツッコミ疲れてしまう総作。
総作は思わず呟いた。
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