81 / 128
第2章 正体―アイデンティティ―
074 これは大量虐殺
しおりを挟む
誠治の家の二階、狭いベランダにて。
誠治は妹の芙美香と一緒にシャボン玉を飛ばしていた。
芙美香はまだ十歳、シャボン玉でキャッキャッと喜んでいた。
誠治の母は昨年病気で他界し、父は出張で他県に行く事が多いので、こうして兄である誠治が芙美香の面倒を見ている。
今日の有給も、妹の面倒を見る為に取ったものだ。
「親父今度はいつ帰ってくるかな。」
芙美香が言うと、誠治は優しく言った。
「芙美香、親父呼びはやめろと言っているだろう。」
「にーちゃんも帰り遅いし退屈なのー。」
膨れて言う芙美香に、誠治は頭を撫でると言った。
「うーん、じゃあ毎日仕事帰りに懐かしい駄菓子屋のおもちゃ、買ってきてあげよっか?」
すると芙美香は喜んだ。
「ん!じゃあ触れるシャボン玉!」
それを聞いて誠治は、微笑ましく笑顔を見せた。
すると芙美香は、空から降る花に気づいた。
「お花!にーちゃんあれ!」
急に芙美香が言うので、誠治は空を見上げる。
空から数個、黄色い花が落ちてきたので誠治はそれを手に取った。
「綺麗だね。どこから飛んできたんだろう?」
誠治はそう言って微笑む。
それを羨ましく思い、芙美香も花を手に取った。
しかし花に触れた瞬間、芙美香は倒れてしまった。
誠治は驚いて花を落とし、芙美香を一度室内に入れる。
「芙美香!芙美香!」
芙美香は息が薄くなり、体も少し痙攣していた。
誠治は急いで救急車を呼ぼうと携帯を取り出そうとするが、ない事に気づく。
(しまった…どこに置いたっけ…!いや、家の電話で…)
誠治は固定電話を使用したが、繋がらない事に気づく。
よく電話を確認すると、表示がおかしくなっていた。
(壊れている…!?
携帯も探してる暇はない、病院まで連れて行くしか…!)
誠治はそう思うと、芙美香をおんぶして外に出た。
誠治は空から無数に降ってくる花に唖然とすると、芙美香が倒れた原因を悟って芙美香にカッパを着せる。
(植物人間の仕業か…!)
誠治は芙美香を病院へ連れて行くために外を走る。
誠治自身は不死身なので、この手のものも一切効かなかった。
道に倒れる人々がいて、誠治は一瞬足を止めそうになる。
(駄目…!助けたい…けど芙美香が…!)
誠治は葛藤をしながらも、道に倒れる人々を諦めてしまう。
胸が裂けるような思いと、息の詰まる苦しさを我慢しながら誠治は走り抜けた。
植物人間と戦うサチ達。
アンジェルは言った。
「植物人間って、植物を奪えばどうにかなるんでしょ。」
「そうね。すると植物人間は種になって…地面に消える。
あれ、石かな。」
「何の種?気になるね。」
アンジェルが言うと、守はニッコリ。
「持って帰ると久坂さん喜ぶよ。」
守は植物人間を見た。
するとアンジェルは言った。
「サチは植物人間の気を引いて、そしたら僕が足元を凍らせるから、守はガラスで草をむしって。」
サチは難しそうな顔をしながらも言う。
「確かに、素手で触れると危険ね…」
守はやる気がなさそうだった。
「責任じゅーだいじゃん」
そう言って溜息をつく。
アンジェルはそんな事お構いなしにも言った。
「行くよ!」
サチが光線状のプラズマを繰り出すと、相手はなかなかのスピードで避けてくる。
サチはいくつか試すが、やはり相手は全て避けてしまうのだ。
「うっわ何で植物人間はああも身体能力高いの~」
守が言い、サチは相手に攻撃を続けた。
すると守がケチをつける。
「攻撃のレパートリーないなあ、魔法使いなんだからもっと全体攻撃みたいなのやってよ~」
「全体攻撃?あたしこのくらいしかできないわよ、全体攻撃なんてどうやって。」
アンジェルは呆れた顔。
「想像力がないんだねサチは。」
サチは腑に落ちない。
とりあえず目に入った巨大植物を見て、巨大植物を出すつもりで地面からプラズマを繰り出す。
突き出るように出てきたプラズマは見事に相手に当たり、相手は転んでしまう。
「今だね。」
アンジェルは笑うと、地面から徐々に相手を凍らせていく。
植物の部分だけを上手く露出させたアンジェルは、守を見る。
「へいへーいとぺんぺん」
守は独特な返事をしながらガラスを伸ばした。
ガラスは相手に向かって伸びるが、アンジェル達の目には見えにくいので何が起こっているのかわからない状態。
「遅い、まだ取れないの?」
アンジェルが聞くと、守は言う。
「マイペースなんだー」
アンジェルがそんな様子が気に入らないのか少しカリカリした様子になっていると、守はやっとで植物人間の植物をむしる事に成功した。
(やっと…)
サチが思っていると、植物人間は種に姿を変えてしまったので守がガラスでキャッチする。
手元に持ってきた種。
半透明で、ある程度硬さのある石のような種だった。
「石だね。秀也のトコに持って帰ろっか。」
とアンジェル。
二人は頷いて、病院に帰る事にした。
が、
「あ!九重先輩の携帯!…ごめん先に帰ってて。」
サチが言うので、二人は了承するのだった。
誠治は妹の芙美香と一緒にシャボン玉を飛ばしていた。
芙美香はまだ十歳、シャボン玉でキャッキャッと喜んでいた。
誠治の母は昨年病気で他界し、父は出張で他県に行く事が多いので、こうして兄である誠治が芙美香の面倒を見ている。
今日の有給も、妹の面倒を見る為に取ったものだ。
「親父今度はいつ帰ってくるかな。」
芙美香が言うと、誠治は優しく言った。
「芙美香、親父呼びはやめろと言っているだろう。」
「にーちゃんも帰り遅いし退屈なのー。」
膨れて言う芙美香に、誠治は頭を撫でると言った。
「うーん、じゃあ毎日仕事帰りに懐かしい駄菓子屋のおもちゃ、買ってきてあげよっか?」
すると芙美香は喜んだ。
「ん!じゃあ触れるシャボン玉!」
それを聞いて誠治は、微笑ましく笑顔を見せた。
すると芙美香は、空から降る花に気づいた。
「お花!にーちゃんあれ!」
急に芙美香が言うので、誠治は空を見上げる。
空から数個、黄色い花が落ちてきたので誠治はそれを手に取った。
「綺麗だね。どこから飛んできたんだろう?」
誠治はそう言って微笑む。
それを羨ましく思い、芙美香も花を手に取った。
しかし花に触れた瞬間、芙美香は倒れてしまった。
誠治は驚いて花を落とし、芙美香を一度室内に入れる。
「芙美香!芙美香!」
芙美香は息が薄くなり、体も少し痙攣していた。
誠治は急いで救急車を呼ぼうと携帯を取り出そうとするが、ない事に気づく。
(しまった…どこに置いたっけ…!いや、家の電話で…)
誠治は固定電話を使用したが、繋がらない事に気づく。
よく電話を確認すると、表示がおかしくなっていた。
(壊れている…!?
携帯も探してる暇はない、病院まで連れて行くしか…!)
誠治はそう思うと、芙美香をおんぶして外に出た。
誠治は空から無数に降ってくる花に唖然とすると、芙美香が倒れた原因を悟って芙美香にカッパを着せる。
(植物人間の仕業か…!)
誠治は芙美香を病院へ連れて行くために外を走る。
誠治自身は不死身なので、この手のものも一切効かなかった。
道に倒れる人々がいて、誠治は一瞬足を止めそうになる。
(駄目…!助けたい…けど芙美香が…!)
誠治は葛藤をしながらも、道に倒れる人々を諦めてしまう。
胸が裂けるような思いと、息の詰まる苦しさを我慢しながら誠治は走り抜けた。
植物人間と戦うサチ達。
アンジェルは言った。
「植物人間って、植物を奪えばどうにかなるんでしょ。」
「そうね。すると植物人間は種になって…地面に消える。
あれ、石かな。」
「何の種?気になるね。」
アンジェルが言うと、守はニッコリ。
「持って帰ると久坂さん喜ぶよ。」
守は植物人間を見た。
するとアンジェルは言った。
「サチは植物人間の気を引いて、そしたら僕が足元を凍らせるから、守はガラスで草をむしって。」
サチは難しそうな顔をしながらも言う。
「確かに、素手で触れると危険ね…」
守はやる気がなさそうだった。
「責任じゅーだいじゃん」
そう言って溜息をつく。
アンジェルはそんな事お構いなしにも言った。
「行くよ!」
サチが光線状のプラズマを繰り出すと、相手はなかなかのスピードで避けてくる。
サチはいくつか試すが、やはり相手は全て避けてしまうのだ。
「うっわ何で植物人間はああも身体能力高いの~」
守が言い、サチは相手に攻撃を続けた。
すると守がケチをつける。
「攻撃のレパートリーないなあ、魔法使いなんだからもっと全体攻撃みたいなのやってよ~」
「全体攻撃?あたしこのくらいしかできないわよ、全体攻撃なんてどうやって。」
アンジェルは呆れた顔。
「想像力がないんだねサチは。」
サチは腑に落ちない。
とりあえず目に入った巨大植物を見て、巨大植物を出すつもりで地面からプラズマを繰り出す。
突き出るように出てきたプラズマは見事に相手に当たり、相手は転んでしまう。
「今だね。」
アンジェルは笑うと、地面から徐々に相手を凍らせていく。
植物の部分だけを上手く露出させたアンジェルは、守を見る。
「へいへーいとぺんぺん」
守は独特な返事をしながらガラスを伸ばした。
ガラスは相手に向かって伸びるが、アンジェル達の目には見えにくいので何が起こっているのかわからない状態。
「遅い、まだ取れないの?」
アンジェルが聞くと、守は言う。
「マイペースなんだー」
アンジェルがそんな様子が気に入らないのか少しカリカリした様子になっていると、守はやっとで植物人間の植物をむしる事に成功した。
(やっと…)
サチが思っていると、植物人間は種に姿を変えてしまったので守がガラスでキャッチする。
手元に持ってきた種。
半透明で、ある程度硬さのある石のような種だった。
「石だね。秀也のトコに持って帰ろっか。」
とアンジェル。
二人は頷いて、病院に帰る事にした。
が、
「あ!九重先輩の携帯!…ごめん先に帰ってて。」
サチが言うので、二人は了承するのだった。
0
あなたにおすすめの小説
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる