植物人間の子

うてな

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第3章 平穏―ピースフル―

100 食卓を囲う賑やか

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ミィシェルはヘリによって実家に帰される最中で、とあるホテルに到着したところである。


――「いい?ボクになりきって家に帰るんだ。そしてミィシェルだって明かして、みんなを錯乱作戦だよ。」――


ミィシェルはアンジェルに言われた事を思い出していた。

(Anjel兄、イタズラ、好き。)

「坊ちゃん、少しばかりお話が。」

執事の話を無視して、アンジェルの携帯を触るミィシェル。
部屋に着くと、執事はノートPCを開いてミィシェルに見せた。

「現在、ご主人様が国外の大事なパーティーにご出席されています。
ご主人様がいらっしゃらない間、ご主人様の普段なされているお仕事を経験してみてはいかがでしょう。
坊ちゃんはいづれ、ご主人様の後を引き継ぐお方です。前もって知っておくのがよろしいかと。」

執事の話はどうでもいいミィシェル。
だがミィシェルは顔を引きつって、パソコンを叩き落とした。

「ぼ…坊ちゃん…!?」

執事が驚くと、ミィシェルは首を横に振って叫んだ。

「ぼく!Anjel兄違うです!!Michel!!Michel!!」

「ミィシェル様…!?」

執事が言うと、ミィシェルは涙を流して言った。

「父ハ、恐ろしいです!自分ノため、人間、利用ハ…違う!!」

そう言って、部屋を駆け出てしまった。

「ミィシェル様…!」

執事はミィシェルを追いかけようとしたが、そこで誰かから電話が来たようで出る。

「これはこれは、今坊ちゃんをホテルまで連れたのですが…どうやらミィシェル様だったようで…」

すると電話の向こうのアンジェルの母は怒った。

『ミィシェルですって!?あの悪戯っ子!アンジェルの邪魔までするのね!』

「ミィシェル様は、また一段と日本語を覚えられたのですね…」

『ミィシェルの話には興味ありません!
よろしい?急いでアンジェルを見つけ出しなさい!!手違いでミィシェルを連れて来たのならば部屋にでも閉じ込めておきなさい!!』

そう言ってアンジェルの母は電話を切った。
執事は気迫負けしており、少しだんまりしていた。

(ミィシェル様…、それほどまでにご主人の事業に反対なのですね…。)





第二故郷病院の会議室の真ん中で、みんなはテーブルを囲んで夕御飯を食べていた。

「家族みたいでいいな!」

シュンはニカッと笑ってはいるが、本当にそう思っている様には見えない。

「またそれか。毎日言ってるぞ」

と数男は言った。

「だってロマンしかね~からよ!」

「ミンスはお肉も卵も食べないのね。」

サチが言うと、ミンスは余裕な笑みを浮かべながら小さく頷いた。

「はい。クロマも以前までは…」

するとサチはクロマを見る。
卵もお肉も黙々と食べている姿を見て、首を傾げた。

「クロマは…?」

「美味しければ何でもいいのです。」

ミンスの回答にサチは微妙な反応をしていると、数男は唐突にサチの口まで箸でご飯を運ぶ。

「なんですかいきなり!」

サチが驚いて離れると、数男は笑う。

「顔が赤いぞ。なに、食べさせてやろうとしただけだろ。」

数男の言葉で、守は飲んでいた味噌汁を茶碗に吐き出した。

「ぶぇーーーっ」

「守君お行儀が悪いでしょ!」

サチが注意するが、守は具合の悪そうな顔。

「だって数男キモいんだもーん。ぶぇっぶぇーーーっ」

ミンスは思い立った顔をし、数男の様にクロマの口までご飯を運んであげる。
クロマは冷たくもそっぽ向いた。

「子供扱いをするな。」

「あら、わたくしの子供でしょう。もっと子供らしくすべきですよ?」

「黙れ、そういう事はもっと親らしくなってから言え。」

すると、ミンスはしょんぼりしてしまう。

「あー!クロマひどーい」

砂田は言い、クロマは無視。
そこで三笠は笑って言った。

「トゲがあるっていいね。」

それに対して砂田は言う。

「そう言えば秋菜ちゃんのどこが好きだったの?トゲが好きって割に秋菜ちゃんトゲないもん。」

「いや、トゲがあるところだよ。今は丸くなっちゃってとてもつまらないんだ。」

「ハジメ様の力を受けると、その者の心の起伏が激しくます。きっと自分の心に触れる機会が増えて、優しくなったのでしょうね。」

とミンス。
すると少し残念なのかダラっとした三笠は呟く。

「そうか、ハジメのせいか。」

話がどんどん弾む食卓。
クロマはそんな食卓を見て、目を丸くしていた。
そしてほんの微かに笑みをクロマがこぼす。
それをミンスは見逃していなかった。

「クロマ?」

「ん?…いいや、教会にいた頃を思い出してな。あの頃も毎日賑やかだったろう。」

クロマはそう言って鼻で笑う。
あまり見ない様子に、ミンスは不思議そうに目を丸くしていた。
今までにない人間らしい笑みを浮かべたクロマだったが、残念ながら病院組はその笑みを見逃してしまったようだ。
するとサチはふと呟く。

「…九重先輩…、ハジメの力を受けたんですよね…。」

それに対し、ミンスは誠治との嫌な思い出があるせいか表情が優れなくなる。

「不死身ですね。あと、他人の力を自分のものにする力もあるようです。あの方のせいで、クロマの力は殆ど消されてしまいました…。」

「今度悪さをしでかすようならば私が滅する。」

クロマが言うと、数男は鼻で笑った。

「あのゴミ拾い、お人好しの過ぎる馬鹿みたいだが?脳筋と馬鹿、どっちが上だろうな?」

数男はクロマを脳筋と例えて煽ってみたのだが、クロマは自覚がなくスルーしていた。
するとサチは数男に向かって言う。

「九重先輩は頭は良い方です!少なくとも私より…!」

「そういう意味じゃない。他人に易々と欺かれる者を馬鹿と言っている。」

サチは心当たりがあるのか、否定をしなくなった。
数男はそんなサチに更に溜息をつくと、今度はミンスの方を見る。
数男はミンスの頭の装飾品を見て言った。

「鬱陶しいからそれを取れ。」

「おや、できません。母上から力を封じられているのですよ?この装飾品は、わたくしの力を封じる為にあるものです。
今まではこの封印を解く為に人間から養分を得ていましたが…もう必要ないでしょう?
それとも、力を解放して欲しいのですか?」

それを聞いた数男は顔を引きつった。

「いや、いい。」

すると久坂は言う。

「つーか、石の巫女ってなんであんな砂漠のど真ん中に国作ったんだ?」

それに対しては砂田が答えた。

「あの国の人達は、元は言葉も知らない民族だったんだって。サウザのママとは仲が良かったらしいから、まもなく国を作っちゃったんだって。」

久坂が納得していると、アンジェルは言う。

「ニッポン人はー、お喋りしながらご飯食べるの?黙って食べるって聞いてたから驚いたね。」

アンジェルはそう言ってご飯を完食する。

「ごちそうさま。」

そう言って茶碗を片付けに行った。
そのせいか一同は白け、食事を続けた。
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