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第3章 平穏―ピースフル―
104 お前じゃ無理だな
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「こ、九重先輩…」
サチは元気がなかった。
それはそのはず、守ろうと思っていた誠治が植物人間になっていたから。
数男は鼻で笑った。
「ハジメの良い妻になったな。」
「妻なわけ…!」
ハジメが言うと、誠治は三人の近くまで来た。
「真渕さん、おはようございます。それとあなたは…」
と数男を見るので、数男は名乗る。
「五島だ。」
「五島さん、こんにちは。こうして挨拶するのは初めてですね。私は真渕さんと同じ高校に通っていた九重と申します。」
誠治が自己紹介すると、数男はニヤける。
「九重。知ってるぞ?サチはお前には渡さん。」
急なライバル宣言にサチは驚いた。
「先輩!決してやましい関係ではないです!と言うかやめてください!五島さん!」
サチは慌てた様子で言うので、誠治はサチの様子を見る。
サチが困っているのを見て、誠治は少しだけ表情を険しくさせると言った。
「真渕さんが嫌がっています。」
誠治にしては真面目な表情だったので、ハジメもサチも目を丸くした。
数男は言う。
「サチに言ったのではない、お前に言ったんだ九重。お前はどうなんだ?サチの事が好きか?嫌いか?」
数男の言葉に、誠治は眉を潜めた。
言いづらそうにしてはいたが、数男に負けたくない感情が勝ったのか言う。
「…好きです…よ。」
それを聞いたサチは、驚きと嬉しさが交差し顔を真っ赤にした。
ちなみにハジメは少しショックした様子。
どう考えてもサチと誠治は両想い。
しかし数男は笑うのだった。
「お前じゃ無理だな。」
その上、誠治を否定する。
思わず誠治は首を傾げるが、数男は可笑しくて笑いが止まらないようだ。
それを見て、誠治は奇妙に思ったのか黙り込んでしまう。
「そ そう言えば先輩、なぜここに?」
サチが聞くと、誠治は笑顔で言った。
「あ、バイトですバイト。父はまた出張で出て行ってしまったので、私はここで働かせて貰っているんです。
ほら、会社も当分休みなので。」
「なるほど…」
ハジメはいつまでもゲラゲラ笑っている数男がおかしくて仕方ない。
「そろそろ笑うのやめろよ。」
「やっぱり帰るか。」
笑いながら数男が言うと、サチは呆れる。
「気まぐれですか?」
「いや、ゴミ拾いの存在が邪魔だからな。」
そう言われ、誠治は苦笑。
「私の事…嫌いですか…」
「恋のライバルだからな。」
得意気に数男は言って、立ち去るのだった。
「すいません先輩…!あとハジメも…!失礼します!」
サチは挨拶をし、数男の後を追いかけた。
誠治はサチの後ろ姿を見つめていた。
(…あの方が真渕さんの言っていたセクハラか…今度会ったら転職を勧めよう…。)
と誠治は思いながらも、ハジメに笑顔を見せる。
「あ、ハジメ、ご飯できたよ。」
「ん!ありがとう、今すぐ行く。」
その後、サチは数男に言う。
「もう、あんな失礼やめてください。」
数男はサチを横目で見ると、呆れた様子で軽く溜息をついた。
サチは何事かと思っていると、数男は言う。
「お前は本当に馬鹿なんだな。」
急にディスられたせいか、サチは怒り心頭。
「急に意味が分かりません!本当に弄れてますね…!」
数男は何も言わずにスルーすると、近くのうどん屋が目に止まった。
そして足を止めるので、サチも足を止めた。
「ん?どうしたんですか?」
サチが言うと、数男は言った。
「うどんでも食べるか?うどん好きなんだろ。」
サチを貶したかと思えば、次は優しくする数男。
怪しすぎる行動に、サチの起源は尚更悪くなる。
「なんですか急に。ご機嫌取りのつもりですか?」
「ソシオパスがご機嫌取りをするなんて素晴らしいじゃないか。」
そう言って数男は店に入るので、サチは溜息。
「まあ五島さんの場合、自分の植物人間には情が沸きますからね。仕方ないです。」
すると数男は何か思ったのか呟いた。
「じゃあ私が人間に戻ったら、お前達が私から解放されたら、
…私はお前達がどうでもよくなるのか?」
それを聞くと、サチは黙り込んでしまう。
サチにもわからない事なので、眉を潜めた。
「知りませんよ、そんな事。」
「…そんな事になるなら、このままでもいいかもな。」
サチは意外そうな顔をした。
「植物人間にされたって聞いた時はあんなに怒り狂っていて、戻るのは嫌なんですか?変ですね。」
そう言われると、数男は少し俯いてから言った。
「私にも、忘れたくない感情がある。…最近は特にそう思うようになってきた。」
サチは首を傾げた。
すると数男はサチを見たが、やがて溜息。
数男は席に着くと、サチは正面に座った。
「まるで、私がお前達の感情を奪っているみたいだ。」
「え?」
サチが言うと、数男はメニューを開きながらも続けた。
「私は元々、心を大して動かされない人間だった。植物人間になって、仲間を作っていく内に知ったのだ…そういう感情を。
私は今でも自分勝手な人間だろうが、昔と比べたらだいぶ変わったんだぞ。」
それにサチは頷いていると、数男は続ける。
「私にはわかる、仲間が抱く感情が。
私の力を受けた者は、日に日に心が失われていくのを感じるんだ。
…私は日に日に理解していくのに、可笑しな話だ。」
「あたしもですか?」
サチの質問に、数男は目を閉じた。
「まあな。ま、お前はまだマシだ、植物人間になって日が浅い。」
「半年経ちましたけどね、この仕事して。
何か、私から感情って失われましたっけ?」
それを聞くと、数男はサチを見る。
その意味有り気な視線をサチは見つめていると、数男は言うのをやめて近くの店員を呼び出すのであった。
サチは元気がなかった。
それはそのはず、守ろうと思っていた誠治が植物人間になっていたから。
数男は鼻で笑った。
「ハジメの良い妻になったな。」
「妻なわけ…!」
ハジメが言うと、誠治は三人の近くまで来た。
「真渕さん、おはようございます。それとあなたは…」
と数男を見るので、数男は名乗る。
「五島だ。」
「五島さん、こんにちは。こうして挨拶するのは初めてですね。私は真渕さんと同じ高校に通っていた九重と申します。」
誠治が自己紹介すると、数男はニヤける。
「九重。知ってるぞ?サチはお前には渡さん。」
急なライバル宣言にサチは驚いた。
「先輩!決してやましい関係ではないです!と言うかやめてください!五島さん!」
サチは慌てた様子で言うので、誠治はサチの様子を見る。
サチが困っているのを見て、誠治は少しだけ表情を険しくさせると言った。
「真渕さんが嫌がっています。」
誠治にしては真面目な表情だったので、ハジメもサチも目を丸くした。
数男は言う。
「サチに言ったのではない、お前に言ったんだ九重。お前はどうなんだ?サチの事が好きか?嫌いか?」
数男の言葉に、誠治は眉を潜めた。
言いづらそうにしてはいたが、数男に負けたくない感情が勝ったのか言う。
「…好きです…よ。」
それを聞いたサチは、驚きと嬉しさが交差し顔を真っ赤にした。
ちなみにハジメは少しショックした様子。
どう考えてもサチと誠治は両想い。
しかし数男は笑うのだった。
「お前じゃ無理だな。」
その上、誠治を否定する。
思わず誠治は首を傾げるが、数男は可笑しくて笑いが止まらないようだ。
それを見て、誠治は奇妙に思ったのか黙り込んでしまう。
「そ そう言えば先輩、なぜここに?」
サチが聞くと、誠治は笑顔で言った。
「あ、バイトですバイト。父はまた出張で出て行ってしまったので、私はここで働かせて貰っているんです。
ほら、会社も当分休みなので。」
「なるほど…」
ハジメはいつまでもゲラゲラ笑っている数男がおかしくて仕方ない。
「そろそろ笑うのやめろよ。」
「やっぱり帰るか。」
笑いながら数男が言うと、サチは呆れる。
「気まぐれですか?」
「いや、ゴミ拾いの存在が邪魔だからな。」
そう言われ、誠治は苦笑。
「私の事…嫌いですか…」
「恋のライバルだからな。」
得意気に数男は言って、立ち去るのだった。
「すいません先輩…!あとハジメも…!失礼します!」
サチは挨拶をし、数男の後を追いかけた。
誠治はサチの後ろ姿を見つめていた。
(…あの方が真渕さんの言っていたセクハラか…今度会ったら転職を勧めよう…。)
と誠治は思いながらも、ハジメに笑顔を見せる。
「あ、ハジメ、ご飯できたよ。」
「ん!ありがとう、今すぐ行く。」
その後、サチは数男に言う。
「もう、あんな失礼やめてください。」
数男はサチを横目で見ると、呆れた様子で軽く溜息をついた。
サチは何事かと思っていると、数男は言う。
「お前は本当に馬鹿なんだな。」
急にディスられたせいか、サチは怒り心頭。
「急に意味が分かりません!本当に弄れてますね…!」
数男は何も言わずにスルーすると、近くのうどん屋が目に止まった。
そして足を止めるので、サチも足を止めた。
「ん?どうしたんですか?」
サチが言うと、数男は言った。
「うどんでも食べるか?うどん好きなんだろ。」
サチを貶したかと思えば、次は優しくする数男。
怪しすぎる行動に、サチの起源は尚更悪くなる。
「なんですか急に。ご機嫌取りのつもりですか?」
「ソシオパスがご機嫌取りをするなんて素晴らしいじゃないか。」
そう言って数男は店に入るので、サチは溜息。
「まあ五島さんの場合、自分の植物人間には情が沸きますからね。仕方ないです。」
すると数男は何か思ったのか呟いた。
「じゃあ私が人間に戻ったら、お前達が私から解放されたら、
…私はお前達がどうでもよくなるのか?」
それを聞くと、サチは黙り込んでしまう。
サチにもわからない事なので、眉を潜めた。
「知りませんよ、そんな事。」
「…そんな事になるなら、このままでもいいかもな。」
サチは意外そうな顔をした。
「植物人間にされたって聞いた時はあんなに怒り狂っていて、戻るのは嫌なんですか?変ですね。」
そう言われると、数男は少し俯いてから言った。
「私にも、忘れたくない感情がある。…最近は特にそう思うようになってきた。」
サチは首を傾げた。
すると数男はサチを見たが、やがて溜息。
数男は席に着くと、サチは正面に座った。
「まるで、私がお前達の感情を奪っているみたいだ。」
「え?」
サチが言うと、数男はメニューを開きながらも続けた。
「私は元々、心を大して動かされない人間だった。植物人間になって、仲間を作っていく内に知ったのだ…そういう感情を。
私は今でも自分勝手な人間だろうが、昔と比べたらだいぶ変わったんだぞ。」
それにサチは頷いていると、数男は続ける。
「私にはわかる、仲間が抱く感情が。
私の力を受けた者は、日に日に心が失われていくのを感じるんだ。
…私は日に日に理解していくのに、可笑しな話だ。」
「あたしもですか?」
サチの質問に、数男は目を閉じた。
「まあな。ま、お前はまだマシだ、植物人間になって日が浅い。」
「半年経ちましたけどね、この仕事して。
何か、私から感情って失われましたっけ?」
それを聞くと、数男はサチを見る。
その意味有り気な視線をサチは見つめていると、数男は言うのをやめて近くの店員を呼び出すのであった。
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