一羽の天使、悪魔の村にまい降りて。

うてな

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03 オトギリソウ:恨み

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ニコライが子供に噛み付いた事件の後、ガリーナは家にいた。

ニコライは家でもよく動き回る為に椅子に縛り付けられ、ガリーナはその隣で席についていた。
二人の正面にはパーヴェルがおり、説教をしている様子。
パーヴェルにはいつもの穏やかな様子はなく、冷たい表情を浮かべていた。

「ガリーナ、何度言ったらわかるのです?
あなたがこの悪魔を外に連れる度、人々が怪我をしています。
それをわかって連れているのですか?」

「ご、ごめんなさい…。家にいるとニコライが…可哀想で…」

「呆れました、悪魔に情ですか。」

ガリーナは泣いていると、パーヴェルは困った顔をしてしまう。

「もうよろしいです。」

パーヴェルはそう言うと、ガリーナの肩に手を置く。
それから顔を近づけると優しく言った。

「ガリーナ、今日は休みなさい。ニコライの相手は私が引き受けます、疲れているでしょう。」

パーヴェルの優しく落ち着く声。
ガリーナはパーヴェルを見つめて瞳を潤ませると言う。

「…ありがとう…ワレリーさん…」

パーヴェルが深く頷くと、ガリーナは席から立った。
それを見たニコライは叫んだ。

「マーマ!マーマ!」

椅子から逃れようとするが、縄で縛られていたニコライは身動きも取れない。
ガリーナは廊下に出ると、外出をしてしまう。

家に二人だけになると、パーヴェルはニコライを見下した。
二人きりになった途端、ニコライを軽蔑の目で見下すのだ。
ニコライはパーヴェルを見つめると言った。

「きえろ!」

するとパーヴェルは無情にも、ニコライを拳で殴った。
ニコライは平気そうな顔をしつつも更に言う。

「うるさい!ニコライ!」

それを聞いたパーヴェルは、ニコライの腕を抓りながら言った。

「俺の言葉ばっか覚えるんじゃない。
ちゃんとママの言葉を覚えなきゃダメだろう…?この悪魔が。」

パーヴェルはガリーナやワレリーの前では見せない、本性を見せていた。
ニコライは抓られた手を見つめるだけで、痛みをまるで感じていない顔をしている。
パーヴェルは手を離した。

「なんでお前が産まれてきたんだ?俺がワレリー兄様の代わりに牧師をしてるからか?」

するとパーヴェルは鼻で笑う。

「知ってるかニコライ?
お前が悪魔じゃなかったら、今頃お前は神の子としてこの村で讃えられてたんだぞ?
神の声を聞く牧師の子供は、神の子として崇められる。
なのにお前は…」

パーヴェルは無表情になると、ニコライに掴みかかって怒鳴った。

「お陰で計画が台無しだッ!
せっかく大好きなガリーナと結ばれて、人生を謳歌できると思ってたのによ!」

それでもニコライは平気な顔をしている。
それに溜息をつくパーヴェル。

「お前、生かされてるだけ感謝しろよな。」

ニコライは、冷たくこちらを見下ろす目を見つめていた。

 ========================

ガリーナは村の教会にやってきていた。
教会の扉には赤い札が紐で吊るされていて、それを見たガリーナは立ち止まった。

(まだ中に人がいるんだ。)

すると、教会の扉から一人の女性が出てくる。

「あらガリーナさん。神様にご報告ですか?お次どうぞ。」

女性はそう言うと、扉の赤い札を裏返しにする。
赤い札の裏は黒色。
それを見ていたガリーナは女性にひと礼。

「ありがとうございます。」

女性が立ち去ったのを見送ると、ガリーナは札を裏返して赤色にする。
そして教会に入るのであった。

村の住人は、定期的に神に報告を行う。
その為の施設が教会であり、毎日多くの村人がここを訪れる。
一人以上の入館を禁じており、村人は神の前では本心を語る習わしがある。

教会の中は広く、椅子に囲まれた通路の先には大きな窓。
ガリーナは窓の前で手を組むと言った。

「神様…私…怖いんです…。
今日、息子のニコライがまた近所の子供に噛み付いたんです…。
全く言う事を聞かなくって…!」

教会にガリーナの声が響く。
ガリーナは涙を流しつつ、窓を見上げた。
色とりどりのガラスから優しい光が差し、ガリーナの美しい瞳は涙と共に窓ガラスを映し出す。

すると、教会の窓の向こう側から物音が聞こえる。
それを聞いたガリーナは驚いて、状況を察したのか言った。

「ごめんなさい!私が泣いたからきっと、窓の向こうの神様にも不祝儀が…!」

ガリーナはそれでも涙を止める事ができず続ける。

「私、泣くと不祝儀を呼んじゃう人間なんです。生まれた時からずっと…!
何してもダメダメで、泣き虫で、人の全てを台無しにしてしまうんです。
私…今の夫の前にも別の人と付き合った事があって、事故に遭ったり…子供に恵まれなかったり…
私がいるだけでみんな不幸になっていくんです…!」

ガリーナは嗚咽を我慢しながらも続ける。

「今の夫も、牧師をしているのに私が悪魔の子供を産んで…!
神様の声を聴く牧師様が、悪魔の子供を持つんですよ…?
そのせいで彼を切羽詰まった状況に置いてしまって…子供のニコライもきっと幸せじゃないはずなんです…
私…私のせいで身の回りの人がみんな不幸になっちゃうの…もう嫌なんです…!」

ガリーナは正気を失くした目をすると、窓の前にある広い机の上にある聖書を見つめた。

「聖書には【自ら命を絶ってはならない】とありますが…
今夜、私は命を絶ちます。…息子と共に、近くの谷で…。
神様お許しを…みんなの為なんです……
…今までありがとうございました。」

ガリーナはそう言い残すと、教会を立ち去った。


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