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9話「唯とのデート」
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ジリリリリリ……ジリリリリリ……ジリリリリリ
目覚まし時計の音か?
目を瞑りながら、そこらへんに手を伸ばし、手探りで目覚まし時計を探す。
あった。
ポチッ。すると音は止み、静かになった。
目を開けるとそこは、俺の実家だった。
前と違うのは、唯に起こされなかったこと、そして今ここに唯の姿がない。
ってことは……時間が進んだのか?
いや、まだわからない。確認してみないと。
遠くから足音が聞こえてくる。
足音はだんだんと近づいていき、俺の部屋まで届いた。
この足音は母さんだ。
「こら淳一!休みの日だからっていつまでも寝てないで起きなさい……ってもう起きてたのね」
母さんは部屋の扉を開けるなりそう言った。
「か、母さん!今日は何月何日だ?」
「はあ?あんた何寝ぼけてんの?今日は7月8日よ」
やった……やっと1日進んだ……
「母さん! やったよ母さん俺やったよ!母さん若いなあ! 11年前だもんなあ!」
嬉しさのあまり、思わず母さんの胸に抱きついてしまった。
「はいはい、いつまでも寝ぼけてないでパン焼けたから食べなさい」
そう言うと、母さんは俺の部屋から去って行った。
「ははは、やっと進んだんだな、時間」
思わず声と笑いがこぼれてしまった。
あの長いループからやっと解放されたんだ。
なんて素晴らしいことだろう。
ブーブーブー
部屋のどこからかバイブ音が聞こえた。
部屋を見渡すと、机の上の携帯が振動していた。
携帯を手に取り確認すると、どうやらメールが来たらしい。
懐かしいな。この頃はスマホがなかった時代だからな。
当然ガラケーだ。
当時はガラケーなんて呼んでなかったが。
あのパカパカ携帯を開いたり閉じたりするのが好きでスライド式には絶対したくないって思ってたっけ。
なんとも懐かしい。
メールを確認すると差出人は唯からだった。
「今日予定ある?」
おおう……なんだこれは遊びの誘いかな?
もしかしたら今日は、幸先いいのかもしれないな。
「ないけど、どうした?」
そう打つと、俺はすぐさま送信ボタンを押した。
うわあ懐かしいな。ガラケーで文字打つのって何年ぶりだよ……
もう5年は経ってる気がするな……
そんなことを思っているとすぐさま返信が返ってきた。
唯返信めっちゃ早えな。
「ちょっと付き合って欲しいところあるんだけど」
7月8日、今日は土曜日
ついさっき、唯からの呼び出しメールを受けた俺は今唯の家の前にいる。
「暇なら今すぐうちに来なさい」
全く、人のことをなんだと思ってるんだか。
まあこのメールが来て、すぐさま出かける支度をして、家を飛び出してきた俺が言うのは何だが。
これでは唯に忠実な犬じゃないかと思う。
でも悪くないかもしれないな。
好きな人には尽くしたくなるものだ。
それは人それぞれだとは思うけど、少なくとも俺はそうだ。
好きな人の笑顔のためなら頑張れる。
唯からのお誘いだからな。
行かないわけがない。
そんなことを唯の家の前で汗だくになりながら思う。
タオルを持って来てよかった。
それにしても暑い。
日差しが強くて倒れそうだ。
蝉こそは鳴いてないが、もうじき蝉も土から出てくるだろう。
それくらい暑いし夏の始まりを感じる。
インターホンを押して、さっきから10分ほど待っているが、唯は全く現れない。
さすがに遅いと思い、もう一度インターホンを押す。
すると、一分も経たぬ間に家の扉が開いた。
そこには、白いワンピースを着た唯の姿があった。
「ごめん! 淳一! 支度に時間かかっちゃって」
さすがの唯も、このクソ暑い中待たせたことを悪いと思ったのか謝ってきた。
「あ、ああ。全然今来たとこだし」
すぐバレる嘘をついた。
フォローになってないよなこれ。
それにしても今日の唯はなんていうか……
いつもと違ってなんか大人っぽいような……
ワンピースなんて着たの見たことなかったな。
「てか支度ってどっか行くのか?」
「あれ、言ってなかったかしら? ショッピングモールに行くのよ」
「いや、聞いてねえし。まあ別にいいけどよ」
まあ、一応金も持ってきたし問題ない。
「じゃあ早速行きましょ。直行バスがこの辺から出てるからとりあえずそれに乗るわよ」
唯はそう言うと、これから遠足に向かう子供のように鼻歌を歌いながら、俺をせかしながら歩いた。
唯の家から歩いて5分程の所にショッピングモール直行バスが出ている。
俺たちは、とりあえずそこへ向かって歩いた。
「それにしても暑いわね。ちょっと淳一、温暖化止めなさいよね」
「そんな地球レベルの問題俺が解決できるわけないだろ」
「それもそうね。淳一って要領悪いから身の回りのことも解決できなそう」
図星だな。
だからこそ11年後あんなことになったんだ。
要領悪いに決まっている。
「うるせーよ」
俺がそう言うと、唯は笑いながら大きく伸びをした。
「今日は久しぶりに部活ないから淳一と遊んでやろうと思ったのよ」
「そんな理由かよ」
「それもあるけど、ほんとは浩の誕生日が近いから誕生日プレゼント買いに行こうかなって」
「それ、俺必要?」
「だ、だって男子が喜ぶものとか分からないのよ!淳一と一緒に選んだら良いもの選べるかなって思ったの!悪い?」
唯はそう言うと、ふくれっ面になってそっぽを向いた。
まったく忙しいやつだ。
「い、いや悪くねえけど。」
「ならいいじゃない。私とデート出来るんだから感謝しなさい!」
「デートってそうなのか?」
「……!! やっぱ今のなし!忘れなさい!」
なんだよ……自分で言っといて。
そう言って恥ずかしがる唯を見てたら、こっちまで恥ずかしくなる。
バス停に着くとちょうどバスが到着していた。
バスに乗り込み、バスに乗ること15分でショッピングモールに到着した。
28歳の男が情けないがバスの中で隣の席に座るだけでドキドキしてしまった。
「さて、どこから回ろうかしら」
「何か目当ての店とかないのか?」
「うーん、まず何をあげるかも決めてないのよね……」
あははと唯が笑いながら答える。
「無計画すぎるだろ」
「うるさいわね! そのための淳一なんだから淳一も考えてよね!」
「はいはい。浩って何が好きなんだ?」
「うーん、中学入ってから野球始めたから野球?」
「野球ねえ。野球道具とかは既に持ってるだろうからなあ」
「そうなのよねえ。そんなに予算あるわけじゃないのよ」
「まあ、とりあえず無難に雑貨屋でも行こうぜ」
「そうね」
俺たちは、とりあえずショッピングモールの中にある雑貨屋に行くことにした。
今日は土曜日ということもあってか、家族連れやカップルでいっぱいだ。
何かのキャンペーンで貰った風船を、小さい子供が嬉しそうに持ちながら、お父さんとお母さんと一緒に歩いている。
幸せの代名詞的な光景だな。
家族連れも多いが、それにしてもカップルだらけだ。
周りから見たら俺たちもカップルに見えるのだろうか?
唯はどう思う? なんて聞いたら腹パンをお見舞いされるからやめておこう。
周りのカップルが手をつなぎながら歩いてるのを見ると、28歳の俺だったら(今も28だけど)嫉妬しまくりだったが、11年前に戻った今は何か微笑ましいとさえ思う。
隣に唯という好きな人がいるからかもしれないが。
まったく今日は出来すぎな気がする。
あのとき喧嘩しなかったらこんなに違ってたのか。
あの時の俺に教えてあげたいぜ。
「あ、ここみたいね。雑貨屋」
赤い文字のロゴが印象的なその雑貨屋は、どこにでもあるような雑貨屋と同様で結構何でも置いてあり、誰かに何かをプレゼントするといったら、ここで選べば間違えないといった印象である。
「懐かしいな。昔ここで唯への誕生日プレゼント買ったんだよな」
「え、そうなの? なに?」
「あの猫の貯金箱。小銭置いたら猫がひょこっと出てきて小銭取ってくやつ」
「あれ去年のじゃない。そんな昔からじゃないわよ」
ああ、そうか。ここでいうと去年なんだな。
「浩もあれでいいんじゃないか?」
「ダメよ! 私は猫が好きだから良かったけど。あれは貰っても反応に困るわよ。それに淳一から貰ったやつだし同じやつはなんか…嫌」
唯の言葉はだんだんと小さくなっていて、最後の方は何を言ってるか分からなかった。
「俺が何だって?」
「何でもないわよ!早く店の中入るわよ!」
唯はそう言うと店の中へ入っていった。
店の中は、色々な商品が陳列されていた。
あちこちに色々な物が置いてあるのでパッと見でここは何コーナーだとかよく分からない。
「わあー、やっぱ色んなものがあるわねー。あ! このクマちゃん可愛い!」
唯がお菓子を買い与えられた子供のような表情でクマのぬいぐるみの前で立ち止まる。
「そうか? なんかこのクマ腹立つ顔してるんだが」
言葉通りそのクマは喧嘩売ってんのか?と言ってしまいたくなるような仏頂面だった。
「はあ? 何言ってんのよめちゃくちゃ可愛いじゃない!! この子は今日持って帰るわよ!」
「お前金あるのかよ?」
「あっ……」
金、ないんだな……
「忘れてないと思うが、浩の誕生日プレゼント買うために来たんだからな」
「わ、忘れてないわよ! ちょっと見てただけじゃない!」
「ならいいけどよ。俺から提案があるんだが、俺と唯二手に分かれてプレゼントを探して、何個か候補をあげて後で一個に絞るってのはどうだ?」
このまま2人で探してたら、時間だけが過ぎていきそうだからな。
「へえー、淳一にしては良い案ね。いいわよ、じゃあ20分後このクマちゃんの前に集合ね」
「あいよ」
というわけで、俺たちはそれぞれ浩にあげるのにふさわしいプレゼントを選ぶことにした。
そして20分後クマちゃんの前へ戻ると、唯が自信満々な顔をして待っていた。
「遅いわよ淳一。ちゃんと選んできたでしょうね?」
「ああ。バッチリだぜ」
俺も自信満々に答える。
「あら、自信あるみたいね。まあ私が選んだやつの方が素晴らしいと思うけど」
「どうだかな。とりあえず俺は3個候補持ってきた」
「奇遇ね。私も3個よ。それじゃあ私から発表するわよ」
唯はそう言うと、買い物カゴから品物を取り出した。
「じゃん! これよ!」
唯はそれを自分の頭の上により高く持ち上げた。
「…………なんだこれ?」
「何って目覚まし時計よ。浩ってよく寝坊して朝練に遅刻するから、これがあれば遅刻しないと思って3つ目覚まし時計にしたわ!いいでしょ!」
「…………目覚まし時計はいいけどよ。お前3つも買う金あるのかよ?」
「はっ……」
「バカかお前」
「ぐう……」
突っ込まれて何も言えない唯。
まあ、唯なりに考えた結果なんだろうな。
確かに目覚まし時計があれば、浩も遅刻しないですむしな。
「しゃあねえな。俺が半分金出してやるよ。」
「ほんとう……?」
「今回だけな。浩には世話になってるしな。」
「あ、ありがとう淳一」
えへへと本当にうれしそうな顏をして唯は笑った。
守りたいぜこの笑顔。
「ところで淳一は何選んだの?」
「え、俺? 俺は……まあいいじゃん時計で決まったんだし」
「えー、何それ教えなさいよ」
「いいから、レジ行くぞ」
俺はそう言うと、唯の買い物カゴを急いでレジに持って行った。
さすがに何も思いつかなくて唯にあげた猫の貯金箱の犬版にしようとした言えないからな…………
「いらっしゃいませ。あ、お客様先ほどの商品のラッピング終わりましたので、お渡ししますね」
「あ、はいありがとうございます。」
「淳一何か買ったの?」
「ん、まあな」
レジを済ませ店をあとにし、フードコートでランチをすることになった。
金のない高校生の俺たちはファーストフードを選んだ。
席を取り、ハンバーガーが来たので食べようとしたとき唯が口火を切った。
「で、これは何なのよ淳一。あんた個人で浩にプレゼントするの?」
唯は、さっき俺がラッピングを頼んだモノを指さしながら話す。
「いや、違うけど」
「じゃあ何?」
「……開けてみ」
「え、開けちゃっていいの?誰かにあげるんじゃないの?」
「いいから。開けてみ」
俺がそう言うと、唯はそれを開け始めた。
何箇所か止められているテープを剥がし、正体があらわになっていく。
「これって……」
「お前さっき欲しそうにしてたからさ。やるよ」
そう言って唯の顔を見ると、何故か唯の目には涙があふれていた。
「え、ちょっ。唯何泣いてんの」
「泣いてないし!!! もううるさい淳一!」
泣きながら嬉しそうな唯。
思ったより喜んでくれてうれしい。
やばい。唯が泣いてるのになんか嬉しい。
なんて言ったら唯は怒るかな。
「淳一」
「ん? なんだ?」
泣き止んだのか唯はティッシュで鼻をかんだ後、俺に話しかけた。
「…………ありがとね」
唯はこれ以上になく恥ずかしそうに俯きながらそう言った。
「お、おう」
その後家に帰るまでお互いに気恥ずかしい気持ちでいっぱいになってかあまり会話をせず一日を終えた。
唯とのショッピングデートを終え、家に帰り疲れのせいか睡魔に襲われ寝ると1日日付が進んでいた。
どうやら今回は、一度も戻らず先に進めたらしい。
「どうやら上手くやってるようねおじいちゃん」
「…………ああ、由夏か」
部屋のベッドに横になっていると、目の前に黒髪ロングの美少女が現れた。
こいつは、俺と唯が結婚した未来での孫の由夏だ。
俺の未来を変えるために、俺を過去に戻した張本人だ。
「え、なにその反応!? もうちょっと驚いてくれてもいいじゃない!!」
俺の反応に少しがっかりしたようで、由夏は少し怒る。
「まあ、2回目だしな。あと色々ありすぎて大したことじゃ驚かねーよ」
「ふーん、そう。まあ上手くやってるみたいでよかったわ。唯おばあちゃんとの距離も縮んでるみたいだし」
「お! お前もそう思うか! だよな!ちょっと手応えがあるような気がするんだよな! 俺頑張ったし!」
俺がそう言うと、由夏はいきなり俺の頬をつねった。
「いってえ! 何すんだよ!」
「ちょーしにのってたら痛い目合うからね。過去を変えるってそんなに甘くないからね」
「あん? 現に俺もう結構変えたじゃねえか。唯と喧嘩しないで済んだし」
「まあ、それは褒めてあげるけど。油断しないでってことよ。それとあと……」
「ん? 何だ?」
「ううん、何でもない。また今度話すわ。まあとりあえず頑張ってねおじいちゃん」
そう言うと、由夏は目の前から去っていった。
「何だったんだよあいつ」
目覚まし時計の音か?
目を瞑りながら、そこらへんに手を伸ばし、手探りで目覚まし時計を探す。
あった。
ポチッ。すると音は止み、静かになった。
目を開けるとそこは、俺の実家だった。
前と違うのは、唯に起こされなかったこと、そして今ここに唯の姿がない。
ってことは……時間が進んだのか?
いや、まだわからない。確認してみないと。
遠くから足音が聞こえてくる。
足音はだんだんと近づいていき、俺の部屋まで届いた。
この足音は母さんだ。
「こら淳一!休みの日だからっていつまでも寝てないで起きなさい……ってもう起きてたのね」
母さんは部屋の扉を開けるなりそう言った。
「か、母さん!今日は何月何日だ?」
「はあ?あんた何寝ぼけてんの?今日は7月8日よ」
やった……やっと1日進んだ……
「母さん! やったよ母さん俺やったよ!母さん若いなあ! 11年前だもんなあ!」
嬉しさのあまり、思わず母さんの胸に抱きついてしまった。
「はいはい、いつまでも寝ぼけてないでパン焼けたから食べなさい」
そう言うと、母さんは俺の部屋から去って行った。
「ははは、やっと進んだんだな、時間」
思わず声と笑いがこぼれてしまった。
あの長いループからやっと解放されたんだ。
なんて素晴らしいことだろう。
ブーブーブー
部屋のどこからかバイブ音が聞こえた。
部屋を見渡すと、机の上の携帯が振動していた。
携帯を手に取り確認すると、どうやらメールが来たらしい。
懐かしいな。この頃はスマホがなかった時代だからな。
当然ガラケーだ。
当時はガラケーなんて呼んでなかったが。
あのパカパカ携帯を開いたり閉じたりするのが好きでスライド式には絶対したくないって思ってたっけ。
なんとも懐かしい。
メールを確認すると差出人は唯からだった。
「今日予定ある?」
おおう……なんだこれは遊びの誘いかな?
もしかしたら今日は、幸先いいのかもしれないな。
「ないけど、どうした?」
そう打つと、俺はすぐさま送信ボタンを押した。
うわあ懐かしいな。ガラケーで文字打つのって何年ぶりだよ……
もう5年は経ってる気がするな……
そんなことを思っているとすぐさま返信が返ってきた。
唯返信めっちゃ早えな。
「ちょっと付き合って欲しいところあるんだけど」
7月8日、今日は土曜日
ついさっき、唯からの呼び出しメールを受けた俺は今唯の家の前にいる。
「暇なら今すぐうちに来なさい」
全く、人のことをなんだと思ってるんだか。
まあこのメールが来て、すぐさま出かける支度をして、家を飛び出してきた俺が言うのは何だが。
これでは唯に忠実な犬じゃないかと思う。
でも悪くないかもしれないな。
好きな人には尽くしたくなるものだ。
それは人それぞれだとは思うけど、少なくとも俺はそうだ。
好きな人の笑顔のためなら頑張れる。
唯からのお誘いだからな。
行かないわけがない。
そんなことを唯の家の前で汗だくになりながら思う。
タオルを持って来てよかった。
それにしても暑い。
日差しが強くて倒れそうだ。
蝉こそは鳴いてないが、もうじき蝉も土から出てくるだろう。
それくらい暑いし夏の始まりを感じる。
インターホンを押して、さっきから10分ほど待っているが、唯は全く現れない。
さすがに遅いと思い、もう一度インターホンを押す。
すると、一分も経たぬ間に家の扉が開いた。
そこには、白いワンピースを着た唯の姿があった。
「ごめん! 淳一! 支度に時間かかっちゃって」
さすがの唯も、このクソ暑い中待たせたことを悪いと思ったのか謝ってきた。
「あ、ああ。全然今来たとこだし」
すぐバレる嘘をついた。
フォローになってないよなこれ。
それにしても今日の唯はなんていうか……
いつもと違ってなんか大人っぽいような……
ワンピースなんて着たの見たことなかったな。
「てか支度ってどっか行くのか?」
「あれ、言ってなかったかしら? ショッピングモールに行くのよ」
「いや、聞いてねえし。まあ別にいいけどよ」
まあ、一応金も持ってきたし問題ない。
「じゃあ早速行きましょ。直行バスがこの辺から出てるからとりあえずそれに乗るわよ」
唯はそう言うと、これから遠足に向かう子供のように鼻歌を歌いながら、俺をせかしながら歩いた。
唯の家から歩いて5分程の所にショッピングモール直行バスが出ている。
俺たちは、とりあえずそこへ向かって歩いた。
「それにしても暑いわね。ちょっと淳一、温暖化止めなさいよね」
「そんな地球レベルの問題俺が解決できるわけないだろ」
「それもそうね。淳一って要領悪いから身の回りのことも解決できなそう」
図星だな。
だからこそ11年後あんなことになったんだ。
要領悪いに決まっている。
「うるせーよ」
俺がそう言うと、唯は笑いながら大きく伸びをした。
「今日は久しぶりに部活ないから淳一と遊んでやろうと思ったのよ」
「そんな理由かよ」
「それもあるけど、ほんとは浩の誕生日が近いから誕生日プレゼント買いに行こうかなって」
「それ、俺必要?」
「だ、だって男子が喜ぶものとか分からないのよ!淳一と一緒に選んだら良いもの選べるかなって思ったの!悪い?」
唯はそう言うと、ふくれっ面になってそっぽを向いた。
まったく忙しいやつだ。
「い、いや悪くねえけど。」
「ならいいじゃない。私とデート出来るんだから感謝しなさい!」
「デートってそうなのか?」
「……!! やっぱ今のなし!忘れなさい!」
なんだよ……自分で言っといて。
そう言って恥ずかしがる唯を見てたら、こっちまで恥ずかしくなる。
バス停に着くとちょうどバスが到着していた。
バスに乗り込み、バスに乗ること15分でショッピングモールに到着した。
28歳の男が情けないがバスの中で隣の席に座るだけでドキドキしてしまった。
「さて、どこから回ろうかしら」
「何か目当ての店とかないのか?」
「うーん、まず何をあげるかも決めてないのよね……」
あははと唯が笑いながら答える。
「無計画すぎるだろ」
「うるさいわね! そのための淳一なんだから淳一も考えてよね!」
「はいはい。浩って何が好きなんだ?」
「うーん、中学入ってから野球始めたから野球?」
「野球ねえ。野球道具とかは既に持ってるだろうからなあ」
「そうなのよねえ。そんなに予算あるわけじゃないのよ」
「まあ、とりあえず無難に雑貨屋でも行こうぜ」
「そうね」
俺たちは、とりあえずショッピングモールの中にある雑貨屋に行くことにした。
今日は土曜日ということもあってか、家族連れやカップルでいっぱいだ。
何かのキャンペーンで貰った風船を、小さい子供が嬉しそうに持ちながら、お父さんとお母さんと一緒に歩いている。
幸せの代名詞的な光景だな。
家族連れも多いが、それにしてもカップルだらけだ。
周りから見たら俺たちもカップルに見えるのだろうか?
唯はどう思う? なんて聞いたら腹パンをお見舞いされるからやめておこう。
周りのカップルが手をつなぎながら歩いてるのを見ると、28歳の俺だったら(今も28だけど)嫉妬しまくりだったが、11年前に戻った今は何か微笑ましいとさえ思う。
隣に唯という好きな人がいるからかもしれないが。
まったく今日は出来すぎな気がする。
あのとき喧嘩しなかったらこんなに違ってたのか。
あの時の俺に教えてあげたいぜ。
「あ、ここみたいね。雑貨屋」
赤い文字のロゴが印象的なその雑貨屋は、どこにでもあるような雑貨屋と同様で結構何でも置いてあり、誰かに何かをプレゼントするといったら、ここで選べば間違えないといった印象である。
「懐かしいな。昔ここで唯への誕生日プレゼント買ったんだよな」
「え、そうなの? なに?」
「あの猫の貯金箱。小銭置いたら猫がひょこっと出てきて小銭取ってくやつ」
「あれ去年のじゃない。そんな昔からじゃないわよ」
ああ、そうか。ここでいうと去年なんだな。
「浩もあれでいいんじゃないか?」
「ダメよ! 私は猫が好きだから良かったけど。あれは貰っても反応に困るわよ。それに淳一から貰ったやつだし同じやつはなんか…嫌」
唯の言葉はだんだんと小さくなっていて、最後の方は何を言ってるか分からなかった。
「俺が何だって?」
「何でもないわよ!早く店の中入るわよ!」
唯はそう言うと店の中へ入っていった。
店の中は、色々な商品が陳列されていた。
あちこちに色々な物が置いてあるのでパッと見でここは何コーナーだとかよく分からない。
「わあー、やっぱ色んなものがあるわねー。あ! このクマちゃん可愛い!」
唯がお菓子を買い与えられた子供のような表情でクマのぬいぐるみの前で立ち止まる。
「そうか? なんかこのクマ腹立つ顔してるんだが」
言葉通りそのクマは喧嘩売ってんのか?と言ってしまいたくなるような仏頂面だった。
「はあ? 何言ってんのよめちゃくちゃ可愛いじゃない!! この子は今日持って帰るわよ!」
「お前金あるのかよ?」
「あっ……」
金、ないんだな……
「忘れてないと思うが、浩の誕生日プレゼント買うために来たんだからな」
「わ、忘れてないわよ! ちょっと見てただけじゃない!」
「ならいいけどよ。俺から提案があるんだが、俺と唯二手に分かれてプレゼントを探して、何個か候補をあげて後で一個に絞るってのはどうだ?」
このまま2人で探してたら、時間だけが過ぎていきそうだからな。
「へえー、淳一にしては良い案ね。いいわよ、じゃあ20分後このクマちゃんの前に集合ね」
「あいよ」
というわけで、俺たちはそれぞれ浩にあげるのにふさわしいプレゼントを選ぶことにした。
そして20分後クマちゃんの前へ戻ると、唯が自信満々な顔をして待っていた。
「遅いわよ淳一。ちゃんと選んできたでしょうね?」
「ああ。バッチリだぜ」
俺も自信満々に答える。
「あら、自信あるみたいね。まあ私が選んだやつの方が素晴らしいと思うけど」
「どうだかな。とりあえず俺は3個候補持ってきた」
「奇遇ね。私も3個よ。それじゃあ私から発表するわよ」
唯はそう言うと、買い物カゴから品物を取り出した。
「じゃん! これよ!」
唯はそれを自分の頭の上により高く持ち上げた。
「…………なんだこれ?」
「何って目覚まし時計よ。浩ってよく寝坊して朝練に遅刻するから、これがあれば遅刻しないと思って3つ目覚まし時計にしたわ!いいでしょ!」
「…………目覚まし時計はいいけどよ。お前3つも買う金あるのかよ?」
「はっ……」
「バカかお前」
「ぐう……」
突っ込まれて何も言えない唯。
まあ、唯なりに考えた結果なんだろうな。
確かに目覚まし時計があれば、浩も遅刻しないですむしな。
「しゃあねえな。俺が半分金出してやるよ。」
「ほんとう……?」
「今回だけな。浩には世話になってるしな。」
「あ、ありがとう淳一」
えへへと本当にうれしそうな顏をして唯は笑った。
守りたいぜこの笑顔。
「ところで淳一は何選んだの?」
「え、俺? 俺は……まあいいじゃん時計で決まったんだし」
「えー、何それ教えなさいよ」
「いいから、レジ行くぞ」
俺はそう言うと、唯の買い物カゴを急いでレジに持って行った。
さすがに何も思いつかなくて唯にあげた猫の貯金箱の犬版にしようとした言えないからな…………
「いらっしゃいませ。あ、お客様先ほどの商品のラッピング終わりましたので、お渡ししますね」
「あ、はいありがとうございます。」
「淳一何か買ったの?」
「ん、まあな」
レジを済ませ店をあとにし、フードコートでランチをすることになった。
金のない高校生の俺たちはファーストフードを選んだ。
席を取り、ハンバーガーが来たので食べようとしたとき唯が口火を切った。
「で、これは何なのよ淳一。あんた個人で浩にプレゼントするの?」
唯は、さっき俺がラッピングを頼んだモノを指さしながら話す。
「いや、違うけど」
「じゃあ何?」
「……開けてみ」
「え、開けちゃっていいの?誰かにあげるんじゃないの?」
「いいから。開けてみ」
俺がそう言うと、唯はそれを開け始めた。
何箇所か止められているテープを剥がし、正体があらわになっていく。
「これって……」
「お前さっき欲しそうにしてたからさ。やるよ」
そう言って唯の顔を見ると、何故か唯の目には涙があふれていた。
「え、ちょっ。唯何泣いてんの」
「泣いてないし!!! もううるさい淳一!」
泣きながら嬉しそうな唯。
思ったより喜んでくれてうれしい。
やばい。唯が泣いてるのになんか嬉しい。
なんて言ったら唯は怒るかな。
「淳一」
「ん? なんだ?」
泣き止んだのか唯はティッシュで鼻をかんだ後、俺に話しかけた。
「…………ありがとね」
唯はこれ以上になく恥ずかしそうに俯きながらそう言った。
「お、おう」
その後家に帰るまでお互いに気恥ずかしい気持ちでいっぱいになってかあまり会話をせず一日を終えた。
唯とのショッピングデートを終え、家に帰り疲れのせいか睡魔に襲われ寝ると1日日付が進んでいた。
どうやら今回は、一度も戻らず先に進めたらしい。
「どうやら上手くやってるようねおじいちゃん」
「…………ああ、由夏か」
部屋のベッドに横になっていると、目の前に黒髪ロングの美少女が現れた。
こいつは、俺と唯が結婚した未来での孫の由夏だ。
俺の未来を変えるために、俺を過去に戻した張本人だ。
「え、なにその反応!? もうちょっと驚いてくれてもいいじゃない!!」
俺の反応に少しがっかりしたようで、由夏は少し怒る。
「まあ、2回目だしな。あと色々ありすぎて大したことじゃ驚かねーよ」
「ふーん、そう。まあ上手くやってるみたいでよかったわ。唯おばあちゃんとの距離も縮んでるみたいだし」
「お! お前もそう思うか! だよな!ちょっと手応えがあるような気がするんだよな! 俺頑張ったし!」
俺がそう言うと、由夏はいきなり俺の頬をつねった。
「いってえ! 何すんだよ!」
「ちょーしにのってたら痛い目合うからね。過去を変えるってそんなに甘くないからね」
「あん? 現に俺もう結構変えたじゃねえか。唯と喧嘩しないで済んだし」
「まあ、それは褒めてあげるけど。油断しないでってことよ。それとあと……」
「ん? 何だ?」
「ううん、何でもない。また今度話すわ。まあとりあえず頑張ってねおじいちゃん」
そう言うと、由夏は目の前から去っていった。
「何だったんだよあいつ」
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聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
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