俺と彼女とタイムスリップと

淳平

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10話「誘い」

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前回に由夏が現れてから2週間が経ち、本格的に夏の暑さを感じるようになり、俺は日々を過ごしていた。
相変わらず、相川の唯へのアプローチは止まらず、少し冷や冷やしながら、後ろの席で眺めていた。

なんで邪魔しないのかって?
多少なりとも唯との距離を、二日間で縮められたと思ったからだ。
ほんの少しだが。
まあ日付も進んでいるし、やり直すことも無いのだろうと安心していた。

今日は、7月24日月曜日。
どうやら今日は夏休み前最後の登校らしい。

「ちょっと淳一聞いてるの?」
「あ、すまんなんだって?」

今日も今日とて朝は唯と一緒に登校している。
俺めっちゃリア充だな。

「だからー、淳一は夏休みどっか行く予定あるの?」
「いや、特には」
「ふーん、でしょうね。淳一基本暇だもんねー」
「うるせえ! お前はどっか行くのかよ?」
「ふふふ、よく聞いてくれたわね! 今年は家族で箱根旅行行くのよ! お父さんが福引で当てたの!」

唯は、嬉しそうに自慢げに話す。

「ほー、よかったじゃねえか」
「うん! だから今から楽しみなの! 温泉いっぱい入るんだー」

唯と温泉か……入りたい。
思わず唯の裸を想像してしまった。
昔は一緒にお風呂入ってたなあ。
幼稚園の時だが。

「淳一……今変な想像したでしょ!!」
「し、してねえよ!」
「うそ! 絶対した!! 変態!!」

唯はそう言うと、おきまり腹パンを繰り出した。

「いってえ!!」
「ふん、淳一が悪いんだからね! さっさと学校行くわよ!」

こいつ……毎回毎回手加減というものを知らねえんだからな……
昔唯は空手を習ってたから、パンチの威力がそこら辺の男より断然強いのだ。

教室に着くといきなり、相川が唯に話しかけた。

「おはよー! 唯ちゃん! 今日も可愛いね!」
「い、いきなり可愛いとか!」

唯がまんざらでもなさそうに答える。
唯と相川は隣の席なので、俺は後ろからやり取りを眺めている。

くそう……楽しそうに話しやがって……
俺は唯とショッピングデートしたんだぞ。
いい雰囲気にもなったし。
相川より仲いいんだぞ。


「唯ちゃん、夏休みどこか行く予定ある?」
「家族で箱根行くわよ。お父さんが福引で当てたの」
「へえー、いいね! 他には?」
「他はないけど……」
「じゃあ、僕と花火大会行かない? ほら来週丸滝川でやるやつ!」
「ええ!? わ、私を誘ってるの?」

唯は驚いた様子で相川に問う。


「うん、唯ちゃんを誘ってる」

相川はやや真剣な顔でそう答えた。
すると唯は俺の方を振り返り、何か言いたげな顔をしたが、俺が視線をそらすと、唯も視線をそらし相川の方へ戻った。

「いいけど……花火大会……行っても……」

「やったー! じゃあ来週花火大会!約束だよ!」
「う、うん……」

相川は嬉しそうにそう言った。
そして唯はまんざらでもなさそうに頷いた。




「…………おじいちゃんっ……。おじいちゃん……。おじいちゃん……おじいちゃん!!」

誰かの声がする…
まだ眠い…起こさないでくれ…

「おじいちゃん!! 起きてってば!!」
「うわあ!! って由夏か!?」
「おはようおじいちゃん。上手くいってないみたいだね」

由夏はそう言うと、俺が被っていた布団をひっくり返し無理やり俺を叩き起こした。

「ちょっ!! お前いきなり何してきたんだよ!」
「いきなりって……私がおじいちゃんの前に現れるってことは分かるでしょ?身に覚えがあるんじゃない?」
「うっ……」

相川が唯を花火大会に誘ったことだよな…
あの後俺ショック過ぎて、家帰ってすぐふて寝したんだよな……

「ってことはまた戻してくれたのか?」
「まあ、そういうことね」

由夏は腰に手を当て、自慢げに言う。

「さっすが俺の孫!! おじいちゃんのこと分かってるぅ!!」
「まあ、それはいいとして。私おじいちゃんに言わないといけないことあるのよ」

由夏が急に真剣な顔をして言った。

「な、なんだ?」
ごくりっと思わず息を呑む。

「前私がおじいちゃんのとこに来た時、言おうと思ってたんだけど……おじいちゃんのこと1回しか戻せなくなった」

「は!?!? まじで!?!? ゴホゴホッ」
驚愕のあまり咳き込んでしまった。

「落ち着いておじいちゃん。1回と言ってもあと1回しか過去をやり直せないわけではないの」

「な、ならどういうことなんだ?」

「私がおじいちゃんを戻す時は、おじいちゃんが大いに選択肢を間違えた時とか、運命が変わるような重大な出来事の時なのよ」

そういえば、ここ2週間はループすることなく日々を過ごしていた。
相変わらず唯と相川の仲は深まる一方だったが、大した出来事ではなかったということだろう。

「それでね……7月7日の時に30回以上おじいちゃんを戻したじゃない?」
「そうだな」
「それ実は……1つの出来事に対して戻せる回数制限を遥かに超えてたの……」

「回数制限?」

「そう、私の存在している未来の世界では、過去に戻せる装置が開発されているの。そいつでおじいちゃんを過去に戻した。でもそいつは回数制限があって……私その時知らなくて……同じこと何回も繰り返すおじいちゃんを見て楽しんでたら、回数制限超えちゃってたの……」

由夏が申し訳なさそうに俯きながら話す。

「……回数制限って何回だったんだ?」

「……5回」

遥かに超え過ぎだろうが!!!
あほか……同じこと繰り返してる俺を見て楽しんでる暇があったら早く助言しろよ!!

「それなら5回戻せるんじゃないのか?」

「……回数制限超え過ぎてペナルティー受けて1回までにされちゃった……てへっ!」

由夏がてへっと可愛く舌を出しポーズを取る。
俺が沈黙していると、由夏が申し訳なさそうな顔をし口火を切った。

「ごめんおじいちゃん……」

「……まあ、お前には過去に戻してくれただけ感謝してるよ。可愛い孫に呆れられないように頑張る……いやもうやるしかねえ!1回しかループできなくてもたとえそのループで失敗してももうやるしかねえんだ。ありがとよ由夏。逆に引き締まったわ」

「おじいちゃん……かっこいいこと言ってるけどさっきからズボンがずり落ちてパンツ丸見えよ……」

「……忘れてくれ」



しばらくすると、由夏は俺に微笑み「頑張ってねおじいちゃん」と呟き姿を消した。

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