俺と彼女とタイムスリップと

淳平

文字の大きさ
12 / 54

11話「予想外」

しおりを挟む
さてと……由夏の前ではかっこつけたが……
なかなかリスクがあるな……1回しかループできないとなると。
やり直しがきかないってこった。

まあ、今まで28年間やり直しが効いたことなかったから、今の状況は恵まれているんだけどな。
とりあえず今日は……相川が唯を誘うのを阻止せねば。

「ちょっと淳一聞いてるの?」

唯が少し怒ったように言う。
今は登校中。
唯と一緒に通学路を歩いているところだ。

「ああ、聞いてる聞いてる。箱根、行くんだろ?温泉羨ましいぜ」
「えっ……なんでそれ知ってるの?」

まずい。
今、ただ夏休みどこか行く予定あるか聞かれただけだった……
まだ唯から箱根旅行のこと聞く前だったか……。

「あ、いや…その……あれだ……」
「どれよ?」

唯が疑いの目で俺を見てくる。

「ちょ、町内会の福引で当てたんだろ?それが噂になって俺の耳に入ってきたんだよ…」

もちろん嘘である。

「あー、なるほどね。そういうことね」

納得するのかよ。
まあ確かに、町内の住民の噂話はすぐ広まるくらいに情報網に長けている町だとは思うが。
唯が単純でよかった。

「そういえば唯、花火大会とかは行かないのか?」
「今の所行く予定はないけど。なんで?」
「……いやー……なんとなく?」
「ふーん」

俺のヘタレ!!
こっちから誘っちゃえば相川が出る幕がなくて済むじゃねえか。

なんて頭で分かっちゃいても、行動へと出せないんだよな。
なんか気まずくなりそうで誘えないんだよ。

「花火大会かあ~。小さい頃淳一と行ったっきり行ってないなぁ」
「ああ、俺もそうだな」
「ねえ淳一。再来週の花火大会一緒に行かない?ほらあるじゃない。隣町の花火大会。小さい頃一緒に行ったとこ。浩も呼んでさ」
「え?? 花火大会??」
「そうよ、花火大会。い、嫌ならいいけど……」

唯が恥ずかしそうに言う。

「いやいやいやいや嫌じゃない!!! 行く絶対行く!!」
「そう。なら約束よ」

……予想外の展開過ぎてびっくりしたな……
こういうパターンは想像しなかったな。
唯から誘いが来るなんて……
てか、花火大会の話題したら、普通にこうなったんじゃないか?

とりあえず、これで相川を阻止する必要はなくなったんじゃないか?
……いや、俺が誘われたのは再来週で、相川が誘ったのは来春だもんな。
どっちみち阻止しないとな。

それにしても、これは前進なのではないか?
唯から花火大会誘われるなんて前じゃ考えられないし。
着実に過去を変えてる気がする。
まあ、過去では7月7日以降喧嘩して疎遠になってたんだよな。

「じゅ、淳一はさ……浴衣とか……好き?」
唯が恥ずかしそうに俺の反応を探るような感じで聞いてきた。

「浴衣?ああ、好きだよ」
「……ふーん……そっか」

何なんだ?唯のやつ。
唯の浴衣とかめちゃくちゃ可愛いに決まってる。
めちゃくちゃ見たいに決まってるだろ。 

「てかもうこんな時間よ淳一! 早くしないと学校遅れるわよ!」
唯はそう言うと学校へと走って行った。

今回も教室に着くと、いきなり相川が唯に話しかけた。

「おはよー! 唯ちゃん! 今日も可愛いね!」
「い、いきなり可愛いとか!」

唯がまんざらでもなさそうに答える。
唯と相川は隣の席なので俺は後ろからやり取りを眺めている。

さて、ここまで同じ展開。
ここからが問題だ。

「唯ちゃん、夏休みどこか行く予定ある?」
「家族で箱根行くわよ。お父さんが福引で当てたの」
「へえー、いいね! 他には?」
「他は……花火大会かな…」
「じゃあ、僕と……ってあれ?花火大会行くの?」

相川が予定と違ったといった顔で驚く。
「う、うん」
あれこれってもう阻止できたんじゃ?
「その花火大会って来週のやつ?」
「いや……再来週よ」
「あ、じゃあ来週のやつ行こうよ!丸滝川でやるやつ!」
「わ、私を誘ってるの!?」

あ、まずいこれまた同じ展開じゃ……

「うん、唯ちゃんを誘ってる」
相川が真剣な顔でそう言った。
すると唯は、今回も俺の方を振り返り、何か言いたげな顔をしたが、俺が視線をそらすと唯も視線をそらし、相川の方へ戻った。

「いいけど……花火大会……行っても……」
「やったー! じゃあ来週花火大会!約束だよ!」
「う、うん」

相川は嬉しそうにそう言った。
そして、唯はまんざらでもなさそうに頷いた。

また……阻止……しそこねちまった。



「……それで、なんで阻止できなかったのよおじいちゃん。チャンスはいくらでもあったじゃない」
「阻止するタイミングが分からなかったんだよ……それに今回は唯が断ると思ったし……」

由夏は、呆れたようにはあとため息をついた。

「おじいちゃんがモテない理由が分かった気がするわ」
「何だよそれ……」

あれから俺は、学校が終わった後、すぐに家に帰った。 そして、ふて寝しようとしたところ、いきなり由夏が現れたってわけだ。

前回、由夏が現れた時に、あれだけかっこつけたことを言った手前由夏と顔を合わせづらい……

「もうループできないのよ。おじいちゃんには期待してたのになあ」
由夏が追い打ちをかけるように言う。 
「うう……分かってるわ……そんなこと」
こいつ、落ち込んでる相手に追い打ちをかけるようなことを言うなんて誰に似たんだ?
唯か?唯なのか?

「まあ、でも唯おばあちゃんから誘ってきたのは予想外だったわ」
「それな! それなんだよ。これはここ最近の俺の行動が素晴らしかったからじゃね?」 
俺がそう言うと、由夏はあからさまにこいつ何言っちゃってるのといったジト目で俺を見てきた。

「……おじいちゃんほんとに落ち込んでるの? てかちょーしに乗らないでって前にも言ったでしょ。今回も唯おばあちゃんに誘われたからってちょーしに乗って油断してたんだから」 
「……何も言い返せません。由夏さん」 
ぐうの音もでないとはこういうことかというほど的を得ている。

「そういう正直なとこおじいちゃんのいいとこよね。そこは褒めてあげるわ」
にっこりした笑顔で由夏はそう言った。
「まあ、今回花火大会の誘いを阻止するのは失敗したけど、唯おばあちゃんからの方から誘いが来たんだから、まだ可能性は残っているわ。まあ花火大会阻止できなかったとしてもまだ間に合うんだけどね。」
「え、そうなの? まだ間に合うのか?」

結構重要な出来事だと思うのだが。
11年前の俺は、唯が相川と花火大会に行ったことさえ知らなかったから、この出来事の重要さは確かにはわからないが。

「思い出したら? 唯おばあちゃんと相川さんが付き合い始めた日よ。その時までに自分のできることをやる。いいわね?」 

「はい! 頑張ります!」
俺は元気よくそう返事をした。 

「まったくどっちが子供なんだか……とりあえず、次のおじいちゃんの課題は、自分からアクションを起こすこと! 女の唯おばあちゃんから誘われるんじゃなくて自分から誘いなさい。いいわね?」 

「おう、分かったよ。やってやるぜ!」
「……その言葉が嘘にならないように祈ってるわ」

そう言うと由夏は姿を消した。 


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ニュクスの眠りに野花を添えて

獅子座文庫
恋愛
過去のトラウマで人前で声が出せなくなった伯爵令嬢ラニエラ・アンシルヴィアは辺境の男爵、オルテガ・ルファンフォーレとの政略結婚が決まってしまった。 「ーーあなたの幸せが此処にない事を、俺は知っています」 初めて会った美しい教会で、自身の為に一番美しく着飾った妻になる女の、真っ白なヴェールを捲る男は言う。 「それでもあなたには此処にいてもらうしかない」 誓いの口づけを拒んだその口で、そんな残酷なことを囁くオルテガ。 そしてラニエラの憂鬱な結婚生活が始まったーーーー。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処理中です...