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19話「初合わせ」その1
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あれから1週間、真柴との練習(地獄の特訓)は続いた。相変わらず、バンドのことになると容赦なかったが、そのおかげもあって1週間で自分でも信じられないくらい上達した。真柴に頼ってよかった。これだけ音楽に真摯なのは彼女の良いところだと思う。
相変わらず、スタジオのクーラーは直らないし、いきなり服を脱ぎ出すのは勘弁してほしいところだが。
そんなこんなで今日は週末、初めて3人でスタジオに入る。バンドで曲を合わせるのが初めてだから、ワクワクと少しの緊張が入り混じった気持ちになっている。修学旅行の前の日のような気分だ。
そういえば文化祭の前に修学旅行があるんだったけな。11年前は唯と喧嘩中だったからあまり良い思い出はないが。今回は良い思い出ができるといいな。
さて、そろそろ真柴楽器に行く準備するか。
「ふーん、あんたギター続いてるわねー」
いきなり声をかけられビクッとして後ろを振り返ると母さんがいた。
「母さん……いきなり話しかけるなよ。 びっくりするだろ」
「あら、さっきからずっと話しかけてたわよ。 あんたギターに夢中で全然気付いてなかったみたいだけど」
「あー、そうだったのか……んでなんか用?」
「ああ、そうそう。 唯ちゃんが玄関で待ってるわよ」
「すぐ行く!」
俺はそう言って真っ先に唯がいる玄関へ向かった。
玄関に着くとそこには私服姿の唯がいた。
「あ、淳一!」
「唯、なんか用か?」
「あ、あのね……クッキー作ったから淳一にもあげる」
唯はそう言うと俺にクッキーが入った紙袋を差し出した。
「これ……お前が作ったのか?」
「うん、お母さんと一緒に作った」
「あ、なら大丈夫か」
「え、大丈夫って?」
「や、何でもない」
忘れているかもしれないか唯はめちゃくちゃ料理が下手くそなのだ。 目玉焼きでさえも黒焦げにするくらい下手くそだ。
「まあ、ほとんど私が作ったんだけどね! すごいでしょ!」
えっへんと言わんばかりに唯は誇らしげに言う。
「すげーすげー」
「何よそれ。 いらないなら持って帰るわよ」
唯はそう言うと俺が持っている紙袋を取り返そうとした。
「いや、欲しい! めっちゃ欲しい! 俺のために作ってくれたんだろ?」
「ち、違うし! 自分で食べる予定で余ったから淳一にあげるだけよ!」
「……まあ、ありがとな」
「ふーん、素直にお礼言えるじゃない」
「お前に比べたら素直だな」
「何よそれ。 淳一この後暇? 買い物付き合って欲しいんだけど」
「あー、すまん。 用事がある」
「ふーん、何があるの?」
「それは言えん」
「ふーん」
そう言うと唯は不機嫌そうな顔になった。
いや、不機嫌というよりは怪しいものでも見るかのような目で俺を見つめた。
「まあ、いいけど。 じゃあまたね淳一」
「おう、ありがとなクッキー」
そう言うと唯は帰っていった。
唯が帰った後、もらったクッキーを恐る恐る食べてみたら、唯が作ったと思えないほど美味しかった。唯の母さんが手伝ったとしても確実に唯が腕を上げたのだろうと思うほどの出来であった。形は唯が好きな星型のクッキー。俺が好きなチョコチップが入っている。そういえば唯が手に絆創膏をつけていたことを思い出した。
相変わらず、スタジオのクーラーは直らないし、いきなり服を脱ぎ出すのは勘弁してほしいところだが。
そんなこんなで今日は週末、初めて3人でスタジオに入る。バンドで曲を合わせるのが初めてだから、ワクワクと少しの緊張が入り混じった気持ちになっている。修学旅行の前の日のような気分だ。
そういえば文化祭の前に修学旅行があるんだったけな。11年前は唯と喧嘩中だったからあまり良い思い出はないが。今回は良い思い出ができるといいな。
さて、そろそろ真柴楽器に行く準備するか。
「ふーん、あんたギター続いてるわねー」
いきなり声をかけられビクッとして後ろを振り返ると母さんがいた。
「母さん……いきなり話しかけるなよ。 びっくりするだろ」
「あら、さっきからずっと話しかけてたわよ。 あんたギターに夢中で全然気付いてなかったみたいだけど」
「あー、そうだったのか……んでなんか用?」
「ああ、そうそう。 唯ちゃんが玄関で待ってるわよ」
「すぐ行く!」
俺はそう言って真っ先に唯がいる玄関へ向かった。
玄関に着くとそこには私服姿の唯がいた。
「あ、淳一!」
「唯、なんか用か?」
「あ、あのね……クッキー作ったから淳一にもあげる」
唯はそう言うと俺にクッキーが入った紙袋を差し出した。
「これ……お前が作ったのか?」
「うん、お母さんと一緒に作った」
「あ、なら大丈夫か」
「え、大丈夫って?」
「や、何でもない」
忘れているかもしれないか唯はめちゃくちゃ料理が下手くそなのだ。 目玉焼きでさえも黒焦げにするくらい下手くそだ。
「まあ、ほとんど私が作ったんだけどね! すごいでしょ!」
えっへんと言わんばかりに唯は誇らしげに言う。
「すげーすげー」
「何よそれ。 いらないなら持って帰るわよ」
唯はそう言うと俺が持っている紙袋を取り返そうとした。
「いや、欲しい! めっちゃ欲しい! 俺のために作ってくれたんだろ?」
「ち、違うし! 自分で食べる予定で余ったから淳一にあげるだけよ!」
「……まあ、ありがとな」
「ふーん、素直にお礼言えるじゃない」
「お前に比べたら素直だな」
「何よそれ。 淳一この後暇? 買い物付き合って欲しいんだけど」
「あー、すまん。 用事がある」
「ふーん、何があるの?」
「それは言えん」
「ふーん」
そう言うと唯は不機嫌そうな顔になった。
いや、不機嫌というよりは怪しいものでも見るかのような目で俺を見つめた。
「まあ、いいけど。 じゃあまたね淳一」
「おう、ありがとなクッキー」
そう言うと唯は帰っていった。
唯が帰った後、もらったクッキーを恐る恐る食べてみたら、唯が作ったと思えないほど美味しかった。唯の母さんが手伝ったとしても確実に唯が腕を上げたのだろうと思うほどの出来であった。形は唯が好きな星型のクッキー。俺が好きなチョコチップが入っている。そういえば唯が手に絆創膏をつけていたことを思い出した。
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