俺と彼女とタイムスリップと

淳平

文字の大きさ
20 / 54

19話「初合わせ」その1

しおりを挟む
あれから1週間、真柴との練習(地獄の特訓)は続いた。相変わらず、バンドのことになると容赦なかったが、そのおかげもあって1週間で自分でも信じられないくらい上達した。真柴に頼ってよかった。これだけ音楽に真摯なのは彼女の良いところだと思う。 
相変わらず、スタジオのクーラーは直らないし、いきなり服を脱ぎ出すのは勘弁してほしいところだが。
そんなこんなで今日は週末、初めて3人でスタジオに入る。バンドで曲を合わせるのが初めてだから、ワクワクと少しの緊張が入り混じった気持ちになっている。修学旅行の前の日のような気分だ。
そういえば文化祭の前に修学旅行があるんだったけな。11年前は唯と喧嘩中だったからあまり良い思い出はないが。今回は良い思い出ができるといいな。
さて、そろそろ真柴楽器に行く準備するか。

「ふーん、あんたギター続いてるわねー」

いきなり声をかけられビクッとして後ろを振り返ると母さんがいた。

「母さん……いきなり話しかけるなよ。 びっくりするだろ」
「あら、さっきからずっと話しかけてたわよ。 あんたギターに夢中で全然気付いてなかったみたいだけど」
「あー、そうだったのか……んでなんか用?」
「ああ、そうそう。 唯ちゃんが玄関で待ってるわよ」
「すぐ行く!」

俺はそう言って真っ先に唯がいる玄関へ向かった。
玄関に着くとそこには私服姿の唯がいた。

「あ、淳一!」
「唯、なんか用か?」
「あ、あのね……クッキー作ったから淳一にもあげる」

唯はそう言うと俺にクッキーが入った紙袋を差し出した。

「これ……お前が作ったのか?」
「うん、お母さんと一緒に作った」
「あ、なら大丈夫か」
「え、大丈夫って?」
「や、何でもない」

忘れているかもしれないか唯はめちゃくちゃ料理が下手くそなのだ。 目玉焼きでさえも黒焦げにするくらい下手くそだ。

「まあ、ほとんど私が作ったんだけどね! すごいでしょ!」

えっへんと言わんばかりに唯は誇らしげに言う。

「すげーすげー」
「何よそれ。 いらないなら持って帰るわよ」

唯はそう言うと俺が持っている紙袋を取り返そうとした。

「いや、欲しい! めっちゃ欲しい! 俺のために作ってくれたんだろ?」
「ち、違うし! 自分で食べる予定で余ったから淳一にあげるだけよ!」
「……まあ、ありがとな」
「ふーん、素直にお礼言えるじゃない」
「お前に比べたら素直だな」
「何よそれ。 淳一この後暇? 買い物付き合って欲しいんだけど」
「あー、すまん。 用事がある」
「ふーん、何があるの?」
「それは言えん」
「ふーん」

そう言うと唯は不機嫌そうな顔になった。
いや、不機嫌というよりは怪しいものでも見るかのような目で俺を見つめた。

「まあ、いいけど。 じゃあまたね淳一」
「おう、ありがとなクッキー」

そう言うと唯は帰っていった。
唯が帰った後、もらったクッキーを恐る恐る食べてみたら、唯が作ったと思えないほど美味しかった。唯の母さんが手伝ったとしても確実に唯が腕を上げたのだろうと思うほどの出来であった。形は唯が好きな星型のクッキー。俺が好きなチョコチップが入っている。そういえば唯が手に絆創膏をつけていたことを思い出した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ニュクスの眠りに野花を添えて

獅子座文庫
恋愛
過去のトラウマで人前で声が出せなくなった伯爵令嬢ラニエラ・アンシルヴィアは辺境の男爵、オルテガ・ルファンフォーレとの政略結婚が決まってしまった。 「ーーあなたの幸せが此処にない事を、俺は知っています」 初めて会った美しい教会で、自身の為に一番美しく着飾った妻になる女の、真っ白なヴェールを捲る男は言う。 「それでもあなたには此処にいてもらうしかない」 誓いの口づけを拒んだその口で、そんな残酷なことを囁くオルテガ。 そしてラニエラの憂鬱な結婚生活が始まったーーーー。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処理中です...