俺と彼女とタイムスリップと

淳平

文字の大きさ
21 / 54

19話「初合わせ」その2

しおりを挟む
「いらっしゃーい、淳一くん、石田くん、先にスタジオ入ってて!」

 そう言う真柴は店の手伝いでお客さんの対応をしていた。仕方ないので俺と石田は先にスタジオの中に入って準備することにした。

「大変だなー真柴」
「まあな、自営業の子供だし仕方ないだろ」
「そんなもんか。 それより淳一、ちゃんと練習してきたか?」
「あたぼうよ! バッチリだぜ!」
「おー、そいつは楽しみだ」
「ふふっ乞うご期待だ!」
「話変わるけどよ、お前さ、真柴のことどう思ってるんだ?」
「へ? どうって?」
「いや、まあなんとく。 お前ら随分と仲良いみたいだからさ」
「いや、ないだろ」
「ならいいけどよ。 バンド内恋愛はやめてくれよ?」
「だからねーって」
「そっか。 なら安心だ。 前に組んでたバンド、バンド内恋愛で解散したからよ」

 石田はそう言うとドラムを叩き始めた。
 すげー迫力だ。ドラムに関して無知な俺でも石田はドラムが上手いんだなと思うくらいだ。思わず見とれてしまっていたら、俺の視線に気付いたのか石田は叩くのをやめた。

「どーした?」
「あ、いや……すげー上手いなって」
「知ってる」
「自分で認めるのかよ
「まーな、それなりに努力してきたしな。 そこは自分で認めてやんねえと」

 ガチャッ

「お待たせ2人共! 君たちのベーシストの登場だー!」

 真柴がピースサインをしながら笑顔で登場した。

「……テンションたけー」
「……お疲れ真柴」
「え、なになに? みんなテンション低いよ! 楽しんでいこうよ!」
「おー」

 俺と石田の声が重なる。

「よろしい! すぐ準備するから待ってて!」

 真柴はそう言うと本当にすぐセッティングを済ませいつでも演奏できる体制に持っていった。

「お待たせ2人共! さあ、合わせよう!」
「おう! じゃあ石田、カウント頼む!」
「はいよ、1.2.3」

 石田のカウントで演奏が始まった。
 最初はドラムだけで、そこからベース、ギターの順で音が入っていく。聴いていても、弾いていても心地よいバラード。
 俺のパートが入って3人の演奏が合わさった。
 すると今まで感じたことのない一体感を感じた。一体感って言葉だけを今まで知っていたが、これは紛れもない一体感ってやつだということを身を以て知った。真柴と2人で合わせていた時には感じなかったものを今こうして感じている。
 バンドっておもしれー……

 そう思った矢先、ドラムが止まり、ベースも止まった。

「ん? どうした?」
「いや、どうしたってお前、もう歌始まってんだけど。 しかも今サビの部分な」
「あ、すまん。 ギターに集中しすぎて忘れてた」
「もう、淳一くん頼むよ?」
「すまん、もう一回頼む!」

 再び演奏が始まった。
 よし、今度は歌を忘れないように。
 よし、歌い出しはオッケーだ。
 このまま歌い続けるぞ。
 そう考えてたらドラムとベースが止まった。

「……淳一お前さ……今度はギター忘れてるわ!」
「うわ、ほんとだ!」
「淳一くん、2回も同じギャグやることないよー?」
「いや、ガチでやったんだけどな……ははは」

 それからギターを弾きながら歌おうとしたが全くうまくいかず、若干2人は呆れていた。
 真柴と練習した時はただギターを弾いていただけで、歌いながら練習していなかったから全くできなかった。
 結局この日はこのまま続けてもしょうがないと判断し練習は終わった。
 練習が終わり、真柴楽器内にある待合室で俺たちはしばらく駄弁っていた。

「もう、淳一くん次までに弾いて歌えるようにしといてよね!」
「できなかったら、ラーメン奢りな!」
「すまん2人共。 次までにできるようにしとく」
「約束だよー? そういえばさ! まだバンド名決めてなかったよね?」
「あーそういえばそうだな」
「今決めちゃう?」
「いや、そんなテキトーに決めるもんじゃないだろ。 次の練習の時までに考えて来ようぜ。 な、淳一」
「あ、ああ。 そうするか」

 それからしばらく駄弁ってから解散することになった。
 石田はこのあと用事があるらしくすぐ帰った。

「じゃあ俺も帰るわ。 じゃあな真柴」
「あ、待って淳一くん! 私そこのコンビニに寄るからそこまで一緒に行こ!」
「おう、んじゃ行くか」

 スタジオに入る前はあんなに明るかったのに、もうすっかり暗くなった夜道を真柴と歩く。
 石田の言葉を思い出していた。
 しかし、いくら考えても真柴に友達以上の気持ちはないと思った。お世話になっている良い友達だとしか思えない。

「今日はごめんな、俺のせいで練習進まなくて」
「へ? ああー、いいんだよー。 淳一くん始めたばかりだし、そこまで期待してないし」
「……最後のやつ失礼だな」
「あはは、冗談だよ。 でも楽しかったでしょ?」
「ああ、バンドって超楽しいな!」
「うんうん、それでよろしい」
「お前は何者だよ」

 そう言って俺と真柴は笑いあった。
 残暑でまだ少し蒸し暑い。

 コンビニ着き、真柴の買い物を終え解散しようとした時、

「はい、淳一くん。 これ半分こ!」

 真柴は半分に分けられたモナカを俺にくれた。

「お、おう。 すまん」

 ありがたく頂くことにした。
 そのまま5分ほどコンビニの前で他愛もない話をした。
 夜というのは不思議なもので、どんどんと言葉が出てくるような気がする。まだまだ話し足りない。そんな気にさせる。

 そんなことを考えているとどこからか視線を感じた。真柴ではない誰かの視線を感じた。
 辺りを見渡すと、そこには唯の姿があった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ニュクスの眠りに野花を添えて

獅子座文庫
恋愛
過去のトラウマで人前で声が出せなくなった伯爵令嬢ラニエラ・アンシルヴィアは辺境の男爵、オルテガ・ルファンフォーレとの政略結婚が決まってしまった。 「ーーあなたの幸せが此処にない事を、俺は知っています」 初めて会った美しい教会で、自身の為に一番美しく着飾った妻になる女の、真っ白なヴェールを捲る男は言う。 「それでもあなたには此処にいてもらうしかない」 誓いの口づけを拒んだその口で、そんな残酷なことを囁くオルテガ。 そしてラニエラの憂鬱な結婚生活が始まったーーーー。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処理中です...