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30話「修学旅行」中編
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ホテルの一階にあるロビーに着くと唯の姿があった。
唯もまだシャワーを浴びていないらしく、私服姿だ。
唯の元へと近づくと唯は俺に気づいたようで俺の方を見た。
何だか唯の様子がいつもと違う。 なんとなくだが。
「よう、先生にバレないかヒヤヒヤしたぜ」
「ん、お疲れ様」
唯は何故か俯き答える。
「それで……どうしたんだいきなりこんなとこに呼び出してさ」
俺が問いても唯は相変わらず俯いたまま答えようとしない。
うーん、これはどうしたものか。
二人の間に沈黙が流れた。
最初に口火を切ったのは俺だった。
「何もないなら俺……部屋に戻るわ。 先生に見つかるとやばいし」
「待って」
唯はそう言って俺の服の裾をつかんだ。
「あのね、淳一」
*
きっと淳一は明日が自分の誕生日だと気付いていないと思う。
去年の誕生日もそうだったし。
多分きっとこれからもそんな気がする。
修学旅行と被ってしまっているから余計に気付かないんじゃないかって思う。
だからってわけじゃないけど私は淳一の誕生日をちゃんと祝おうと思ったのだ。
淳一が私の誕生日を祝ってくれた時のように。
あの時は本当に嬉しかった。
淳一にもらったおもちゃの指輪はちゃんと机の引き出しに大事にしまってある。
我ながら単純だと思う。
だって私は淳一のことが好きだから。
何で好きなのかと聞かれたら答えには困るけど。
きっとそういうものは理屈じゃないのかもしれない。
強いて言うならありふれてる言い方だけれどなんだかんだ優しいとこかな。
最近あるテレビドラマを観た。
幼馴染の二人はお互い好きあっていたものの肝心な告白をせずにすれちがったまま三十路を超えた後、お互い違う人と結婚していった。
そんな内容なのでドラマ自体は全く面白くないし視聴率もかなり低いらしい。
でも何だか私の中で引っかかるものがあった。
魚の骨が喉に引っかかったような感じ。
淳一のことが好きだと気付いたあの時から何年経っただろうか。
あの時から一度でも淳一に対して素直になれただろうか。
……私はあのテレビドラマの主人公たちのようになりたくない。
たとえ私の片思いだとしてもこの気持ちは伝えなければいけないと思う。
……この修学旅行で少しでもきっかけをつかめれば……
二日目の自由行動で一緒に回れれば……
それができなければ私たちの仲はずっと平行線のままな気がする。
だからきっと……私はきっと……この修学旅行できっかけをつかむんだ。
*
真剣な目で唯に見つめられ、俺は思わずドキッとしてしまった。
心臓が高鳴るのを感じる。
ああ、俺は唯のことが好きなんだなって思い知らされる。
「あの……ね」
「お、おう……」
俺がそう言うと同時にボーンボーンと時計が鳴った。
どうやら0時になったらしい。
時計から唯に視線を戻すと唯は一瞬ハッとした顔をし、再び視線を俺に戻した。
「……自由行動」
「……自由行動?」
声が小さくてよく聞こえなかったが多分自由行動と言っていた気がする。
「……うん。 淳一がその……もしよかったら……一緒に回ってほしいの」
唯は今にも泣きだしそうな声でそんなことを言った。
……? というか今のはなんだ? 唯が俺を誘ってる?
「え……今なんて?」
「だから……明日の自由行動、一緒に回ってって言ってるの! ……二度も言わせるなバカ淳一」
全身の毛穴がブワーッと開くような、そんな感覚がした。
実際、鳥肌は立ちまくってるだろう。
俺は確かに唯に誘われているんだ。
めちゃくちゃ嬉しい。
自然と口角が上がる。
それと同時に恥ずかしくなって顔が熱くなった。
そして、由夏との約束を思い出していた。
自分に素直になる。 でも唯に先手を取られて誘われてしまった。
いや、めちゃくちゃ嬉しいのだけれども。
「唯、俺からも頼む。 明日の自由行動、俺と一緒に回ってくれ」
唯は俺の言葉に驚いたようでしばらく俯き、黙ってしまった。
そして、
「はい」
と微笑んだ。
唯もまだシャワーを浴びていないらしく、私服姿だ。
唯の元へと近づくと唯は俺に気づいたようで俺の方を見た。
何だか唯の様子がいつもと違う。 なんとなくだが。
「よう、先生にバレないかヒヤヒヤしたぜ」
「ん、お疲れ様」
唯は何故か俯き答える。
「それで……どうしたんだいきなりこんなとこに呼び出してさ」
俺が問いても唯は相変わらず俯いたまま答えようとしない。
うーん、これはどうしたものか。
二人の間に沈黙が流れた。
最初に口火を切ったのは俺だった。
「何もないなら俺……部屋に戻るわ。 先生に見つかるとやばいし」
「待って」
唯はそう言って俺の服の裾をつかんだ。
「あのね、淳一」
*
きっと淳一は明日が自分の誕生日だと気付いていないと思う。
去年の誕生日もそうだったし。
多分きっとこれからもそんな気がする。
修学旅行と被ってしまっているから余計に気付かないんじゃないかって思う。
だからってわけじゃないけど私は淳一の誕生日をちゃんと祝おうと思ったのだ。
淳一が私の誕生日を祝ってくれた時のように。
あの時は本当に嬉しかった。
淳一にもらったおもちゃの指輪はちゃんと机の引き出しに大事にしまってある。
我ながら単純だと思う。
だって私は淳一のことが好きだから。
何で好きなのかと聞かれたら答えには困るけど。
きっとそういうものは理屈じゃないのかもしれない。
強いて言うならありふれてる言い方だけれどなんだかんだ優しいとこかな。
最近あるテレビドラマを観た。
幼馴染の二人はお互い好きあっていたものの肝心な告白をせずにすれちがったまま三十路を超えた後、お互い違う人と結婚していった。
そんな内容なのでドラマ自体は全く面白くないし視聴率もかなり低いらしい。
でも何だか私の中で引っかかるものがあった。
魚の骨が喉に引っかかったような感じ。
淳一のことが好きだと気付いたあの時から何年経っただろうか。
あの時から一度でも淳一に対して素直になれただろうか。
……私はあのテレビドラマの主人公たちのようになりたくない。
たとえ私の片思いだとしてもこの気持ちは伝えなければいけないと思う。
……この修学旅行で少しでもきっかけをつかめれば……
二日目の自由行動で一緒に回れれば……
それができなければ私たちの仲はずっと平行線のままな気がする。
だからきっと……私はきっと……この修学旅行できっかけをつかむんだ。
*
真剣な目で唯に見つめられ、俺は思わずドキッとしてしまった。
心臓が高鳴るのを感じる。
ああ、俺は唯のことが好きなんだなって思い知らされる。
「あの……ね」
「お、おう……」
俺がそう言うと同時にボーンボーンと時計が鳴った。
どうやら0時になったらしい。
時計から唯に視線を戻すと唯は一瞬ハッとした顔をし、再び視線を俺に戻した。
「……自由行動」
「……自由行動?」
声が小さくてよく聞こえなかったが多分自由行動と言っていた気がする。
「……うん。 淳一がその……もしよかったら……一緒に回ってほしいの」
唯は今にも泣きだしそうな声でそんなことを言った。
……? というか今のはなんだ? 唯が俺を誘ってる?
「え……今なんて?」
「だから……明日の自由行動、一緒に回ってって言ってるの! ……二度も言わせるなバカ淳一」
全身の毛穴がブワーッと開くような、そんな感覚がした。
実際、鳥肌は立ちまくってるだろう。
俺は確かに唯に誘われているんだ。
めちゃくちゃ嬉しい。
自然と口角が上がる。
それと同時に恥ずかしくなって顔が熱くなった。
そして、由夏との約束を思い出していた。
自分に素直になる。 でも唯に先手を取られて誘われてしまった。
いや、めちゃくちゃ嬉しいのだけれども。
「唯、俺からも頼む。 明日の自由行動、俺と一緒に回ってくれ」
唯は俺の言葉に驚いたようでしばらく俯き、黙ってしまった。
そして、
「はい」
と微笑んだ。
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