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六本の糸~地球編~
20.着火
しおりを挟む第7ドームの軍施設では
「申し訳ありません・・・・基地に近づく前に感づかれて撤退しました。そして、こちらはドールとパイロットを失いました。」
ハクトはお偉方に頭を下げていた。
お偉方は話の内容に興味が無いように軽い様子で頷いていた。
「・・・・ああ、責任に問いたいけれど、そっちはどうやら結構ドールを倒したようだから特別に処分を軽くしよう。」
ハクトは一瞬冷たい目を向けたが
「ありがとうございます。」
と礼を言いながらも俯いて顔を隠した。
「・・・・そうだな・・・・ゼウス共和国の地球にいる勢力の排除だな。しばらくしたら軍本部に向かって動いてもらいながら行動してほしい。」
いい書類を差し出した。
ハクトは絶句した。
「これは・・・・」
ハクトは目の前の上官を見た。上官は笑っていた。
「ほら、だって君は凄腕の艦長だろ?」
ハクトは自分たちは捨て駒であることを悟った。
途端にこんな奴らのために基地に行ったことを後悔した。
ハクトはそのせいで親友を失う喪失感の2度目を味わうことになったのだ。
ハクトは今までになく感情をあらわにした。
そして言った。
「わかりました。では、自分が前線にでます。」
ハクトがそう言うと上官の表情は変わった。
「それは赦されない」
「いえ。戦艦での行動は最善を尽くすように言われているはずです。任務中は軍規もありますが、戦艦内では艦長の臨機応変な対応は除くことを書かれてます。」
ハクトは艦長に任命された時に覚えた軍規を言った。
彼の言う通り、作戦遂行のためなら大幅でなければ規則を破ってよいというのがある。おそらく遥か昔に、今のお偉方が多少規則を破って作戦を遂行させていたのを規律違反でないとするために定められたものだろう。
「確実に勝つためですよ。・・・・戦艦の指揮は少佐に任せます。」
そう言いハクトは一礼をし上官の前から下がった。
そして、部屋から出て行く前に
「任務を達成した暁には、・・・ロッド中佐に会いに行かせてくださいね。」
「待て!!ニシハラ大尉!!ご両親のことはいいのか?」
上官が手が震わせながら叫んでいた。別のお偉方が彼の発言に気付いて横から注意した。
「・・・父と母が、あなた方がどうすると?・・・・どうにかなったら、自分はどうなってしまうのかわかりません。」
ハクトは横目で上官をはじめとしたお偉方を睨んだ。
なりふり構わない。もうハクトは限界だった。
地連にい続ける理由も、命令に背かない理由も、それを手放す真似を軍がしようものならわからせるまでだ。人質状態のハクトの両親が守っているのは、軍だということだ。
睨まれたことに怯みながらも毅然とし続けようとするお偉方に何も感じず、部屋を出て行った。
すぐにロッド中佐に会えない状態にされるだろう。
なぜなら、レスリー・ディ・ロッドとハクトは決して組ませてはいけない。
二人が力を合わせることを軍は避けようとしていたからだ。ハクトはそれを知っていた。
事実、レスリーがハクトを買っているのは分かったが、不思議と対面する機会は少なかった。
ハクトは決めていた。
これからどうするか。
「・・・・ぶっ潰す。」
呟いてからハクトは何かに気付いたように深呼吸した。
「いや、穏やかに済ませる。」
どうやら思いのほか荒々しい声で呟いて凶暴的なことを考えていたのだろう。自分を落ち着かせるように深呼吸をしていた。
「・・・・どういうこと?」
レイラは今にも怒り出しそうであった。いや、もう怒っていた。
「ですから、軍本部に行っても・・・黒いドールはもういないらしいですよ。」
必死に一般兵が答えていた。
それをシンタロウは気の毒そうに見ていた。
「くそ。あいつ・・・・どこ行った」
レイラは親指を噛みながら考えていた。
「・・・・少尉。あのお言葉ですが、向こうが来ざる得ない状況を作ればよいのでは?」
シンタロウは遠慮気味に手をあげながら言った。
「来ざる得ない・・・?」
その言葉にレイラは考え込んだ。
すると後ろから
「レイラちゃん。それなら、軍本部をぶっ潰せば?」
と女の声がした。
シンタロウが振り向くとそこにはあの白衣の女がいた。確かマーズ研究員の上司のような存在だったはず。
シンタロウのことを相変わらず興味深そうに見ている。
「何か?」
「やっぱり気になるのよ。あなたが何者なのか・・・」
彼女が近づくと煙草の匂いが漂ってきた。
「それはこちらもです。」
シンタロウは彼女の後ろにいるマーズ研究員に気付いた。シンタロウの視線に気づくと白衣の女に隠れるようにかがんだ。
「ごめんね。この子怖がりだから。・・・見栄を張る相手がいなくなったから拍車がかかっているのよ。」
女の言葉にマーズ研究員は目を逸らし、そのまま立ち去った。
「気難しい子ね。」
二人の様子を見ると、今の状況は女が悪いように思えた。
「ドールはいつでも出せるわよ。」
女はレイラ視線を戻した。そして、何か企むように笑った。
シンタロウは直感的に気付いた。
この女は信用してはいけない。そもそもグスタフが言っていたマーズというのがマーズ研究員ならあの女は間違いなく地連とゼウス共和国の繋がりに関りがある。
ただ、不思議とマーズ研究員は悪い印象はなかった。そもそもレイラと彼のお陰で命が助かっている。彼の方はシンタロウを怖がっているみたいだが、機会があれば話してみたいとも思っている。
レイラは女の提案に賛同していた。
「そうね。ひどく暴れなくても軽く騒動を起こせばいいのよね。」
頷きながら呟いていた。
シンタロウは、ドールに乗るのがレイラであるから大丈夫かとも考えた。レイラならひどくものを壊すことはしないだろうと結論づけた。
ただ、自分のいた施設の破壊はレイラがやったとも聞いたのもあり、少しだけ不安になった。
「では、自分がサブドールでサポートします。」
「・・・お前、サブドール乗れるのか?」
シンタロウの申し出にレイラは驚いた顔をした。
「乗れます。」
きっぱりと答えるが、ドールの訓練はしていたが、サブドールは乗っていなかった。まあ、どうにかなるだろうと考えていた。
「へー。ロウ君がついてくれるのね。どうせならドールで数値・・・取らせてくれないの?」
白衣の女はシンタロウの方を見てニヤッと笑った。
女は美人であったが、どこか気味悪く嫌悪を感じた。
ハクトは何かを決心したように歩いていた。
フィーネに戻ると艦内の空気は沈んでいた。コウヤのことがあったにしろ違和感を覚えるほどだ。
ハクトはソフィに尋ねた。
「何かあったのか?」
ハクトがそう訊くとソフィは辛そうな顔をした。周りを見るとリリーとモーガンが泣きはらしたようであった。
「・・・・第6ドームの軍の訓練施設が破壊されました。生存者は絶望的です。」
ソフィが言った。
「そうか。・・・・知ったのか」
ハクトはキースを見た。キースは悲しそうに頷いた。
知っていたとはいえ、アリアは呆然としていた。
おそらくコウヤがいたから知っていても大丈夫だったのであろう。
「・・・みんないなくなった・・・」
呟きながら俯いて指を動かしていた。喚かないが、アリアの様子は見ていて心が痛んだ。
「どのような内容を聞いた?行方不明者としか聞いていない・・・」
ハクトはキースにこっそりと聞いた。あまり大げさに訊けない内容だ。
「・・・もう遺体しか出てこないらしい。生存していたとしても外気が流れ込む上に長時間放置だ。」
キースは絶望的だと呟いた。ハクトもキースに同意見だった。
「・・・・艦長は何かあったのですか?」
ソフィはハクトの持ってきた資料に目をつけた。
「・・・・ああ、上からの指示で任務が来た。」
ハクトは資料をソフィに渡した。
その資料を目を通し始めたソフィはしばらくして手が震えた。
「・・・・・艦長。これって」
「そうだ、まさに俺等は捨て駒だ。この任務で死ぬことを望まれている。」
ハクトは乗組員全員に言った。
「そんな・・・・・」
ハクトは強い意志の目を開いた。
「ドールには俺が乗る。ハンプス少佐に指揮を頼む。」
ハクトはそういうとキースは仕方なさそうに
「そうなるよな・・・・・生き残るためには・・・」
と笑った。
「そうだ。必ず生き残ろう。・・・・・・だが、生き残る可能性は低い。」
ハクトはそう言い切った。
「だから、今からこの戦艦で共に戦ってくれるものだけ残れ。それ以外は俺が追い出したとでも言え。」
ハクトは力強く言った。
「俺は残る前提か?」
キースは頷いた手前気まずそうに笑っていた。
「そうです。」
キースは笑ったが、安心したように頷いていた。
アリアは顔を上げてハクトを見ていた。
「・・・もういないもの。」
アリアは口元を歪めていた。
「シンタロウがいなくても、コウヤがいれば平気だった。コウヤがいなくなったらシンタロウの元に行けばよかった。けど、二人ともここにいない。」
アリアはハクトを真っ直ぐ見た。
「君は選べる。」
ハクトは頷いてアリアを見た。
アリアはハクトから目を逸らして、何も言わずに出て行った。
彼女が出て行ったのを始めとして、その他にも何人か出て行った。
ハクトは予想していたのか動じなかった。
乗組員が出て行ったフィーネはだいぶ広くなった。
操舵室に残ったのはハクトを始めとして、ソフィ、リリー、モーガン、キース、機械整備が5人、軍医が1人であった。
予想していたメンツなのかハクトは安心したような表情をした。みんなハクトを真っすぐ見ていた。
「今から言うことをよく聞いてくれ。」
ハクトは順にみんなの顔を見渡した。
「ロッド中佐と手を組み、軍を乗っ取る。上層部を・・・ぶっ潰す。」
ハクトの言葉に残った者は真面目な顔をして頷いた。横でキースは笑みを浮かべていた。
これからの予定を話し終えるとハクトは意志の強い顔をした。
それに応えるように乗組員もハクトを見つめた。
「どうせなら・・・・全部ひっくり返そう。トップも、何もかもだ。それにはあの人が必要だ。」
そう言うハクトの目には夢を見ているような気配はなかった。
乗組員は驚いたが笑った。戦艦フィーネは出港した。
新たな目的を持って。
コウヤは眠ってしまっていた。
目を開き周りを見渡すと、今度は中年の婦人がいた。
婦人はどうやらコウヤに水を持ってきたようだ。
「ありがとうございます・・・・」
コウヤは婦人の顔を見てお礼を言った。
すると婦人は笑った。
「・・・・いいのよ。」
と言いコウヤのそばに椅子を置いて座った。婦人はどうやらコウヤと話したいようだ。
「あの・・・お名前は何というんですか?」
コウヤはニコニコ笑う婦人の方を見て訊いた。
婦人は笑顔で
「私はマリー・ロッドよ。」
と言った。
「ロッド・・・・どこかで聞いたことがあった。」
すると婦人は何やら話し始めた。
「私にもあなたよりも少し年上の子供がいるの・・・・あまり帰ってこない薄情者だけど。頑張って活躍している話を聞くのはうれしいわ。」
と子供について話し始めた。
コウヤはピンときた。
「レスリー・ディ・ロッドですか?」
そう訊くと婦人は顔をきらめかせた。
「そう!!あの子、父親に似て不器用だけれどすごく心の優しい子なのよ。」
と懐かしむように言った。
「そうですか・・・・最近はいつごろ帰ってきてますか?」
「そうね・・・・最近は半年前に来たわね・・・・・でも全く変わった様子がなくて安心していたの。」
と婦人は嬉しそうに話した。
それを聞いたコウヤはロッドにも人間らしい面があるのかと思った。
彼は最強で最恐の戦士であり、敵には冷血な男だ。少なくともコウヤにはそんな印象であった。
「あの子に会ったのね・・・・どんな様子だった?」
と婦人は目をキラキラさせていた。
「強い人です・・・・俺も助けられました。」
とコウヤが言うと婦人は不思議そうな顔をした。
「あの子・・・・戦場に出ているの?」
「ええ、あの人は強いですよ・・・・」
コウヤにはそれしか言えなかった。すると部屋にレイモンドが入ってきた。
「あら、レイモンド。この子がね・・・・レスリーのことを知っているのよ。」
と笑顔で言うと、レイモンドは
「それはいいことですな・・・・・」
と苦笑いをした。
「レイモンドさん・・・・中佐はしょっちゅうここに帰ってきているんですか?」
レイモンドは少し息を呑んだ。
「そんなに帰っていないが、・・・・私はまだ1回もここでは会っていない。まあ、本部で会っていたから別にいいが・・・」
と寂しそうに笑った。
コウヤは人目を避けているレスリーの行動が気にかかった。
「堂々としている印象なんですけれどそんな隠れて親に会いに行くなんか・・・意外でした。」
「・・・・レスリー君とは子供のころはよく遊んだりして知っているのに軍学校に入ってから全く接することがなくなってな・・・・」
レイモンドは不安そうに言った。
「何かがあったんですね・・・・」
コウヤがそう言うとレイモンドはマリーの方に駆け寄り
「コウヤ君と男同士で話させてくださいマリーさん・・・・」
とマリーに外に出るようにお願いした。
「あらら・・・・いいわよ。」
マリーは何やら楽しそうに言い、出て行った。
「マリーさんがいるとダメな話があるんですか?」
コウヤは不思議そうに言った。
それを聞いたレイモンドは
「マリーさんに与えた衝撃が大きかった事件だからな・・・・」
レイモンドは苦しそうに言った。
「マリーさんが?」
「レスリー君は変わった・・・・ゼウス軍が「天」を破壊はしなかったが武力攻撃を与えたときからな・・・・」
レイモンドの声色が変わった。彼にも大きな影響を与えた事件でもあるようだ。
「中佐は「天」出身なんですか・・・・」
「・・・・ああ。攻撃を受けた地域にはロッド家の屋敷があった。」
「たくさんの友人を失ったらしい。」
コウヤはそれを聞くとレスリーの行動がうなづけてきた。
「中佐の行動はゼウス軍に対する憎しみからきているのですか・・・・」
コウヤは少しだけレスリーに同情していた。
「・・・・そうだな・・・・父親を失った。その前に友達ができたと言って彼がはしゃいでいたのを知っているよ。その友達も・・・」
レイモンドは昔のレスリーを思い出したのか少し笑顔になっていた。
「本当に無邪気な子供だったのですね。」
「・・・・ああ。父親もそうだったが、貴族の少年なのに気取ったところがなくてな。近くに引っ越してきた子供ともすぐに打ち解けて仲良くなっていた。」
レイモンドは、本当にレスリーやその父親と良好な関係だったようで笑顔だった。
「今じゃ考えられません・・・・」
コウヤはレイモンドの話すレスリーと自分の知っているレスリー・ディ・ロッド中佐を比較した。
「君に頼みがある・・・・訊いてくれるかい・・・」
レイモンドは真剣な表情でコウヤに言った。
「・・・・中佐のことですか。」
「まず、君にはロッド家がどのような家だったか、知っているか?」
レイモンドの言葉にコウヤは首を傾げた。
「中佐がすごいということと、没落貴族と言われているとしか・・・」
コウヤは遠慮気味に言うと、レイモンドの表情を窺った。
「そうだ。だが、レイの父の代までは政治に介入するほどの力があった。」
「レイ・・・?」
「レスリーの父だ。私の親友だった。」
レイモンドは懐かしむように言った。本当に大切な親友だったようだ。
「レスリー君の祖父の代までは戦争がなかったものあり、軍が大きく出ることもなかった。信じられないかもしれないが、死んだロバート・ヘッセとも交流があったんだ。まあ、彼がゼウス共和国の民を唆して戦争を始めたのだから今となったら皮肉だ。まして、あの男はレイを・・・・」
レイモンドは顔を歪めて憎しみを露わにしていた。すぐにコウヤの視線に気づいた。
「すまない。ズレたな。とまあ、ロッド家は、昔は名家だった。」
レイモンドは確認するようにコウヤに頷いた。
「はい。」
「周りはレスリー君が家を建て直すために頑張っているとか・・・・父親の復讐のために力を振るっていると言っている。」
「・・・復讐は済んだはずです。・・・俺も近くにいました。」
コウヤは自分の中で記憶と感情が爆発した時を思い出した。ロッド中佐を止めるはずが、彼に止められたこともだ。
「そうか、そうだ。そして、レスリー君は宇宙に上がった。私は・・・彼のしようとしていることがわからない。何を考えているのかわからないのだ。」
レイモンドは悲しそうに言った。
「俺もわかりません。」
「そうだ。そして、彼を助けてくれ。・・・本当はこれをニシハラ大尉に任せたかったが、もうかなわないようだ。」
その言葉にコウヤは反応した。
「・・・・なんでかなわないのですか?」
コウヤは痛む体を乗り出した。
「彼の船に乗っていた君に言うのは気が引けるが・・・・フィーネは無茶な任務を命じられたらしい。それに・・・ニシハラ大尉は乗った。いや、喧嘩を売ったとも聞いている。」
「はあ?あいつが?あの真面目ちゃんが?」
コウヤは戦艦で見た堅物の雰囲気全開のハクトを思い出した。
レイモンドはコウヤに書類を渡した。
「・・・・これは、ドールパイロットは実質一人じゃないですか!!こんなの無茶すぎる。」
コウヤは書類に目を通して驚いた。
素人のコウヤが見ても圧倒的に不利な戦力であった。
「戦艦フィーネの任務はあるものの護送であった。私も詳しくは知らないが、フィーネはそれを下した時点で用済みと見られたらしい。まして、ロッド中佐は宇宙にいる。」
「なんで・・・用済みなんですか・・・・?」
「わからない・・・・だが、ニシハラ大尉はドールパイロットとしては間違いなくロッド中佐に次ぐ。強すぎる力と彼は上層部をよく思っていない。頼もしいが、同時に危険だと思われている。」
レイモンドは辛そうな表情をした。
「・・・・彼は、意図的にロッド中佐から遠ざけられていた。」
レイモンドはコウヤに助けを求めるように言った。
「本部からすると二人は頼もしい軍人であったが・・・・同時に危険な人物でもある。」
その言葉でコウヤはレイモンドの言いたいことが分かった。
「・・・・軍本部から中佐を護りたいのですね・・・・・」
「・・・・そうだ。レスリーは今、月のドームにいる。頼まれてくれるか?」
コウヤは渡された書類に目を通した。
「・・・・ニシハラ大尉と一緒に行きます。」
コウヤは強い意志を持って言った。
「難しいぞ・・・・ニシハラ大尉の件の時間はない。」
「助けられて本当に助かりました・・・・けれど、大尉・・・ハクトは親友なんです。」
コウヤはそう言うと笑った。レイモンドはその様子をみて微笑んだ。
「わかった。いいだろう。・・・・もう一つ頼みを言っていいか?」
「なんですか?」
「ルーカス中尉からずいぶん前にクロス・バトリーという少年の捜索を頼まれた。」
その言葉にコウヤは固まった。
「彼は・・・・・レスリーが変わってしまう前に近くに引っ越してきた新しい友達だとな・・・」
レイモンドは複雑そうな表情で笑った。
「・・・・そんな、じゃあ・・・」
コウヤはすぐにわかった。
クロスが「天」でゼウス軍の武力攻撃に巻き込まれたことを・・・
「どうした?」
レイモンドは不審そうにコウヤを見ていた。
「いえ・・・・でもなんで彼を?」
「レスリーの友達だ・・・・・・」
レイモンドはレスリーのことを本当に可愛がっていたようで今もその愛情は薄れていないようであった。
「レイモンドさんはなぜそこまで中佐を・・・」
「おかしいかもしれないが・・・・息子のような存在なんだ・・・・血は繋がっていないが、家庭を持たず軍にいた私にはロッド家は帰る家の様な場所であった・・・・」
レイモンドは柔らかい表情になった。
「羨ましいですね・・・・」
「誰でもそういうものだ。護りたい存在がいる。・・・無くなってしまえば生きる希望も何も無くなる。」
レイモンドは暗い目をした。
「了解しました。・・・・レイモンドさんはそんなことをして軍本部に睨まれないのですか?」
「もう睨まれている・・・・ここのドームも軍に登録されていない個人の所有物だ・・・」
レイモンドは困ったように両手を上げて言った。
「・・・・俺を助けられたということは・・・・ですが、何で軍備もあるのですか?」
「兵器の研究員とつながりがない方がおかしいと考えないのかね?」
「え?」
「いや。そうだ。ここには軍にないドールを始めとした軍備がある。」
レイモンドは鋭い目でコウヤを見た。
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