あやとり

近江由

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六本の糸~「天」編~

33.ひとさらい

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「ここは?」

 アリアは案内された施設に不審なものを感じた。

「研究施設だよ。」

 白衣の男は優し気に言った。だが、機械的だった。

「こんなドーム、最近できたところでしょ。」

「最近だよ。そして最新のドール研究施設。」

「へー」

 アリアは男を信用しない目で見ていた。

「私、ドール使いになりたいんだけど?」

「そのための場所だよ。君をドール向けの体に変える。」

 男は両手を広げ芝居がかったしゃべり方をした。

「あ・・・そ」

 アリアは周りを見渡した。

 何かが目に留まった。

「・・・・ねえ、私はゼウス軍をぶっ潰したいの。」

「そうだね。」

「あれ、ゼウス軍のドールじゃない。」

 アリアは施設の一角にあるゼウス軍が所有していたグレーのドールを指さした。

「すごい。よくわかったね。」

「ここはゼウス軍の協力でもしてるの?」

 アリアは怒りを露わにしていた。

「ここは、研究施設だよ。」

 男は返答にもならない返事をした。

 そこに一人の研究者が歩いてきた。

「あら?新しい子?」

 黒髪の30半ばくらいの女だ。美人だが、少しタバコ臭い。

「ラッシュ博士。はい。地連のドール志望の子です。」

「あらー。ここに来るってことは改造願いね。」

 ラッシュ博士と呼ばれた女は楽しそうに笑った。

「改造・・・?」

 アリアはその言葉に疑問を持った。

「ドールプログラムに適した体にするってことよ。まだ、普通の子はドール以外に機械を取り付けなきゃいけないけど、新しいサンプルが手に入ったらもっと気軽にできるようになるわよ。」

 ラッシュ博士はアリアに子供を諭すように説明した。

「普通の子・・・?」

「そう。あなた普通の子だから。ちょっと頭に細工するわ。」

 アリアは一瞬怖くなったが急にどうでもよくなった。

「・・・そう。」

「もう誓約書に名前書いてるのね。じゃあ、検査して手術しましょ。」











「ニシハラ大尉、行ってしまわれましたがよかったのですか?」

 執事が玄関で立ち尽くすコウヤに声をかけた。

「俺には止められなかったです。」

「お茶を淹れます。中にお入りください。」

 執事はコウヤを居間に招き入れた。

 ソファに座るとコウヤはそのまま体が沈む感覚に陥った。

 しばらくすると執事がお茶を持ってきた。どうやらハーブティーのようだ。

「執事さんは・・・中佐が帰ってこなくて、マリーさんが地球にいる間・・・ここにずっといたの?」

 執事は頷づいて

「ここにいつでも帰ってこれるようにしているのが、私の仕事です。」

 当然のように言った。



「すごいな・・・」



「コウヤ様。」

 執事はコウヤの向かいしゃがんだ。

「あなたの育ての親・・・ここに連れてこられた方がよろしいのでは?」

「執事さん・・・・でも、俺は母さんがどこにいるかわからないんです。」

 コウヤは執事の提案をうれしく思ったが現実的な問題があった。

「ニシハラ大尉にお願いされては?」

 執事はコウヤの目を見た。

「そんなこと、お願いできない。」

「なぜです?」

「ハクトは今精いっぱいの状況です。それに、俺はあいつのこと考えないで沢山迷惑をかけていた。」

「では、ほかに頼める友人はいますか?」

「頼める・・・」

 コウヤはハクトがフィーネの中にスパイがいる可能性を言ったのを思い出した。

「いない・・・・俺、今ハクトしかいない・・・」

「コウヤ様・・・何でもいいから頼まれるといいでしょう。」

「でも、俺は」

「母親のこと、場所さえわかれば私が迎えに行く手配をします。」

「執事さん。」

「コウヤ様・・・何かを頼むことでニシハラ大尉を繋ぎとめてください。」

 執事はコウヤの目を見て言った。

「頼むこと・・・?」

「あなたと彼の間に何があったのかは知りません。」

 執事は立ち上がりティーカップにお茶を注ぎ始めた。

「お名前さえ教えていただければ母親の方は私で手配します。」

「執事さん。どうして、そんなに」

「私のことはどうでもいいのです。これは、あなたとニシハラ大尉の話です。」

「ニシハラ大尉は、ドールプログラムの実験サンプルに自らなることでご友人を救うつもりですよね。彼に、帰ってくる理由を少しでも多く与えてください。」

 執事はコウヤにお茶の入ったティーカップを渡した。

「執事さん。あなたどうしてそこまで・・・」

「私は、あなたの御父上に非常にお世話になりました。そして、このロッド家にも。」

 執事は天井を見上げた。

「ドールプログラムのことどこまで知っているのですか?」

「あれは、パンドラの箱です。決して開いてはいけないです。災いが溢れるもの・・・。」

 執事は一瞬目を細めて何かを言おうとしたが、口をつぐみコウヤの目を真っすぐ見た。

「ロッド家は・・・ドールプログラムに深く関わっていたのですか?」

「・・・・時が来たらすべてお話しましょう。今は、あなたのすべての記憶を取り戻すことが大事です。」

「記憶・・・でももう戻って・・・・」

 執事は首を振った。

「まだ、戻っていません。こればかりは他人の力でどうにかできるものじゃありません。」

「・・・そうなんですか?」

「ドールに頼らず記憶を戻してください。ドールは、あなたの記憶を捻じ曲げる。」

 執事は強調するように言った。

「感情に支配されるように・・・ですか?」

 コウヤは憎しみ支配されたことを思い出した。

「あなたは、ムラサメ博士の息子です。ドールもそれを分かっているのでしょう。」

 コウヤは執事が何を言っているのかはわからなかったが、彼に対して大きな安心を感じていた。

「さあ、温かいうちにお茶を飲んでください。」

 執事は微笑んで言った。








 歩くのも億劫で、気が付くとかなり遅い時間になっていた。

 ロッド中佐がいなくなってからイジーは動く気力もなくなっていた。なによりも、久しぶりに親友に愚痴を吐き出したのだったから止まらなくなった。

 流石にこれだと明日の仕事に支障が出るとことと、もう過ぎているが、門限があることを思い出して、立ち上がり

「じゃあ、またね」

 といい墓地から出て行った。

 いいだけ泣いたし、言えないことまで言った。

 一方的に話していただけだけど、久しぶりに素直になれた気がした。

 わかっていた。

 自分はレイラのことを憎んでいるけれどそれは妬みであること。

 彼女と向き合って、思っていたよりずっと大人だったことにショックを受けていた。

 もっと現実に盲目な子供だと思っていた。



 考えてみれば彼女は残酷な運命の元に生まれた。

 聞いたことがあった。

 レイラは望まれない子供であったため、ゼウス共和国に認められなかった。父親からも。

 それが、兵器として有用とわかると彼女の大事なものを壊してまで力ずくで・・・



 父親に見捨てられた幼い少女はクロスしかいなかった。

 いずれは他にも友達ができるが、彼女にとって彼以上はいないのだろう。



 だからこそ、私は彼女が許せないのかもしれない。



 イジーは夜道を歩いてると人影があることに気付いた。しかも、どうやら待ち伏せのようだ。

 腐っても軍人。訓練も受けた身。

 何事もないように装い、万一のために頭の中で対処法を考えていた。

 一歩一歩進める。

 人影は動かない。

 《・・・男の人か?》

 イジーは視界の端に人影を捉え続けていた。



 人影の人物が確認できる距離まで来た。

 人影は思った通りこっちに向かってきた。

「痴漢!!!」

 イジーはそう叫び人影の腹に向かって拳を突き出した。

「うぼほっ」

 硬い感触があった。人影の腹筋に入った。相当鍛えている。

「違う・・・」

 苦しそうに呟く男をイジーは見たことがあった。

「あれ?」

 でも気のせいか、こんな人じゃなかったような。

「痴漢じゃない。」

 男はかけていた眼鏡を取りイジーにハンカチを差し出した。

「俺は、さっき墓地であったレイラ・ヘッセの連れです。」

 差し出されたハンカチはイジーの物だった。男は彼の言う通りさっき墓地で会った男だった。

「あなたにお話があります。」

 男はイジーが殴った腹をさすりながら言った。

「あ・・・大丈夫ですか?」

 考えてみれば、ただこっちに向かって歩いてきただけだ。飛び掛かられたわけじゃない。

「大丈夫です。」

 平気そうに言うが、周りを心配そうに見渡していた。

「あの・・・・長くなるので、座ってお話しませんか?」

「はい」

 イジーは近くに座れる場所を探し男と並んで座った。

 男は眼鏡を再びかけると急いで呼吸を整えた。

「そんな慌てなくても落ち着いてからで大丈夫ですよ。」

 イジーは罪悪感からか優しく言った。

「いや、事が事だから急いで伝えたかったんです。」

「事が事?」

「ニシハラ大尉が危ないです。」

 イジーは男の言葉に警戒した。

「そんな警戒しないでください。ただ、戦艦フィーネの船員にゼウス共和国とのスパイがいました。」

 イジーは更に警戒した。

「え・・・どうしよう・・・・えっと・・・ドールプログラムの実験サンプルとしてゼウス共和国側に引き渡されるって聞きました。」

「それ本当?」

 イジーは目を見開いた。

「はい。」

 男は呼吸を整え終わったのか落ち着いていた。

「そのスパイの名前ってわかる?」

「わかります。」

 男は少し悲しそうな顔をしている。

「あなたは何者?」

 イジーは男のことがわからなかった。彼はゼウス共和国側の人間ではないのか?

「俺は、死んだ親友のために動いてるだけです。」

 曖昧ですごく私的な理由だが、不思議と信用できた。

「でも、どうして私に?」

 イジーは一番疑問に思っていることを言った。

「あなたが「希望」関係者であるからです。」

「どうしてそれを・・・・レイラ・ヘッセから聞いたの?」

 男は頷いた。

「あの人、あなたのこと信用しているのね。」

「信用ですか・・・」

「でも、なんでニシハラ大尉の存在を知っていながら言わないの?」

「「天」に上がったら言おうと思っていたんですよ。けど、俺の精神状態の問題で・・・。」

 イジーは直感的に親友を失ったのがこの時と思った。

「・・・そもそも、誰も信用できないというのが正直なところです。」

 男は虚ろな目で呟いた。それに関してはイジーは同感だった。

「そう、でもあの人には、早めに言った方がいいわね。」

「そうですね。もう聞き耳関係なしで帰ったら言います。俺のことも話さないとな・・・」

 イジーは男の横顔を見た。

 《この男も何か抱えているのだな・・・》

「あ・・スパイの名前ですけど」

 男は思い出したようにイジーに言った。








 レイラは不審に思っていた。

 いくら見取り図がなかったとしてもこれは遅い。

「トイレでなにしているんだ?」

 とはいえ2時間は長い。よっぽど悪いものを食べたのだろう。

「私と食べているもの変わらないはず。」

 まさか、地連の軍人と言ったせいで彼がリンチにあっているのでは・・・

 《あいつなら返り討ちにするし、大丈夫だろうが・・・》

「軽率だったか・・・」

 自分の発言を悔やんだ。だが、もし違うならやはり腹痛か。

「見取り図は冗談だったのに・・・」

 レイラはさみしそうに言った。

 コンコン

 ノックの音が聞こえた。

 一瞬シンタロウかと思ったが

 《違う・・・》

「どうぞ」

 レイラは身構えた。

「失礼します。」

 ドアを開くとそこには准将がいた。後ろには5人ほどの連れがいる。

「准将。どうされましたか?」

 レイラは姿勢を正した。

「恋人どのはどうした?」

 准将は部屋の中を見渡した。

「ああ、彼はどっか行きましたよ。それが?」

「いや、せっかくだから一緒にと思ったが仕方ないな。」

 准将の様子がおかしい。いや、今までが演技だったのか?

「一緒に?もし研究施設のことだとしたら、明日でも・・・」

 准将の後ろの男たちが一斉に部屋に入ってきた。

「な・・・何を」

 5人の屈強な男がレイラにとびかかった。

 レイラは躱し、一人の男の腕をつかむと放り投げ三人ほど倒した。

「准将!!これは一体どういうことですか?」

「悪いね。レイラ君。」

 准将がそう言うと窓から別も男たちが入ってきた。

「がっ・・・」

 押し倒されるとレイラは床に押さえつけられた。

「いかに化け物といえ、これでは動けないか。」

 准将は安心したようにレイラに近付いた。

「これはどういうことですか?」

「いや、何事も急ぐのは大事だろ?」

「急ぐ?」

「手に入れれるうちに手に入れる。こっちの話だ。」

 バチッ

 スタンガンの音だった。

 准将のその言葉を聞いたところでレイラの意識は無くなった。



 准将は意識を失ったレイラを見下ろしていた。

「目が覚めても動けないようにしておけ」

 レイラを取り押さえていた男たちにそう伝えると准将は部屋を出た。

「せっかく恋人と仲良く捕まえてやろうと思ったが・・・」

 准将は通信機らしきものを取り出した。

「こちらレイラ・ヘッセを捕まえた。すぐに研究ドームに運ぶ。」

 そう機械的に言うと通信機をポケットに戻した。

 准将の傍にレイラを押さえた男のうちの一人が近づいてきた。

「准将・・・・このような乱暴な手を使わなくても・・・」

「仕方ないのだよ。ニシハラ大尉の両親がいなくなった。人質がいなくなった今、ニシハラ大尉の動きを制限できないからな。」

「だから、手に入るサンプルは急ぐのですね。」

「そうだよ。」

「例の恋人はどうします?」

「戻ってきたら捕まえるか、抵抗したら殺せ。ラッシュ博士が何かを解明したがっていたが、鍵でない。手加減はするな。」

 准将は冷たく言い、去って行った。











「それ・・・本当?」

 イジーは目を見開いていた。

「はい。あの、このことは内密に・・・・」

「ええ。もしかしたら、そのゼウス共和国のスパイのせいで中佐が死んだのかもしれない・・・」

 イジーは怒りに手を震わせていた。

「あなたは、軍に居続けるんですか?」

 シンタロウは怒りに震えるイジーに訊いた。

「わからない。でも、このままでいいわけない。許せない・・・」

 イジーは歯を食いしばっていた。

「あまり、憎しみに囚われないでください。死ぬときに後悔します。」

 シンタロウは諭すように言った。

「あなた、達観したように言っているけど、人の感情って割り切れるものじゃない。」

「そうですね。」

 シンタロウは自分の過去を思い出していた。

 自分はあの第一ドーム破壊で両親を失った。それからゼウス共和国を倒すために軍に志願した。

 第6ドームで親友と別れた。それからドール使いになるため軍人の訓練に励んだ。ただ、ゼウス共和国を倒すために。

 吐き気の憶える訓練。自分が見えなくなったが、憎しみと親友の存在が支えた。

 そして、他人を騙し、知った真実は憎しみを揺るがせた。

 逃げるために手を汚して親友のために動いた。だが、自分のいた軍施設が破壊され瓦礫の下敷きになり死を覚悟した。その時に思ったのは親友たちのことだった。その後、レイラに助けられ、憎しみで動く彼女と過去の自分を重ねていた。



「俺は、短い間に沢山憎んだ。そして、騙して、殺して、死にかけた。最終的に考えたことは親友のことだった。幸い俺は生き残った。かつて憎むべきだった相手に助けられた。けど、その憎むべき相手は、俺と同じだった。」

 シンタロウはイジーを見た。

「あなたは・・・」

 イジーはシンタロウの言葉に驚いていた。

「でも、その親友も死んじまった。だからといって、また憎しみの道に戻りたいわけじゃない。俺は、そんなことで自分を犠牲にしたくない。もっと価値のあることがあるはず。」

「価値のあること・・・でもそれは、あなただから考えられたことでしょ?」

 イジーは感心したようだが、直ぐに表情を戻した。

「そうだな。他の人と俺は違う。それは事実だ。だけど、俺は後悔してしまった。」

「後悔・・・・」

「死にかけた時に後悔してしまった。憎しみに囚われていたことに」

「それって、復讐心があるものは一回死にかけましょうって言ってるようなものでしょ?」

 イジーは皮肉気に笑った。

「そうかもな。でも、それができないから俺はあなたにこういうことしかできない。」

 シンタロウは笑った。

「あなた、気が付いたら敬語じゃなくなってる。」

「いや、年下認定途中でしたからかな?」

 シンタロウは照れながら白状した。

「年下認定?あなたいくつ?」

 イジーはシンタロウを年下だと思っていたらしく少し腑に落ちない様子だった。

「俺18」

「うそ」

 イジーは自分より年上だったシンタロウに驚いていた。



「っとじゃあ、そろそろ戻るわ。レイラにはトイレに行くって言ってたから。」

 シンタロウはイジーに手を振った。

「待って。」

 イジーはシンタロウを呼び止めた。

「え?」

「あの、スパイの話ありがとう。あと、復讐心のレクチャーも・・・」

 イジーはどうやらシンタロウのレクチャーが心に残ったのか少し照れくさそうだった。

「いやいや、俺もスパイの話を聞いてもらってよかった。もし、その後のことがわかれば教えてもらえるか?」

 シンタロウはどうやら地連の軍の情報が欲しいようだ。

「いいけど、情報を悪用しないでよ。」

 イジーは念を押すように言った。

「わかってるって。あ・・・ハンカチ返すよ。」

 シンタロウはイジーに借りたハンカチを渡した。

 イジーはそれを見て

「洗って返して。あなたの涙と鼻水がついたままでしょ?」

 と嫌そうに突き返した。

「・・・理由は最もだけど、傷つくな・・・」

 シンタロウはブツブツ言いながらハンカチを仕舞った。

「じゃあ、明日ユッタのお墓の前で会える?」

 シンタロウは唐突に言われたので驚いた。

「え?ちょっと待って。レイラに確認してみる。つっても行動制限されていないから大丈夫だと思う。」

「夜だから。お昼は私も軍だし。もしかしたらすぐには結果は出ないかもしれないけど」

「いいよ。俺も気になることあるし。」

「じゃあ、明日この時間に。」

「おう。」

 シンタロウはイジーに手を振り走って去って行った。

 それをイジーは見送ったが気付いた。

「わたし、名前聞いていない。」







 リリーは深夜呼び出されたことに少しドキドキしていた。

 心なしか香水をつけて少しだけチークもしている。

 軍の宿舎に今は泊まっているためそんな派手な格好はできないが、ちょっとの気張りはできる。

 誰か来たようだった。

 リリーは目を輝かせて見た。

 が、直ぐに真顔になった。

「あれ?リリー?」

 寝巻姿でお菓子片手に持ったモーガンだった。

「モーガン・・・寝巻って」

 リリーは呆れた。対するモーガンは気にしてない様子だった。

「だって、深夜だぜ。これ食う?」

 モーガンは手に持っていたお菓子をリリーに差し出した。

「太るからいらない。」

 リリーは内心食べたいと思いながら時間を考えて遠慮した。

「別に太ってないじゃん。」

「太っているからじゃなくて太るからなの!!」

 リリーは怒鳴った。

「へー・・・大変だな・・・・」

 モーガンはお菓子をぼりぼり食べていた。

「モーガンも大尉に呼ばれたの?」

「うん。さっき俺の部屋に大尉が来てさ。寝てたんだけど、布団剥がされてね。あの人、結構強引だな。」

 モーガンは笑いながら言っていた。

「部屋に・・・・」

「だって男同士だしな。」

 たしかに、私の部屋に来られても困るか。いや、困らないけど。

 と内心リリーは思っていた。

「でも、なんで私たち二人なのかしら?」

「そりゃ、知っているからじゃない?」

 モーガンはコウヤのことを言っているのだ。それはリリーにも分かった。

「でも、ここって・・・」

「まあ、いいじゃん。」

 呼ばれた場所は軍施設の真ん前だった。

「大尉が上がってくる前にここでみんなでうろうろしてよな。」

 モーガンは懐かしむように言った。

「そうだったわね。でも、モーガン。その恰好はないって!!」

 寝巻姿のモーガンをリリーは指さした。

「だから、寝てたんだって。」

 モーガンは口を尖らせた。

「でも、大尉遅いわね。モーガンを叩き起こしたってことは先にいてもおかしくないのに・・・」

 すると二人の前に1台の車が走ってきた。

「!?・・・・」

 何故か不審な気がした。

「モーガン。あの車って・・・」

「なんだか嫌な予感がする。」

 車は速度を落とさず二人に向かってくる。

「え・・・ちょっとリリーどうしよう。」

 モーガンは急いでお菓子の袋を閉じた。

「いや、え、どうしよう・・・よ・・・避け」

 車は二人の前で急停止した。



「だ・・・誰?」

 車の中は見えなかった。

「もしかして、たい・・・」

 車のドアが勢いよく開いた。

「わ!!」

 二人が驚いていると覆面をした男が二人を車に引きずり込んだ。

「ギャー」

 二人はあたりに響くほど大きい叫び声をあげた。

 車は二人を乗せると勢いよく走り去って行った。





 車の急発進の音と叫び声に施設から人が出てきた。

「なんだ?今のは・・・」

 一人の軍人がさっきまでリリーたちがいたところに出てきた。

「これは・・・」

 そこに落ちていたのは、お菓子の袋だった。

「監視カメラ確認しろ。」

 複数の軍人が出てきた。



 しばらくすると一人の他の軍人とは違う雰囲気の男が出てきた。

 走っていた。

 男は人だかりができているところをみて顔色を変えた。

「すみません。何があったんです!?」

 お菓子の袋を持っている軍人に男は尋ねた。

「わからない。ただ、ここですごい叫び声が聞こえた。」

「叫び声・・・」

 お菓子の袋を持っている軍人は男をみて不審そうな顔をしていた。

「お前、軍人か。名前は?」

 そういわれると男は

「はい、私はハクト・ニシハラです。」

 それを聞くと周りの軍人は顔色を変えた。

「ニシハラ大尉か!?」

「うそ!本物!?・・・あ!!本物だ!!」

 お菓子の袋を持った軍人は姿勢を正し敬礼をした。

 彼にハクトは見覚えがあった。

「君は・・・地球の本部にいたミゲル・ウィンクラー准尉?」

 ハクトの言葉にお菓子の袋を持った軍人は目を輝かせた。

「はい!!ニシハラ大尉!!覚えていただけて・・・光栄で・・・」

 ミゲルは話始めると唾を飛ばし、ハクトに近寄った。

 ハクトは思わず後ずさりをした。

「ウィンクラー准尉。それよりも事情を・・・」

 ミゲルははっと我に戻り、仕事の顔になった。

「失礼、ニシハラ大尉。大尉はどうしてこんな時間にここに来られたのですか?」

 他の軍人がミゲルを押しのけて話し始めた。

「実はここ元部下二人と待ち合わせしていたのです。監視カメラありますか?」

 ハクトは心配そうにあたりを見回した。

「はい。ただ、手掛かりはないに等しいようです。」

「施設内から声が聞こえた。」

「拝見させてください。」

 ハクトは急いでカメラの映像の元に向かった。



 映像には

 モーガンとリリーが話している。

 そこに車がやってくる。

 驚く二人

 車から覆面の男が出てくる。

 二人を引きずりこむ。この時に叫んだらしい。

 車は猛スピードで去っていく。



「この車は・・・」

 ハクトは車を注視したが

「たぶん盗難車です。しかも、よくある形です。」

「くそ」

 ハクトは悔しそうに拳を握った。

「すみませんもう少し見てもいいですか?」

 ハクトは画面にかじりつくほど近付いていた。

「はい。あの、なんなら映像のデータあげましょうか?」

 ハクトの剣幕に圧されミゲルは後ろから声をかけた。

「いいんですか?・・・下さい。」

 ハクトはミゲルに掴みかかる勢いで近付いた。

「は・・はい。少しお待ちください。」

 ミゲルを始めとした軍人たちは、映像のコピー作業に取り掛かり、データの入ったチップをハクトに渡した。

「ありがとうございます。」

 ハクトは映像のデータをもらい急いで去って行った。



 ハクトを見送ったほかのミゲルをはじめとした軍人たちは

「でも、やばい事件だな。」

「早く上に報告しないと。」

 と他人事だが、切迫した様子だった。
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