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~糸から外れて~無力な鍵
兄弟
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人類が洗脳された事件、いわゆるドールプログラムの暴走を止める作戦が三年前実行され、成功した。
しかし、その成功には多くの犠牲があった。ドールプログラムの影響により作戦に参加したネイトラルの軍と地上主権主義連合国のドール隊、そしてこれから宇宙を引っ張ると言われていた二人の偉大な軍人の「キース・ハンプス少佐」そして「レスリー・ディ・ロッド中佐」だ。
彼等の死に跡を追おうとする軍人も多かった。しかし、二人と深く交流のあったロッド中佐に次いで、当時宇宙二の戦士と言われていた「ニシハラ元大尉」や、「シンタロウ・ウィンクラー少佐(当時准尉)」の存在や復興の忙しさもあり大事には至らなかった。
作戦を終え、三国はドールプログラムの被害であったと明かし、復興とドールプログラムの悪用防止と解明のために停戦となった。完全なる終戦とはいかなかったが、確実に平和に向かっていると言われている。ただし、犠牲の大きさは計り知れない。
だが、犠牲の大きさに関わらず人々は忘れるものだ。当時の作戦責任者であるレイモンド・ウィンクラー現総統の力は当初は強かったが、ロッド中佐とハンプス少佐の戦死とニシハラ大尉が軍を辞めたことにより、権力を求める他勢力が大きくなった。作戦参加者に対する尊敬と畏敬の念は変わらないが、それ以上に権力に対する欲が大きくなり、軍のバランスは崩れつつあった。
髪色は少し青みが見える黒、瞳は髪と同じように青みがかかった黒。顔は悪くないから寝癖が常のあるのがもったいないと影で女子学生が言っていた。
「そんなまじまじ見るなよなー。照れるだろ。」
観察するように見ていたのに気付いたコウヤがリコウを見て照れながら茶化すように笑った。
「何者ですか?」
「あんまりしつこいと嫌われるって。俺のことを考えるよりもお前は自分のことを考えろ。思考を逸らすのに俺を使うなよ。」
コウヤは診療所の扉の方をチラリと見て言った。
「・・・信じられない。だって、あんなに犠牲が出ているんだ。それを・・・兄さんが」
「知っている。・・・じゃあ、こうしよう。」
首を振り続けるリコウを見てコウヤは呆れたようにため息をついた。
「・・・俺は疑う。だけど・・・弟であるお前は信じろ。何をとは言わない。お前の中の兄を信じろ。」
コウヤは元気づけるために言っているのだろう。だが、その言葉は逆効果だった。
蘇るアズマの目はキラキラ光っているものばかりだった。
「あの・・・・寒くないですか?」
ルリはベッドの横でアズマの様子を見ているマックスにタオルケットを差し出した。
「ありがとう。・・・君も休んでていい。外の見張りは頼りになる。」
マックスはルリを見て微笑んだ。
「・・・変人で頑固だと聞いていた。マーズ博士。」
横になっているアズマがマックスを見て意外そうに目を丸くしていた。
「色々経験した。普通ならしないようなこともな。」
マックスは渡されたタオルケットを肩にかけた。
「・・・・そうでしょうね。でも、やっぱりあなたは戦闘員ではない。」
アズマはマックスを見て笑った。
「リコウは、軍に入らなかったのか。背が高いし、適合率も二桁だと聞いた。」
マックスはドアの外を見た。
「あいつは研究者になるって頑固になっている。天才ではないと研究の道は難しい。あなたならわかるはずだ。・・・・俺はあいつと共に戦いたい。役に立とうとしてくれているのは有難いが・・・」
アズマは困ったように眉を顰めた。
「知識があるやつはいるに越したことはない。お前ならわかるだろ。お前が選んだ道は危険が付く。そこに共に立つということはどういうことかと・・・」
「共有したいんだ。二人っきりの兄弟で・・・家族だ。」
アズマは寂しそうに呟いた。
「・・・・兄弟か・・・それがそういうものなのか?」
マックスはアズマの様子を見て目を細めた。
「わからないでしょうね。これは実際に兄弟がいないと分からない。二人っきりで頼れるのはお互いだけ。」
アズマは懐かしむように目を細めた。
「・・・・リコウはお前を頼っている。大切に思っている。」
マックスはアズマを見て言った。
「当然です。兄弟ですから。」
アズマは自信たっぷりに笑った。
「そうか。」
マックスは肩にかけたタオルケットを自分の頭にかけた。
ネイトラル
かつて地連とゼウス共和国が争っている時に中立を叫んでいたネイトラルは、今やかつてのゼウス共和国以上の規模の国となっていた。
その創設をしたアスール財団は、国の創設とともに資金も権力もほぼ使い果たした。しかし三年前の事件をきっかけに再び力を取り戻した。
それは「フィーネの戦士」にアスール財団のトップであるナイト・アスールの娘であるディア・アスールがいるからである。
それだけではなく彼女の婚約者も「フィーネの戦士」の一人であるハクト・ニシハラである。彼は、三年前は地連軍に所属し、ロッド中佐に次ぐ戦士として広く知れ渡っていた。
ネイトラル国内のやけに豪華な邸宅のやけに大きなテレビはずっと同じニュースを流していた。
それを深刻そうな顔で見る二人の男女がいた。
男は灰色がかかった髪色をしており、黒い切れ長な目と意志の強そうな眉が印象的で、一般的に言う男前に部類される容姿をしている。
「・・・このテロリストが誘拐したと言っているのは本当なのか?」
「さあ。わからない。」
彼の言葉に首を傾げる女は、白銀の柔らかそうな髪をなびかせ銀色の瞳をしており、長いまつ毛と薄いがふっくらとした唇が印象的で、絶世の美女と言われてもおかしくない容姿をしていた。
この二人こそがネイトラル関係者の「フィーネの戦士」であるハクト・ニシハラとディア・アスールだ。
「軍から情報が欲しいが、ネイトラルにいる限り地連との連絡は厳しい。」
ディアは両手を広げて困ったような顔をした。
「・・・作戦後、軍を辞めるのに揉めたから俺も中々連絡を取りにくい。まして、こんな声明が発表されたら動くこともままならない。」
ハクトは首を振って髪を掻きむしった。
「他の奴が無事か知りたいが、相手がわからないと攻めることもできない。」
ディア自分の髪を掻きむしるハクトの手を掴んだ。
「ほどほどの刺激はいいらしいが、やりすぎは良くない。夫が早くに禿げるのは仕方ないかもしれないが、防げるのは防ぎたい。」
ディアの言葉を聞いてハクトは急いで頭から手を離した。
「テロリストたちがどこまであの作戦を知っているかにかかるな。・・・少しディアの顔を見に来ただけなのに、長い滞在になりそうだ。」
ハクトはチラリとカレンダーを見た。
「大学の方は大丈夫か?コウとも連絡を取ることは出来ないのか?あとクロスは?」
ディアは心配そうにハクトを見ながら二人の名前を挙げた。
「外と連絡がほぼ取れない。というよりも、ディア。お義父さんが通信状況を監視している。」
ハクトは困ったようにディアを見た。
「あの父は君を縛り付けるつもりだ。」
ディアは苦い顔をした。
二人の言う父とは、ディアの父親のナイト・アスールである。
彼は建国から戦争中は、ほとんど表舞台に立つことは無かったが、休戦状態になってからは表舞台に立ち政局を動かし、地連の総統レイモンド・ウィンクラーと腹芸を繰り広げている。
「どうにかして状況を知りたいな。それに・・・場合によったら、ネイトラルを出る必要もあるかもしれない。」
ハクトは考え込むように俯いた。
「・・・また、戦わないといけないのか・・・」
ディアは悲しそうに呟いた。
画面に映し出されたのは、破壊される祖国だった。
呆然と見つめる兄の横顔を視野に入れながら、自分も呆然としていた。
あまりにあっさりと破壊される様子から、まるで張りぼての様だと思った。
『止めろおおおおお!!』
叫び声が響いた。
そう言えばさっきから音声も一緒に流れていた。
それは後程分かったが「フィーネの戦士」が破壊を止めようと試みたようで、その時の音声だったようだ。そう、流れた声は戦士のものだった。
叫び声をBGMとして派手に大げさに破壊された祖国を見ていた。
《・・・・違う。お前は無理だ。何で・・・お前に・・・》
誰かの声が響いた。
耳元に囁くように響いた声にリコウは飛び起きた。
「おい!!どうした?」
リコウが飛び上がったことにコウヤは驚いていた。
どうやらリコウは、座り込んでいるうちに眠ってしまっていた様だ。
「・・・いや、なんか変な声が・・・」
言いかけてリコウは頭を振った。
「何でもないです。」
疲れによって生じた幻聴だと結論づけて思考から声のことを弾き出した。
「・・・そうか。」
コウヤは気になるようにリコウを見ていたが、リコウが考えないようしているのを感じ取ったのか表情を切り替えた。
「もうすぐ軍の応援が来ると思う。・・・ヤクシジ、軍は馬鹿ではない。・・・兄と話したらいい。」
コウヤは立ち上がり診療所の方に歩きだした。
「・・・話すって言っても・・・」
リコウは立ち上がろうとした。
ゴゴゴゴン
地響きを含めた轟音が辺りを包んだ。
「な・・・」
「軍が入ってきた。」
コウヤは分かっていたことのように呟くと診療所に走り出した。
動けなくなる前に作戦の先頭に立ち、どうにか現場に出ることができた。
そんなことに安心していたが、到着した第三ドームに受け入れを連絡したところ、返事がないことにそんな気持ちは吹き飛んだ。
「少佐。・・・どうします。」
隊員たちは心配そうにシンタロウを見ていた。
「港は二重扉だ。そこを破壊して内部に入る。外気でドームが汚染されるのも最小限で済む。」
シンタロウは操舵士やオペレーターに指示をした。
「中に入ったら、俺が先頭に立つ。奴らの標的に入っている。」
シンタロウは隊員たちの顔を見渡した。
隊員たちは精悍な顔を付きでシンタロウを見ていた。
どうやらドームの内部に心配はあっても、自身たちが動くことに対しては不安は無いようだ。そして、隊長であるシンタロウを尊敬し信頼しているようだ。
「戦闘要員を船に残す。万一の時は本部に連絡を入れて撤退しろ。そして、撤退してからの戦闘以外の行動はルーカス中尉の指示に従え。」
シンタロウは操舵士の肩を叩いた。
「扉を破壊するとすぐに攻め込む。それぞれ武装し、割り当てられた乗り物を確認しろ。」
指示し終わったのか、シンタロウは操舵室に残る者達の目配せをして部屋から出て行った。
彼に続くように隊員たちは整列し連なった。
普段ならドールの発着口になっている格納庫にはドールの他に数台の大型のバイクが並んでいた。
隊員たちは外気遮断用のマスクと通信機の機能を備えたヘルメットを被り、バイクに乗った。
格納庫の開ける出入口が開くのを待つように隊員たちは構えていた。
「開いたらすぐに出る。打ち合わせでドームの構造は頭に叩き込んでいるはずだ。」
シンタロウは隊員たちの先頭のバイクに乗り、隊員たちに話しかけた。
「障害物はその場で対処しろ。間違っても市民に危害は加えない。そして、俺についてこい。」
シンタロウが言い終えると同時に轟音が響いた。
振動が終わり、しばらくすると格納庫の扉が開いた。
「・・・行くぞ。」
シンタロウは勢いよくバイクを走らせドームの中に飛び出した。
その彼に続くように規則正しく連なって飛び出した。
「この音・・・なに?」
ルリは不安そうにあたりを見渡していた。
「軍が入ってきた。おそらく港を破壊したんだと思う。」
コウヤの言葉にルリは固まった。
「一番安全だ。港は外と二重扉になっている。外気の汚染を最小限で済ませられる。」
アズマはルリを安心させるように頷いて言った。
「じゃあ、軍と合流して・・・」
リコウはアズマをチラリと見てコウヤを見た。
「アズマ。講堂にいる学生を落ち着かせてくれ。」
コウヤはアズマを見て言った。
「え?でも俺は・・・」
「それがいいよ。兄さん。だってそんな大けがしているんだ。」
リコウはコウヤに賛同した。
「いや、だが・・・マーズ博士を安全に・・・」
アズマが納得していない様子だった。
「兄さん。そんな傷で動こうとするなよ。」
リコウは首を振った。
アズマは無言になり、しばらしくして頷いた。
「俺らもあまり大きく動くわけじゃない。ただ、学生を軍に近づけるのが嫌なだけだ。」
コウヤは誰かを想像しているのか少し表情を歪めた。
「そうか・・・?おそらく応援に来たのはウィンクラー少佐だ。彼は・・・強い。」
アズマはリコウとルリを安心させるように頷いて言った。だが、笑顔は自然だった。
「・・・知っている。」
マックスはコウヤをチラリと見た。
「らしいね。・・・だから触れさせたくない。」
何かを思い出すようにコウヤは目を細めて眉を顰めた。
「・・・強い力は・・・・毒だから。」
絞り出すようにコウヤは呟いた。
「とにかくアズマとリコウ達は講堂に向かってくれ。」
マックスは気遣うようにアズマを立たせた。
「二人は・・・?」
ルリはコウヤとマックスを気にしているようだった。
「直ぐに向かう。マックスがお腹痛いから用を足したいらしい。」
コウヤはマックスを指差して言った。マックスは驚いた顔をしたが、直ぐに不満そうに頷いた。
「わかった。すぐに来てくれ。」
アズマは二人を見て言った。その言葉に二人は頷いた。
リコウはチラリとコウヤを見た。コウヤはリコウに頷くように目礼をした。
「肩を・・・貸してくれないか?」
アズマはリコウを見て言った。
「・・・もちろんだ。兄さん。」
リコウは喜んでアズマに肩を貸した。
診療所を出て講堂に向かう途中、ルリが後ろを気にしていた。
「どうした?」
様子に気付いたアズマがルリに訊いた。
「・・・あのコウヤさんって人、何者ですか?マーズ博士と仲良さげだし、強いし、軍の事情に通じているし・・・何か余裕だし。」
「・・・わからないけど、わかる気がする。」
リコウは頭の中に浮かんだコウヤの人物像が形成されつつあった。
「予想だけど、短期間だけでも軍に属していたんだろうな。三年前の作戦成功まで、誰が軍に入ってもおかしくない状況だった。」
アズマは呟いてふと、考え込むように黙った。
「どうした?兄さん。」
「・・・いや、行こう。」
アズマは歩き出した。リコウは慌てて肩を支えながらついて行った。
「うっ」
アズマは傷が痛んだのか少しうずくまった。
「大丈夫か?兄さん。」
リコウは慌てて兄に合わせて屈んだ。
「だ・・・大丈夫だ。行こう。」
アズマは立ち上がり、再び進み始めた。
宇宙空間を縦横無尽に駆け抜ける一つの戦闘機がある。戦闘機というべきか、戦闘機の様な小型シャトルだ。
シャトルの中には二人の女性がいた。
「異常感知・・・・ここの空域おかしい。」
一人の女性が呟いた。
彼女は短い赤毛と健康的な肌色の茶色の瞳をした、どこか幼さの残っている可愛らしい女性だった。
「確かに・・・・隠れドームができていてもここまでの塵なら感知できないわ。」
もう一人の女性は、紫のかかった艶やかで豊かな髪をして、赤毛の女性とは対照的で、どこか大人びた雰囲気のある女性だった。彼女は窓に映る宙に広がる瓦礫を見て言った。
「やっぱり、前にここの空域で察知されたものは・・・・」
「深追いしないで戻るわよ。ユイ。」
赤毛の女性の言いかけた言葉を紫の髪の女性は止めた。
「そうだね。・・・・ねえアリア。私、嫌な予感がする。」
ユイと呼ばれた赤毛の女性は、大きく方向転換され後ろになった瓦礫たちに意識を向けて言った。
「ユイの嫌な予感は当たるからやっかいね。」
アリアと呼ばれた紫の髪の女性は、険しい表情をした。
二人の乗るシャトルは月の方向に飛んだ。
しかし、その成功には多くの犠牲があった。ドールプログラムの影響により作戦に参加したネイトラルの軍と地上主権主義連合国のドール隊、そしてこれから宇宙を引っ張ると言われていた二人の偉大な軍人の「キース・ハンプス少佐」そして「レスリー・ディ・ロッド中佐」だ。
彼等の死に跡を追おうとする軍人も多かった。しかし、二人と深く交流のあったロッド中佐に次いで、当時宇宙二の戦士と言われていた「ニシハラ元大尉」や、「シンタロウ・ウィンクラー少佐(当時准尉)」の存在や復興の忙しさもあり大事には至らなかった。
作戦を終え、三国はドールプログラムの被害であったと明かし、復興とドールプログラムの悪用防止と解明のために停戦となった。完全なる終戦とはいかなかったが、確実に平和に向かっていると言われている。ただし、犠牲の大きさは計り知れない。
だが、犠牲の大きさに関わらず人々は忘れるものだ。当時の作戦責任者であるレイモンド・ウィンクラー現総統の力は当初は強かったが、ロッド中佐とハンプス少佐の戦死とニシハラ大尉が軍を辞めたことにより、権力を求める他勢力が大きくなった。作戦参加者に対する尊敬と畏敬の念は変わらないが、それ以上に権力に対する欲が大きくなり、軍のバランスは崩れつつあった。
髪色は少し青みが見える黒、瞳は髪と同じように青みがかかった黒。顔は悪くないから寝癖が常のあるのがもったいないと影で女子学生が言っていた。
「そんなまじまじ見るなよなー。照れるだろ。」
観察するように見ていたのに気付いたコウヤがリコウを見て照れながら茶化すように笑った。
「何者ですか?」
「あんまりしつこいと嫌われるって。俺のことを考えるよりもお前は自分のことを考えろ。思考を逸らすのに俺を使うなよ。」
コウヤは診療所の扉の方をチラリと見て言った。
「・・・信じられない。だって、あんなに犠牲が出ているんだ。それを・・・兄さんが」
「知っている。・・・じゃあ、こうしよう。」
首を振り続けるリコウを見てコウヤは呆れたようにため息をついた。
「・・・俺は疑う。だけど・・・弟であるお前は信じろ。何をとは言わない。お前の中の兄を信じろ。」
コウヤは元気づけるために言っているのだろう。だが、その言葉は逆効果だった。
蘇るアズマの目はキラキラ光っているものばかりだった。
「あの・・・・寒くないですか?」
ルリはベッドの横でアズマの様子を見ているマックスにタオルケットを差し出した。
「ありがとう。・・・君も休んでていい。外の見張りは頼りになる。」
マックスはルリを見て微笑んだ。
「・・・変人で頑固だと聞いていた。マーズ博士。」
横になっているアズマがマックスを見て意外そうに目を丸くしていた。
「色々経験した。普通ならしないようなこともな。」
マックスは渡されたタオルケットを肩にかけた。
「・・・・そうでしょうね。でも、やっぱりあなたは戦闘員ではない。」
アズマはマックスを見て笑った。
「リコウは、軍に入らなかったのか。背が高いし、適合率も二桁だと聞いた。」
マックスはドアの外を見た。
「あいつは研究者になるって頑固になっている。天才ではないと研究の道は難しい。あなたならわかるはずだ。・・・・俺はあいつと共に戦いたい。役に立とうとしてくれているのは有難いが・・・」
アズマは困ったように眉を顰めた。
「知識があるやつはいるに越したことはない。お前ならわかるだろ。お前が選んだ道は危険が付く。そこに共に立つということはどういうことかと・・・」
「共有したいんだ。二人っきりの兄弟で・・・家族だ。」
アズマは寂しそうに呟いた。
「・・・・兄弟か・・・それがそういうものなのか?」
マックスはアズマの様子を見て目を細めた。
「わからないでしょうね。これは実際に兄弟がいないと分からない。二人っきりで頼れるのはお互いだけ。」
アズマは懐かしむように目を細めた。
「・・・・リコウはお前を頼っている。大切に思っている。」
マックスはアズマを見て言った。
「当然です。兄弟ですから。」
アズマは自信たっぷりに笑った。
「そうか。」
マックスは肩にかけたタオルケットを自分の頭にかけた。
ネイトラル
かつて地連とゼウス共和国が争っている時に中立を叫んでいたネイトラルは、今やかつてのゼウス共和国以上の規模の国となっていた。
その創設をしたアスール財団は、国の創設とともに資金も権力もほぼ使い果たした。しかし三年前の事件をきっかけに再び力を取り戻した。
それは「フィーネの戦士」にアスール財団のトップであるナイト・アスールの娘であるディア・アスールがいるからである。
それだけではなく彼女の婚約者も「フィーネの戦士」の一人であるハクト・ニシハラである。彼は、三年前は地連軍に所属し、ロッド中佐に次ぐ戦士として広く知れ渡っていた。
ネイトラル国内のやけに豪華な邸宅のやけに大きなテレビはずっと同じニュースを流していた。
それを深刻そうな顔で見る二人の男女がいた。
男は灰色がかかった髪色をしており、黒い切れ長な目と意志の強そうな眉が印象的で、一般的に言う男前に部類される容姿をしている。
「・・・このテロリストが誘拐したと言っているのは本当なのか?」
「さあ。わからない。」
彼の言葉に首を傾げる女は、白銀の柔らかそうな髪をなびかせ銀色の瞳をしており、長いまつ毛と薄いがふっくらとした唇が印象的で、絶世の美女と言われてもおかしくない容姿をしていた。
この二人こそがネイトラル関係者の「フィーネの戦士」であるハクト・ニシハラとディア・アスールだ。
「軍から情報が欲しいが、ネイトラルにいる限り地連との連絡は厳しい。」
ディアは両手を広げて困ったような顔をした。
「・・・作戦後、軍を辞めるのに揉めたから俺も中々連絡を取りにくい。まして、こんな声明が発表されたら動くこともままならない。」
ハクトは首を振って髪を掻きむしった。
「他の奴が無事か知りたいが、相手がわからないと攻めることもできない。」
ディア自分の髪を掻きむしるハクトの手を掴んだ。
「ほどほどの刺激はいいらしいが、やりすぎは良くない。夫が早くに禿げるのは仕方ないかもしれないが、防げるのは防ぎたい。」
ディアの言葉を聞いてハクトは急いで頭から手を離した。
「テロリストたちがどこまであの作戦を知っているかにかかるな。・・・少しディアの顔を見に来ただけなのに、長い滞在になりそうだ。」
ハクトはチラリとカレンダーを見た。
「大学の方は大丈夫か?コウとも連絡を取ることは出来ないのか?あとクロスは?」
ディアは心配そうにハクトを見ながら二人の名前を挙げた。
「外と連絡がほぼ取れない。というよりも、ディア。お義父さんが通信状況を監視している。」
ハクトは困ったようにディアを見た。
「あの父は君を縛り付けるつもりだ。」
ディアは苦い顔をした。
二人の言う父とは、ディアの父親のナイト・アスールである。
彼は建国から戦争中は、ほとんど表舞台に立つことは無かったが、休戦状態になってからは表舞台に立ち政局を動かし、地連の総統レイモンド・ウィンクラーと腹芸を繰り広げている。
「どうにかして状況を知りたいな。それに・・・場合によったら、ネイトラルを出る必要もあるかもしれない。」
ハクトは考え込むように俯いた。
「・・・また、戦わないといけないのか・・・」
ディアは悲しそうに呟いた。
画面に映し出されたのは、破壊される祖国だった。
呆然と見つめる兄の横顔を視野に入れながら、自分も呆然としていた。
あまりにあっさりと破壊される様子から、まるで張りぼての様だと思った。
『止めろおおおおお!!』
叫び声が響いた。
そう言えばさっきから音声も一緒に流れていた。
それは後程分かったが「フィーネの戦士」が破壊を止めようと試みたようで、その時の音声だったようだ。そう、流れた声は戦士のものだった。
叫び声をBGMとして派手に大げさに破壊された祖国を見ていた。
《・・・・違う。お前は無理だ。何で・・・お前に・・・》
誰かの声が響いた。
耳元に囁くように響いた声にリコウは飛び起きた。
「おい!!どうした?」
リコウが飛び上がったことにコウヤは驚いていた。
どうやらリコウは、座り込んでいるうちに眠ってしまっていた様だ。
「・・・いや、なんか変な声が・・・」
言いかけてリコウは頭を振った。
「何でもないです。」
疲れによって生じた幻聴だと結論づけて思考から声のことを弾き出した。
「・・・そうか。」
コウヤは気になるようにリコウを見ていたが、リコウが考えないようしているのを感じ取ったのか表情を切り替えた。
「もうすぐ軍の応援が来ると思う。・・・ヤクシジ、軍は馬鹿ではない。・・・兄と話したらいい。」
コウヤは立ち上がり診療所の方に歩きだした。
「・・・話すって言っても・・・」
リコウは立ち上がろうとした。
ゴゴゴゴン
地響きを含めた轟音が辺りを包んだ。
「な・・・」
「軍が入ってきた。」
コウヤは分かっていたことのように呟くと診療所に走り出した。
動けなくなる前に作戦の先頭に立ち、どうにか現場に出ることができた。
そんなことに安心していたが、到着した第三ドームに受け入れを連絡したところ、返事がないことにそんな気持ちは吹き飛んだ。
「少佐。・・・どうします。」
隊員たちは心配そうにシンタロウを見ていた。
「港は二重扉だ。そこを破壊して内部に入る。外気でドームが汚染されるのも最小限で済む。」
シンタロウは操舵士やオペレーターに指示をした。
「中に入ったら、俺が先頭に立つ。奴らの標的に入っている。」
シンタロウは隊員たちの顔を見渡した。
隊員たちは精悍な顔を付きでシンタロウを見ていた。
どうやらドームの内部に心配はあっても、自身たちが動くことに対しては不安は無いようだ。そして、隊長であるシンタロウを尊敬し信頼しているようだ。
「戦闘要員を船に残す。万一の時は本部に連絡を入れて撤退しろ。そして、撤退してからの戦闘以外の行動はルーカス中尉の指示に従え。」
シンタロウは操舵士の肩を叩いた。
「扉を破壊するとすぐに攻め込む。それぞれ武装し、割り当てられた乗り物を確認しろ。」
指示し終わったのか、シンタロウは操舵室に残る者達の目配せをして部屋から出て行った。
彼に続くように隊員たちは整列し連なった。
普段ならドールの発着口になっている格納庫にはドールの他に数台の大型のバイクが並んでいた。
隊員たちは外気遮断用のマスクと通信機の機能を備えたヘルメットを被り、バイクに乗った。
格納庫の開ける出入口が開くのを待つように隊員たちは構えていた。
「開いたらすぐに出る。打ち合わせでドームの構造は頭に叩き込んでいるはずだ。」
シンタロウは隊員たちの先頭のバイクに乗り、隊員たちに話しかけた。
「障害物はその場で対処しろ。間違っても市民に危害は加えない。そして、俺についてこい。」
シンタロウが言い終えると同時に轟音が響いた。
振動が終わり、しばらくすると格納庫の扉が開いた。
「・・・行くぞ。」
シンタロウは勢いよくバイクを走らせドームの中に飛び出した。
その彼に続くように規則正しく連なって飛び出した。
「この音・・・なに?」
ルリは不安そうにあたりを見渡していた。
「軍が入ってきた。おそらく港を破壊したんだと思う。」
コウヤの言葉にルリは固まった。
「一番安全だ。港は外と二重扉になっている。外気の汚染を最小限で済ませられる。」
アズマはルリを安心させるように頷いて言った。
「じゃあ、軍と合流して・・・」
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「え?でも俺は・・・」
「それがいいよ。兄さん。だってそんな大けがしているんだ。」
リコウはコウヤに賛同した。
「いや、だが・・・マーズ博士を安全に・・・」
アズマが納得していない様子だった。
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リコウは首を振った。
アズマは無言になり、しばらしくして頷いた。
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アズマはリコウとルリを安心させるように頷いて言った。だが、笑顔は自然だった。
「・・・知っている。」
マックスはコウヤをチラリと見た。
「らしいね。・・・だから触れさせたくない。」
何かを思い出すようにコウヤは目を細めて眉を顰めた。
「・・・強い力は・・・・毒だから。」
絞り出すようにコウヤは呟いた。
「とにかくアズマとリコウ達は講堂に向かってくれ。」
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「二人は・・・?」
ルリはコウヤとマックスを気にしているようだった。
「直ぐに向かう。マックスがお腹痛いから用を足したいらしい。」
コウヤはマックスを指差して言った。マックスは驚いた顔をしたが、直ぐに不満そうに頷いた。
「わかった。すぐに来てくれ。」
アズマは二人を見て言った。その言葉に二人は頷いた。
リコウはチラリとコウヤを見た。コウヤはリコウに頷くように目礼をした。
「肩を・・・貸してくれないか?」
アズマはリコウを見て言った。
「・・・もちろんだ。兄さん。」
リコウは喜んでアズマに肩を貸した。
診療所を出て講堂に向かう途中、ルリが後ろを気にしていた。
「どうした?」
様子に気付いたアズマがルリに訊いた。
「・・・あのコウヤさんって人、何者ですか?マーズ博士と仲良さげだし、強いし、軍の事情に通じているし・・・何か余裕だし。」
「・・・わからないけど、わかる気がする。」
リコウは頭の中に浮かんだコウヤの人物像が形成されつつあった。
「予想だけど、短期間だけでも軍に属していたんだろうな。三年前の作戦成功まで、誰が軍に入ってもおかしくない状況だった。」
アズマは呟いてふと、考え込むように黙った。
「どうした?兄さん。」
「・・・いや、行こう。」
アズマは歩き出した。リコウは慌てて肩を支えながらついて行った。
「うっ」
アズマは傷が痛んだのか少しうずくまった。
「大丈夫か?兄さん。」
リコウは慌てて兄に合わせて屈んだ。
「だ・・・大丈夫だ。行こう。」
アズマは立ち上がり、再び進み始めた。
宇宙空間を縦横無尽に駆け抜ける一つの戦闘機がある。戦闘機というべきか、戦闘機の様な小型シャトルだ。
シャトルの中には二人の女性がいた。
「異常感知・・・・ここの空域おかしい。」
一人の女性が呟いた。
彼女は短い赤毛と健康的な肌色の茶色の瞳をした、どこか幼さの残っている可愛らしい女性だった。
「確かに・・・・隠れドームができていてもここまでの塵なら感知できないわ。」
もう一人の女性は、紫のかかった艶やかで豊かな髪をして、赤毛の女性とは対照的で、どこか大人びた雰囲気のある女性だった。彼女は窓に映る宙に広がる瓦礫を見て言った。
「やっぱり、前にここの空域で察知されたものは・・・・」
「深追いしないで戻るわよ。ユイ。」
赤毛の女性の言いかけた言葉を紫の髪の女性は止めた。
「そうだね。・・・・ねえアリア。私、嫌な予感がする。」
ユイと呼ばれた赤毛の女性は、大きく方向転換され後ろになった瓦礫たちに意識を向けて言った。
「ユイの嫌な予感は当たるからやっかいね。」
アリアと呼ばれた紫の髪の女性は、険しい表情をした。
二人の乗るシャトルは月の方向に飛んだ。
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