BL短編集[作:ヘタノヨ コヅキ]

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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【ハッピーエンドと誰が決めた】

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 オバサンから許可を取ったオレは一度、一輪車から降りる。
 そして、リンゴをカットしにキッチンへ。

 ……そういえば、掃除がまだ途中だったな。
 まぁいい。今はそれよりも、ジャグリングだ。

 一個のリンゴを小さくカットしたオレは、玄関へ戻る。


『今からこの小さなリンゴでジャグリングするぜッ! 刮目しなッ!』


 オバサンにそう宣言してもう一度、一輪車へ跨った。

 またもや広がる、ジャグリングワールド。
 疑惑は、確信へ。……つまり、楽しいッ!

 スカートのまま器用に一輪車を操作しているオレを褒めてほしいぜ。

 ……おっと! 男のくせにスカートを穿いてることには、ツッコミ不要だ!
 それよりもこの、華麗なリンゴさばきを褒めてほしい!

 ……そしてできれば、見物料としてこのリンゴをくれないだろうか。

 あ、でもダメだ。知らない人からリンゴなんてもらえない。

 ……いや、でも。この人さっき、自分で『怪しくない』って言ってたよな?

 とかなんとか、考えてごとをしていた。

 ──その瞬間。


『──ん、ぐ……ッ!』


 口を開けて上を見上げていた、オレの口に。

 ──リンゴがひとかけら、入ってきたではないか。

 いや、これは事故だ、事故! オレのせいじゃない!
 確かにちょっと『うまい具合に入ってこないかな?』とか思ったけど、これは違う!

 わざとではない! ……本当に! マジで!

 ……でも、口に入ってしまったモンはもう出せないよな。
 返すのも、失礼だろう?

 ──食べてしまおう。

 ──それから、謝ればいい。

 そんなことを考えて、すぐ。


『──馬鹿な白雪姫』


 風が吹いて、オバサンのフードが脱がされる。

 フードの下から現れた、顔は……。


『……オバ、サン……ッ!』


 オレをこの森に追い出した、張本人。

 ──継母だった。

 完全なる同音だが、ちゃんと異義語だぜ、この【オバサン】ってのは。

 ……いや、もうちょっと驚けよ。オレ的には超絶ダイナミックな衝撃的イベントだったんだからな?

 オバサンは髪をかき上げ、不敵に笑う。


『それは毒入りのリンゴなのよ。あんたがまだ生きていると知って、特別に作ってあげたわ』
『そんな……ッ! わざわざ、オレのために……ッ?』
『自分にとって不利な部分を聞き逃す秀逸な聴覚は健在みたいね、白雪姫。……あんたに食べさせて、殺してやろうとしたんだけど……』


 言いたいことが、沢山あるのに。

 ──力が、出ない。

 オレはそのまま、一輪車から落ちた。

 ──ヤバイ、視界が。

 ──まぶたも、重くなってきた。

 そんなオレを見下ろしたまま、オバサンは呟く。


『──あんたがこんなに、アホだったなんてね』


 憐れむような表情を浮かべて。

 ……何だコレ、恥っず。
 うわぁ、今すぐ死にてぇ……ッ!




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