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10章【未熟な社畜は知りませんでした】
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しおりを挟むと言うわけで迎えた、翌日。俺はカワイと一緒に作り置きの料理を朝ご飯としていただいた後、ガッツポーズをしていた。
「時は来た! 掃除をしよう!」
「ぱちぱち」
ちなみに、時刻は十時過ぎだ。いつもの休日に比べたら、早起きだろう。
さらに、ちなみに。本当はもっと早く起きようと思った。だけど昨日の夜、カワイが言ったのだ。
『ムリして早起きしなくても大丈夫だよ。明日はボクもゆっくりするから』
そう言われては、目覚まし時計をセットなんてできない。気持ちだけで早起きを実行した。
……おっと、話を戻そう。俺の決意を見て、カワイが拍手を送ってくれている。今日もカワイはどこかぽんやりとしているように見えるが、本人曰く『元気だよ』らしい。
カワイは俺と『無理をしない』って、約束をしてくれた。だから、カワイが無理をしていないと俺は信じる。
……さて、掃除の前にやることがあるぞ。勿論、食器洗いだ。俺は昨晩同様、情けないくらいたどたどしい手付きで洗い物を始める。
そんな俺を、カワイは今日も見守ってくれていた。時々「あっ」とか「ヒト、それはっ」とか聞こえるけど、見守ってくれていたと言ったら見守ってくれているんだ。問題ない!
はてさて、なんとか今日も被害を出さずに食器洗いを完遂。なぜかカワイとゼロ太郎が疲弊しているように見えたけど、終わり良ければなんとやらだ。
「それじゃあ、そろそろ始めようか。えーっと、なにから手を付けたらいいかな?」
「先ずは、テレビの前にあるテーブルの掃除からお願いしてもいい?」
「オッケー! 任せてっ!」
テーブルの上には、チラシが置いてある。郵便受けに入っていたチラシを持ってきたはいいけど、そのままにしていたのだ。……昨日の俺が。
カワイの言う通り、テーブルの掃除を始める。バラバラと散らばっているチラシを束ねて、一ヶ所に積み上げた。そしてそれを、リビングの隅に置いて……。
「よし! 概ね、成功だね!」
「そうだね」
[──失敗ですよ]
駄目か。いや、駄目だよな。分かっていますとも。カワイもしっかり『ダメ』って言ってくれていいんだよ? 優しくて甘やかしさんなところも、勿論好きだけども。
確か、チラシはきちんと片付けている場所があったはず。で、俺が出勤する時に捨てたらいいんだよね。思い返しつつ、テキパキと掃除を始める。
「よぉ~しっ、気持ちがノッてきたよ! 掃除が終わったら料理もやってみるね! カワイにおいしいお粥を作るよ!」
「えっ、いいのっ?」
[駄目に決まっているじゃありませんか]
「なぜにゼロ太郎が答えるんだい?」
しかも、断固として拒否の姿勢。もしかして、前に作ったスープを思い出したのかな? ぐうの音も出ない根拠じゃないか。
「最近は料理中のカワイを見て勉強しているんだよ? 前みたいな失敗はしないよ!」
[えぇ、そうですね。常人ならば、そうでしょうね]
「低い! 主への評価が低い! それでいて信頼度が低いよっ!」
今までの俺を見続けているゼロ太郎にとって、これは正当な評価かもしれないけどさぁ! もう少し信じてほしいよ!
「ゼロタロー、チャンスをあげよう? ヒトのやる気、削ぎたくない」
[カワイ君……。……そうですね。分かりました]
「あれ、なんでだろう。いい話っぽい空気なのに、ただただ虚しい」
なにはともあれ、キッチンに立つ許可が下りたってことかな? うぅ~ん、複雑な心境だ!
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