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【愛玩故に殺し愛】
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しおりを挟む三純のメイド。……もとい、三純専属の使用人になる前。
──呉羽は、暗殺者だった。
当時の呉羽は、御厨家の住人を全員殺そうとしていたのだ。
……だが、御厨家殺戮作戦は三純によって阻止された。
それから三純は呉羽を異常なまでに気に入り、使用人として軟禁。……もとい、雇用。
呉羽に女物の服を着せ、傅かせ、奉仕させる。そして呉羽も、そのように在ろうとしていた。
だからこそ、呉羽は三純から求められる【恋情】に応じない。……応じられなかった。
普通、使用人は主人にキスをしない。だからこそ三純は余計に、呉羽からの【恋情】を求めた。
その結果の戯れがこの【殺害ごっこ】とは、あまりにも皮肉な話ではあるが。呉羽はそっと、心の中で溜め息を吐く。
しかし、呉羽がすべきことはなにも変わらない。普段通りに三純へ尽くし、その中で三純を殺す。ただ、それだけだ。
いつもと同じように朝食の用意を済ませた呉羽は、三純が待つ広間へ向かった。
既に着席していた三純は、呉羽の姿を見てニヤリと笑う。
三純の楽し気な視線に気付いていながら、呉羽はテーブルの上へ淡々と食事を並べる。
──すると、突然。
「ヒッ、ハハハ……ッ!」
──三純が、可笑しそうに肩を揺らした。
「アンタ、ヤッパリ面白いな……ッ! ハハッ、サイコー……ッ!」
一見すると、食事を並べられただけなのに突然笑い出したという【三純の奇行】としか見受けられない挙動。
しかし呉羽は、内心で小さく落胆する。
「──アンタが毒殺を選ぶなんて、今日はイイ日になりそうだ」
呉羽が、落胆した理由。
──隠したはずの殺意が、すぐに露呈してしまったからだ。
三純は紅茶が注がれたティーカップを、つい、と……指で押し返した。
「なりふり構わない、その浅はかさ。これをサイコーと表現しないでなんて言えばいいんだろうな? ……なぁ、オレだけの料理人?」
「お褒めに与り光栄です」
「アンタ今、ちょっと悔しそうな顔してるだろ。ハハッ。『表情なんか変えていないです』って言いたげな目だ。ヤッパリ、今日のアンタはサイコーだよ」
スプーンを手に取り、三純は笑う。
「でも。できるならオレは、アンタの【手】で殺されたいな」
「殺害方法のご希望やご指定はなかったはずですが」
「これはオーダーじゃない。ただの【独り言】だ。叶えず、捨て置いたって構わない」
そのまま、三純は用意されたスープに口を付けた。
三純の挙動を、呉羽はジッと眺める。
「紅茶に毒を仕込まれたばかりだというのに、よく平気で口を付けられますね」
「まぁな」
スプーンを置き、焼きたてのパンへ手を伸ばす。
「アンタのこと、オレは心底信じてるからさ」
「矛盾しています」
「そんなモンだろ。人間の思考なんて、矛盾だらけだ。今日は【人間】について語りながら食事でもしようか? もっとも、アンタがオレ以外の人間に興味を持つなら、会話に参加しようとするその耳を今すぐ削ぎ落とすけど。……あぁ、ザンネンだ。このナイフは下げていい。毒が染みこんでる」
「承知いたしました」
言われるがまま、ナイフを手に取る。
そして、呉羽はその刃先を三純へ向けようとして──。
「アンタ、今日は随分と熱烈だな。パンに嫉妬でもしてるワケ?」
そう茶化されたので、そっと手を引っ込めた。
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