そんなに可愛がらないで

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

文字の大きさ
16 / 290
1章【そんなに強引にしないで】

11 微*

しおりを挟む



 言われている意味が分からないほど、カナタは無知ではない。

 ……否。
 本当は、分かりたくなんてなかったのだ。

 しかし、理解せざるを得ない。

 ──ツカサの隆起した逸物が、カナタの後孔へ押しつけられているのだから。


『ま、待って……っ! オレ、やだ……そんなこと、したくない……っ!』


 どうして、こんなことになってしまったのか。
 すぐにでも、スカートを穿いて見せたら良かったのではと。カナタは、どうしようもないことを考え始める。

 けれど、ツカサは一度だって。

 ──カナタのことを、待ってはくれなかった。


『カナちゃん可愛いから、他の人に盗られたくないんだよ。だから、ね? カナちゃんのヴァージン、俺にちょうだい?』


 先端が、後孔に擦りつけられる。
 カナタは何度も何度も、首を横に振った。

 すると、その気持ちが届いたのだろうか。


『……俺が相手じゃ、イヤ?』


 ツカサが、身を引いたのだ。
 しょんぼりと、まるで捨てられた犬のような目をしながら。


『カナちゃん、俺のこと嫌い? 俺とはシたくない? セックスは俺以外の人とするつもりなの?』


 まるで、被害者のような表情だ。
 どう見ても、被害者はカナタだというのに……。

 決してカナタは、ツカサのことが嫌いなのではない。
 ……ただ。


『恋人じゃないのに、こんなこと……するの、おかしいです……っ』


 カナタは、純情だった。

 キスも、それ以上のことも……。
 そういった行為は全て【特別な人】とするもの。
 そして、自分もそうした相手と関係を築いていくのだと、信じていたのだ。

 ツカサのことが、嫌いなわけではない。
 ただ、そういった行為をする相手として見ていないのだ。

 すると、ツカサは小首を傾げた。


『──なにを言っているの? 初めて会ったあの日から、カナちゃんは俺の恋人でしょ?』


 そんな言葉を、口にしながら。


『目が合ったから、俺はカナちゃんのものになった。握手に応じてくれたから、カナちゃんも俺のものになった。こうして部屋にだって入れてくれるし、裸だって見せ合える。……なら、恋人だよ。なにもおかしなことなんてない』
『……は、っ? なにを、言って……っ?』
『もしかして、だけどさ? 俺以上にカナちゃんを大事にできる人がいるって、カナちゃんはそう思っているの? そんなワケないよね?』


 ──笑顔だ。

 ──今度は、笑顔を浮かべたではないか。


『俺はカナちゃんを大切にするし、優しくする。カナちゃんは誰にも見せたことがないスカート姿を、俺にだけなら見せてくれようとした。……ホラ、ヤッパリ。俺たちは【特別同士】で【恋人】だ。まったく、やめてよカナちゃん。こんな時に焦らせるなんて、意地が悪いなぁ?』
『ち、違います……っ! オレは、ツカサさんと付き合ってない……っ!』
『じゃあ、今すぐ俺と付き合って』


 ぐっ、と。
 ツカサの逸物が再度、カナタの後孔へと押しつけられた。


『カナちゃんが俺の恋人になってくれるなら、優しくする。酷いことはしないよ、約束する。……だけど、カナちゃんが俺と付き合えないなら。俺以外の誰かを選ぶなら……』
『……選ぶ、なら……?』


 どこまでも。


『──裏切り者のカナちゃんを殺して、俺も死ぬ。そして、地獄で俺と付き合おう』


 ──どこまでも、ツカサは笑顔だった。
 



しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】その少年は硝子の魔術士

鏑木 うりこ
BL
 神の家でステンドグラスを作っていた俺は地上に落とされた。俺の出来る事は硝子細工だけなのに。  硝子じゃお腹も膨れない!硝子じゃ魔物は倒せない!どうする、俺?!  設定はふんわりしております。 少し痛々しい。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

辺境の酒場で育った少年が、美貌の伯爵にとろけるほど愛されるまで

月ノ江リオ
BL
◆ウィリアム邸でのひだまり家族な子育て編 始動。不器用な父と、懐いた子どもと愛される十五歳の青年と……な第二部追加◆断章は残酷描写があるので、ご注意ください◆ 辺境の酒場で育った十三歳の少年ノアは、八歳年上の若き伯爵ユリウスに見初められ肌を重ねる。 けれど、それは一時の戯れに過ぎなかった。 孤独を抱えた伯爵は女性関係において奔放でありながら、幼い息子を育てる父でもあった。 年齢差、身分差、そして心の距離。 不安定だった二人の関係は年月を経て、やがて蜜月へと移り変わり、交差していく想いは複雑な運命の糸をも巻き込んでいく。 ■執筆過程の一部にchatGPT、Claude、Grok BateなどのAIを使用しています。 使用後には、加筆・修正を加えています。 利用規約、出力した文章の著作権に関しては以下のURLをご参照ください。 ■GPT https://openai.com/policies/terms-of-use ■Claude https://www.anthropic.com/legal/archive/18e81a24-b05e-4bb5-98cc-f96bb54e558b ■Grok Bate https://grok-ai.app/jp/%E5%88%A9%E7%94%A8%E8%A6%8F%E7%B4%84/

リンドグレーン大佐の提案

高菜あやめ
BL
軍事国家ロイシュベルタの下級士官テオドアは、軍司令部のカリスマ軍師リンドグレーン大佐から持ちかけられた『ある提案』に応じ、一晩その身をゆだねる。 一夜限りの関係かと思いきや、大佐はそれ以降も執拗に彼に構い続け、次第に独占欲をあらわにしていく。 叩き上げの下士官と、支配欲を隠さない上官。上下関係から始まる、甘くて苛烈な攻防戦。 【支配系美形攻×出世欲強めな流され系受】

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

僕と貴方と君と

五嶋樒榴
BL
カッコいい&可愛い年下ふたりに翻弄されてます。 柊木美峰は28歳。 不動産屋に勤務する宅地建物取引士。 顔見知りの24歳の融資担当の銀行員、葉山優星から食事に誘われ、そのまま自宅に招待される。 優星のマンションに着くと、そこには優星の年の離れた異母弟、小学2年生の明星が居て………。 恋愛に臆病な主人公が、ふたりの年下男子に振り回されるハートフルML。

処理中です...