そんなに可愛がらないで

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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オマケ③【そんなに××気分に浸らないで】

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 カナタを背後から抱き締めたまま、ツカサはカナタの耳元に唇を寄せた。


「それに。カナちゃん、俺が『新婚だから』って言ったらなんでも許してくれるでしょ?」


 まるで、わざと確信犯的な言い回しをしているようだ。ツカサの囁きに、カナタは露骨に頬を膨らませる。


「むっ。『なんでも』は許さないよ? 駄目なことは駄目だもん」
「そっかぁ。……ところで、さ。俺、今日も色々と頑張ったよね? だから、ご褒美としてカナちゃんからキスしてほしいなぁ、されたいなぁ? 新婚だし、いいでしょ? ……ダメ?」
「うっ」


 コテンと、ツカサがあざとく小首を傾げてカナタを見つめ始めた。あえて説明する必要もないが、こうしたツカサの分かり易い【甘え】に、カナタは弱いのだ。

 逡巡すること、数秒。カナタはパクパクと口を開閉させた後、まるで言い訳をするように。


「……まぁ、その。キスくらい、なら、別に……っ」


 前置きをしつつ、ツカサの唇にぷちゅっと可愛らしいキスを贈った。

 当然、ツカサの表情は笑顔。ニコ~ッと心底嬉しそうな笑みを浮かべながら、照れているカナタを見つめていた。
 そんなツカサの笑顔を見て、カナタの頬はより一層赤く染まる。


「なっ、なんでニヤニヤするのっ!」
「ううん、なんでもないよ? 俺、生まれつきこんな感じの顔だからさ」
「うっ、嘘だよっ! ツカサ君、いつもより意地悪な笑顔をしてるっ!」
「えぇ~っ、そうかなぁ~っ?」
「そうだよっ!」


 揶揄われたと気付き、恥ずかしさからツンとした態度を取ってしまう。
 しかしそうすると、ツカサはいつだって……。


「それじゃあ、お礼」


 カナタの機嫌を、いとも容易く取ってしまうのだ。

 拗ねるカナタの頬に、今度はツカサからキスをする。驚いたカナタが顔をツカサに向けると……今度はすぐさま、唇にキスが落とされた。


「あ、っ。ツカサ、く……ん、っ」


 ちゅっ、と。小さな音。
 それから、すぐに。触れるだけの口付けは過激さを増し、ツカサの舌がカナタの口腔に差し込まれた。

 ツカサに捕らわれたカナタは、驚いても抵抗はしない。


「んっ、ぅ……っ」


 懸命に、ツカサへ応える。そうするとツカサが上機嫌になるのは、言わずもがな。それがなんとなく分かってしまったからこそ、カナタはツカサの舌に自身の舌を絡めた。

 ようやくキスから解放されると、カナタは背後に座るツカサへもたれかかりつつ、ポツポツと呟く。


「な、なんか、あの。今日のキス、音が……エッチな、気がする……っ」
「うん、わざとだよ?」
「そんな、サラッと……!」


 真っ赤になったカナタを眺めるツカサは、相変わらず笑顔だ。


「出会った頃から変わらないね。キスだけでこんなに、いっぱいいっぱいになってくれる。沢山俺を意識してくれて、嬉しい」
「ツカサ君……っ。……本当に、嬉しそうだね?」
「ウソなんか言わないよ。ホントに、すっごく嬉しいっ」


 ツカサが、ここまで自分を愛してくれる理由。笑ってくれる理由は、カナタが【家族】になったからなのか。


「大好きだよ、カナちゃん」


 そう思うと、胸の奥がキュッと締め付けられるのだから。やはりカナタは、ツカサに勝てない。


「……ツカサ君。手つきが、エッチだよ」
「今のキスでスイッチ、入っちゃったからね。俺って分かり易い男でしょ?」
「なんでちょっと自慢気なの? ……んっ」


 服の下を冷えた指でまさぐられようと、抵抗する気が起きなかった。

 この時点でカナタは、ツカサの愛情表現を責められないのだが。……そんなことは当然、どちらも口にしなかった。




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