大嫌いな幼馴染みは嫌がらせが好き

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

文字の大きさ
40 / 84
4話・すれ違うのが好き

7

しおりを挟む



 手元に置いておきたくて。
 自分だけのモノにしておきたい。
 そんな、オモチャ。

 高遠原にとっての俺なんて、その程度だったんだ。
 子供の頃も、そう。

 ――そして、今だって。


「……ッ? オイ、真冬。お前、なにしようとしてんだよ」


 俺はその場にしゃがみこむ。
 そして、高遠原のズボンに手をかけ……チャックを、下げた。


「こういうことさせるために呼んだんだろ? だったら、役目を果たすだけだ」
「そんなこと、今はいい。……それより、誰にやられたのかを早く答えろ」


 自分のオモチャを勝手に使った犯人を探す。
 つくづく、子供っぽい。俺が思っている以上に、高遠原は独占欲が強いらしい。


「言っただろ。倉庫の掃除をしてたら、用具が落ちてきたって」
「その程度でこんなになるワケねェだろ。……俺様をバカにしてるのか?」
「まさか。俺が高遠原様をバカにするわけないだろ」


 俺はただのオモチャじゃない。人間だ。
 感情くらいある。


「サッサと済ませよう。今日は早く寝たい」
「おい、真冬――」
「ちゃんと奉仕したら、言わないでくれるんだもんな?」


 そう言って、思わず自嘲の笑みを浮かべた。


「まぁ、もうバラしたんだろうけど」
「……ハァ?」


 昨日、俺に暴行を加えた先輩は確かに言っていた。


『――キスとか、それ以上のこともしてるんだって?』


 そして、先輩たちは高遠原の知り合い。

 ここまで揃っていたら、答えは一つだけだろう?


「無駄だって分かってたけどな。お前、子供の頃からずっと同じなんだもん。俺のお願い聞いてくれたことなんて、一度もなかったよな」
「……何の話だよ」
「今更隠さなくたっていいだろ?」


 顔を上げて、微笑んでみせる。


「他の奴に『諸星真冬がホモだ』って……言いふらしたんだろ?」
「……は、ッ?」


 まるで、心当たりがないかのように。
 高遠原は両目を見開いて、驚き始めた。

 そんな姿を見て、もしかしてと……俺はある可能性を口にする。


「もしかして……俺に知られるとは思ってなかったのか?」


 きっと今の俺は、あまりにも……性格が、悪い。

 高遠原は嘘を吐いたり、からかってきたり、酷いことだってする。
 だけど、こんな卑劣なことはしないと思いたかった。


『……ガキの頃の話、だけどよ。……お前には、悪いことをしたと……思ってる』
『俺様がしたことは、お前に嫌われても……まァ、仕方がないことだろうなと、思ってる』


 改心してくれたんだって、信じたかったんだ。
 なのに。


「誰が、そんなこと……言ってた?」


 高遠原の返事は、俺の求めていたものとは違った。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

【完結】後悔は再会の果てへ

関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。 その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。 数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。 小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。 そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。 末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前

ずっと好きだった幼馴染の結婚式に出席する話

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

永久糖度

すずかけあおい
BL
幼い頃、幼馴染の叶はままごとが好きだった。パパはもちろん叶でママはなぜか恵吾。恵吾のことが大好きな叶の気持ちは、高校二年になった今でも変わっていない。でも、これでいいのか。 〔攻め〕長沼 叶 〔受け〕岸井 恵吾 外部サイトでも同作品を投稿しています。

処理中です...