大嫌いな幼馴染みは嫌がらせが好き

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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4話・すれ違うのが好き

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 心のどこかでは、期待していたのかもしれない。

 ――高遠原が、バラしたんじゃないって。

 だけど、違った。


(否定、しないんだ……)


 高遠原が、誰かにこの関係を言うはずない。
 約束を、守ってくれるはずだって。

 ――信じたかった。


「……ヤッパリ、そう、だったんだ……っ」


 ポタッ、と。
 なにかが床に、こぼれた。

 それがいったい何なのか……俺はすぐに気付く。


「……っ」


 泣いている場合じゃ、ない。
 なのにどうして、涙ってものは……一度出てしまうと、なかなか止まってくれないんだろう。

 慌てて俯いてみるが、高遠原は気付いてしまったらしい。


「……真冬? お前、何で泣いてんだよ。 ……なァ、真冬」


 『何で』って?

 俺がどうして泣いているのか、知りたいのかよ?

 俺のこと、オモチャかなにかだと思ってるくせに?


(俺はずっと、お前のこと……っ)


 子供の頃。
 変な噂を流されて、傷ついた。

 それからずっと、謝ってくれたらよかったのにって……そんなことばかり。
 なにかあると、すぐに高遠原のことを考えた。そしてすぐに、嫌いだと言い訳をして、目を背けて。

 でも、今からはちゃんと……認めるよ。


(俺は、ずっと。……美鶴と、友達に戻りたかったんだ……っ)


 『好き』って言われて、嬉しかった。

 美鶴の気持ちは、正直よく分かんなかったけど。でも、友達に戻れる可能性があったってことだろう? だから、嬉しかったんだ。

 美鶴が俺を『好きだ』って言うんなら、もっとちゃんと……時間をかけてでも許すから、本当のことを全部話してほしかった。

 子供の頃からワガママで、自分勝手だったけど……俺は、そんな美鶴と一緒にいるのが、一番楽しかったから。


「なんっ、でも……ない……っ」


 俺の知らない女子たちといるのは、見ていて楽しくなかった。
 だけど、美鶴は俺のことを嫌いなんだと思ってたから……飲み込んだ。

 ――きっと俺は、知らない間に美鶴を傷つけた。

 ――だから変な噂を流されて、孤立させられたんだ。

 ――俺はちゃんと、謝るよ。

 ――だから美鶴もちゃんと、謝ってくれよ。


「ごめん、ごめん……っ。すぐ、泣き止むから……ご、めん……っ」


 ずっとずっと、美鶴のことを信じていたかったんだ。

 どこかで俺は、間違えた。だけど、俺の一番大事な友達は……美鶴だったんだぞ。
 でも、もう。

 ――お前に、なにができるのか分からないよ。


「なにが、不満だったんだよ……っ? 俺、ヤッパリ……下手、だったのか……っ?」


 子供の頃に裏切られたのは、きっと俺のせい。そう思って、小さい頃は自分を責めて……美鶴の為に、美鶴を嫌おうとした。

 高校生になって、美鶴と関係を持って……美鶴が気持ちを、伝えてくれて。頑張れば、友達に戻れるかもしれない。俺だって、美鶴のことが親友として大好きだったんだから。そう思って、いたのかもしれない。

 ――だけどもう、無理だよ。

 ――俺とお前はもう、友達なんかには戻れないんだ。




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