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5話・監視するのが好き

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 ネックレスを貰ってから、三日後の放課後。

 俺は美鶴からのプレゼントを、持て余していた。


(これって、つけるべき? それとも、部屋に飾っておくとか?)


 紙袋にしまっては、毎日持ち歩いて。
 だけど身につけたりはできず、時々眺めたり。

 そんな、こそばゆい日々を過ごしていた。


(徹に相談するのも変だし……でも、明日は金曜日だし……家に行ったら、つけておくべきか? つけてないと、怒りそうだよなぁ……でもでも、つけてたらそれはそれでバカにしてきたり、からかわれそうだし……うぅぅ、うぅ……っ!)


 正しい扱い方が分からないネックレスを持て余して、数日。

 だけど俺は、ネックレスの扱い方を考えている時間が……嫌いじゃ、なかった。


(……帰ろう)


 紙袋を持ったまま、外靴に履き替えようとする。

 ――そのときだ。


「よう、諸星くん。……どうだった?」
「っ!」


 体が、勝手に強張る。

 だけど反射的に、素早く……声がした方を、振り返った。
 この声には、聞き覚えがある。

 ……この、声は……っ。


「高遠原美鶴は、何て言ってたんだ?」


 そう。
 この前……美鶴に何らかの恨みがあって、俺を使って憂さ晴らしをしてきた先輩方だ。

 前回と同じように、三人揃っている。


(『どうだった』……って)


 キスマークが見つかった日のことを思い出すと。

 ――胸が、痛んだ。

 だって、そうだろう?


「――なにも、言ってませんでしたよ」


 美鶴はただ、オモチャに手を出されて怒っただけだったんだから。

 ……何で、忘れてたんだろう?
 俺は美鶴にとって、ただのオモチャで……所有物だ。

 自分の所有物が知らない間に汚れてたら、誰でも不快な気持ちになる。
 先輩たちのしたことは……ただ、それだけだった。


「……なにも、だと?」


 そう言ったのは、リーダーっぽい先輩だけど。
 三人とも、眉をピクリと動かした。


「先輩たちがなにをしたいのかは、分かりません。でも、たぶん……先輩たちが望んだようなことは起こらないと思います」


 言葉にしたら、更に……胸が、痛む。

 俺は美鶴にとって、ただのオモチャなんだから。


「先輩たちは、いったい美鶴になにを――」


 先輩たちがなにをしたいのか、訊き出そうとした。

 ――瞬間。

 鈍い音が、聞こえた。


「……っ」


 少ししてから。

 ――俺は今、殴られたんだ……と、気付いた。


「……んだよ、それ……ッ!」
「見当違い、でしたかね」
「あ~、虫唾がはしる~……」


 ここ、生徒玄関だよな?
 何で堂々と殴ってくるんだ?

 当然の疑問すらも、口にできない。
 何故なら。


「諸星くん、ちょっと……来てもらうぜ」


 その前に、俺は連行されてしまったのだから。




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